第277話 首謀者としての立花

―立花視点―


 今後のことを弁護士と面会して話をしていた。

 逆送。つまり、私は大人と同じ条件で裁かれる。そして、こうなってしまった以上は、実刑の可能性が高いらしい。


 その説明を聞いて、私は弁護士をにらみつけた。

「ご両親も相当心配している。私もできることなら何でもするから」

 弁護士は、こちらが不機嫌な様子を見て困っているように見えた。

 こんな状況で、そんなことを言われても、何の慰めにもならない。


 屈辱的な事実は、私が収監されるということ。なぜ、こうなった。計画は完ぺきだったはずなのに。ありえない、ありえない、ありえない。


 もともとは、近藤君が暴走したのが悪い。なぜ、暴力を振るうようなわかりやすい行動をしたのか。あのサッカーバカの理性を甘く見ていた。さすがに、証拠は残らないようにうまくやればいいのに、監視カメラも多い繁華街のど真ん中で……さらに、スマホも……あのデータが消えていたら、私は捕まることがなかった。


 なんで、私はあんな男を選んでしまったんだろう。


「不服申立てをしてよ。できるでしょ、そういうの⁉」

 絶叫が響く。だが、弁護士は首を横に振るだけだった。


「無理だよ。この状況では不服申し立ては認められない。裁判の中で反論していくしかない」

 つまり、私は裁判にかけられるのが確定しているということ。その事実だけで震えるほど屈辱だった。私が誰かに裁かれる。そんなこと許さない。


「いやよ。どうせ、聞き入れられないでしょう。なんで、私の将来はどうなるのよ。あんたが適当な仕事をしているからでしょう。普通は逆送なんてことにはならないはず。今回の事件の実質的な加害者は近藤君と天田美雪とサッカー部じゃない‼ どうして、私が一番重い罪を背負わないといけないのよ」

 そう言うと弁護士は目を閉じて重い口を開いていく。


「やはり、キミの犯行の手口がかなりまずかったようだ。匿名性の高いSNSを使っての犯行指示。その手口はまるで闇バイトの指示役だ。警察も裁判官も相当心証が悪い。たしかに、キミは直接的な暴力は振るっていない。だが、キミがいなければこの事件はここまで大きくならなかった」


「でも……」


「無理だよ。近藤君やサッカー部の面々は直接的な暴力を振るったりもしている。だから、暴行や傷害の責任はあるだろう。天田美雪については、事件の発端として倫理や民事的な責任はかなり重いだろうが……刑事事件的には名誉毀損についての一部の関与だ。キミほどの働きはしていない。キミは自分のしたことを過小に低く見積もりすぎている」

 こいつは何を言っているの。私の味方じゃないの?

 そういう憤りによって、思わず机をたたいてしまった。

 でも弁護士は驚く様子もなく淡々と伝えてくる。


「だが、キミは間違いなく、近藤君が起こした名誉毀損や学校で起きた器物破損、そして、青野英治や池延エリに対する暴行や傷害にかかわっている。直接的な関与はなくても、どう考えてみ指揮官的な立場で事件を主導した首謀者だ。それに、証拠隠滅をする意思や高い計画性を有している……」

 

「私に無条件で降伏しろっていうの? あんたの無能のせいで、私の人生が……」


「さすがに依頼人だからと言っても言葉が過ぎるよ。キミが人生を自分から壊したんじゃないか。青野君や池延さんにしたように……」

 その言葉を聞いて、私は世界が崩れるような音が聞こえたような気がした。

 弁護士は面会を終えて、部屋から出ていこうとする。


「ねぇ、青野英治の選考はどうなっているの?」

 発せられた言葉は自分でも驚く内容だった。

 弁護士は思わず目を見開いて冷笑気味に言う。


「そこまでとはね。まだ、結果は出ていないと思うよ。今度の面会の時に結果が出ていたら、雑誌を持ってくるよ」

 そんなことを言われる自分が惨めで余計に泣きそうだった。


――――

(作者)


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