とある自治体の標準化の前中後
はじめに
令和8年度の予算の作成が終わり、それにより見えてきた今後の弊自治体の現状・問題・課題をここに記録します。記録して公開しないと、標準化は何事もなく順調に進んでいると勘違いされても、全国自治体のためになりませんですし。おすし。
あくまで、小規模の幣自治体の状況ですので、政令市等ではこんなことになっていないかもしれません。まあ大変そうだなくらいに見てくれればいいかと思います。どのみちここに書いたところで、何も変わらないと思いますしね!
何かあった時の記録として。
標準化前
標準化までは正直平和でした。法改正の度に改修が入ることはありましたが、ぶっちゃけうちの職員は地場ベンダに任せていたので、特に事務に支障が出ることはありませんでした。強いて言うなら、地場ベンダ任せで、自分たちでは何も考えてなかったくらいです。
ベンダロックインについても、課題ではあると認識しつつも、問題であるとは思っていません。住民に影響しない、例えば内部のシステムは、僕が来る前も随契でやっていましたが、競争するようにしました。しかしながら、住民直結のシステムはそうやすやすと変えられないですし、変えるメリットもなかったからです。もちろん、どこかのタイミングでもっとよいシステムが出て、競争ができればいいなあとは思っていました。
時を同じくして、幣自治体と周辺自治体では、「自治体クラウド」のプロジェクト(協議会)が進んでいました。ただ、この時の自治体クラウドは、同じシステムメーカのシステムを使う自治体が集まったものではなく、ただ近隣自治体が集まったもので、特にうちは少数派のシステム側だったので、大変なことになるなあ~とは思っていました。
そんな矢先に、自治体情報システム標準化という話が出てきました。
この話に協議会でも、「今自治体クラウドを進めるのは、手戻りも含めヤバくね?」となり、協議会は解散、少数派の自治体であるぼくは、少しほっと胸をなでおろしました。
標準化中
標準化ジャーニー初期
令和のクラウドとか乗り合いバスとか、不穏な言葉が飛び交う中、自治体職員の「自治体職員の学習コスト云々」という質問に対し、「皆さんも地場ベンダのクラウド使ってるのに、それを知らないのはおかしい」といったニュアンスの発言をされているのを今でも覚えています。
それなりの規模の自治体なら、専門の課室があるでしょう。専属で人員を付けることも可能かと思います。当時一人情シスであった当方は、政令市の専属職員に負けたくねえなあと思ったことを覚えています。(特に同じ県下の政令市には!)
当時のガバメントクラウドへの接続回線がバカ高ったのもありますし、ガバメントクラウドに移行したくなかった僕は、地場ベンダさんになんとか、自DCがガバクラ準拠できる方向はないかと相談しましたが、「要件を満たす投資を回収できない」ということで、泣く泣くガバメントクラウドへ移行せざるを得なくなりました。正直なところ、地場ベンダDCに主データ、庁舎にDBをリアルタイム同期を取っており、年に1回あるかないかの障害でも、住民さんを帰すことなく事業を継続できていました。というか、銀行じゃあるまいし、リアルタイムのDB同期ですら過剰投資と考えていました。
令和3年の頃になると、庁内の誰も分からない事業に、さすがに一人じゃ無理と思い、なんとか情報を集めるべく、旧Twitterで自治体職員を検索するようになりました。共創PFがなかった時だったかと思います。ここから今でこそ有名な自治体職員さんとたくさん繋がることができましたし、標準化にかかわる事業さんや有識者さんとも情報交換をすることができました。
そんなこんなで、いい情報も悪い情報も集まるようになり、ありがたいことにオフラインでも本当によくしていただき、困ってるのはウチだけじゃないことが、本当に心の支えとなりました。
標準化ジャーニー中期
先行自治体や政令市の進んでる層から、ヤバい情報や移行困難(現特定移行支援)の話が出てくるようになり、界隈の外からの有識者からも指摘がされるようになりました。
共創PF内でもギスギスし始めたものこの頃でしょうか。補助金上限額の説明会でもチャット欄が荒れたりと、泥沼になっていってる気がしました。特に奈良県H町の悲痛な叫びは今でも覚えています。
僕はこの頃に共創PFから離れました。Xのフォロワーさんで十分情報が得られたのもありますが、国・地方双方がギスギスしていることが垣間見える場所にストレスを感じていたからです。(戻った今でも標準化スレとガバクラスレはなるべく見ないようにしていますが!)
移行困難となった自治体が注目を浴びる一方、界隈は「この段階で移行困難と判断できるのはちゃんと管理ができている証拠」と絶賛されていました。本当にその通りでありますし、Nの弊社はベンダからも特に遅れの話がなかったため、高みの見物である一方、正直不安ではありました。
庁内に目を向けてみますと、まだ情シスのみが状況を理解している状況で、準拠外システムの所管課は何も分かっていませんでした。ただ、時期が時期ですので、ここはまだ特に問題にはなりませんでした。唯一怪しかったのは、令和7年度の予算策定時期にもなって、「標準化って何ですか?」「標準仕様書の場所ってどこにあるんですか?」と言ってたシステムの営業とそのメーカ担当さんくらいです。担当課の担当者に代わり、よくメールで注意をしたものです。
上司も酷いものでした。標準化対応期間中に所属長から様々な名言を言われたものです。目標管理面談で、標準化の対応難易度を高めにつけてたのにも関わらず、かなり下げられた時には「標準化?システムの切替でしょ?」とか、議会の質疑応答に、「CSPは競争で決定します」とか「AWSの読み方は分かりませんが..」発言する、令和7年度になっても「標準化って何業務なの?」とか。
上司がまったく悪いとも思っていません。今までIT人材を育成・教育してこなかったこの組織が悪いと思っています。
もし自治体関係者以外がこのnoteを読んでいたら、「情シスの所属長(課長)が、OSって何?」と言っちゃうのが、日本の小規模自治体の実態ということを認識しておいてください。そのレベルの組織が、自前でAWSといったCSPの利用・運用を行おうとしているということを。
さあ、中期にもなると、そこそこの精度でランニングコストが試算できるようになります。弊社でも現行より数倍になることは確定しました。ただ、この段階では、財政部含め、誰も問題視してくれませんでした。
標準化ジャーニー終期
さあ、標準化移行年度になりました。ここでまさかの人員減です。しかも、僕はこのときβ移行の大きいプロジェクトも並行していました。一体どうなっているんだと。ただ、周辺自治体はもっと過酷でした。田舎自治体ともなると、情シスのメンバはいつも変わらない顔でした。が、この令和7年度は違いました。「あの人退職するの?」「この度標準化を外れました」などなど、今までにない報告を受けるようになりました。国が地方の人事に口を挟めないのは当然ですが、この状況をすげえなと感じました。一方、これが自治体の非情シス部門の現状であると痛感しました。組織をパズルのように考えてんじゃないぞと。
とまあ人員の方は今更標準化の事を知らない職員が来てもしょうがないと諦めまして、淡々と進めていくことにしました。
ここら辺から、準拠外システムの担当者にも補助金やら移行に関し、圧をかけ始めたので、急ピッチで物事が進むようになりました。
情シス管轄外の戸籍等のベンダや準拠外のシステムベンダから飛んでくるヒアリングシートを右から左に横流しするだけの担当課からの依頼ラッシュです。これから自担当分ですら怪しいのに、これらを捌かなければなりませんでした。そして大体は、事業者間の連携で認識齟齬が異なったり、ヒアリングしてきたのにも関わらず、「お示しの方式は対応していませんので、この方法でお願いします」等のめんどくさいやり取りに付き合わされました。こんなこと片手間でやらすなよと。
いろんなトラブルも発生しました。運用管理補助者のVPCの情報の伝達ミスにより、他事業者がすでに構築済みの環境を再構築しなければならなくなり、余計なコストが発生しました。
某戸籍ベンダの提示するネットワークのセグメントがもろ被りし、この標準化を機に綺麗にすべく、こちらからネットワークの構成を提示しても「工数が足りない」。何度メールのやり取りしても、「工数が足りない」「工数が足りない」「工数が足りない」「工数が足りない」「工数が足りない」「工数が足りない」「工数が足りない」「工数が足りない」「工数が足りない」「工数が足りない」。また、標準化を機にこのベンダの契約を一つ辞めたのですが、露骨に態度が悪くなったりと。
そのほか、準拠外ベンダのミスで、必要なライセンス、テスト環境のDC利用料を契約に含めていなかった事案。これはよくある事かと思いますが、ここにかかる経費を令和8年度のランニングコストにこっそり上乗せしようとしたり。
この標準化で事業者さんにはリスペクトでしかない一方、ウチの担当する事業者はなんでこんな酷いんだと悩まされています。やっぱり小規模自治体だからですかね?
とまあ、移行を目前に控え、同じシステムを利用している自治体の移行状況や不具合状況が耳に入るようになり、不安でしかありません。移行していい未来が見えるのであれば、多少の苦労は別にいいと思っています。いい経験にもなりますしね。
しかしながらこの時期になってようやく財政部から指摘が入ります。「標準化によってランニングコストはどうなるんだ」とか「当初の3割減からどうしてこんなにかけ離れたのか?」とか。ようやくです。3,4年経って具体的な数字が見え始めてようやくです。
ここら辺になると、僕ももう開き直っています。「責任取れというならいつでも辞めます。」最近はこんな気持ちで仕事をしています。実際、ランニングコストめっちゃ増えてますしね。
幸い、年末年始に移行ではないので、年明けのニュースを高みの見物できます。年末年始に移行する自治体と事業者さんほんと生きて帰ってきてください。
唯一の心の救いは、やはり界隈のつよつよ自治体職員さん、事業者さんや外部有識者さんとの繋がりです。今のところ標準化で得られた唯一の成果じゃないでしょうか。D庁さんさすが!
標準化後
さあここからは予測も含めた所感です。まず、経過措置対象の機能がありますので、令和8年度もまだ標準化が残ります。
ステークホルダや業務増による自治体職員の業務増
運用管理補助者、ネットワーク運用管理補助者やガバメントクラウド接続の契約等、今まで存在しなかったり、1つになっていたものが、単純に増え・分裂しました。これに加え、月額のCSPへの支払い業務です。
標準化専門部署がどこにでもあると思っていたら分からないと思いますが、標準化のみで考えた増なら、なんとかなるレベルです。しかしながら、大抵の自治体はそれ以外にもシステムを抱えているため、年度末年度初めには、人事異動にかかる事務の他、契約事務を行っています。
ましてや昨今の自治体DXとか言って、いろんなものが導入されている中で、さらに契約事務の増は辛いものです。
人材確保
移行後も、まだまだ標準化やAWSの知識をアップデートし続けなければなりません。小規模自治体では、ITの知識を教育したくても、人事にその意識がない・予算もつかないんです。基本的な今までのIT知識に加え、AWSの知識が必要となります。これらの知識を持つ職員を小規模自治体でどうやって確保できるんでしょうか。
ぼくと同じポジションの後任も大変だと思います。予備知識なしで嵐の中の船に乗せられるようなもんです。いろんな職員と話す中で、冗談交じりに次このポジ座ってねと言っていますが、揃って「そこだけは絶対に嫌」と言われます。なんでよ(´・ω・`)
最近デジタル人材の確保とかの通知が来ますが、そもそもITで食っていく人間が、自治体なんて選ぶと思いますか?僕は選んで後悔していますよ。給料は安いし、話は通じないし、首長はコロコロ変わるし、国の動向で優先度が変わるし。もうねアホかとバカかと。一方、ある程度のIT知識があれば無双できますんで、安定を求める方にはおすすめです。異動がないように情報職を選んでください。事務職とか選ぶととんでもないことになります。
サービスの最適化
ガバメントクラウドの移行後も、最適化のためコスト監視をし続け、改善を提案しなければなりません。改善に対応経費を要求されたらどうしましょうか。もちろん自治体の単費ですよね。国は持ってくれると思えません。
そうなってきますと、自治体職員はこの仕事を行うのでしょうか。やる気のある職員ならまだしも、知識のない職員が異動で担当となったら、実施する未来が見えません。人事評価に生きるならやるんじゃないですかね。知らんけど。
さあ人事はどうでしょう。令和7年度末で標準化が終わっていると思うでしょう。人事リソースを割いてくれるでしょうか。
さあ財政はどうでしょうか。明確に対応コストと削減コストを明示して、コストメリットを示さないと予算はつかないでしょう。
このとき、リソースを変更することによる安定稼働とコストメリットを取ることができるか?ここら辺がポイントだと思います。
また、コストの分析もどのように行うかも早々に目途を付けなければならないと思います。GCASダッシュボードを待つのか、兵庫県洲本市さんのように自前で構築するのか。
コスト増による財政状況とDX
次年度からランニングコストが通年となり、令和8年度の予算にも反映させました。
すみません。正直新たな案件ができるような状況ではありません。具体的に書くと自治体がバレるので書きませんが、我々情シスの予算は、新規案件0,既存提供サービスを削っても昨年度比増、組織全体では数十億円の不足です。
絶望です。情シスに新規案件なければ存在意義を疑います。一応お金のかからないことをやるしかない(計画策定とか人材教育とか内部研修とか)と考えていますが、これで何のDXを推進するんですか?
もちろん財源不足は標準化だけが要因ではありません。不足額でいえばその一因になっているだけです。しかし、これはランニングコストなので毎年続きます。
正直、来年度のモチベーションを保てるか疑問です。今のところはさっさと自治体を離れた方が自分のためになるんじゃないかと思っています。突然姿を消したらゴメンね。
さいごに
本当にいろいろ書きました。すべてがD庁のせいにするつもりもないです。D庁の中にも本当に苦労されてる方、地方のためになんとかしようと奮起している方がいらっしゃいます。本当にありがとうございます。
ただ、ここに書かれているのは噓ではなく、n=1ではありながらも、マジな地方の叫びととらえてください。アドバイザーを派遣すれば大丈夫とか思わないでください。皆さんが思う以上に地方のITレベルは終わっています。何か困ったらAWSから来ている人に聞ける環境ではないのです。
この令和8年度の状況を意図していたのかは特に聞きませんが、令和8年度の予算を見て絶望しているのは事実です。自治体DXの推進どころか、撤退をしなければなりません。提供サービス(RPAや生成AI等)を廃止してもなお、前年度比増で財源不足なのです。提供サービスを廃止する身になったことありますか?今まで民間企業から社内SEとして働いてきた者として、これ以上のない悔しさはないです。
途中でも書きましたが、今では「いつでも辞めてやらぁ!」の精神でやっております。議会やら幹部から詰められようがこの気持ちでいますし、どう責任を取るんだと言われたら「あ、じゃあ今年度で辞めればいいっすか」って言ってしまいそうなくらい覚悟は決まっています。自治体の後の事はしらね。がんばってね。
ところでウチの自治体に入り込んで、全部やり取りをしてもらって3割減のモデルケースを作ってみます?w達成できれば宣伝しますよ!3割減できないのは地方のやり方が間違っていたんだ!と。ご連絡お待ちしておりますw



コメント