第267話 不安定

―立花視点―


 私は弁護士との面会を行っていた。

「近藤君が少年院送致になったの⁉ なんで、そうなる見込みは少ないって、あなた言っていたじゃない」

 私は思わず激高してしまう。思った以上に大きな声になってしまう。


「そうだね。まさか、完全に無罪を主張して反省もなく虚偽の発言を繰り返すなんて普通は思わないじゃないか」

 若い弁護士は逆ギレのように声を荒げていた。


「じゃあ、私はどうなるのよ……」


「わからないね。こういうの実際になってみないと……」


「そんな無責任なことを⁉」

 また、私は大きな声を出してしまう。このまま、自分がどうなるかわからない状況が続いているせいで精神が不安定になっている。


「そもそも、キミがこんな事件を起こさなかったならそんなことにはなっていないんだよ。無責任なのは過去の自分だろ」


「そんなことはわかっているわ‼ それをどうにかするのがあんたの仕事でしょ」

 もう止めることはできなくなる。


「そうは言われてもね……」


「なら、対策を考えてよ。たとえば、精神の衰弱で責任なしとするとか、いろいろ方法があるでしょ。学校は退学になるはずだし、このままじゃ経歴の汚点になることは間違いないじゃない……」

 そう叫んで沈黙が部屋を包んだ。

 そして、若い男の弁護士は大きなため息をついた。


「これだから、世間知らずの学生の相手は疲れる」


「はぁ⁉」

 暴言に思わず立ち上がるも、私が何かすることはできない。


「いいかい、落ち着いて。キミは世間知らずなんだよ。たしかに、精神障害によって刑事責任が免除になることはあるよ。でも、それは専門家が認めないといけない。そして、それを乗り越えてもまだ大変だよ」


「なにが‼」


「無罪になったとして、キミはそのまま自由になれると思うのかい?」


「えっ……違うの……」

 なにかが壊れる音がする。


「そんなわけないじゃないか。精神障害が原因で犯罪を起こしてしまったんだから、まずは治療が行われなくてはいけない。無罪の判決の後に、そのまま病院に入院させられるんだよ。寛解までね」


「……それって……」


「具体的な期間が定められる懲役刑よりも、いつまでも自分が病院に閉じ込められるかわからないからね。それも相当大変だよ。いい加減に学んでください。いつまでも、自分が世界の中心にいるなんて思われてもね……きみは、自分のしてしまったことに対しての責任を取らなくちゃいけないんだよ。それに本当に病気で苦しんでいる人たちにとっても、今の発言は冒涜だ」

 私は言い逃れができない冷たい空気を突きつけられた。

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