俺の切り札は光らない   作:雨 唐衣

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おまたせしました!

次回はお早めに投下出来ると思います



五十話 魔石は、1ターンに1回のみセット出来る。土地をセットしていたらセットできない

 

 

「気雲流! 今日こそ、”秘虎”を寄越しな!! てめえらみたいな腰抜け共に、詩霊(しれい)は相応しくねえ!」

 

 

「あ゛?」

 

「死ぬか?」

 

「敷地内は治外法権だぞ、ごらぁ!!」

 

「ひ、ヒィ!」

 

 

「なぁにこれぇ?」

 

 

 すわトラブルかと応接室から飛び出して、道場の門内。

 入る時に門下生の人や、通っている人たちが稽古をしていた石畳の広場。

 

 そこで見たことがない道着を付けたガラの悪い連中が……それを囲むように並んだムキムキの道着の人たちに威嚇されていた。

 ダンダンダンと、石畳が踏みつけごとに揺れている。

 え? あれただの足だよね? 道具とか使ってないよね??

 こ、こわっ!

 

「なにあれ?」

 

釈加破地(しゃかばじ)の連中だねぇ」

 

「シャカバジ?」

 

 なんとなく気分が悪くなる響きだ。

 

「近所にあるカード道場でぇ、ちょっと前からうちに色々嫌がらせしてきてるんだよぉ。精々二十年ぐらいのポット出のくせにうちに喧嘩売ってくるバカで、騒ぎ起こしてはぶちのめしてぇ警察に放り込んでるんだよねぇ」

 

「あの数ってことは残り少ない門下生共だな。あそこの上だったクソガキ(ジジイ)を七殺しにしてから大人しくしてやがったんだが、知能が足りねえのが後を継ぎやがったからよ」

 

「なんで喧嘩売ってきたんだろう……」

 

「現実が理解できないバカだからじゃないかな?」

 

 セト店長の疑問に、さらりと言うサレンさん。

 うーん、あのシャカバジっていうのどうみてもみんな私より年上だよね。

 

 やだなぁ、大人ってみんな子供の私より頭いいって思ってたんだけどなぁ。

 

「追い詰められて、うちの”秘虎”で一発逆転ってか? 経営苦でケツから火を吹いてんだろうしな」

 

「あ、師範!」

 

「おう。今どうなってる?」

 

「シャカバジの連中、看板を賭けて決闘ファイトをしろって乗り込んできやして……わかりやすく破壊行動や、ヤッパ抜いてくれば埋められるんすけど。チッ、人目が多い土曜日を狙ってきやがって」

 

 ヤッパ?

 埋める?

 

「おい、お客さんの前だ。口には気をつけな」

 

「あ、すいません」

 

「最低限ファイトで勝負をつけようっていう知恵指数は残ってやがったか……さて」

 

 あ、師範さんが歩いていく。

 それに囲まれているシャカバジたちも気づいた。

 

「! 出やがったな、妖怪ジジイ! おら、ファイトしやがれ!」

 

「ファイト? ファイトなんて乱暴だな、ここは穏便に暴力でこいよ」

 

「うるせえ! いいからファイトだ!!!」

 

「あ゛あ゛ん? 何様のつもりだ、シャバ僧共が。頭数も足りずにべそべそ囲まれて、武道家なら拳で押し通してみせな」

 

「そ、そうしたらてめえらが殺しにくんだろ!」

 

「当たり前だろ? 死ぬ覚悟もねえで殴り込みすんじゃねえぞ、今も昔も囲んで棒で殴りつけるのが必勝よ」

 

 コワイ。

 ここ本当にいい側の道場なのかな?

 囲まれているほうが実は必死に反抗してる弱小集団とかってない?

 

「あれ? ファイトって申し込まれて拒否出来たっけ」

 

 前にモブさんにボコボコにされてたクレーマーはファイトさせられたけど。

 

「ああ、それはね」

 

 

 

 

「ファイトしろ! 気雲流! ”秘虎”とそのデッキを賭けて!」

 

「そうか。で、お前らは何を差し出すんだ?」

 

「決まってる、うちの看板だ! いいだろう、てめえらのボロくせえ看板の代わりにもらって「足りねえな」は?」

 

「その程度でうちのデッキが欲しいなら五千万揃えてもってこい。そしたらファイトしてやるよ」

 

「ふ、ふざけんなぁ!!」

 

 

 

 

「え、えぇ……」

 

 なんか脅されてる。

 逆に金を請求されてる!?

 

「なんて優しいんだろう。レガシー入りのデッキ要求にたかだか五千万とか」

 

「まあ賭け金だろうね」

 

「え、高くないの? というかいいの?!」

 

「ユウキはまだ浸かって浅いんだろうけど、ファイトは万能の解決方法」

 

「うん。それは知ってる」

 

「でも、基本的に最後の手段でもある」

 

「最後の手段?」

 

「ファイト以外に頼れる手段がない人の手段であり、白黒はっきりさせる決着手段。だから……」

 

 だから?

 

 

「ファイトしてやる理由がない場合は普通に拒否られる」

 

 

「ええ!?」

 

「フツオくんが頑張ってくれた時はあれ冥牙バベルの圧力だったし、あれで負けてたらサインさせられてたか。ファイトしなかったら多分嫌がらせとかされてたよね」

 

「手っ取り早く頷かせる手段がファイトなだけで、それ以外で手っ取り早いならそれ以外でやる。不当な要求に応える道理がなくて、さらに暴力でも勝てるならファイト要求なんてつっぱねられる」

 

「そうなんだ……」

 

 つまりファイトをしないと両方ともに利があると思わないとやってもらえないってことなんだろう。

 

「くそが!! うちの土地の権利もかけてやる! ファイトだ!」

 

「お、おい、いいのか? ケンドさん!」

 

「勝てばいいんだよ、勝てば!」

 

 なんかやったらいけないようなことをやってるよ、シャカバジさんたち。

 いいの?

 なんか絶対失敗する未来が見えてる。

 

「おう、吐いた唾は飲めねえぞ?」

 

 にやりと笑ってる師範さんは、邪悪な笑みをしてた。

 どっちが悪い人たちだったのかなぁ。

 

「じゃあファイトだ。お前らが負けたら道場の看板と土地の権利、つまりてめえらが無駄にくっちゃべって寄せ集めになる場所がなくなるわけだ」

 

「俺らが勝てばてめえの”秘虎”デッキを頂いていく! てめえらの看板も同然で、面目丸つぶれだぜ!」

 

「出来ればだろうが、クソガキ共。じゃあファイトはそうだな……あいつは出すまでねえか、マリカ!」

 

「はぁーい」

 

 スタスタと楽しそうにマリカ、さんが出ていく。

 どうしょう。私たち部外者だよね、見てるだけでいいのかな?

 

「こっちからはうちのマリカを出す。んで、誰が相手になりやがる?」

 

「なんだぁ、そんなこむ……女でいいのか?」

 

 今下から上に見上げたね。

 そうだよね、シャカバジのえらそうな奴より背が高いもんね。

 

「よろしくねぇ」

 

 ひらひらと手を振ってるけど、緊張感がないなぁ。

 でもどうなんだろ、ファイト強いのかな?

 

「ボクも昔から知ってる子だけど、今の実力はわからないや。でも師範がデッキを託した以上、相応に強いはず」

 

「だね。腕をみせてもらおう」

 

 私の視線に気づいて、セト店長がそう解説してくれた。

 サレンさんはいつもどおりだ。

 

 じゃあ私たちは応援をしていようか、

 

 

 

「それじゃあファイトだが――()()()()()()

 

 

 な?

 

「え?」

 

 にやりとシャカバジのケンドと言われてた男が嗤って、ボードを広げる。

 その瞬間、周りのシャカバジたちも懐に手をいれて。

 

 ざわりと肌が泡立った。

 

 まさか。

 

≪ユウキ!≫ 「うん!」

 

 取り出されるものがわかった。

 私は飛び出――

 

フンっ!

 

『ぐげ!?』

 

 す前に、シャカバジたちが吹き飛んだ。

 師範さんの手が消えたと思ったら、身体がくの字に曲がった。

 その手に握っていた真っ黒なカード――闇のカードが空を舞っていた。

 

「抑えろ!」

 

「「「「おらぁ!」」」」

 

 そして、すかさずに囲んでいた気雲流の人たちが悶絶してるシャカバジたちを殴り倒してる。

 私は踏み出した足のまま、止まってた。

 

≪なんか前にもこんなことがあった気がする!≫

 

 そうだね。

 覚えがある流れだよ。

 

 

 けれど、空気が冷たく感じた。

 

「はーはははは!!」

 

「っ?!」

 

 笑い声。

 それに目線を向けると空気が歪んでいた。

 

 真っ黒な風が吹いて、ケンドって言われていた男とマリカさんを取り囲む。

 

「闇の障壁!!?」

 

「マリカちゃん!」

 

 妨害が間に合わなかったんだ!

 

 

「はははは!! いきなりきたねえ真似をされたが間に合ったぜ! これが、闇の力だぁ!」

 

「……」

 

 グルグルと黒い風が舞い上がってくる。

 広場の色が黒ずんでいく。

 

 近づこうとするも硬い、半透明な壁が出来てる。

 

「どうしょう、介入するには」

 

「やめとけ」

 

「師範さん?!」

 

 デッキを取り出そうとした私の手を、師範さんが止めた。

 

「ファイトがもうはじまる。それに横槍はルール違反だ」

 

「ルール違反ってそんなこといって」

 

「マリカぁ! やれるな!!」

 

 ビリビリと震えるような大声。

 それにマリカさん、が。

 

 

「ぅーん」

 

 大きな、色んな意味で大きなマリカさんはにっこりと笑った。

 

「もーまんたい」

 

 右手を上げて、親指を立てた。

 そして。

 

「……領域が完成した」

 

 それは逆さにした金魚鉢の中に、墨を垂らしたような光景だった。

 濁った透明と黒が入り混じるドーム。

 

 その中でケンドと呼ばれてた闇ファイターとマリカさんが対峙している。

 

 

 

「ぶひゃはははは!! なにが無問題だ、この小娘がぁ!」

 

「……ちっさ」

 

「クソガキゃあ!?」

 

 

 

 中の叫び声が外にも聞こえる。

 

「完全隔離じゃねえな。さすがに外から中には届かないだろうが、声が漏れてる分上等な闇カードじゃねえな」

 

「そ、そうなの?」

 

「もっと悪質、闇を啜った奴なら辺り一帯から完全に隔離する。下手すれば時間すらも捻じ曲げやがる」

 

「ですね……生き延びている闇ファイター、それも忌名持ち(ネームド)と言われてる奴らだとファイト時間は数える程度しか過ぎずに嬲られるって」

 

 セト店長が青ざめた顔で呟く。

 

「しかし、これだけの数の闇カード、しかもちんけなものとはいえ領域を出せるってことは間違いねえ。”染められたやつだ”」

 

 師範さんが地面に散らばった真っ黒な色。

 煙のようなオーラを放っている闇のカードの1枚を踏み潰した。

 

 え、なんか砂みたいになってる。あれ、あの紙だよね? あれ頑丈なんじゃあ。

 

「染められた?」

 

「闇のカードには二種類あるっていったよね? ()()()()()()()()()()()()()()()()って。その生み出されたもの、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()がある」

 

「感染……ただのカードが、闇のカードになるってこと?」

 

「そう。普通ならそんなことは出来ないんだけど、強大な力を持つ闇のカード――堕悪(ダーク)カードならそれが出来るって言われてる」

 

「ダークカード……」

 

「これをばらまいてるやつがいやがるな。それも間違いなく、ダークファイタークラスの」

 

「おしゃべりはここまで――ファイトが始まる」

 

 中の二人がそれぞれボードを構えていた。

 ケンドっていわれてた闇ファイターのボードは、ゴツゴツしたトゲとか刃物みたいなのが生えた凶器そのものだった。

 マリカさんのボードは赤銅色、銅のような色をしたものに丸みを帯びている。トンファーみたいに握りが付いている。

 

 

「「ファイト!!」」

 

 

 闇のファイトが始まった。

 それに私は固唾を飲んで見守るしかなくて。

 

 

 私は――悲鳴を上げることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 放物線を描いて、障壁の天蓋に叩きつけられた。

 

 闇ファイターの光景に

 

 






「意思は、暴力に屈しない」


               ――屈服


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