第256話 ゆみの後悔
―ゆみ視点―
今日は、一樹とデートだ。
彼のおすすめしてくれたインド映画を見ている。
一樹は頭がいいから、難しい映画じゃないかなと少し不安だった。特にインド映画って見たことがなかったから……私は映画を見ると言っても、話題の映画やアニメとかで、こういう本格的なものを見たことがないから。
インド映画っていきなり急に踊りだすんだよね?
あとすごく長いやつ。
でも、この映画は2時間半らしい。最近はハリウッドの有名作も長くなっているというのは何となく知っていたから、思ったよりも短くてびっくりした。
そして、映画が始まると、いきなり映し出された美しい自然の映像に圧倒された。インドってカレーくらいの印象しかないけど、こんなに美しい自然があるんだと……
美しい自然の映像からすぐに物語に没入していった。自分のことを顧みずに、優しさを貫き通している主人公がまぶしかった。
あの時、私はどうすればよかったんだろう。たぶん、私は間違えた。自分の気持ちを隠して、一樹とエリの仲を応援してしまったこと。それでも、関係を大事にするために、身を引くこともしなかったこと。
エリがあんなことになってしまって、ボロボロになった一樹を支えるのは自分しかいないと過信した。そして、一樹がどうしてほしいかも知らないで、うかつに心の中に土足で踏み込んでしまった。
たぶん、あの時はただ時間が必要だっただけなのに。私は彼を信じ切ることはできなかった。塞ぎこんで、受験もできなかった一樹を見て、本来は寄り添うべきだった自分が焦ってしまった。
「(あの時の私は弱かった。弱いから焦ってしまった)」
だからこそ、今の状況は幸せでしかない。
本当は自分からもっと早く一樹に会いに行けばよかった。彼はたぶん、受け入れてくれたはずなのに。あの時の拒絶が、私を臆病にさせて踏み出せなかった。彼にとって一番支えが欲しかった時に、私は彼を一人にさせてしまった。
あの時の優しさは、たぶん自己満足でしかなかった。
だからこそ、だからこそ……
私は、今のこの一瞬を大事にしたい。
一樹に対する後悔はたくさんある。でも、もうそれは取り返しがつかない。なら、私たちは一緒に前に進むしかない。あの後悔を取り戻すためには、幸せになるしかないから。
私は勇気を出して、彼の手に少し触れた。それは合図だ。手をつなぎたいという。
彼は不思議そうな顔で、こちらを見ている。
「手を握って」と目で訴えた。
彼はそれを察してくれて、優しく手を握ってくれた。
ずっと望んでいた新しい関係がやっと始まった。
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