第271話 新しい日常と父親としての思い
―宇垣視点―
そのあとは、少しドライブして英治君と一緒にカフェに入った。
私はルイボスティーを頼む。英治君には付き合ってもらったお礼に甘いものと飲み物を奢る。黒井には別の席で待機してもらっていた。
「おじさん、やっぱり健康に気を使っていますね」
「もちろんだよ。愛にも医者にも刺激物はよくないと言われているからね。ノンカフェインだと飲めるものもなかなかなくてね。最近はどこでもルイボスティーがあるから助かっている。ブームなんだろう?」
減塩は愛がかなり頑張ってくれている。もちろん、英治君たちにも助けてもらっているからな。さすがにそれを裏切るようなまねはできない。
「うちにも導入しようかなって話もありますね」
「そうか。それなら嬉しいな」
「おじさんがいつ来てもいいように、兄さんは減塩レシピを研究中だから。昨日は減塩グラタンのレシピを完成させていたよ。味見したけど美味しかった。たぶん、あれはドリアにしても美味しいと思う」
そう言われて、胸が思わず熱くなった。あんなに小さかった兄弟がここまで大きくなったんだな。
「それは楽しみだ。愛と一緒に行くよ。ドライブできるくらいには回復しているからね」
もちろん、まだ入院する前の体力には戻れていない。いや、おそらく昔に戻るのは無理だろう。だが、日常生活に影響があるほどではない。それに、医者からも激しい運動は禁止だけど、できる限り歩いてと言われている。
「うん。約束だよ。みんな、楽しみにしているからさ」
そう言って、久しぶりにゆっくり男同士の会話を楽しんだ。いつもは愛と一緒だから簡単にしか会話できていない。こういうことができるのは嬉しいな。まるで、息子が増えたみたいだ。いや、将来的にはきっと息子になるのだろうが……
それなら、お前に娘をやらんくらいは言うべきかなと思いつつ、そんなことは口が裂けても言えないと笑ってしまう。英治君は不思議そうに笑っていたがごまかした。
むしろ、彼が愛の近くにいてくれることが嬉しいのだから。
きちんと話そうとしていたのはそれだ。愛のことを頼むとしっかり伝えようと思っていた。だが、それを言うのはまだ早いなと思い直した。大人が若い二人の人生を縛るのはエゴだ。それにそんなことを言ったら「当たり前です」と断言されるだろう。
それほどまでに、二人の関係は固く結ばれている。瞳も喜んだろうな。
伝えようとしていた言葉は、婚約の前まで取っておこう。幸せな気持ちになりながらルイボスティーを口に含んだ。
※
「ただいま」
部屋に帰ると愛が料理を作ってくれていた。おいしそうな香りだ。
「おかえりなさい。もうすぐご飯できるよ」
「何を作ってくれているんだい?」
「減塩のナスのミートソースパスタと温野菜。センパイのお兄さんからもらった胡麻ドレッシングと一緒に食べようと思って」
本当に自分は恵まれているな。そう思うと笑ってしまう。
「今日見る映画は決まったか?」
こちらの問いに愛は嬉しそうに答えた。
「うん。『リバー流れないでよ』っていう映画だよ」
やっぱりなと思って、私は微笑を浮かべた。
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