かなりおまたせしました!
前回から今回までが【アニメ二期 第三話】の描写範囲となっています
(サレンの負傷登場から前回、今回の話)
今回もたくさんのFAを頂いております
皆様本当にありがとうございます
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ヨン様よりセト店長のFAをいただきました!
うおおお!ヒップ! ピーチ姫ですねえ
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ミミックもどき様より
マリカとサレンさんのFAを頂きました!
これ以外にもたくさん旧Twitterで頂いております、本当に素晴らしいイラストです
ありがとうございます! ありがとうございます!
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XX-ouga様よりFAをいただきました!
たくさんのFAいつもありがとうございます!
1カメ
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2カメ
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朽木様より前回のラストシーンのイラストをいただきました(目そらし
通された応接室はごくごく普通でした。
普通に高そうなソファーで。
普通に綺麗なこうイメージする感じの応接室で。
少し高い位置に「健体康心」と書かれた書道の額縁が飾ってあって。
「……なるほどのぉ」
そこでボクたちは師範と対面をしていた。
一見すると小柄な坊主頭の老人。
しかし、その伸びた背筋に、サングラス越しでもわかる鋭い目つきに、ブルリと震えが来る。
最後にあったのは学生の頃。
ボクが”アレ”から引退して、一般のミッション女学院に入学した時だったか。
今はサレンちゃんが通っているあの学校に通い出した時に、近所だったから挨拶をした。
それからかれこれ五年ぐらい経つけど、記憶そのままの姿だ。
初めてあった時からおじいちゃんだったけど、元気いっぱいのままである。
どんだけ長生きしてるんだろうか。
あの”十三位”からはババアとか、小僧とか口喧嘩をしてたから多分あの人よりは年下だとは思うんだけど。
それでその横で座っている少し目線を上げる必要がある少女――マリカちゃんの父親というのだから、驚きだ。
うん。
驚きだ。
いやなにやってんのですか、人刹師範。
孫じゃないんですか? 娘って、え?
そういえば前にここにきた時、小学生上がりたてみたいな小さな女の子がいたのは憶えてる。
てっきりお孫さんかと思ってたよ!
「話は分かった。闇カード共がのさばり出したって話は、わしの耳にも入ってる」
「っ、他にも被害が?」
真面目な話だ。
ボクは慌てて思考を切り替える。
「ああ、ちょいと預かってる奴がな。無事に返り討ちにしたみてえだが、物騒なことこの上ないぜ」
やれやれだ、とわざとらしく肩を竦める師範。
気雲流は、警察とも協力関係にある。
多分そこから話を聞いてたんだろうか。
「で、だ。それに対抗したいからうちのレガシーカードに頼りに来たってことかと思ったが……持ってんな」
じろりと目線が向いたのは、ユウキちゃんにだった。
「
「わかるん、ですか?」
「慣れてりゃあな。雰囲気でピンと来んのよ」
目上の師範相手にしどろもどろの敬語で応えるユウキちゃんに、ゲラゲラと楽しげ笑う師範。
「んで、残り二人は……んー、そっちの嬢ちゃんは?」
「私は持っていない」
「え、ヴァイスファング違ったの?」
「ん。あれはうちに伝わってるただのレアカード、ちょっと精霊は宿ってるけど」
「ただのレアカードとレガシーカードの区別はちょっと難しいからね。どちらも希少だけど、違いは力ぐらいだし」
世界に数枚あるいは一枚しかない種類のカードがレガシーカード。
古代から世界の各地に飛び散り、特別な力を宿している生きたカードだ。
それと同じように精霊が宿ってるカードもあるけれど、力があるというだけで精霊や意思があるとは限らない。
大いなる力を宿しているカードこそが
そして、その上にあると言われている
実在すら疑われる伝説を超えた神話のカード。
……
文字通り得た者は神様のように振る舞えるなんていうけど、さてどうだろうか。
と、ともかく。
「レガシーカードがあれば最低限、闇のカードとも戦える。けど、それでも最低限。それで」
「地柩。お前のレガシーはまだ使えねえのか?」
要件を伝えようとして挟み込まれた言葉に、息をするのを忘れた。
瞬く。
今じゃない光景。
瞬く。
目の前で砕け散る”彼女”。
瞬く。
それをゲラゲラ笑う異頭の【怪人】
パン、という音がした。
「え? え?」
瞬きをする。
慌てて息を吸う。
「すまん。意地悪を言ったな」
「あーいえ……大丈夫です。まだ引きずってるボクが悪いから」
師範の謝罪に、慌てて横に首を振る。
もう過ぎ去ったことだ。
そうだ。
もう終わってしまったことなんだ。
「ボクのレガシーカードは……<アルマー>は使えません」
もう目を覚まさないから。
ずっと”彼女”は眠っている。
今のボクは彼女の墓守でしかない。
「だから、闇ファイターとは戦えなくて……」
「そうか。まあひょっこりなにかで目を覚ますかもしれねえからあまり決めつけるな」
「はい」
ユウキちゃんとサレンちゃんの視線を感じながら、ボクは笑って誤魔化した。
奇跡なんて信じないほうが楽なのに。
「……話がずれたな。で、レガシーのことだが……もってりゃあ闇のカードとは戦える。がレガシーカードの所有者は奴らに狙われる定めにある」
そういって師範が目を向けたのは、横に座ってジュースを吸っていたマリカちゃんだった。
「マリカもレガシーカードもちだ」
「! 彼女も?」
「ああ、
「師範の……あの”秘虎”デッキを?」
星座の42位。
順位戦なんて殆ど出なかったから故に順位こそ星座でも中間に位置すれども、ファイトでは圧倒的な勝率。
かつては12聖座の一人として君臨し、後進のために座を降りた師範のデッキ。
それには当然レガシーカードも含まれていた。
「わしは老いた。命を燃やしてレガシーにくべながらやりあうファイトにはな……
「ししょーはそんなこといってぇ、にいをボコボコにするのは楽しんでる。弟子さんたちももっと手加減してくれってぇ」
「ああん? 老いぼれ一人に勝てねえ連中が悪いだろ」
「それはそぅ」
一見すると祖父と孫娘の和やかな会話だけど、これが親子っていうんだからなんかおかしい。
深く考えたらだめなんだと思うけど。
「あの……命衣流って、必要なの?」
「うん。レガシー持ちのチビスケか、お前さん補助具なしで纏ったんだったか」
「そう。ユウキは自力で纏った。えらい」
「そいつは大したもんだ。うちのマリカもまだ出来ねえぞ」
「すごぃ~」
「えへへ……なんかありがとう?」
褒められて、照れるユウキちゃんは可愛い。
「じゃなくて! あの、命衣流って本当にいるんですか?」
「うん?」
なんでそんなことを聞くんだって首を傾げる師範。
「あれって、すごい破廉恥だったんですけど!!! しなきゃだめなのかなぁ!?」
あ~~~~。
「ユウキ。命と恥、どっちが大事? 当然命」
「どっちも大事だよ! おざなりにしていいもんじゃないんだよ! 優先度があるからって捨てていいわけじゃないんだから」
「む。確かに」
命衣流は、うん、そうね。
あまり気にしてなかったけど、ボクのも見た目結構アレだっなぁ。
今だとうん、ちょっと着たくないかも。
「カッカッカ、なんだ。おチビちゃん、そんなに助平な様相だったんか? いっぺん見てみてえもんだな」
「見せないよ!?」
「カカ、そりゃあ残念――だが、闇と戦う限りは避けられないことだぜ」
トンと、師範の指がテーブルを叩く。
あ。やば――
「「!?」」
2人分の崩れる音がする。
ボクは下腹に力を入れて、堪えた。
あ、すごい。マリカちゃんも耐えてる。
「気雲流・盤撃ち。これは大気すなわち”太氣”を通じて”意”を伝える。空気を読む、気配を感じる、空気という伝導物質を通じて他者の身体を縛り、そこから精神すらも捻じ曲げる。言語、舌からの水氣ならば言霊術と呼ぶ」
「ッ……くっ」
「おお、もう嬢ちゃんは解いたか」
サレンちゃんが崩れた姿勢から立ち直り、構えたのを見て師範がケラケラと笑う。
パンと手を叩く。
それでユウキちゃんもふらっと身体が動くようになって。
「闇のカードもこれと同じ原理だ」
「……げん、り?」
「そうだ。闇のカードは大気じゃなくてそれに交じる瘴気、負の感情を触媒に相手を支配する。とりわけ精神をな、これを防ぐには幾つか手段はあるが大まかに三つ」
指が三本立てられる。
「一つ。瘴気を跳ね除けるほどの力、率直に言えばレガシーカードだな」
一本目の指が折られる。
「二つ。支配された精神を立ち直させる、刺激や介入をする精霊の介助」
二本目の指が折られる。
「三つ。干渉されてもなお折れない、相手の支配ではなく自分の意思と肉体を維持する
三本目の指が折り、師範は丸められた拳を顎に当てた。
「闇のカードも馬鹿じゃない。これを通すためにファイトっていう手段を通す、抵抗するための活力を削り倒す闇のファイトってやつだ。闇との戦いは如何を心を摘み取るかっていう戦いなんだよ」
「心を摘み取る戦い……」
「そうだ。真剣勝負のファイトってのはお互いのライフ……生命力をかけた燃やし合いであり、これに負けると多かれ少なかれ勝者に対して心が屈服しちまう。負けを認める、どんな捻くれ者でも勝者に従うのはそういう理屈だ」
「そうだったの?」
「ん、そう。フリプならともかく、真剣なボードを使ったファイトで負けたらガックリくるのでしょ」
「なんとなくわかってることだから一々明言とかはされてないんだけどね」
だからこそ契約の条件として認められていることではある。
真剣勝負のファイトはただのゲームじゃない。
お互いの
「んで、これに対して闇のファイトはリアルダメージ。実体化した干渉に加えて、より強化されたマインドダメージが来る。経験はあるか?」
「うん……闇のファイトだとライフを減らされるだけで辛くて、クリーチャーからのダメージだと怪我とかもしてた」
「ちゃちな奴ならくっそ痛いだけで済むが最上級の闇カードが相手なら二点程度でも手足がちぎれることがある。おチビちゃんが命衣流なしで生きてたんなら、そこの精霊が守ってくれたんだろ」
「うん、アリーシャと……レガシーカードが守ってくれてたみたいで」
「大事にしとけ。文字通り命綱だからよ」
「うん」
素直に頷くユウキちゃん。
それにしても本当に危ない経験をしたんだなって今更ハラハラする。
なんの訓練も覚悟もしていない一般人が闇ファイトなんてするもんじゃないと実感する。
あれ? そう考えると、フツオくんなんで無事なんだろう。
人工の命衣流とかあの時着てなかった、よね?
「以上、三つの対抗手段はあるわけなんだがぶっちゃけこれだけじゃあ闇のカード、
「対抗手段……」
「そうだ。闇の領域からの干渉を遮断するからダメージも軽減するし、共鳴力を維持するどころか上げる効果もある。付けない理由がねえ」
「うぅ、あのデザインはどうにからならないの? そう、こうヒーローみたいなの!」
「無理だ」
「なんで?!」
「いや、わしがお前さんの命衣流を見たわけじゃねえから断言は出来ねえが……」
困ったように、師範は顎を撫でて言った。
「命衣流ってのは合一するレガシーカードの力となにより
「えっ」
あ。
「誰が決めたっていえば、ファイターの無意識とか美的センスじゃねえか?」
言ってしまった。
「ぐえ」
「ユウキちゃん……!」
ユウキちゃんがソファーから崩れ落ちそうなのを慌ててサレンちゃんと一緒に支える。
「大丈夫だよ、ユウキ。あの命衣流はかなりえっちだったけど、かっこよさもあったから」
「ぐえー!」
「サレンちゃん、それ追撃ぃ!」
「まあ私はこの
「きえー!」
「コートを引っ張らないで」
「ああ、喧嘩はだめ! 人前、人前だから!!」
奇声を上げてサレンちゃんのコートを奪おうとするユウキちゃんを必死で止めた。
他所で暴れるのはやめてー!
恥ずかしいから!
「ふむ、悪くなさそうな奴だが人工命衣流だといずれ限界がくるぞ。闇と戦うつもりならいずれレガシーカードは必要だ」
「手に入るならとっくに手に入れてる、ないならないなりで工夫するだけ。カードは使い方次第だから」
「……へ、最近は流行ってんのかねぇ。負け惜しみじゃねえ奴が」
「すみません、師範。この子元気な子で……」
「かまわねえさ。それぐらいのほうが将来に期待出来るってもんだ……んで、おチビ」
「なんですかぁ!」
「これをやるよ」
「はい?」
師範が放り投げたものを、ユウキちゃんが受け止める。
それは金色の腕輪で……あ、これって。
「なにこれ」
「命衣流の補助具だ。自前で展開したことがあるっていうならそいつさえあれば命衣流もいずれ自力出来んだろ」
「いずれなんだ」
「そりゃあな、道具さえあれば誰でも出来るっていうなら苦労はしねえ。多少は訓練がいる――マリカ」
「はーぃ」
それまで黙ってたマリカちゃんが口を開いた。
やっぱりどことなく喋り方に特徴があるなぁ、この子。
「やり方はセトも憶えてるだろうが、基礎だけでもここで習っていけ。マリカが教える」
「この人がですか?」
「そうだ。まだガキだが、筋はいいぞ」
「よろしくねぇ」
「ユウキちゃん、ここで教われるなら教わったほうがいいよ。特にその補助具は大事にしないといけないし」
「強くなれるならなりたいですけど、これってそんなすごいものなんですか? 金ピカですけど」
「純金と特殊な金属の合金と、特殊な加工を施してるから一つ辺り1千万ぐらいするよ」
ボクが現役だった時も教会から与えられてた補助具はもうちょっと高かったかな。
あれはロザリオタイプで胸から下げるものだったし、値段の付けられないものだったけど。
引退すると同時に返してしまったんだよなぁ。
あれさえあればプロフェッサー相手にももう少しまともに戦えたかもしれない。
「すうせ」
「私の着てる人工命衣流だけでも数百万はかかった。まあこれは軽量化とか、精霊対策の護符とか諸々組み込んでたからだけど」
「あいええええ。だ、だだ大丈夫!? 私、お母さんにお願いしても弁償とかむり、むりぃなんだけど!」
「そのうち慣れるから大丈夫」
「慣れないよ! 慣れたらおしまいだと思う!」
「そんなこといったらユウキの持ってるレガシーカード、性能から考えて値段は多分」「あーあーあー! 聞きたくない! 聞きたくない! 言わないで!」「だいじにぃ、使えば大丈夫だよぉ」
「まったく騒がしいもんだ」
「まあまあ。まだ子どもたちですから」
呆れたような師範の言葉に、ボクは苦笑する。
わーわーと騒ぐユウキちゃん、それに楽しそうな雰囲気のサレンちゃんに、キョロキョロと見比べるマリカちゃん。
年齢も別々の三人だけど仲良くなれたらいいな。
「んで、セト。」
「はい?」
呼びかけられて振り向き、目に入ったものを咄嗟に受け止めた。
それは緋色の金属をした……ヘアピンのような髪留めだった。
まさかこれって。
補助具だ。
「師範、ボクはレガシーを」
「そんな隠した目でいつか起きた奴と向き合うつもりか?」
ボクの右目。
あの日からずっと
「いいから取っとけ、わしからのプレゼントだ、美人には優しくする主義でな」
「ボク、本命いるんで師範になびくつもりありませんよ?」
こうやって気配りと一緒にプレゼントをするのが師範の手口なのだ。
昔あった師範の奥さんが惚気混じりにいってた! 危ない!
「カッカッカ、なんだ。ようやく春が来たのかよ、ならいずれ紹介しろよ。年の功だ、仲人ぐらいならやってやる」
しまった藪蛇だった。
ごめんね、フツオくん。
そんな事を考えていた時だった。
グルンと師範の向きが変わった、一拍遅れてマリカちゃんも同じ向きになる。
「ん?」
「え?」
ボクとユウキちゃんが戸惑って、サレンちゃんだけコートを羽織り直した。
その矢先に廊下からどたどたと足音が聞こえてきた。いつか聞いた話だけど、ここの廊下はわざと足音を響かせてやすく、しなるように作られているらしい。
音を立てないならば相応の訓練か、天井、壁などの梁を伝って通っていけと。
「どうした」
廊下から現れた道着姿の青年。
それと同時に師範が声をかけて、少し驚いた顔を浮かべる。
知らない顔だけど、ここの門下生なんだろう彼が少し息を吸ってから叫んだ。
「殴り込みです、師範! ”
「――”秘虎”を寄越せと!」
死ぬ気??
ボクはボキボキと指を鳴らし始めた師範達を見てそう思った。
過去には振り向けても、足は未来に進むのだ
今に止まるには死ぬしかない
――死ねずのラザ=ウェイ