2026年あけましておめでとうございます
当ブログ読者の皆様、2026年新年あけましておめでとうございます。
昨年に引き続き年末年始9連休の大型休暇でございましたが、何だか趣味以外の作業が多過ぎて全く休んだ気がしないといった状況で、この年始の挨拶も遅れに遅れまして、もはや正月ではありませんね。申し訳ございません。
さて、当ブログをいつもご愛顧いただき、誠にありがとうございます。昨年ブログ開始から18年と申し上げていましたが、2008年スタートなので今年が18年目ですね。失礼いたしました。世の中すっかりAI文化が急速に普及し始めてまいりましたが、ブログというコンテンツは生き残るのでしょうか。もはやいっそのことAIに書かせたら良いのでは?とおっしゃる方もいるかもしれませんが、そうは問屋が下ろしませんよ。ペースはかなり落ちてまいりましたが、これからも手作業でレビューをしてまいりますのでご安心くださいませ。FC2が続けてくれればの話ですが・・・ともあれ、コツコツ積み上げてきたこのレビューの数々を何とか後世に残していけないだろうかと思いつつ、そのあたりはいつかAIかなんかで何とかできればと思う次第です。それ以前に何度も申し上げておりますが、このブログを見つけていただいたおかげで音楽活動を再開していただき名盤を生み出していただいている音楽家の皆様もいらっしゃるわけですから、イグナイター(火付け役)の筆者といたしましては、今後も継続は力なりの信念をもって書き続ける所存でございます。。
そんな火付け役といたしましては、昨年は当ブログのレビューを読んでいただいたことをきっかけに音楽活動を再開していただいたjellyfish TYOのトモコjellyfishさんとスノーモービルズの遠藤裕文さんが、Namiotoというユニットを結成いたしまして、配信シングル「Predawn Sky」をリリースされました。jellyfish TYOもスノーモービルズも90年代後半にCDリリースしていから数枚のアルバムをリリースするなど、インディーテクノポップ界では活動していたのにもかかわらず、当時は交わらなかったグループだったのですが、それぞれが本ブログのレビューをきっかけに音楽活動を数十年ぶりに再開した結果、筆者の仲介?によって交流が始まりユニットを結成されたという、なんとも夢のような話なのです。そのため別邸noteに特集記事も書かせていただきました。
「トモコjellyfishと遠藤裕文のコラボレーションNamiotoによるオリジナル楽曲「Predawn Sky」が配信開始!」
また、本ブログで1stアルバム「Get into Water」を10点満点としてレビューをいたしました90年代初頭の3人組エレクトロポップバンドSΛKΛNΛ(SAKANA)が約23年ぶりに再結成するということで、その再始動前のリハビリライブにヴォーカルの高橋聡さんからDMで招待メールをいただきました。本ブログレビューを読んでいただき大変喜んでいただいたということで、これは何としても行かなければと思い上京し、三山つねかずさんや大光ワタルさん、そしてマニピュレーター役の佐藤純之介教授ともお会いし、打ち上げにもお呼ばれして興味深いお話をお聞かせいただきました。さまざまな謎や奇妙な縁、今後につながる話もいろいろとあり、大変貴重な経験をさせていただきました。本当にいちブログの管理人が経験できることではないと思うのですが、2025年で1、2を争う嬉しい出来事でありました、SΛKΛNΛのメンバーの方々およびスタッフの皆様、その節は誠にありがとうございました。
また、別邸noteの特集記事として、2025年は2つの記事を書いております。音楽ランキング企画で有名なJMXさんのX上での企画「邦楽アルバムオールタイムベスト100in2024」にまたも年甲斐もなく参加しましたのすが、その記事を1年以上経過してもまだ書いている途中なのです。
邦楽アルバムランキングに再び性懲りもなく参加してみました:コンピレーション/サウンドトラック30枚【中編:20位〜11位】
邦楽アルバムランキングに再び性懲りもなく参加してみました:コンピレーション/サウンドトラック30枚【後編その1:10位〜6位】
前者が8万字にもなってしまい、後編は2回に分けました(その1は4万3千字)。その2は今年書き上げたいと思います。
そのほか、Xにて継続しているテクノポップ耳アカウントのレビューもサブスク解禁された作品を紹介しつつ、毎週土曜深夜に更新を続けております。昨年は宮村優子「大四喜」のポストが8万view超えの大バズりで怖くなりましたw
そのようなわけで、ものすごく前置きが長くなりましたが、年初め1回目恒例となっております、2025年TECHNOLOGY POPS的ベストアルバムの紹介です。毎年のように既に大晦日にX上では発表しておりますが、本ブログでの文章は毎年書き下ろししております。
2025年はラスト3ヶ月の追い込みがスゴくて、いろいろと悩みましたが、いつものことなのでとにかく唸りながら10枚選びました。
今年のランク付けは1位≒2位≒3位>4位≒5位>6位≒7位≒8位>9位≒10位>(11位〜13位)というレベル感です。
それでは、ベスト10です。(上から1位〜10位です)

ネビュラロマンス 後篇 (通常盤)
(2025/9/17)
Perfume
前年のレトロフューチャーコンセプトアルバム前篇に引き続きリリースされた完結編。とにかくシンセサイザーを弾きに弾きまくるサウンドデザインは、これぞまさしくテクノポップです。フレーズ1つ1つに生きたメロディが宿っていることに加えて、柔らかく温かみのある音色を多用したシンセサウンドが美しく、強烈タイトなスネアドラム、コクのあるシンセベース、手弾き感覚のシーケンスリフ、滲むようなパッド、情感豊かなソロプレイで聴き手を楽しませる仕上がりとなっています。Perfumeがテクノポップたるゆえんは、メジャーデビュー前の3枚のシングル「スウィートドーナッツ」「モノクロームエフェクト」「ビタミンドロップ」あたりのサウンドに起因すると考えてきましたが、メジャー進出以降はどちらかというとテクノではなくエレクトロで正直な話彼女たちのテクノポップ的な良さは失われていったと思っていました。しかしここに来てさらに進化したテクノ歌謡となって戻ってきた感があります。そして何よりもダンスばかりが取り上げられてきた彼女たちが朗々と歌い上げていることが素晴らしい。この「ネビュラロマンス」シリーズは彼女たちの歌を聴くことができ、さらにシンセサイザーの音色とフレージングを楽しむことができる、これぞテクノロジーポップスの真髄と言える完成度です。Perfumeは本作をもってコールドスリープということですが、「ネビュラロマンス」シリーズは彼女たちにとって最高傑作であることに間違いはなく、前作に続く本作が完成することによって2020年代に残る名盤となりました。文句なしの第1位です。

Sequential
(2025/11/1)
mojera
00年代を席巻した歌モノエレクトロポップユニットOVERROCKETにて絶大な信頼をおけるコンポーザーであり、スクエアエニックス関連のゲーム音楽家としての実績も豊富なクリエイターである鈴木光人が、ギタリストのnonと結成したエレクトロシューゲイズユニットがmojeraです。2020年に活動を開始して以来1stフルアルバム「overkill」も話題でしたが、いささかシューゲイズ寄りでnonのカラーにも配慮した仕上がりでしたが、2024年のミニシングル「arika ep」を挟んでリリースされた本作では、大胆にも日本語詞を中心としたポップな作風に転換してまいりました。OVERROCKETでいうところの「Mariner's Valley」から「POPMUSIC」に方向転換した印象とよく似ていて、歌モノとしての覚悟を決めた時の鈴木光人のポップセンスと瑞々しいコードワークの非凡さを見せつけられた格好となりました。ライブハウスでの臨場感のある録音や丹精込められたミキシング、そして随所で発揮されるフリーキーなギターワークも見事というほかなく、日本語での歌唱がnonのキャラクターを逆に前面に押し出すことに成功した結果、本作がデュオユニットとして一歩突き抜けたクオリティに到達したと思わせる作品であることを確信し、2025年第2位に選出させていただきました。

ナサリー
(2025/10/24)
無果汁団
2020年の「マドロム」、2021年の「うみねこゲイザー」、2023年の「ひなふトーン」とデビュー以来コンスタントにアルバムをリリースし続けているテクノロジーポップスユニットの4作目。まずはこれだけのハイクオリティな楽曲を次々と生み出しながら、それが枯渇することなく維持できていることに驚きを禁じ得ません。しかも本業の合間というセミプロ状態かつほぼ自主制作の環境の中で、ポップスというある種曖昧かつ複雑な構成を備える難解なジャンルを見事に成立させる手練手管の数々に毎度のことながら脱帽させられます。本作ではヴォーカルにみさきが(パワーアップして)復帰し、一貫して作曲を担当するとんCHANはメロディ構築に磨きがかかり、作詞とアレンジ(いつも面白い役割分担だと思っています)でユニット全体を俯瞰するショック太郎のコンセプチュアルな世界観とサウンドデザインは、もはや芸術的というほかなく、ほぼ第1位なのですが、2025年は他の2作品も抜群に良かったのと、このユニットに関しては「テクノロジーポップス」を体現していただいている敬意も含めてハードルが上がり過ぎていることも含めまして、第3位に置いていますが、過去作に匹敵する以上の快作であると思っています。真面目な話、毎回どストライクな仕上がりなので殿堂入りにしたいくらい評価が難しいのです。(あと余談ですが、2025年ベストソングは「舞鶴姫」をランクインさせましたが、20曲を1アーティスト1曲の縛りを設けているためで、縛りを外せば「アトモスフィア」と「ナサリー」は間違いなく入りました。それだけの作品だということです)

Vast Empty Pulse>
(2025/5/9)
プノンペンモデル
前作「General Midge」のリリースが2007年ですから18年ぶりの5thアルバムがまさか完成するとは考えていなくて、それだけでも歓喜しかなかったのですが、先行配信の「またね」には戸川純とのデュエット、平沢進がギター参加、砂原良徳がマスタリングという何だか界隈てんこ盛りのサービス仕様で、しかも仕上がりが不穏でしかない、それでいて奇天烈電子音フレーズと言葉の強さは健在という仕上がりでしたから、本作については期待感しかなかったわけです。実際のところ聴き込むにつれて耳が思い出していく感覚というか、この攻撃的な電子音に慣れていくことに心地よさしかなく、いわゆるP-MODEL界隈というのは本作のように予想もつかない電子的なフレージングを繰り出してくるところにオリジナリティがあって、それが長く信者を惹きつけてやまないということを再認識した次第です。本作リリース直後にフロントマンの谷口マルタ正明が逝去してしまったことはこのバンドの活動終了を意味することに間違いはないと思いますが、だからこその最後の叫びである本作が訴えかけるものの意味合いが幾つも重なってきてしまうことはある意味ドラマティックであることを踏まえて、第4位とさせていただきました。

ALL HAZE
(2025/10/22)
TESTSET
TESTSETとしての活動開始当初は結成のいきさつからMETAFIVEの別動ユニットという色彩が濃く、それは2022年の初音源「EP1 TSTST」や2023年の1stアルバム「1STST」、そして2024年の「EP2 TSTST」までもバンドとしてのカラーを決めかねていた感が否めなかったのですが、この2ndアルバムにして初めて四者四葉のキャラクターのバランスが取れ始めて、バンドとしての一体感が急速に向上したように受け入れられました。特に永井聖一が手掛けた「Neuromancer」はあからさまな80年代初頭のUKニューウェーブバンドという新基軸で、それは彼らの出自的な意味も含めて突然変異でもなくむしろ待望のスタイルではなかったかと思われます。歌モノとしてしっかり成立させている白根賢一、フロントマンとして洋楽的な様式美を漂わせるLEO今井、砂原良徳は相変わらずのYMOスタイルですが、それももはや「味」というほかなく、サウンド面の緻密な音響処理に関しては現在の日本ではトップレベルに到達していると考えておりますので、その生まれてくる作品に対する信頼度はすこぶる高いということで、第5位となりました。

Time slider
(2025/12/24)
まちだガールズ・クワイア
2022年の第1位に輝いた名盤2ndアルバム「オリオン座流星群」から3年ぶりの3rdアルバムは、タイムトラベルをテーマにした前作に引き続きコンセプトアルバムに仕上がりました。前作にもその傾向はありましたが、プロデューサーであるScudelia Electroの石田ショーキチが自身の趣味性をあけっぴろげにした世界をメンバーに歌わせていて、その部分が可笑しくてたまらないのですが、それらがネタで終わらないのはこだわりしかないシンセ度強めのサウンドデザインとまちだガールズ・クワイアというグループ名に恥じない美しいコーラスワークに楽曲が支えられているからにほかなりません。Scudelia Electroとの競作となった「時間の扉」、永原真夏楽曲を岡田ユミがゴージャスなアレンジで装飾した「Magic note」、まさかの木根尚登楽曲でTM味がほのかに感じられる「I Believe In You〜未来だけを見てる」、John Lennon暗殺の日に遡るコンセプトアルバムならではのビートルズライクなドラマ調楽曲「時間の電話 -Hello, Mr. Lennon?-」、スノーモービルズ遠藤裕文によるベステンダンク調なアッパーチューン「繋がる手」、そしてラストを飾る大団円「Future Girl」など、良曲満載のアルバムはもう少し早くリリースしていれば聴き込みができたことを差し引いても第6位です。

LOVE & SALT
(2025/10/22)
山口美央子
山口美央子というシンガーソングライターは実に興味深い音楽活動遍歴を経ている方で、1980年代初頭に「夢飛行」「Nirvana」「月姫」の3枚のアルバムをリリースした後、1985年にベストアルバム「ANJU」を残し作曲家に転身、その後は80年代〜90年代にかけて主にアイドルソングを多く手掛けるなど活躍していましたが、00年代に入るとその名を聞くこともなくなっていたのですが、折りからのシティポップブームの中で上記の作品が再評価され、「月姫」のシンセプログラミングを手掛けた松武秀樹が再発CDリリースを手掛けたことをきっかけとして、松武秀樹を相棒に音楽活動を再開、2018年にリリースされた「トキサカシマ」は実に35年ぶりの4thアルバムリリースで、しかもその後はセルフカバーアルバム「FLOMA」シリーズや5thアルバム「フェアリズム」等制作実績も順調で、そして本作が復帰3作目ということですから、このようにベテランの年齢に達してここまで創作意欲旺盛という点でも稀有な存在であると言えるでしょう。しかも復帰後作品のどれもがデビュー当時の声質は失われることなく、サウンド面では松武秀樹の熟練のシンセサウンドを武器にファンタジア度が向上、本作ではそのシンセサイザーの音の輪郭が研ぎ澄まされており、スペイシーなアッパーチューンも幻想的なバラードもその重厚な音世界に引き込まれること間違いありません。今もなお進化し続けるスーパーウーマンが第7位です。




気楽にいこうぜ!
(2025/4/16)
彼女のサーブ&レシーブ
恐らく本人達は意図せずキャラ付けとしてやらされていた感のある彼女のサーブ&レシーブのテニスルックスタイル。2017年に1stアルバム「サービス・エース」がリリースされ徐々にその優れたポップセンスによる音楽性が評価され始めると、そのキャラクターが邪魔になると判断されたのかテニス要素は横に置き、2020年の2ndアルバム「kanosare」リリース後にユニット名を愛称の「カノサレ」に改名、その後も配信シングル「ベランダにて」「カノサレの!気楽にいこうぜ」「魔法少女だった頃には」と次々にリリースしていましたが、2024年に心機一転といいますか、初心に帰ったという意味合いなのか再びユニット名を「彼女のサーブ&レシーブ」に戻して(実は珍しいパターン)フューチャーテニスアイコンを復活させてリリースした3rdアルバムが本作です。初期から歌い継がれてきたHypstone Friendsのカバーソング「さよならサンセット」に、デビュー当初からバックアップする旧INSTANT CYTRONの松尾宗能と長瀬五郎に
サウンドチームbearstapeが加わった地元福岡天神界隈の音楽シーンが生んだ良質の楽曲を堪能できます。なお、初期は素人感が隠しきれなかったあおぎ&えりの歌唱も安定感が上がり、楽曲のクオリティに華を添えるようになってきているのが嬉しい、ということで第8位に選出いたしました。

Restart Your Computer!
(2025/12/10)
MicroLlama
2005年から4年ほど活動していた東京発ニューウェーブバンドであったピノリュック。中心メンバーであったコメカと吉田仁郎が中心となり、当時のドラマーであったカケヒが加わったトリオバンドとして再始動(?)したのが、MicroLlama。この令和の時代に似つかわしくない純度の高いアーリー80'sなニューウェーブサウンドを頑固に主張するバンドは、この20年近いキャリアを音楽性にしっかり落とし込んでいるところに好感が持てます。とにかく彼らのニューウェーブ愛が半端ではなく、吉田は再結成ハルメンズやジョリッツでサエキけんぞうや泉水敏郎とバンドメンバーでもあるし、MicroLlamaもあのPOISON POPと対バンしているほどで、1stアルバムである本作ではミンカパノピカのエイジがギターで参加するなど、どこを切り取ってもニューウェーブ、薄っぺらい単音シンセフレーズもニューウェーブ、オプティミスティックなヴォーカルスタイルもニューウェーブ、やはりこのようなバンドはいつの時代にも必要(by ケラリーノ・サンドロヴィッチ)ということで、2025年を象徴するバンドとして第9位とさせていただきました。

fade into black cosmos
(2025/8/6)
ACID ANDROID
L'Arc-en-Ciel という日本が誇る大御所スーパーバンドにドラマーとして在籍していながら、この方もニューウェーブ愛を燻らせたタイプのアーティストであるyukihiro。彼の趣味性全開のソロユニットACID ANDROIDは、特にユニット名を大文字に改名してからはインダストリアルロック風味からストイックなダークシンセポップに移行、リズムはTR系のドラムマシンを使用、シンセサイザーはアナログによるレゾナンスを多用した音色を多用して、ギターでロック風味には寄せているものの、その使い方はサンプルの切り貼りを多用するといったテクノな手法であり、レコーディング手法はほぼほぼテクノポップミュージシャンと共通する部分が多いものと思われます。しかしそのあたりは彼のキャリア当初の室姫深とのOPTIC NERVE時代から不変の手癖ともいうべきものであり、独特のアシッド感覚は長年の趣味性で培われてきたものに相違ありません。相変わらずの声の弱さは気になるものの、この手のタイプの楽曲ではそれも個性の1つに捉えられることもあるので、さほど気にはならない程度ということで、本作を第10位にランクインさせました。
以上、2025年年間アルバムベスト10でした。
次点3作品は以下の通り。
「unZIP」 核P-MODEL
「婦人日和」 婦人倶楽部
「Meridian」 北園みなみ
というわけで、今年もTECHNOLOGY POPSの名盤に出会うことを心より願っております。
それでは、本年もよろしくお願いいたします。
(次回から再び通常のレビューに戻りたいところですが、今年もまずは別邸noteの特集記事にとりかかりますので、しばらくお休みとなります。あしからずご了承願います。)
昨年に引き続き年末年始9連休の大型休暇でございましたが、何だか趣味以外の作業が多過ぎて全く休んだ気がしないといった状況で、この年始の挨拶も遅れに遅れまして、もはや正月ではありませんね。申し訳ございません。
さて、当ブログをいつもご愛顧いただき、誠にありがとうございます。昨年ブログ開始から18年と申し上げていましたが、2008年スタートなので今年が18年目ですね。失礼いたしました。世の中すっかりAI文化が急速に普及し始めてまいりましたが、ブログというコンテンツは生き残るのでしょうか。もはやいっそのことAIに書かせたら良いのでは?とおっしゃる方もいるかもしれませんが、そうは問屋が下ろしませんよ。ペースはかなり落ちてまいりましたが、これからも手作業でレビューをしてまいりますのでご安心くださいませ。FC2が続けてくれればの話ですが・・・ともあれ、コツコツ積み上げてきたこのレビューの数々を何とか後世に残していけないだろうかと思いつつ、そのあたりはいつかAIかなんかで何とかできればと思う次第です。それ以前に何度も申し上げておりますが、このブログを見つけていただいたおかげで音楽活動を再開していただき名盤を生み出していただいている音楽家の皆様もいらっしゃるわけですから、イグナイター(火付け役)の筆者といたしましては、今後も継続は力なりの信念をもって書き続ける所存でございます。。
そんな火付け役といたしましては、昨年は当ブログのレビューを読んでいただいたことをきっかけに音楽活動を再開していただいたjellyfish TYOのトモコjellyfishさんとスノーモービルズの遠藤裕文さんが、Namiotoというユニットを結成いたしまして、配信シングル「Predawn Sky」をリリースされました。jellyfish TYOもスノーモービルズも90年代後半にCDリリースしていから数枚のアルバムをリリースするなど、インディーテクノポップ界では活動していたのにもかかわらず、当時は交わらなかったグループだったのですが、それぞれが本ブログのレビューをきっかけに音楽活動を数十年ぶりに再開した結果、筆者の仲介?によって交流が始まりユニットを結成されたという、なんとも夢のような話なのです。そのため別邸noteに特集記事も書かせていただきました。
「トモコjellyfishと遠藤裕文のコラボレーションNamiotoによるオリジナル楽曲「Predawn Sky」が配信開始!」
また、本ブログで1stアルバム「Get into Water」を10点満点としてレビューをいたしました90年代初頭の3人組エレクトロポップバンドSΛKΛNΛ(SAKANA)が約23年ぶりに再結成するということで、その再始動前のリハビリライブにヴォーカルの高橋聡さんからDMで招待メールをいただきました。本ブログレビューを読んでいただき大変喜んでいただいたということで、これは何としても行かなければと思い上京し、三山つねかずさんや大光ワタルさん、そしてマニピュレーター役の佐藤純之介教授ともお会いし、打ち上げにもお呼ばれして興味深いお話をお聞かせいただきました。さまざまな謎や奇妙な縁、今後につながる話もいろいろとあり、大変貴重な経験をさせていただきました。本当にいちブログの管理人が経験できることではないと思うのですが、2025年で1、2を争う嬉しい出来事でありました、SΛKΛNΛのメンバーの方々およびスタッフの皆様、その節は誠にありがとうございました。
また、別邸noteの特集記事として、2025年は2つの記事を書いております。音楽ランキング企画で有名なJMXさんのX上での企画「邦楽アルバムオールタイムベスト100in2024」にまたも年甲斐もなく参加しましたのすが、その記事を1年以上経過してもまだ書いている途中なのです。
邦楽アルバムランキングに再び性懲りもなく参加してみました:コンピレーション/サウンドトラック30枚【中編:20位〜11位】
邦楽アルバムランキングに再び性懲りもなく参加してみました:コンピレーション/サウンドトラック30枚【後編その1:10位〜6位】
前者が8万字にもなってしまい、後編は2回に分けました(その1は4万3千字)。その2は今年書き上げたいと思います。
そのほか、Xにて継続しているテクノポップ耳アカウントのレビューもサブスク解禁された作品を紹介しつつ、毎週土曜深夜に更新を続けております。昨年は宮村優子「大四喜」のポストが8万view超えの大バズりで怖くなりましたw
そのようなわけで、ものすごく前置きが長くなりましたが、年初め1回目恒例となっております、2025年TECHNOLOGY POPS的ベストアルバムの紹介です。毎年のように既に大晦日にX上では発表しておりますが、本ブログでの文章は毎年書き下ろししております。
2025年はラスト3ヶ月の追い込みがスゴくて、いろいろと悩みましたが、いつものことなのでとにかく唸りながら10枚選びました。
今年のランク付けは1位≒2位≒3位>4位≒5位>6位≒7位≒8位>9位≒10位>(11位〜13位)というレベル感です。
それでは、ベスト10です。(上から1位〜10位です)
ネビュラロマンス 後篇 (通常盤)
(2025/9/17)
Perfume
前年のレトロフューチャーコンセプトアルバム前篇に引き続きリリースされた完結編。とにかくシンセサイザーを弾きに弾きまくるサウンドデザインは、これぞまさしくテクノポップです。フレーズ1つ1つに生きたメロディが宿っていることに加えて、柔らかく温かみのある音色を多用したシンセサウンドが美しく、強烈タイトなスネアドラム、コクのあるシンセベース、手弾き感覚のシーケンスリフ、滲むようなパッド、情感豊かなソロプレイで聴き手を楽しませる仕上がりとなっています。Perfumeがテクノポップたるゆえんは、メジャーデビュー前の3枚のシングル「スウィートドーナッツ」「モノクロームエフェクト」「ビタミンドロップ」あたりのサウンドに起因すると考えてきましたが、メジャー進出以降はどちらかというとテクノではなくエレクトロで正直な話彼女たちのテクノポップ的な良さは失われていったと思っていました。しかしここに来てさらに進化したテクノ歌謡となって戻ってきた感があります。そして何よりもダンスばかりが取り上げられてきた彼女たちが朗々と歌い上げていることが素晴らしい。この「ネビュラロマンス」シリーズは彼女たちの歌を聴くことができ、さらにシンセサイザーの音色とフレージングを楽しむことができる、これぞテクノロジーポップスの真髄と言える完成度です。Perfumeは本作をもってコールドスリープということですが、「ネビュラロマンス」シリーズは彼女たちにとって最高傑作であることに間違いはなく、前作に続く本作が完成することによって2020年代に残る名盤となりました。文句なしの第1位です。
Sequential
(2025/11/1)
mojera
00年代を席巻した歌モノエレクトロポップユニットOVERROCKETにて絶大な信頼をおけるコンポーザーであり、スクエアエニックス関連のゲーム音楽家としての実績も豊富なクリエイターである鈴木光人が、ギタリストのnonと結成したエレクトロシューゲイズユニットがmojeraです。2020年に活動を開始して以来1stフルアルバム「overkill」も話題でしたが、いささかシューゲイズ寄りでnonのカラーにも配慮した仕上がりでしたが、2024年のミニシングル「arika ep」を挟んでリリースされた本作では、大胆にも日本語詞を中心としたポップな作風に転換してまいりました。OVERROCKETでいうところの「Mariner's Valley」から「POPMUSIC」に方向転換した印象とよく似ていて、歌モノとしての覚悟を決めた時の鈴木光人のポップセンスと瑞々しいコードワークの非凡さを見せつけられた格好となりました。ライブハウスでの臨場感のある録音や丹精込められたミキシング、そして随所で発揮されるフリーキーなギターワークも見事というほかなく、日本語での歌唱がnonのキャラクターを逆に前面に押し出すことに成功した結果、本作がデュオユニットとして一歩突き抜けたクオリティに到達したと思わせる作品であることを確信し、2025年第2位に選出させていただきました。
ナサリー
(2025/10/24)
無果汁団
2020年の「マドロム」、2021年の「うみねこゲイザー」、2023年の「ひなふトーン」とデビュー以来コンスタントにアルバムをリリースし続けているテクノロジーポップスユニットの4作目。まずはこれだけのハイクオリティな楽曲を次々と生み出しながら、それが枯渇することなく維持できていることに驚きを禁じ得ません。しかも本業の合間というセミプロ状態かつほぼ自主制作の環境の中で、ポップスというある種曖昧かつ複雑な構成を備える難解なジャンルを見事に成立させる手練手管の数々に毎度のことながら脱帽させられます。本作ではヴォーカルにみさきが(パワーアップして)復帰し、一貫して作曲を担当するとんCHANはメロディ構築に磨きがかかり、作詞とアレンジ(いつも面白い役割分担だと思っています)でユニット全体を俯瞰するショック太郎のコンセプチュアルな世界観とサウンドデザインは、もはや芸術的というほかなく、ほぼ第1位なのですが、2025年は他の2作品も抜群に良かったのと、このユニットに関しては「テクノロジーポップス」を体現していただいている敬意も含めてハードルが上がり過ぎていることも含めまして、第3位に置いていますが、過去作に匹敵する以上の快作であると思っています。真面目な話、毎回どストライクな仕上がりなので殿堂入りにしたいくらい評価が難しいのです。(あと余談ですが、2025年ベストソングは「舞鶴姫」をランクインさせましたが、20曲を1アーティスト1曲の縛りを設けているためで、縛りを外せば「アトモスフィア」と「ナサリー」は間違いなく入りました。それだけの作品だということです)
Vast Empty Pulse>
(2025/5/9)
プノンペンモデル
前作「General Midge」のリリースが2007年ですから18年ぶりの5thアルバムがまさか完成するとは考えていなくて、それだけでも歓喜しかなかったのですが、先行配信の「またね」には戸川純とのデュエット、平沢進がギター参加、砂原良徳がマスタリングという何だか界隈てんこ盛りのサービス仕様で、しかも仕上がりが不穏でしかない、それでいて奇天烈電子音フレーズと言葉の強さは健在という仕上がりでしたから、本作については期待感しかなかったわけです。実際のところ聴き込むにつれて耳が思い出していく感覚というか、この攻撃的な電子音に慣れていくことに心地よさしかなく、いわゆるP-MODEL界隈というのは本作のように予想もつかない電子的なフレージングを繰り出してくるところにオリジナリティがあって、それが長く信者を惹きつけてやまないということを再認識した次第です。本作リリース直後にフロントマンの谷口マルタ正明が逝去してしまったことはこのバンドの活動終了を意味することに間違いはないと思いますが、だからこその最後の叫びである本作が訴えかけるものの意味合いが幾つも重なってきてしまうことはある意味ドラマティックであることを踏まえて、第4位とさせていただきました。
ALL HAZE
(2025/10/22)
TESTSET
TESTSETとしての活動開始当初は結成のいきさつからMETAFIVEの別動ユニットという色彩が濃く、それは2022年の初音源「EP1 TSTST」や2023年の1stアルバム「1STST」、そして2024年の「EP2 TSTST」までもバンドとしてのカラーを決めかねていた感が否めなかったのですが、この2ndアルバムにして初めて四者四葉のキャラクターのバランスが取れ始めて、バンドとしての一体感が急速に向上したように受け入れられました。特に永井聖一が手掛けた「Neuromancer」はあからさまな80年代初頭のUKニューウェーブバンドという新基軸で、それは彼らの出自的な意味も含めて突然変異でもなくむしろ待望のスタイルではなかったかと思われます。歌モノとしてしっかり成立させている白根賢一、フロントマンとして洋楽的な様式美を漂わせるLEO今井、砂原良徳は相変わらずのYMOスタイルですが、それももはや「味」というほかなく、サウンド面の緻密な音響処理に関しては現在の日本ではトップレベルに到達していると考えておりますので、その生まれてくる作品に対する信頼度はすこぶる高いということで、第5位となりました。
Time slider
(2025/12/24)
まちだガールズ・クワイア
2022年の第1位に輝いた名盤2ndアルバム「オリオン座流星群」から3年ぶりの3rdアルバムは、タイムトラベルをテーマにした前作に引き続きコンセプトアルバムに仕上がりました。前作にもその傾向はありましたが、プロデューサーであるScudelia Electroの石田ショーキチが自身の趣味性をあけっぴろげにした世界をメンバーに歌わせていて、その部分が可笑しくてたまらないのですが、それらがネタで終わらないのはこだわりしかないシンセ度強めのサウンドデザインとまちだガールズ・クワイアというグループ名に恥じない美しいコーラスワークに楽曲が支えられているからにほかなりません。Scudelia Electroとの競作となった「時間の扉」、永原真夏楽曲を岡田ユミがゴージャスなアレンジで装飾した「Magic note」、まさかの木根尚登楽曲でTM味がほのかに感じられる「I Believe In You〜未来だけを見てる」、John Lennon暗殺の日に遡るコンセプトアルバムならではのビートルズライクなドラマ調楽曲「時間の電話 -Hello, Mr. Lennon?-」、スノーモービルズ遠藤裕文によるベステンダンク調なアッパーチューン「繋がる手」、そしてラストを飾る大団円「Future Girl」など、良曲満載のアルバムはもう少し早くリリースしていれば聴き込みができたことを差し引いても第6位です。
LOVE & SALT
(2025/10/22)
山口美央子
山口美央子というシンガーソングライターは実に興味深い音楽活動遍歴を経ている方で、1980年代初頭に「夢飛行」「Nirvana」「月姫」の3枚のアルバムをリリースした後、1985年にベストアルバム「ANJU」を残し作曲家に転身、その後は80年代〜90年代にかけて主にアイドルソングを多く手掛けるなど活躍していましたが、00年代に入るとその名を聞くこともなくなっていたのですが、折りからのシティポップブームの中で上記の作品が再評価され、「月姫」のシンセプログラミングを手掛けた松武秀樹が再発CDリリースを手掛けたことをきっかけとして、松武秀樹を相棒に音楽活動を再開、2018年にリリースされた「トキサカシマ」は実に35年ぶりの4thアルバムリリースで、しかもその後はセルフカバーアルバム「FLOMA」シリーズや5thアルバム「フェアリズム」等制作実績も順調で、そして本作が復帰3作目ということですから、このようにベテランの年齢に達してここまで創作意欲旺盛という点でも稀有な存在であると言えるでしょう。しかも復帰後作品のどれもがデビュー当時の声質は失われることなく、サウンド面では松武秀樹の熟練のシンセサウンドを武器にファンタジア度が向上、本作ではそのシンセサイザーの音の輪郭が研ぎ澄まされており、スペイシーなアッパーチューンも幻想的なバラードもその重厚な音世界に引き込まれること間違いありません。今もなお進化し続けるスーパーウーマンが第7位です。
気楽にいこうぜ!
(2025/4/16)
彼女のサーブ&レシーブ
恐らく本人達は意図せずキャラ付けとしてやらされていた感のある彼女のサーブ&レシーブのテニスルックスタイル。2017年に1stアルバム「サービス・エース」がリリースされ徐々にその優れたポップセンスによる音楽性が評価され始めると、そのキャラクターが邪魔になると判断されたのかテニス要素は横に置き、2020年の2ndアルバム「kanosare」リリース後にユニット名を愛称の「カノサレ」に改名、その後も配信シングル「ベランダにて」「カノサレの!気楽にいこうぜ」「魔法少女だった頃には」と次々にリリースしていましたが、2024年に心機一転といいますか、初心に帰ったという意味合いなのか再びユニット名を「彼女のサーブ&レシーブ」に戻して(実は珍しいパターン)フューチャーテニスアイコンを復活させてリリースした3rdアルバムが本作です。初期から歌い継がれてきたHypstone Friendsのカバーソング「さよならサンセット」に、デビュー当初からバックアップする旧INSTANT CYTRONの松尾宗能と長瀬五郎に
サウンドチームbearstapeが加わった地元福岡天神界隈の音楽シーンが生んだ良質の楽曲を堪能できます。なお、初期は素人感が隠しきれなかったあおぎ&えりの歌唱も安定感が上がり、楽曲のクオリティに華を添えるようになってきているのが嬉しい、ということで第8位に選出いたしました。
Restart Your Computer!
(2025/12/10)
MicroLlama
2005年から4年ほど活動していた東京発ニューウェーブバンドであったピノリュック。中心メンバーであったコメカと吉田仁郎が中心となり、当時のドラマーであったカケヒが加わったトリオバンドとして再始動(?)したのが、MicroLlama。この令和の時代に似つかわしくない純度の高いアーリー80'sなニューウェーブサウンドを頑固に主張するバンドは、この20年近いキャリアを音楽性にしっかり落とし込んでいるところに好感が持てます。とにかく彼らのニューウェーブ愛が半端ではなく、吉田は再結成ハルメンズやジョリッツでサエキけんぞうや泉水敏郎とバンドメンバーでもあるし、MicroLlamaもあのPOISON POPと対バンしているほどで、1stアルバムである本作ではミンカパノピカのエイジがギターで参加するなど、どこを切り取ってもニューウェーブ、薄っぺらい単音シンセフレーズもニューウェーブ、オプティミスティックなヴォーカルスタイルもニューウェーブ、やはりこのようなバンドはいつの時代にも必要(by ケラリーノ・サンドロヴィッチ)ということで、2025年を象徴するバンドとして第9位とさせていただきました。
fade into black cosmos
(2025/8/6)
ACID ANDROID
L'Arc-en-Ciel という日本が誇る大御所スーパーバンドにドラマーとして在籍していながら、この方もニューウェーブ愛を燻らせたタイプのアーティストであるyukihiro。彼の趣味性全開のソロユニットACID ANDROIDは、特にユニット名を大文字に改名してからはインダストリアルロック風味からストイックなダークシンセポップに移行、リズムはTR系のドラムマシンを使用、シンセサイザーはアナログによるレゾナンスを多用した音色を多用して、ギターでロック風味には寄せているものの、その使い方はサンプルの切り貼りを多用するといったテクノな手法であり、レコーディング手法はほぼほぼテクノポップミュージシャンと共通する部分が多いものと思われます。しかしそのあたりは彼のキャリア当初の室姫深とのOPTIC NERVE時代から不変の手癖ともいうべきものであり、独特のアシッド感覚は長年の趣味性で培われてきたものに相違ありません。相変わらずの声の弱さは気になるものの、この手のタイプの楽曲ではそれも個性の1つに捉えられることもあるので、さほど気にはならない程度ということで、本作を第10位にランクインさせました。
以上、2025年年間アルバムベスト10でした。
次点3作品は以下の通り。
「unZIP」 核P-MODEL
「婦人日和」 婦人倶楽部
「Meridian」 北園みなみ
というわけで、今年もTECHNOLOGY POPSの名盤に出会うことを心より願っております。
それでは、本年もよろしくお願いいたします。
(次回から再び通常のレビューに戻りたいところですが、今年もまずは別邸noteの特集記事にとりかかりますので、しばらくお休みとなります。あしからずご了承願います。)
「T-V」 XA-VAT
「T-V」(2023 Xavatron)
XA-VAT

<members>
Közi:vocal・all instruments
Sadie Pink Galaxy:vocal・all instruments
石井秀仁:vocal・all instruments
1.「VANG! VANG!」 詞・曲:Sadie Pink Galaxy 編:XA-VAT
2.「20世紀のTANZ」
詞:石井秀仁 曲:Sadie Pink Galaxy・石井秀仁 編:XA-VAT
3.「洒落た頭を垂れる髑髏」
詞:石井秀仁 曲:Közi・石井秀仁 編:XA-VAT
4.「What You Get」 詞:Közi 曲:Sadie Pink Galaxy 編:XA-VAT
5.「真眼SOUL」
詞:Sadie Pink Galaxy 曲:Sadie Pink Galaxy・石井秀仁 編:XA-VAT
6.「座-芸夢too無礼」 曲:石井秀仁 編:XA-VAT
7.「1stEND RCNRLR」 詞・曲:Sadie Pink Galaxy 編:XA-VAT
8.「XA-VEST」 詞・曲:Sadie Pink Galaxy 編:XA-VAT
9.「VENTRA VENTRA WE ARE SPACE PEOPLE」
詞:石井秀仁 曲:Közi・石井秀仁 編:XA-VAT
10.「VAT-COMMUNICATION」 詞・曲:石井秀仁 編:XA-VAT
11.「Nursery Rhymes Baby」
詞:石井秀仁 曲:Közi・石井秀仁 編:XA-VAT
12.「芸夢OVER」 曲:Sadie Pink Galaxy・石井秀仁 編:XA-VAT
13.「NEUROMANCER」 詞・曲:石井秀仁 編:XA-VAT
14.「VIDEO芸者」 詞・曲・編:XA-VAT
produced by XA-VAT
mixing engineered by XA-VAT・白石元久
recording engineered by XA-VAT
● 数年ごとに活動を再開するヴィジュアルエレクトロロックユニットの3枚のミニアルバムを合体再構築したオールインワンアルバム
バンドとしてはcali≠gari、ソロプロジェクトとしてはgoatbedのフロントマンとして。一貫として80's愛あふれるメロディ&サウンドメイクで時代に抗ってきた石井秀仁が、元MALICE MIZERのギタリストKöziと、大阪のサイバーパンクロックバンドJUBILEEやSPEECIESを率いるSADIE PINK GALAXY、goatbedからの流れから参加した小間貴雄の4名で結成した新バンドXA-VAT。2010年にスタートしたこのプロジェクトは、メジャーレコード会社ビクターからシングル「XA-VAT」と、翌年の名盤アルバム「艶℃」をリリース、数回のライブの後に2011年には予定していた契約を終了するとこのプロジェクトは一旦終了となります。その後数年は思い出したように単発ライブを小間を除く3名で行うも2013年以降はしばらく休眠状態に陥ることになります。しかし、同バンドは2018年に突然復活、石井・Közi・SADIE PINK GALAXYの3名がヴィジュアルイメージもヤンキーリーゼントスタイルに変化、しかしサウンド面ではサイバーロック路線にあざとさを付加したスタイルに進化、ミニアルバム「K-I-S」をリリースし、ライブ活動も定期的に(数年おきではありますが)行っていくことになります。そこからは音源もライブ会場とファンクラブ通販限定ながら継続的にリリース、2020年に「芸夢」、2023年に「SLEE」の両ミニアルバムが制作された後、再始動後の音源を集めたオールインワンアルバムとしてリリースされたのが本作ということになるわけです。
ヴォーカルにツインギターというリズム隊のいない変則バンドながら、それを逆手によりサイバー感覚溢れるドラムとベースの過激なプログラミングでノリを生み出す個性的なサウンド(とそれらを体現した過激なファッションセンス)が彼らの魅力でしたが、本作もコロナ禍を挟んだ5年間の音源制作集ということもあり、音楽性やサウンド的傾向もバラエティに富んでいるとも言えますが、溢れ出る80'sニューウェーブ感覚という点では3名の共通認識があるためか、妙な統一感を醸し出すことに成功しています。VAMQUETやサディ&コージーの盟友として、XA-VAT以外にも共に活動することの多いKöziとSADIEの相性も良く、石井も含めてバンドとしての一体感(まさか定期的に活動するバンドになるとは思っていなかった)が本作からも感じられます。また、本作は「K-I-S」「芸夢」「SLEE」のオールインワンながら、曲順はリリース順などのような安易な意図のものではなく、1枚のアルバムとして考えられた構成となっており、特に後半のクライマックス的に「VAT-COMMUNICATION」「Nursery Rhymes Baby」の連打は明らかにライブでの構成を意識していると言っても過言ではないでしょう。再始動してからは明らかにライブを意識した楽曲の多くなっており、その意味では翌2024年にリズムをライブサポートドラマー北野愛子の生ドラムに差し替えてミックスし直したリメイク盤「T-V-AI」をリリースしたことはそういった傾向の象徴的と言わざるを得ません。石井秀仁関連楽曲のリリース方針によりサブスクでは配信されないため、なかなかファン以外には浸透しない傾向にはありますが、そのどギツイ音楽性はもっと評価されるべきであり、もう少し広く知られてほしい作品の1つです。
<Favorite Songs>
・「20世紀のTANZ」
機械仕掛けのリズムが心地よい石井とSADIEの共作によるサイバーダンスロック。歌モノとしてのポップ感覚を兼ね備えているのは石井らしさが表出されており、ギラギラしたギターワークはSADIEの真骨頂でもありますが、これらもドタドタしたリズムプログラミングによる独特のノリで支配されています。
・「VAT-COMMUNICATION」
石井単独による印象的なサビを兼ね備えた90年代式ディスコロックチューン。明らかにジュリアナを意識したあのイントロで時代性をロックして、怪しさ満点のAメロからサビで一気にメジャーなポップフレイバーに展開、それだけでもキャッチーなのですが、後半に大サビが待ち構えていていなたいギターソロを迎えるというニクい構成力が光る名曲です。
・「Nursery Rhymes Baby」
再始動のXA-VATを象徴するハイエナジーなDEAD OR ALIVE的ユーロビートロックの名曲。高速に疾走するシーケンスに暴れ回る電子ドラム、何よりも恥ずかしげもないシンセブラスのイントロの妙な爽やかさが面白さ倍増です。この楽曲も大サビでメジャー化したキラキラした80's魂を見せつけており、ノスタルジーで涙すら誘われる名曲に仕上がっています。
<評点>
・サウンド ★★★★ (3者3様の微妙に解釈の異なるサイバー感が楽しめる)
・メロディ ★★★★ (特に石井楽曲においてはキャッチー性が抜群)
・リズム ★★★★ (生ドラムでなくても作り込みが細かくこだわりも強い)
・曲構成 ★★★★ (意図のある曲順をプレイリストベスト的に見事に構築)
・個性 ★★★★ (やや閉鎖性が高いのが難ありながら近寄り難くもわかりやすい)
総合評点: 9点
XA-VAT T-V cali≠gari GOATBED 石井秀仁



XA-VAT
<members>
Közi:vocal・all instruments
Sadie Pink Galaxy:vocal・all instruments
石井秀仁:vocal・all instruments
1.「VANG! VANG!」 詞・曲:Sadie Pink Galaxy 編:XA-VAT
2.「20世紀のTANZ」
詞:石井秀仁 曲:Sadie Pink Galaxy・石井秀仁 編:XA-VAT
3.「洒落た頭を垂れる髑髏」
詞:石井秀仁 曲:Közi・石井秀仁 編:XA-VAT
4.「What You Get」 詞:Közi 曲:Sadie Pink Galaxy 編:XA-VAT
5.「真眼SOUL」
詞:Sadie Pink Galaxy 曲:Sadie Pink Galaxy・石井秀仁 編:XA-VAT
6.「座-芸夢too無礼」 曲:石井秀仁 編:XA-VAT
7.「1stEND RCNRLR」 詞・曲:Sadie Pink Galaxy 編:XA-VAT
8.「XA-VEST」 詞・曲:Sadie Pink Galaxy 編:XA-VAT
9.「VENTRA VENTRA WE ARE SPACE PEOPLE」
詞:石井秀仁 曲:Közi・石井秀仁 編:XA-VAT
10.「VAT-COMMUNICATION」 詞・曲:石井秀仁 編:XA-VAT
11.「Nursery Rhymes Baby」
詞:石井秀仁 曲:Közi・石井秀仁 編:XA-VAT
12.「芸夢OVER」 曲:Sadie Pink Galaxy・石井秀仁 編:XA-VAT
13.「NEUROMANCER」 詞・曲:石井秀仁 編:XA-VAT
14.「VIDEO芸者」 詞・曲・編:XA-VAT
produced by XA-VAT
mixing engineered by XA-VAT・白石元久
recording engineered by XA-VAT
● 数年ごとに活動を再開するヴィジュアルエレクトロロックユニットの3枚のミニアルバムを合体再構築したオールインワンアルバム
バンドとしてはcali≠gari、ソロプロジェクトとしてはgoatbedのフロントマンとして。一貫として80's愛あふれるメロディ&サウンドメイクで時代に抗ってきた石井秀仁が、元MALICE MIZERのギタリストKöziと、大阪のサイバーパンクロックバンドJUBILEEやSPEECIESを率いるSADIE PINK GALAXY、goatbedからの流れから参加した小間貴雄の4名で結成した新バンドXA-VAT。2010年にスタートしたこのプロジェクトは、メジャーレコード会社ビクターからシングル「XA-VAT」と、翌年の名盤アルバム「艶℃」をリリース、数回のライブの後に2011年には予定していた契約を終了するとこのプロジェクトは一旦終了となります。その後数年は思い出したように単発ライブを小間を除く3名で行うも2013年以降はしばらく休眠状態に陥ることになります。しかし、同バンドは2018年に突然復活、石井・Közi・SADIE PINK GALAXYの3名がヴィジュアルイメージもヤンキーリーゼントスタイルに変化、しかしサウンド面ではサイバーロック路線にあざとさを付加したスタイルに進化、ミニアルバム「K-I-S」をリリースし、ライブ活動も定期的に(数年おきではありますが)行っていくことになります。そこからは音源もライブ会場とファンクラブ通販限定ながら継続的にリリース、2020年に「芸夢」、2023年に「SLEE」の両ミニアルバムが制作された後、再始動後の音源を集めたオールインワンアルバムとしてリリースされたのが本作ということになるわけです。
ヴォーカルにツインギターというリズム隊のいない変則バンドながら、それを逆手によりサイバー感覚溢れるドラムとベースの過激なプログラミングでノリを生み出す個性的なサウンド(とそれらを体現した過激なファッションセンス)が彼らの魅力でしたが、本作もコロナ禍を挟んだ5年間の音源制作集ということもあり、音楽性やサウンド的傾向もバラエティに富んでいるとも言えますが、溢れ出る80'sニューウェーブ感覚という点では3名の共通認識があるためか、妙な統一感を醸し出すことに成功しています。VAMQUETやサディ&コージーの盟友として、XA-VAT以外にも共に活動することの多いKöziとSADIEの相性も良く、石井も含めてバンドとしての一体感(まさか定期的に活動するバンドになるとは思っていなかった)が本作からも感じられます。また、本作は「K-I-S」「芸夢」「SLEE」のオールインワンながら、曲順はリリース順などのような安易な意図のものではなく、1枚のアルバムとして考えられた構成となっており、特に後半のクライマックス的に「VAT-COMMUNICATION」「Nursery Rhymes Baby」の連打は明らかにライブでの構成を意識していると言っても過言ではないでしょう。再始動してからは明らかにライブを意識した楽曲の多くなっており、その意味では翌2024年にリズムをライブサポートドラマー北野愛子の生ドラムに差し替えてミックスし直したリメイク盤「T-V-AI」をリリースしたことはそういった傾向の象徴的と言わざるを得ません。石井秀仁関連楽曲のリリース方針によりサブスクでは配信されないため、なかなかファン以外には浸透しない傾向にはありますが、そのどギツイ音楽性はもっと評価されるべきであり、もう少し広く知られてほしい作品の1つです。
<Favorite Songs>
・「20世紀のTANZ」
機械仕掛けのリズムが心地よい石井とSADIEの共作によるサイバーダンスロック。歌モノとしてのポップ感覚を兼ね備えているのは石井らしさが表出されており、ギラギラしたギターワークはSADIEの真骨頂でもありますが、これらもドタドタしたリズムプログラミングによる独特のノリで支配されています。
・「VAT-COMMUNICATION」
石井単独による印象的なサビを兼ね備えた90年代式ディスコロックチューン。明らかにジュリアナを意識したあのイントロで時代性をロックして、怪しさ満点のAメロからサビで一気にメジャーなポップフレイバーに展開、それだけでもキャッチーなのですが、後半に大サビが待ち構えていていなたいギターソロを迎えるというニクい構成力が光る名曲です。
・「Nursery Rhymes Baby」
再始動のXA-VATを象徴するハイエナジーなDEAD OR ALIVE的ユーロビートロックの名曲。高速に疾走するシーケンスに暴れ回る電子ドラム、何よりも恥ずかしげもないシンセブラスのイントロの妙な爽やかさが面白さ倍増です。この楽曲も大サビでメジャー化したキラキラした80's魂を見せつけており、ノスタルジーで涙すら誘われる名曲に仕上がっています。
<評点>
・サウンド ★★★★ (3者3様の微妙に解釈の異なるサイバー感が楽しめる)
・メロディ ★★★★ (特に石井楽曲においてはキャッチー性が抜群)
・リズム ★★★★ (生ドラムでなくても作り込みが細かくこだわりも強い)
・曲構成 ★★★★ (意図のある曲順をプレイリストベスト的に見事に構築)
・個性 ★★★★ (やや閉鎖性が高いのが難ありながら近寄り難くもわかりやすい)
総合評点: 9点
XA-VAT T-V cali≠gari GOATBED 石井秀仁
「TIME」 REBECCA
「TIME」 (1986 CBSソニー)
REBECCA

<members>
NOKKO:vocal・chorus
土橋安騎夫:synthesizers・piano・organ・chorus
高橋教之:bass・computer programming・chorus
小田原豊:drums・computer programming・rhythm arrangement
1.「WHEN A WOMAN LOVES A MAN(女が男を愛する時)」
詞:NOKKO・沢ちひろ 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
2.「LONELY BUTTERFLY」 詞:NOKKO・宮原芽映 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
3.「TIME」 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
4.「(It’s just a) SMILE」 詞:NOKKO・沢ちひろ 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
5.「GIRL SCHOOL」 詞:NOKKO 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
6.「BOSS IS ALWAYS BOSSING」
詞:NOKKO・LANG 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
7.「CHEAP HIPPIES」 詞:NOKKO 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
8.「WHITE SUNDAY」 詞:NOKKO 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
9.「NEVER TOLD YOU BUT I LOVE YOU」
詞:宮原芽映 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
<support musician>
平井光一:guitar・computer programming
横内健亨:electric guitar・acoustic guitar
中島オバヲ:percussion・rhythm arrangement
下神竜哉:trumpet
多田暁:trumpet
村田陽一:trombone
produced by REBECCA
engineered by 川部修久
● ブレイクを果たし大物バンドへの道をひた走る!ギター脱退もなんのそのクオリティは増すばかりの充実の5thアルバム
1985年のシングル「フレンズ」の大ヒットで一躍スターダムにのし上がったガールズロックバンドREBECCAは、翌86年は早速CMソングのタイアップを獲得しシングル「RASPBERRY DREAM」をリリース、当然のようにトップ10のヒットソングとなり、その存在は現象(トレンド)となり、時代を担うトップバンドとしての風格を漂わせ始めました。しかしこのタイミングでギタリストの古賀森男が脱退、木暮武彦の離脱以降ロックバンドでありながらギタリストが定まらない状況は、REBECCAというバンドがコアなロックにとどまらないポップな音楽性を獲得していく要因の1つとなっていきます。86年はライブツアーを精力的にこなした後、同年秋には大きく羽ばたき頂点に君臨した後の重要なアルバムが完成、まず先行シングル「LONELY BUTTERFLY」がリリース後、1週間後に5thアルバムである本作が世に送り出されることになりました。
既に音楽性が確立されつつあった時期の作品ということもありますが、土橋安騎夫のソングライティングも安定感が増し、格段に音が整理された結果ポップ性が増したという印象です。この音の整理された状態ということが大切であり、本作ではベーシストの高橋教之が担当するプログラミングによるシーケンスが活躍する場面も多いものの、音数そのものは多くなく、それは古賀の脱退によってサポートギタリストとして、元TENSAWの横内健亨と元PANTA&HALの平井光一が参加しているものの、そこはサポートとしての矜持を弁えた上で必要以上に前面に出てくることもなく、(ソロ以外は)サウンド全般を支えるプレイに徹していることで、逆に4ピースバンドならではの音の隙間を作り出すことに成功し、その結果小河原豊のドラムのタイトさとキレが増し、土橋のシンセプレイも要所をキメられる結果となったことで、絶妙な安定感が生まれています。当時はガールズロックのカリスマとしてNOKKOが必要以上に取り上げられることが多く、その分トレンディなアーティストとしては認識されても、その音楽性に関しては正当に評価されにくい環境にあったと思いますが、流石は当時のソニーグループの音源制作ということもあり、(後藤次利主宰レーベルのFITZBEAT所属ということもありますが)非常に丁寧にこだわりをもって制作されたレコーディングであったことが推察されます。それぞれのメンバーのキャラクターも生かされつつ実にバランスのとれた作品に仕上がっており(質感の異なる「RASPBERRY DREAM」があえて未収録なのも頷ける)、スターダムバンドの貫禄を見せつけたと言っても良いのではないかという作品です。
<Favorite Songs>
・「LONELY BUTTERFLY」
名曲の誉れ高い本作の先行シングル。横内健亨のギターがバンドサウンドを絶妙に邪魔をしないので音の隙間を作ることができることによってドラムが際立ち、情景描写豊かなサウンドデザインになっています。横内はエモーショナルなギターソロでも貢献しているので、ほのぼのなAメロからサビで一気に哀愁メロに反転する瞬間が素晴らしいです。
・「BOSS IS ALWAYS BOSSING」
謎のパーカッションパートから始まり、シーケンスに乗るタイトなビートでスタートする本作中でもニューウェーブ色の強いデジタルファンクナンバー。NOKKOのボイスはほぼフェイクのインストナンバーといっても良い楽曲ですが、存在感が必要以上にクローズアップされてきたNOKKOのワンマンバンドではないことがよく理解できるテクニカルな演奏が楽しめます。
・「NEVER TOLD YOU BUT I LOVE YOU」
ラストを飾る強烈なドラミングが前面に出てくるアッパーチューン。特にギターとドラムで通していくAメロの乾いた質感には美しさすら感じさせます。この楽曲に限らず、本作はミックスの方針なのかもしれませんが、この乾燥したサウンドデザインが随所で施されており、本作のカラーを決定づけています。
<評点>
・サウンド ★★★ (独特の乾いたミックスによる絶妙な隙間感)
・メロディ ★★ (流石にシングルカットされる楽曲の力は半端ではない)
・リズム ★★★ (隙間を作ることによりドラムのパワーが引き立つ)
・曲構成 ★ (ニューエイジ的なインストがタイトル曲なのも興味深い)
・個性 ★★★ (正直な話頂点に立った後の作品としては地味な部類かも)
総合評点: 7点
TIME - レベッカ

REBECCA
<members>
NOKKO:vocal・chorus
土橋安騎夫:synthesizers・piano・organ・chorus
高橋教之:bass・computer programming・chorus
小田原豊:drums・computer programming・rhythm arrangement
1.「WHEN A WOMAN LOVES A MAN(女が男を愛する時)」
詞:NOKKO・沢ちひろ 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
2.「LONELY BUTTERFLY」 詞:NOKKO・宮原芽映 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
3.「TIME」 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
4.「(It’s just a) SMILE」 詞:NOKKO・沢ちひろ 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
5.「GIRL SCHOOL」 詞:NOKKO 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
6.「BOSS IS ALWAYS BOSSING」
詞:NOKKO・LANG 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
7.「CHEAP HIPPIES」 詞:NOKKO 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
8.「WHITE SUNDAY」 詞:NOKKO 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
9.「NEVER TOLD YOU BUT I LOVE YOU」
詞:宮原芽映 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
<support musician>
平井光一:guitar・computer programming
横内健亨:electric guitar・acoustic guitar
中島オバヲ:percussion・rhythm arrangement
下神竜哉:trumpet
多田暁:trumpet
村田陽一:trombone
produced by REBECCA
engineered by 川部修久
● ブレイクを果たし大物バンドへの道をひた走る!ギター脱退もなんのそのクオリティは増すばかりの充実の5thアルバム
1985年のシングル「フレンズ」の大ヒットで一躍スターダムにのし上がったガールズロックバンドREBECCAは、翌86年は早速CMソングのタイアップを獲得しシングル「RASPBERRY DREAM」をリリース、当然のようにトップ10のヒットソングとなり、その存在は現象(トレンド)となり、時代を担うトップバンドとしての風格を漂わせ始めました。しかしこのタイミングでギタリストの古賀森男が脱退、木暮武彦の離脱以降ロックバンドでありながらギタリストが定まらない状況は、REBECCAというバンドがコアなロックにとどまらないポップな音楽性を獲得していく要因の1つとなっていきます。86年はライブツアーを精力的にこなした後、同年秋には大きく羽ばたき頂点に君臨した後の重要なアルバムが完成、まず先行シングル「LONELY BUTTERFLY」がリリース後、1週間後に5thアルバムである本作が世に送り出されることになりました。
既に音楽性が確立されつつあった時期の作品ということもありますが、土橋安騎夫のソングライティングも安定感が増し、格段に音が整理された結果ポップ性が増したという印象です。この音の整理された状態ということが大切であり、本作ではベーシストの高橋教之が担当するプログラミングによるシーケンスが活躍する場面も多いものの、音数そのものは多くなく、それは古賀の脱退によってサポートギタリストとして、元TENSAWの横内健亨と元PANTA&HALの平井光一が参加しているものの、そこはサポートとしての矜持を弁えた上で必要以上に前面に出てくることもなく、(ソロ以外は)サウンド全般を支えるプレイに徹していることで、逆に4ピースバンドならではの音の隙間を作り出すことに成功し、その結果小河原豊のドラムのタイトさとキレが増し、土橋のシンセプレイも要所をキメられる結果となったことで、絶妙な安定感が生まれています。当時はガールズロックのカリスマとしてNOKKOが必要以上に取り上げられることが多く、その分トレンディなアーティストとしては認識されても、その音楽性に関しては正当に評価されにくい環境にあったと思いますが、流石は当時のソニーグループの音源制作ということもあり、(後藤次利主宰レーベルのFITZBEAT所属ということもありますが)非常に丁寧にこだわりをもって制作されたレコーディングであったことが推察されます。それぞれのメンバーのキャラクターも生かされつつ実にバランスのとれた作品に仕上がっており(質感の異なる「RASPBERRY DREAM」があえて未収録なのも頷ける)、スターダムバンドの貫禄を見せつけたと言っても良いのではないかという作品です。
<Favorite Songs>
・「LONELY BUTTERFLY」
名曲の誉れ高い本作の先行シングル。横内健亨のギターがバンドサウンドを絶妙に邪魔をしないので音の隙間を作ることができることによってドラムが際立ち、情景描写豊かなサウンドデザインになっています。横内はエモーショナルなギターソロでも貢献しているので、ほのぼのなAメロからサビで一気に哀愁メロに反転する瞬間が素晴らしいです。
・「BOSS IS ALWAYS BOSSING」
謎のパーカッションパートから始まり、シーケンスに乗るタイトなビートでスタートする本作中でもニューウェーブ色の強いデジタルファンクナンバー。NOKKOのボイスはほぼフェイクのインストナンバーといっても良い楽曲ですが、存在感が必要以上にクローズアップされてきたNOKKOのワンマンバンドではないことがよく理解できるテクニカルな演奏が楽しめます。
・「NEVER TOLD YOU BUT I LOVE YOU」
ラストを飾る強烈なドラミングが前面に出てくるアッパーチューン。特にギターとドラムで通していくAメロの乾いた質感には美しさすら感じさせます。この楽曲に限らず、本作はミックスの方針なのかもしれませんが、この乾燥したサウンドデザインが随所で施されており、本作のカラーを決定づけています。
<評点>
・サウンド ★★★ (独特の乾いたミックスによる絶妙な隙間感)
・メロディ ★★ (流石にシングルカットされる楽曲の力は半端ではない)
・リズム ★★★ (隙間を作ることによりドラムのパワーが引き立つ)
・曲構成 ★ (ニューエイジ的なインストがタイトル曲なのも興味深い)
・個性 ★★★ (正直な話頂点に立った後の作品としては地味な部類かも)
総合評点: 7点
TIME - レベッカ
「Shadow」 nico
「Shadow」(1985 アルファムーン)
nico

<members>
嶋田繁:vocal・chorus
嶋田衛:chorus
1.「YOU YOU YOU」 詞:佐藤純子 曲:嶋田衛 編:椎名和夫
2.「肖像画のモデル」 詞:嶋田繁 曲:嶋田衛 編:椎名和夫
3.「黒い瞳のメロディ」 詞:小林和子 曲:嶋田衛 編:椎名和夫
4.「Wasted Summer」 詞:嶋田繁 曲:嶋田衛 編:椎名和夫
5.「逃げたりしないで」 詞:小林和子 曲:嶋田衛 編:椎名和夫
6.「冬の森」 詞:嶋田繁 曲:嶋田衛 編:椎名和夫
7.「水の中のDecember」 詞:嶋田繁 曲:嶋田衛 編:椎名和夫
8.「On Your Birthday」 詞:嶋田繁 曲:嶋田衛 編:椎名和夫
9.「Ceremony」 詞:小林和子 曲:嶋田衛 編:椎名和夫
<support musician>
椎名和夫:electric guitar・chorus
北島健二:electric guitar
安田裕美:acoustic guitar
伊藤広規:electric bass
富倉安生:electric bass
青山純:drums
中西康晴:electric piano・acoustic piano
難波弘之:electric piano・acoustic piano・synthesizer
野力奏一:electric piano・acoustic piano・synthesizer
風間文彦:accordion
浜口茂外也:percussion
ペッカー:percussion
金山功:vibraphone
数原晋:flugelhorn・trumpet
Jake H. Concepcion:alto sax・tenor sax
土岐英史:alto sax・tenor sax
友田グループ:strings
比山清:chorus
新倉芳美:chorus
produced by 椎名和夫
● アーバンエレクトロポップに進化した双子デュオがスタイリッシュかつメロウな側面で勝負に出た3rdアルバム
1982年にシングル「海辺の赤い電話」、鈴木茂プロデュースによるアルバム「To You」でNEWSレコードよりデビューを果たした嶋田繁と嶋田衛の双子兄弟ユニットnicoは、70年代〜80年代初期のニューミュっジックの匂いを残したフォーキーなデュオでしたが、翌1983年の2ndアルバム「Valeria」からはアレンジャーを井上鑑に変更しシンセプログラマーとして浦田恵司が参加したことから、それまでのアコースティックギター主体のサウンドからキーボードの割合が格段に増加、シングルカットされた「燐の踊り子」や「T.Y.O.」といった井上らしいアヴァンなシンセポップにもチャレンジしますが、売れ線には全く乗ることができませんでした。そして2年後にアルファムーンにレコード会社を移籍して登場した3rdアルバムの本作でnicoは大胆な方針転換を図ります。これまでのラフでナチュラルなヴィジュアルイメージから一転して、肩の張ったスーツにビシッとキメた髪型にメイク、いわゆる遅れてきたニューロマンティクステイストに変身したのです。本作から数日後にシングルカットされた「YOU YOU YOU」は以上に振り切ったデジタルニューロマ歌謡で、まさに時代の流れを捉えながらの勝負を賭けてきたという印象でしたが、この象徴的な楽曲にリードされる形でこれまでのイメージを払拭すべくリリースされたのが本作ということになります。
とはいえ、本作は明らかに「YOU YOU YOU」のインパクトが強過ぎたためか、他のアルバム収録曲はやや大人しめといった印象ではあります。しかしそれは本来のnico(作曲は弟の嶋田衛)のメロディメイカーとしての資質にほかならず、2曲目の「肖像画のモデル」からはいわゆる聴かせるタイプの楽曲が並びます。本作のサウンドプロデューサーは初代MOON RIDERSの初代ギタリストであり、山下達郎バンドのギターとして青山純や伊藤広規らと共に主役を支え、さらにシンセプログラマーとしても一流のスキルを持ち合わせていた椎名和夫です。翌年は中森明菜「DESIRE-情熱-」で日本レコード大賞編曲賞を受賞する彼のサウンドメイクには80年代中盤のシーケンサー独特のキレがあり、オーケストラヒットの多用もお手のもの、何よりDX7由来のギラついたFM音源シンセサウンドに達郎バンドのリズム隊が絡む様はミドル80'sのあのデジアナな雰囲気を好むリスナーには格別でしょう。しかしながらあくまで彼らの真骨頂はメロディアスな楽曲とコーラスワークなので、「YOU YOU YOU」や「逃げたりしないで」のようなアッパーなエレクトロポップ歌謡はチャレンジ的な役割として本作では機能しており、本流は筋を通したメロディ勝負にこだわった結果として、突き抜けることはできずにnicoは一旦活動終了することになります。
しかし7年後の1992年にnicoこと嶋田兄弟はユニット名をGARDENに改名してシングル「リダイヤル」で再デビューを果たします。以降はアニメソングとのタイアップを足掛かりに知名度を伸ばすと90年代中盤はギターロックに転身してアルバム・ミニアルバム共に4枚も残します。GARDENとしては最大のヒットであるポケモンブームの波に乗った2003年リリースの「アドバンス・アドベンチャー〜Advanced Adventure〜」が自身の作編曲でない(田中宏和)ことは残念ではありますが、1997年の織田裕二への提供曲「Love Somebody」は大ヒットドラマ「踊る大捜査線」主題歌となりスマッシュヒット、気づけば芸歴も20年超えの長寿ユニットとなったのでした。
<Favorite Songs>
・「YOU YOU YOU」
グリッドなリズムがカッコ良過ぎる本作のニューロマ路線を象徴するシングルカット曲。ギャンギャン攻めてくるオーケストラヒットも強烈ですが、何よりも秀逸なのが青山純のスクエアに叩き出されるドラミングでしょう。時代を席巻したアオジュンドラムがここに極まれりといった印象です。
・「逃げたりしないで」
比較的ロックテイスト寄りなアプローチを見せるエレポップ歌謡。北島健二のギターソロに代表されるいなたさが魅力ですが、こちらもしっかりスクエアビートで支える青山純の貢献度が大きい楽曲です。
・「On Your Birthday」
シーケンスを取り入れたシャープでシリアスなイントロから打って変わったメジャー調のサビからスタートする意表を突かれたバースデーソング。そしてそのサビの曲調がそのまま続いて最後まで通していくものですから、一体あのイントロの期待感は何だったのかと思ってしまうのですが、その意外性は悪くないと思うわけです。
<評点>
・サウンド ★★★ (もう少し開き直ってオケヒットを使っても良かった)
・メロディ ★★ (基本的にメロディメイカーであるがまだ壁を越え切れず)
・リズム ★★★★ (いつの時代も青山純の余韻を残さないドラミングは最高)
・曲構成 ★ (後半にもうひと山見せ場が欲しかったかも)
・個性 ★ (方向転換で勝負に来たが最後にプライドを優先した感)
総合評点: 7点
ゴールデン☆ベスト nico (特典なし)

nico
<members>
嶋田繁:vocal・chorus
嶋田衛:chorus
1.「YOU YOU YOU」 詞:佐藤純子 曲:嶋田衛 編:椎名和夫
2.「肖像画のモデル」 詞:嶋田繁 曲:嶋田衛 編:椎名和夫
3.「黒い瞳のメロディ」 詞:小林和子 曲:嶋田衛 編:椎名和夫
4.「Wasted Summer」 詞:嶋田繁 曲:嶋田衛 編:椎名和夫
5.「逃げたりしないで」 詞:小林和子 曲:嶋田衛 編:椎名和夫
6.「冬の森」 詞:嶋田繁 曲:嶋田衛 編:椎名和夫
7.「水の中のDecember」 詞:嶋田繁 曲:嶋田衛 編:椎名和夫
8.「On Your Birthday」 詞:嶋田繁 曲:嶋田衛 編:椎名和夫
9.「Ceremony」 詞:小林和子 曲:嶋田衛 編:椎名和夫
<support musician>
椎名和夫:electric guitar・chorus
北島健二:electric guitar
安田裕美:acoustic guitar
伊藤広規:electric bass
富倉安生:electric bass
青山純:drums
中西康晴:electric piano・acoustic piano
難波弘之:electric piano・acoustic piano・synthesizer
野力奏一:electric piano・acoustic piano・synthesizer
風間文彦:accordion
浜口茂外也:percussion
ペッカー:percussion
金山功:vibraphone
数原晋:flugelhorn・trumpet
Jake H. Concepcion:alto sax・tenor sax
土岐英史:alto sax・tenor sax
友田グループ:strings
比山清:chorus
新倉芳美:chorus
produced by 椎名和夫
● アーバンエレクトロポップに進化した双子デュオがスタイリッシュかつメロウな側面で勝負に出た3rdアルバム
1982年にシングル「海辺の赤い電話」、鈴木茂プロデュースによるアルバム「To You」でNEWSレコードよりデビューを果たした嶋田繁と嶋田衛の双子兄弟ユニットnicoは、70年代〜80年代初期のニューミュっジックの匂いを残したフォーキーなデュオでしたが、翌1983年の2ndアルバム「Valeria」からはアレンジャーを井上鑑に変更しシンセプログラマーとして浦田恵司が参加したことから、それまでのアコースティックギター主体のサウンドからキーボードの割合が格段に増加、シングルカットされた「燐の踊り子」や「T.Y.O.」といった井上らしいアヴァンなシンセポップにもチャレンジしますが、売れ線には全く乗ることができませんでした。そして2年後にアルファムーンにレコード会社を移籍して登場した3rdアルバムの本作でnicoは大胆な方針転換を図ります。これまでのラフでナチュラルなヴィジュアルイメージから一転して、肩の張ったスーツにビシッとキメた髪型にメイク、いわゆる遅れてきたニューロマンティクステイストに変身したのです。本作から数日後にシングルカットされた「YOU YOU YOU」は以上に振り切ったデジタルニューロマ歌謡で、まさに時代の流れを捉えながらの勝負を賭けてきたという印象でしたが、この象徴的な楽曲にリードされる形でこれまでのイメージを払拭すべくリリースされたのが本作ということになります。
とはいえ、本作は明らかに「YOU YOU YOU」のインパクトが強過ぎたためか、他のアルバム収録曲はやや大人しめといった印象ではあります。しかしそれは本来のnico(作曲は弟の嶋田衛)のメロディメイカーとしての資質にほかならず、2曲目の「肖像画のモデル」からはいわゆる聴かせるタイプの楽曲が並びます。本作のサウンドプロデューサーは初代MOON RIDERSの初代ギタリストであり、山下達郎バンドのギターとして青山純や伊藤広規らと共に主役を支え、さらにシンセプログラマーとしても一流のスキルを持ち合わせていた椎名和夫です。翌年は中森明菜「DESIRE-情熱-」で日本レコード大賞編曲賞を受賞する彼のサウンドメイクには80年代中盤のシーケンサー独特のキレがあり、オーケストラヒットの多用もお手のもの、何よりDX7由来のギラついたFM音源シンセサウンドに達郎バンドのリズム隊が絡む様はミドル80'sのあのデジアナな雰囲気を好むリスナーには格別でしょう。しかしながらあくまで彼らの真骨頂はメロディアスな楽曲とコーラスワークなので、「YOU YOU YOU」や「逃げたりしないで」のようなアッパーなエレクトロポップ歌謡はチャレンジ的な役割として本作では機能しており、本流は筋を通したメロディ勝負にこだわった結果として、突き抜けることはできずにnicoは一旦活動終了することになります。
しかし7年後の1992年にnicoこと嶋田兄弟はユニット名をGARDENに改名してシングル「リダイヤル」で再デビューを果たします。以降はアニメソングとのタイアップを足掛かりに知名度を伸ばすと90年代中盤はギターロックに転身してアルバム・ミニアルバム共に4枚も残します。GARDENとしては最大のヒットであるポケモンブームの波に乗った2003年リリースの「アドバンス・アドベンチャー〜Advanced Adventure〜」が自身の作編曲でない(田中宏和)ことは残念ではありますが、1997年の織田裕二への提供曲「Love Somebody」は大ヒットドラマ「踊る大捜査線」主題歌となりスマッシュヒット、気づけば芸歴も20年超えの長寿ユニットとなったのでした。
<Favorite Songs>
・「YOU YOU YOU」
グリッドなリズムがカッコ良過ぎる本作のニューロマ路線を象徴するシングルカット曲。ギャンギャン攻めてくるオーケストラヒットも強烈ですが、何よりも秀逸なのが青山純のスクエアに叩き出されるドラミングでしょう。時代を席巻したアオジュンドラムがここに極まれりといった印象です。
・「逃げたりしないで」
比較的ロックテイスト寄りなアプローチを見せるエレポップ歌謡。北島健二のギターソロに代表されるいなたさが魅力ですが、こちらもしっかりスクエアビートで支える青山純の貢献度が大きい楽曲です。
・「On Your Birthday」
シーケンスを取り入れたシャープでシリアスなイントロから打って変わったメジャー調のサビからスタートする意表を突かれたバースデーソング。そしてそのサビの曲調がそのまま続いて最後まで通していくものですから、一体あのイントロの期待感は何だったのかと思ってしまうのですが、その意外性は悪くないと思うわけです。
<評点>
・サウンド ★★★ (もう少し開き直ってオケヒットを使っても良かった)
・メロディ ★★ (基本的にメロディメイカーであるがまだ壁を越え切れず)
・リズム ★★★★ (いつの時代も青山純の余韻を残さないドラミングは最高)
・曲構成 ★ (後半にもうひと山見せ場が欲しかったかも)
・個性 ★ (方向転換で勝負に来たが最後にプライドを優先した感)
総合評点: 7点
ゴールデン☆ベスト nico (特典なし)
【特別レビュー】「ナサリー」 無果汁団
皆様、いつも当ブログをご覧いただきありがとうございます。
TECHNOLOGY POPS π3.14です。
さて、通常当ブログは「過去」のTECHNOLOGY POPSな名盤を淡々と紹介しているレビューブログですが、たまに「特別レビュー」と称して現在進行形の作品をより詳細にレビューすることがございます。「特別」というくらいですから、それなりに意味のある作品でなければこのように取り上げることはありませんが、今回はもはや恒例といいますか、過去3作を特別編でレビューさせていただいておりますので、ここまで来たらリリースするたびに特別編で・・・という心持ちで、テクノロジーポップスのマエストロという呼び名も完全に板についてきた無果汁団の4thアルバム「ナサリー」をレビューさせていただきます。
前回は新ヴォーカリストひなふを迎えて、3rdアルバム特有の難しさを克服した無果汁団の3rdアルバム「ひなふトーン」は当ブログ2023年ベストアルバム第1位となり、3rdアルバムの壁を見事にぶち壊してくれたわけですが、4thアルバムとなるといわゆる次の展開、これまでとは異なったアプローチが求められてくる(どこから求められているのかは定かではないですが)ということもあるかと思います。しかし、そこは一貫としてインディーズ。家内制手工業的自主制作で音源を生み出し続けるあの無果汁団ですから、その音楽性の高さにブレはなかったことは、先行MVの「アトモスフィア」を一聴して確認できました(驚いたのは2ndアルバムまでヴォーカリストを務めていたみさきが復帰していたことでしたが)。
今回もお楽しみの帯コピーを確認してみました(笑)
「テクノロジー・ポップスのマエストロ」
「あのテクノロジー・ポップスが帰ってきた。」
とまたしても我がブログ名と標榜しているジャンル名を大々的に使用していただいています(もはや恒例と化していますが)。1stから比較してみますと「テクノロジー・ポップスの救世主」(1st「マドロム」)→「テクノロジー・ポップスの進化系」(2nd「うみねこゲイザー」)→「テクノロジー・ポップスの開拓者」(3rd「ひなふトーン」)→「テクノロジー・ポップスのマエストロ」(4th「ナサリー」)と来ました(よく見返してみると、本ブログの1st「マドロム」のレビューでこの文言「マエストロ」が表題に使われておりました。多分偶然^^;)。テクノロジー・ポップスにまつわる文面としても、「これこそテクノ・ポップもシティ・ポップも超えたハイパー・テクノロジー・ポップスだ!」(1st「マドロム」)→「テクノロジー・ポップスの魔法を信じますか?」(2nd「うみねこゲイザー」)→「はじけとぶぞ、テクノロジー・ポップスが結集してる!!(3rd「ひなふトーン」)→「あのテクノロジー・ポップスが帰ってきた。」(4th「ナサリー」)というように、このバンドのキーワードとしてこれだけ浸透させていただけることには、勝手に感謝しております(今でも3rdの文言は謎を呼んでいますが・・・^^;)。もちろん今さらではありますが、本ブログの趣旨を十分過ぎるほど理解していただき、作品としてこの令和の時代に思う存分表現していただいている無果汁団だからこそ、このテクノロジー・ポップスというキーワードを使用していただけることは、光栄というほかありません。そのようなわけで、本ブログでアルバムリリースのたびに特別レビューとして取り上げることにも、何ら違和感がないものと思われます。
それでは「テクノロジー・ポップスのマエストロ」と化した貫禄すら感じさせる無果汁団の4thアルバム「ナサリー」についてレビューしていきたいと思います。それではお楽しみ下さい(なお、いつもどおりレビューは敬称略になりますのでご了承ください)。
「ナサリー」(2025 MUKAJU RECORDS)
無果汁団

<members>
ショック太郎:all instruments・computer programming
とんCHAN:keyboards・chorus
みさき:vocal
1.「アトモスフィア」 詞:ショック太郎 曲:とんCHAN 編:ショック太郎
2.「TOKIOモノクローム」 詞:ショック太郎 曲:とんCHAN 編:ショック太郎
3.「舞鶴姫」 詞:ショック太郎 曲:とんCHAN 編:ショック太郎
4.「スタビライザー」 詞:ショック太郎 曲:とんCHAN 編:ショック太郎
5.「ナサリー」 詞:ショック太郎 曲:とんCHAN 編:ショック太郎
6.「全自動」 詞:ショック太郎 曲:とんCHAN 編:ショック太郎
7.「コズミック・カフェ」 詞:ショック太郎 曲:とんCHAN 編:ショック太郎
8.「サーマル・ソアリング・グライダー」 詞:ショック太郎 曲:とんCHAN 編:ショック太郎
9.「レムリア」 詞:ショック太郎 曲:とんCHAN 編:ショック太郎
10.「モノローグ」 詞:ショック太郎 曲:とんCHAN 編:ショック太郎
produced by 無果汁団
mixing engineered by ショック太郎
mastering engineered by 佐藤清喜
● ヴォーカリストの復帰で再び物語が始まる!純度の高いテクノロジー・ポップスをさらに熟成させた現在と未来が交錯するコンセプチュアルな4thアルバム
TECHNOLOGY POPSであるがための大事な要素の1つとして、シンセパッド音色の美しさというものがあります。この美しさを決定づけるのがシンセサイザーでいうところのADSR、Attack(立ち上がり)・Decay(減衰)・Sustain(減衰時間の維持)・Release(余韻)というエンベロープ・ジェネレーターで制御される音の鳴りはじめから終わりまでを指定する音色作りの要素で、この部分を丁寧に調整できているか、それこそミックスやマスタリングも含めていかに美しく響かせることができるか、このあたりがTECHNOLOGY POPSを語る上で重視していきたい部分であるわけです。幸いなことに近年はこのパッド音色の調整に長けた楽曲も増えてまいりました。TESTSETの砂原良徳やここ数年の中田ヤスタカなどは非常に質の高いパッドを中心としたサウンドデザインで聴き手を楽しませてくれていますが、2020年のデビュー当時から一貫して美しいシンセパッドを安定して活用しクオリティの高いTECHNOLOGY POPSを生み出し続けているのが、ショック太郎ととんCHANの夫婦クリエイターズユニット無果汁団です。
新ヴォーカリストひなふを迎えた3rdアルバム「ひなふトーン」のリリースが2023年。ひなふの素朴かつポテンシャルの高い歌を全面的にフィーチャーしたアルバムであり、かつショック太郎自身がミックスを手掛けることによりさらに無果汁団ならではの世界観をサウンド面で担保したともいえる傑作であった「ひなふトーン」から2年が経過し、遂に4thアルバム「ナサリー」がリリースされました。しかし、そこには前作の象徴であったひなふの姿は既になく、なんと前作では結婚出産のため脱退or引退したと思われた前ヴォーカリストのみさきが復帰していました。となると、1st〜2ndの頃に原点回帰していくのかと思われましたが、先行MVとして発表された「アトモスフィア」を試聴して、その認識は誤りであったと確信いたしました。髪型やメイクもクールに変身したみさきの堂々とした歌いっぷりに、音の隙間を利用した粒立ちの良いシーケンス、前述のとおり美しさときらびやかさを備えたシンセパッド、浮遊するかのような着地点の難しいメロディラインと3者の個性が見事に散りばめられた貫禄のクオリティには、来るべきアルバムリリースを期待せずにはいられませんでした。
さて、4枚目のアルバムとなるとこれまでに確立された路線が一段落し、今後の新たな展開を模索し始め音楽性が変化し始めたり、いささか過ぎる冒険を試みがちなアーティストも多いのですが、無果汁団にはその心配は杞憂です。それはショック太郎ととんCHANという夫婦で役割がきっちり分担されていることにより、楽曲制作が煮詰まらないように創意工夫されているためであると思われます。作詞・編曲・ミックスエンジニアリングをショック太郎が、作曲・コーラスをとんCHANが担当する楽曲制作スタイル、とんCHAN作曲→ショック編曲・作詞→みさき歌唱→ショックMIXというのが基本的な手順と思われますが、ここではとんCHANが作曲をしていることが大事であり、ショック太郎が全てミックスも含めた楽曲面の全権を握ってしまうと、どうしても視野が狭くなってしまうところを、そこは夫婦の阿吽の呼吸と綾により絶妙なバランスで負担を回避し、それが詰めるべきところは詰めながら楽曲自体のクオリティを向上させることに成功していますし、だからこそこの令和時代に似つかわしくない短いスパンでのアルバムリリースを実現させているのではないかと推測しています。
こうして生まれた4thアルバム「ナサリー」ですが、今回は「本当の意味でのファーストアルバム」であるとか、「史上最高傑作」という声も聞こえてくるなど、リリース前から少々ハードルが高くなっていたことが気になっていました。事実、今回は"現代の病理と未来への希望"というテーマをもとに、前半5曲をmodern side、後半5曲をfuture sideと明確にカテゴリー分けしたコンセプトアルバムという触れ込みもあり、特に個人的には近未来志向な作品は非常に好みであることから期待感も大きくなり過ぎてしまったこともあり、この期待感がもし外れてしまった時の一抹の不安みたいなものもありました。しかし、そこは前回もそんな不安を吹っ飛ばすほどのクオリティを提示したいただいた経験もありますから、そのあたりは絶大な信頼を置いている無果汁団を信じて、ありがたく拝聴させていただきました。その上で、正直に感じたことをレビューさせていただきます。
今回のアルバムは10曲全てが非常に高水準であり、アルバムとしてのまとまりはさすがはコンセプトアルバムということもあり、過去最高の仕上がりと言ってもよいと思います。しかしながら飛び抜けた完成度の楽曲は選びにくく、シングルカットする際には恐らく悩んでしまうでしょう。強いて言えば「アトモスフィア」になるとは思いますが、いわゆるオープナー的な意味合いが強いですし、「舞鶴姫」はアルバム中の隠れた名曲感を醸し出していたり、「サーマル・ソアリング・グライダー」は非常にノリが良く見せ場もある良曲ですがもうひと押し欲しい印象があり、結果として高値のまま推移するものの突き抜けた部分が今のところ感じられない仕上がりかと思います。しかしながら各楽曲の完成度は非常に高いことは言うまでもなく、数字で言えば10点満点中8〜9点が10曲続いていくような感覚です。このようなアルバムは要するに聴けば聴くほど良さが増幅されていく、言うなればスルメ的作品になる可能性が高いので、今後聴き込むにつれてさらに評価は上昇していくことが期待されることでしょう。
今回はmodern side、future sideと場面転換する構成となっていまして、当初は後半のfuture sideに近未来系のマシナリー感満載の楽曲が集まるのでは・・・と予想しておりまして、それだけに「アトモスフィア」を聴いた際には"これはもはやfuture sideなのでは・・"と思ってしまったのですが、アルバムを通して聴いた感想では、サウンド面では余りこの仕分けは意味はなかったかなと思いました。冷静に考えてみれば無果汁団はTECHNOLOGY POPSですから、急にmodernがアコースティックになるはずはないし、そもそもmodernてもう既にTECHNOLOGYが溢れているわけですから、modernとfutureにおよそサウンド面においては違いが出るなんてことはないということなのでしょう。なので、聴き手は安心して全編TECHNOLOGY POPSを楽しめるはずです。となると、sideの違いを演出しているのはやはり歌詞ということで、そこは後半に「全自動」〜「レムリア」までのSF感覚溢れる歌詞世界を集めることで近未来感を生み出したということなのかもしれません。しかし最後の「モノローグ」は現代に帰ってきたような感じもいたしますが・・。
次に楽曲面から見ていきますと、今回は特に復帰したヴォーカルのみさきの存在感が出始めてきたと感じています。これはミックスのおかげかもしれませんが、声の輪郭がハッキリしてきた印象があります。これまでの1st,2nd期の歌唱はつかみどころのないフワッとした声質であったのが、今回はしっかりと滑舌良く歌えていると思いますし、楽曲によっては前ヴォーカルのひなふのような純朴さも兼ね備えた歌唱になっていたりで、格段に成長したという印象があります。その意味でも本作が"本当の意味でのファーストアルバム"と表現されるのもあながち間違いではないのかと思われます。そしてもう1点は冒頭にも触れました芸術的なシンセパッドの多用です。「アトモスフィア」「舞鶴姫」「スタビライザー」「全自動」「コズミック・カフェ」「サーマル・ソアリング・グライダー」そして「レムリア」・・・どれもがADSRの特にSRを繊細かつ緻密に調整した音色が楽曲におけるカラーリングの役目を果たしていて、その絶妙な色合いがセンス溢れるメロディを引き立て、独特のノリを生み出すために解体再構築を繰り返したというリズム隊というベースに魔法のスパイスを施すことによって、YMOマジックならぬ無果汁団マジックなTECHNOLOGY POPSを完成させています(佐藤清喜のマスタリングも相変わらず秀逸)。また、前作まではある種の闇を抱えたような楽曲が数曲収録されていたのですが、今回はそのような楽曲もないことはないのですが、クールではありますが楽曲全体には表れていないといった印象を受けます。
そのようなわけでもはやサウンド面においても、メロディ構築面においても、そのSF観をモチーフとした歌詞世界においても、自身の音楽性を突き詰める方向を選んだ4thアルバムですが、結果としては本作も全く期待を裏切らないスペックとクオリティを備えた作品であることは間違いないと思われます(そもそも本業を抱えている中でこのペースでアルバムを量産すること自体、異様な創作意欲だと思いますが)。2020年のデビューから4枚のアルバムが、全てにおいてハイレベルな仕上がりで、なおかつさらに次作アルバムの制作に間髪入れず移行することが可能なほどのストックを既に持ち合わせていることにはもはや呆れるしかないわけですが、個人的にはここらあたりで一発、壮大なストーリーの大作アルバムなどを期待したいところです。時間がかかってもよいので、音楽史に名を残すほどの大名盤を期待したいというのは高望みに過ぎますでしょうか。そのポテンシャルがこの無果汁団という稀代のクリエイターズユニットにはあるのではないかと思っています。
ということで、それでは前作同様アルバム「ナサリー」に収録された各楽曲を聴きながら、一口解説をしてきましょう。
1.「アトモスフィア」
まさしく本作のリードチューン。小気味良いシンセベースとLo-FiなPCM系ドラムマシンのスネア、リバーブ感たっぷりのシンセパッドがメランコリックな音色と共存して、音の隙間を縫っていくイリュージョナルなサウンドメイクです。効果的なギターフレーズもしっかりと主張しています。サビのメロディラインも実にクールで、もしかすると本作では最もマシナリーな楽曲かもしれません。

2.「TOKIOモノクローム」
2ndから連なる渋め路線な2曲目。どっしりしたリズムにブルージーなギターワークで渋みを出しながら、要所でアタック感のある2種類のシンセパッドがアピール、サビからはガラッとストリングスとコーラスワークが加わってロマンティックなメロディに展開、Aメロからは想像できないほどの盛り上がりを見せます。地味ながらもじんわり染み渡る系の佳曲です。
3.「舞鶴姫」
本作におけるmodern sideのハイライトとなる名曲の匂いを振りまくオリエンタルエレクトロポップ。この楽曲は抜群にメロディラインの訴求力が高いです。そしてみさきのヴォーカルは新境地でしっかり芯を感じる歌唱は、どこか前任のひなふを彷彿とさせる場面もあり、3rdアルバムからの継続性を感じさせます。バシッとサビも決まり、高低を行き来するフレーズも絶妙、途中の機械的なアルペジオやサビ奥のピアノプレイが霞むほどのグッと引き込まれる世界観が素晴らしいというよりほかありません。ラストのテンポが上がってからのコードワークも秀逸。
4.「スタビライザー」
クリアなピアノリフにロングトーンのパッドが絡む、想像よりはシンプルな構造の小曲。控えめながらもテクノなシンセベースに、Cメロからのシンセパッドにギターワークが前面に出てくる部分はミックスの醍醐味で、ラストのエレピソロなども良くできていると思いますが、やはり3分ほどで終わってしまうのは短く感じてしまいます。もう少し長めの展開で聴いてみたかった楽曲です。
5.「ナサリー」
ここに持ってきたタイトルチューン。まるで斉藤由貴(みさきの歌声もどこか似ていますよね?)のアルバムに収録されていそうなこれぞ魅惑の80'sミディアムバラード。一気にあの時代に引き戻されるようなメロディラインが憎さ100倍です。この楽曲に関してはサウンドどうこうというよりは、この美しいメロディをずっと聴いていたい気持ちにさせられます。意外とあっさり終わってしまう感覚もありますが、本作は結構終わり方が淡白な楽曲が多いような印象です。
6.「全自動」
ここからはfuture sideです。シンセやギターの少ない音数を左右にパンさせながらの立体的なプログラミングに、ADSRに気を配ったシンセパッドが実に美しく芸術的です。Aメロ前のフレーズは清水信之の80's化粧品CMソング風味で思わず吹き出してしまいそうです。ラストはアタック感の強いエレピソロでエンディングですが、正直な話を申し上げると、タイトルからはもう少しサイバーな感じに特化したサウンドを想像していました(これも十分サイバーなサウンドデザインではありますが)。
7.「コズミック・カフェ」
こちらは本作でも最も音数が多いのではないかと思わせる緻密なプログラミングが楽しめます。しっかり宇宙感も出ています。ピコピコなシーケンスもピシー!というSEもギュイーンとしたレゾナンスの効いたフレージングも、そのほかにも多彩な電子音が隠されています。オシャレなメロディなのですが、ギラギラしたシンセとギターワークに耳をとられてしまう、サウンド志向の楽曲という認識です。
8.「サーマル・ソアリング・グライダー」
本作では珍しい疾走系のアッパーチューン。出だしの強烈なシンセパッドと、Aメロのバックで鳴るオーロラのようなドリーミーシンセフレーズが美しいことこの上ありません。Cメロのギターワークからコーラスワークが入ってくる部分やリズムワークの中に人力と思われるタムプレイが独特のノリを生み出しています。本作の中ではあっさり感の多いエンディングもしっかりキマっています。
9.「レムリア」
何故か幸福感を感じさせる柔らかい印象のミディアムバラード。コクのあるシンセベースとザップ音のアクセントが軸となり、実は無果汁団の得意技の1つでもあるハーモニカ音色が活躍しています。この楽曲もメロディラインが秀逸で、特に10曲中9曲目感(穏やかさと寂しさを同居させるような)を意識した雰囲気を醸し出すことに成功しています。こちらも3分程度で終わってしまう物足りなさ感もありますが・・・。
10.「モノローグ」
小作品と思いきや、しっかりと作られたラストナンバー。こちらでも別のビブラート気味のハーモニカ音色が活躍しますが、オルガンフレーズやギターワークも加わり、futureというよりもmodernに帰ってきた印象です。この楽曲はみさきのヴォーカルが特徴的で、つかみどころのなさは卒業と言わんばかりの、しっかりとした主張のある歌唱でその成長ぶりを見せつけた格好となっています。
特典CD-R.「Atomosphere (Lovers & Dub)」
最後にディスクユニオンやタワーレコード等で配布された特典CD-Rについて一言。こちらはリードチューン「アトモスフィア」のremixなので、特に申し上げることはありませんが、これは一言でいうとラヴァーズロックです。タイトルにもありますから当然ですが。往年のピチカートファイヴみたいなあの感じです。途中からはPure Jamみたいなフレーズからダブミックスに移行します。ドラムマシン特有のロールタムが好みです。
<評点>
・サウンド ★★★★★(洗練されたシンセパッドにさらに磨きがかかる)
・メロディ ★★★★ (収録楽曲全てにおいて質の高さを担保している)
・リズム ★★★★★(今さらではあるが彼らのリズムセンスに間違いはない)
・曲構成 ★★★ (10曲で40分以内は少し短過ぎるかもしれない)
・個性 ★★★★ (せっかくのコンセプトを活かし切って欲しかったかも)
総合評点: 9点
ナサリー [MKJR-004]

TECHNOLOGY POPS π3.14です。
さて、通常当ブログは「過去」のTECHNOLOGY POPSな名盤を淡々と紹介しているレビューブログですが、たまに「特別レビュー」と称して現在進行形の作品をより詳細にレビューすることがございます。「特別」というくらいですから、それなりに意味のある作品でなければこのように取り上げることはありませんが、今回はもはや恒例といいますか、過去3作を特別編でレビューさせていただいておりますので、ここまで来たらリリースするたびに特別編で・・・という心持ちで、テクノロジーポップスのマエストロという呼び名も完全に板についてきた無果汁団の4thアルバム「ナサリー」をレビューさせていただきます。
前回は新ヴォーカリストひなふを迎えて、3rdアルバム特有の難しさを克服した無果汁団の3rdアルバム「ひなふトーン」は当ブログ2023年ベストアルバム第1位となり、3rdアルバムの壁を見事にぶち壊してくれたわけですが、4thアルバムとなるといわゆる次の展開、これまでとは異なったアプローチが求められてくる(どこから求められているのかは定かではないですが)ということもあるかと思います。しかし、そこは一貫としてインディーズ。家内制手工業的自主制作で音源を生み出し続けるあの無果汁団ですから、その音楽性の高さにブレはなかったことは、先行MVの「アトモスフィア」を一聴して確認できました(驚いたのは2ndアルバムまでヴォーカリストを務めていたみさきが復帰していたことでしたが)。
今回もお楽しみの帯コピーを確認してみました(笑)
「テクノロジー・ポップスのマエストロ」
「あのテクノロジー・ポップスが帰ってきた。」
とまたしても我がブログ名と標榜しているジャンル名を大々的に使用していただいています(もはや恒例と化していますが)。1stから比較してみますと「テクノロジー・ポップスの救世主」(1st「マドロム」)→「テクノロジー・ポップスの進化系」(2nd「うみねこゲイザー」)→「テクノロジー・ポップスの開拓者」(3rd「ひなふトーン」)→「テクノロジー・ポップスのマエストロ」(4th「ナサリー」)と来ました(よく見返してみると、本ブログの1st「マドロム」のレビューでこの文言「マエストロ」が表題に使われておりました。多分偶然^^;)。テクノロジー・ポップスにまつわる文面としても、「これこそテクノ・ポップもシティ・ポップも超えたハイパー・テクノロジー・ポップスだ!」(1st「マドロム」)→「テクノロジー・ポップスの魔法を信じますか?」(2nd「うみねこゲイザー」)→「はじけとぶぞ、テクノロジー・ポップスが結集してる!!(3rd「ひなふトーン」)→「あのテクノロジー・ポップスが帰ってきた。」(4th「ナサリー」)というように、このバンドのキーワードとしてこれだけ浸透させていただけることには、勝手に感謝しております(今でも3rdの文言は謎を呼んでいますが・・・^^;)。もちろん今さらではありますが、本ブログの趣旨を十分過ぎるほど理解していただき、作品としてこの令和の時代に思う存分表現していただいている無果汁団だからこそ、このテクノロジー・ポップスというキーワードを使用していただけることは、光栄というほかありません。そのようなわけで、本ブログでアルバムリリースのたびに特別レビューとして取り上げることにも、何ら違和感がないものと思われます。
それでは「テクノロジー・ポップスのマエストロ」と化した貫禄すら感じさせる無果汁団の4thアルバム「ナサリー」についてレビューしていきたいと思います。それではお楽しみ下さい(なお、いつもどおりレビューは敬称略になりますのでご了承ください)。
「ナサリー」(2025 MUKAJU RECORDS)
無果汁団
<members>
ショック太郎:all instruments・computer programming
とんCHAN:keyboards・chorus
みさき:vocal
1.「アトモスフィア」 詞:ショック太郎 曲:とんCHAN 編:ショック太郎
2.「TOKIOモノクローム」 詞:ショック太郎 曲:とんCHAN 編:ショック太郎
3.「舞鶴姫」 詞:ショック太郎 曲:とんCHAN 編:ショック太郎
4.「スタビライザー」 詞:ショック太郎 曲:とんCHAN 編:ショック太郎
5.「ナサリー」 詞:ショック太郎 曲:とんCHAN 編:ショック太郎
6.「全自動」 詞:ショック太郎 曲:とんCHAN 編:ショック太郎
7.「コズミック・カフェ」 詞:ショック太郎 曲:とんCHAN 編:ショック太郎
8.「サーマル・ソアリング・グライダー」 詞:ショック太郎 曲:とんCHAN 編:ショック太郎
9.「レムリア」 詞:ショック太郎 曲:とんCHAN 編:ショック太郎
10.「モノローグ」 詞:ショック太郎 曲:とんCHAN 編:ショック太郎
produced by 無果汁団
mixing engineered by ショック太郎
mastering engineered by 佐藤清喜
● ヴォーカリストの復帰で再び物語が始まる!純度の高いテクノロジー・ポップスをさらに熟成させた現在と未来が交錯するコンセプチュアルな4thアルバム
TECHNOLOGY POPSであるがための大事な要素の1つとして、シンセパッド音色の美しさというものがあります。この美しさを決定づけるのがシンセサイザーでいうところのADSR、Attack(立ち上がり)・Decay(減衰)・Sustain(減衰時間の維持)・Release(余韻)というエンベロープ・ジェネレーターで制御される音の鳴りはじめから終わりまでを指定する音色作りの要素で、この部分を丁寧に調整できているか、それこそミックスやマスタリングも含めていかに美しく響かせることができるか、このあたりがTECHNOLOGY POPSを語る上で重視していきたい部分であるわけです。幸いなことに近年はこのパッド音色の調整に長けた楽曲も増えてまいりました。TESTSETの砂原良徳やここ数年の中田ヤスタカなどは非常に質の高いパッドを中心としたサウンドデザインで聴き手を楽しませてくれていますが、2020年のデビュー当時から一貫して美しいシンセパッドを安定して活用しクオリティの高いTECHNOLOGY POPSを生み出し続けているのが、ショック太郎ととんCHANの夫婦クリエイターズユニット無果汁団です。
新ヴォーカリストひなふを迎えた3rdアルバム「ひなふトーン」のリリースが2023年。ひなふの素朴かつポテンシャルの高い歌を全面的にフィーチャーしたアルバムであり、かつショック太郎自身がミックスを手掛けることによりさらに無果汁団ならではの世界観をサウンド面で担保したともいえる傑作であった「ひなふトーン」から2年が経過し、遂に4thアルバム「ナサリー」がリリースされました。しかし、そこには前作の象徴であったひなふの姿は既になく、なんと前作では結婚出産のため脱退or引退したと思われた前ヴォーカリストのみさきが復帰していました。となると、1st〜2ndの頃に原点回帰していくのかと思われましたが、先行MVとして発表された「アトモスフィア」を試聴して、その認識は誤りであったと確信いたしました。髪型やメイクもクールに変身したみさきの堂々とした歌いっぷりに、音の隙間を利用した粒立ちの良いシーケンス、前述のとおり美しさときらびやかさを備えたシンセパッド、浮遊するかのような着地点の難しいメロディラインと3者の個性が見事に散りばめられた貫禄のクオリティには、来るべきアルバムリリースを期待せずにはいられませんでした。
さて、4枚目のアルバムとなるとこれまでに確立された路線が一段落し、今後の新たな展開を模索し始め音楽性が変化し始めたり、いささか過ぎる冒険を試みがちなアーティストも多いのですが、無果汁団にはその心配は杞憂です。それはショック太郎ととんCHANという夫婦で役割がきっちり分担されていることにより、楽曲制作が煮詰まらないように創意工夫されているためであると思われます。作詞・編曲・ミックスエンジニアリングをショック太郎が、作曲・コーラスをとんCHANが担当する楽曲制作スタイル、とんCHAN作曲→ショック編曲・作詞→みさき歌唱→ショックMIXというのが基本的な手順と思われますが、ここではとんCHANが作曲をしていることが大事であり、ショック太郎が全てミックスも含めた楽曲面の全権を握ってしまうと、どうしても視野が狭くなってしまうところを、そこは夫婦の阿吽の呼吸と綾により絶妙なバランスで負担を回避し、それが詰めるべきところは詰めながら楽曲自体のクオリティを向上させることに成功していますし、だからこそこの令和時代に似つかわしくない短いスパンでのアルバムリリースを実現させているのではないかと推測しています。
こうして生まれた4thアルバム「ナサリー」ですが、今回は「本当の意味でのファーストアルバム」であるとか、「史上最高傑作」という声も聞こえてくるなど、リリース前から少々ハードルが高くなっていたことが気になっていました。事実、今回は"現代の病理と未来への希望"というテーマをもとに、前半5曲をmodern side、後半5曲をfuture sideと明確にカテゴリー分けしたコンセプトアルバムという触れ込みもあり、特に個人的には近未来志向な作品は非常に好みであることから期待感も大きくなり過ぎてしまったこともあり、この期待感がもし外れてしまった時の一抹の不安みたいなものもありました。しかし、そこは前回もそんな不安を吹っ飛ばすほどのクオリティを提示したいただいた経験もありますから、そのあたりは絶大な信頼を置いている無果汁団を信じて、ありがたく拝聴させていただきました。その上で、正直に感じたことをレビューさせていただきます。
今回のアルバムは10曲全てが非常に高水準であり、アルバムとしてのまとまりはさすがはコンセプトアルバムということもあり、過去最高の仕上がりと言ってもよいと思います。しかしながら飛び抜けた完成度の楽曲は選びにくく、シングルカットする際には恐らく悩んでしまうでしょう。強いて言えば「アトモスフィア」になるとは思いますが、いわゆるオープナー的な意味合いが強いですし、「舞鶴姫」はアルバム中の隠れた名曲感を醸し出していたり、「サーマル・ソアリング・グライダー」は非常にノリが良く見せ場もある良曲ですがもうひと押し欲しい印象があり、結果として高値のまま推移するものの突き抜けた部分が今のところ感じられない仕上がりかと思います。しかしながら各楽曲の完成度は非常に高いことは言うまでもなく、数字で言えば10点満点中8〜9点が10曲続いていくような感覚です。このようなアルバムは要するに聴けば聴くほど良さが増幅されていく、言うなればスルメ的作品になる可能性が高いので、今後聴き込むにつれてさらに評価は上昇していくことが期待されることでしょう。
今回はmodern side、future sideと場面転換する構成となっていまして、当初は後半のfuture sideに近未来系のマシナリー感満載の楽曲が集まるのでは・・・と予想しておりまして、それだけに「アトモスフィア」を聴いた際には"これはもはやfuture sideなのでは・・"と思ってしまったのですが、アルバムを通して聴いた感想では、サウンド面では余りこの仕分けは意味はなかったかなと思いました。冷静に考えてみれば無果汁団はTECHNOLOGY POPSですから、急にmodernがアコースティックになるはずはないし、そもそもmodernてもう既にTECHNOLOGYが溢れているわけですから、modernとfutureにおよそサウンド面においては違いが出るなんてことはないということなのでしょう。なので、聴き手は安心して全編TECHNOLOGY POPSを楽しめるはずです。となると、sideの違いを演出しているのはやはり歌詞ということで、そこは後半に「全自動」〜「レムリア」までのSF感覚溢れる歌詞世界を集めることで近未来感を生み出したということなのかもしれません。しかし最後の「モノローグ」は現代に帰ってきたような感じもいたしますが・・。
次に楽曲面から見ていきますと、今回は特に復帰したヴォーカルのみさきの存在感が出始めてきたと感じています。これはミックスのおかげかもしれませんが、声の輪郭がハッキリしてきた印象があります。これまでの1st,2nd期の歌唱はつかみどころのないフワッとした声質であったのが、今回はしっかりと滑舌良く歌えていると思いますし、楽曲によっては前ヴォーカルのひなふのような純朴さも兼ね備えた歌唱になっていたりで、格段に成長したという印象があります。その意味でも本作が"本当の意味でのファーストアルバム"と表現されるのもあながち間違いではないのかと思われます。そしてもう1点は冒頭にも触れました芸術的なシンセパッドの多用です。「アトモスフィア」「舞鶴姫」「スタビライザー」「全自動」「コズミック・カフェ」「サーマル・ソアリング・グライダー」そして「レムリア」・・・どれもがADSRの特にSRを繊細かつ緻密に調整した音色が楽曲におけるカラーリングの役目を果たしていて、その絶妙な色合いがセンス溢れるメロディを引き立て、独特のノリを生み出すために解体再構築を繰り返したというリズム隊というベースに魔法のスパイスを施すことによって、YMOマジックならぬ無果汁団マジックなTECHNOLOGY POPSを完成させています(佐藤清喜のマスタリングも相変わらず秀逸)。また、前作まではある種の闇を抱えたような楽曲が数曲収録されていたのですが、今回はそのような楽曲もないことはないのですが、クールではありますが楽曲全体には表れていないといった印象を受けます。
そのようなわけでもはやサウンド面においても、メロディ構築面においても、そのSF観をモチーフとした歌詞世界においても、自身の音楽性を突き詰める方向を選んだ4thアルバムですが、結果としては本作も全く期待を裏切らないスペックとクオリティを備えた作品であることは間違いないと思われます(そもそも本業を抱えている中でこのペースでアルバムを量産すること自体、異様な創作意欲だと思いますが)。2020年のデビューから4枚のアルバムが、全てにおいてハイレベルな仕上がりで、なおかつさらに次作アルバムの制作に間髪入れず移行することが可能なほどのストックを既に持ち合わせていることにはもはや呆れるしかないわけですが、個人的にはここらあたりで一発、壮大なストーリーの大作アルバムなどを期待したいところです。時間がかかってもよいので、音楽史に名を残すほどの大名盤を期待したいというのは高望みに過ぎますでしょうか。そのポテンシャルがこの無果汁団という稀代のクリエイターズユニットにはあるのではないかと思っています。
ということで、それでは前作同様アルバム「ナサリー」に収録された各楽曲を聴きながら、一口解説をしてきましょう。
1.「アトモスフィア」
まさしく本作のリードチューン。小気味良いシンセベースとLo-FiなPCM系ドラムマシンのスネア、リバーブ感たっぷりのシンセパッドがメランコリックな音色と共存して、音の隙間を縫っていくイリュージョナルなサウンドメイクです。効果的なギターフレーズもしっかりと主張しています。サビのメロディラインも実にクールで、もしかすると本作では最もマシナリーな楽曲かもしれません。
2.「TOKIOモノクローム」
2ndから連なる渋め路線な2曲目。どっしりしたリズムにブルージーなギターワークで渋みを出しながら、要所でアタック感のある2種類のシンセパッドがアピール、サビからはガラッとストリングスとコーラスワークが加わってロマンティックなメロディに展開、Aメロからは想像できないほどの盛り上がりを見せます。地味ながらもじんわり染み渡る系の佳曲です。
3.「舞鶴姫」
本作におけるmodern sideのハイライトとなる名曲の匂いを振りまくオリエンタルエレクトロポップ。この楽曲は抜群にメロディラインの訴求力が高いです。そしてみさきのヴォーカルは新境地でしっかり芯を感じる歌唱は、どこか前任のひなふを彷彿とさせる場面もあり、3rdアルバムからの継続性を感じさせます。バシッとサビも決まり、高低を行き来するフレーズも絶妙、途中の機械的なアルペジオやサビ奥のピアノプレイが霞むほどのグッと引き込まれる世界観が素晴らしいというよりほかありません。ラストのテンポが上がってからのコードワークも秀逸。
4.「スタビライザー」
クリアなピアノリフにロングトーンのパッドが絡む、想像よりはシンプルな構造の小曲。控えめながらもテクノなシンセベースに、Cメロからのシンセパッドにギターワークが前面に出てくる部分はミックスの醍醐味で、ラストのエレピソロなども良くできていると思いますが、やはり3分ほどで終わってしまうのは短く感じてしまいます。もう少し長めの展開で聴いてみたかった楽曲です。
5.「ナサリー」
ここに持ってきたタイトルチューン。まるで斉藤由貴(みさきの歌声もどこか似ていますよね?)のアルバムに収録されていそうなこれぞ魅惑の80'sミディアムバラード。一気にあの時代に引き戻されるようなメロディラインが憎さ100倍です。この楽曲に関してはサウンドどうこうというよりは、この美しいメロディをずっと聴いていたい気持ちにさせられます。意外とあっさり終わってしまう感覚もありますが、本作は結構終わり方が淡白な楽曲が多いような印象です。
6.「全自動」
ここからはfuture sideです。シンセやギターの少ない音数を左右にパンさせながらの立体的なプログラミングに、ADSRに気を配ったシンセパッドが実に美しく芸術的です。Aメロ前のフレーズは清水信之の80's化粧品CMソング風味で思わず吹き出してしまいそうです。ラストはアタック感の強いエレピソロでエンディングですが、正直な話を申し上げると、タイトルからはもう少しサイバーな感じに特化したサウンドを想像していました(これも十分サイバーなサウンドデザインではありますが)。
7.「コズミック・カフェ」
こちらは本作でも最も音数が多いのではないかと思わせる緻密なプログラミングが楽しめます。しっかり宇宙感も出ています。ピコピコなシーケンスもピシー!というSEもギュイーンとしたレゾナンスの効いたフレージングも、そのほかにも多彩な電子音が隠されています。オシャレなメロディなのですが、ギラギラしたシンセとギターワークに耳をとられてしまう、サウンド志向の楽曲という認識です。
8.「サーマル・ソアリング・グライダー」
本作では珍しい疾走系のアッパーチューン。出だしの強烈なシンセパッドと、Aメロのバックで鳴るオーロラのようなドリーミーシンセフレーズが美しいことこの上ありません。Cメロのギターワークからコーラスワークが入ってくる部分やリズムワークの中に人力と思われるタムプレイが独特のノリを生み出しています。本作の中ではあっさり感の多いエンディングもしっかりキマっています。
9.「レムリア」
何故か幸福感を感じさせる柔らかい印象のミディアムバラード。コクのあるシンセベースとザップ音のアクセントが軸となり、実は無果汁団の得意技の1つでもあるハーモニカ音色が活躍しています。この楽曲もメロディラインが秀逸で、特に10曲中9曲目感(穏やかさと寂しさを同居させるような)を意識した雰囲気を醸し出すことに成功しています。こちらも3分程度で終わってしまう物足りなさ感もありますが・・・。
10.「モノローグ」
小作品と思いきや、しっかりと作られたラストナンバー。こちらでも別のビブラート気味のハーモニカ音色が活躍しますが、オルガンフレーズやギターワークも加わり、futureというよりもmodernに帰ってきた印象です。この楽曲はみさきのヴォーカルが特徴的で、つかみどころのなさは卒業と言わんばかりの、しっかりとした主張のある歌唱でその成長ぶりを見せつけた格好となっています。
特典CD-R.「Atomosphere (Lovers & Dub)」
最後にディスクユニオンやタワーレコード等で配布された特典CD-Rについて一言。こちらはリードチューン「アトモスフィア」のremixなので、特に申し上げることはありませんが、これは一言でいうとラヴァーズロックです。タイトルにもありますから当然ですが。往年のピチカートファイヴみたいなあの感じです。途中からはPure Jamみたいなフレーズからダブミックスに移行します。ドラムマシン特有のロールタムが好みです。
<評点>
・サウンド ★★★★★(洗練されたシンセパッドにさらに磨きがかかる)
・メロディ ★★★★ (収録楽曲全てにおいて質の高さを担保している)
・リズム ★★★★★(今さらではあるが彼らのリズムセンスに間違いはない)
・曲構成 ★★★ (10曲で40分以内は少し短過ぎるかもしれない)
・個性 ★★★★ (せっかくのコンセプトを活かし切って欲しかったかも)
総合評点: 9点
ナサリー [MKJR-004]