第268話 部長の・・・

 私の少年審判の日がやってきた。

 ほぼ想定問答と同じように粛々と今回の事件の内容の確認が行われた。

 近藤君と同じようなバカなことはしないように嘘偽りなく答える。そして、形ばかりの反省の言葉を述べた。


 大丈夫。私は未成年だから、重い罪に問われることはない。それに一番問題になるはずの池延エリだって軽傷だったわけだし……それも考慮されるはず。だから、大丈夫。


 しばらく待機の後に、女性の中年裁判官が帰ってきて私の方を力強く見つめた。そこには力強い覚悟のようなものが見えたような気がした。嫌な予感がする。


「立花さん。あなたの処分が決定しました。今回の傷害事件の教唆犯きょうさはんとして、あなたは事件の主導的な立場でした。さらに、池延エリさんへの襲撃事件は、青野英治くんへの数々の嫌がらせや犯罪行為の証拠を隠すために行われた非常に計画的な犯行だったと言わざるを得ません」

 淡々と理由が述べられていく。嫌な予感が強くなる。ちょっと待ってよ。そんなわけがないじゃない。さすがにそんなこと……私は未成年なのよ⁉


「18歳という年齢も考慮しても、今回の事件はやはり悪質です。そもそもいくら未成年とはいえ、あなたはもうすでに成人と変わらないくらいの分別ふんべつはついているはずなのに、自分の身を守るために隠ぺいまで行った。さらに連絡は別の人間を使い、情報共有においてはそれを秘匿させやすい海外製のSNSを活用している。これはまさに計画性があり、自分が犯罪をしているという自覚があったはずです。私たちはこれを受け止め厳粛に処罰を行わなければならないと考えました」

 これじゃあ、まるで私が裁かれているようじゃない。それも……本当の罪人として。


「よって、あなたを検察官送致といたします。わかりやすくいえば、あなたはこの事件に対して成人と同じように裁判を受けるということです。よろしいですね」

 冷たくも力強い言葉に一瞬気おされながらも、私は異議を唱える。


「私は未成年なのに……こんな判決は認められない」

 そう言うと、目の前の裁判官は大きなため息をついた。


「残念です。やはり、形ばかりの反省の言葉だったんですね。いいですか、立花さん。未成年というだけで罪に問われないわけがない。あなたはそれほど悪質な犯罪に手を染めてしまったんですよ」

 私の言葉を完全に否定して、彼女は席を立つ。私はぼうぜんとその場に座り込んだまま動くことはできなかった。このままでは、前科がついてしまう……そんなの嫌だ。


―――

(作者)

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