東野篤子先生が引用されている2023年のイタリア・メローニ首相の議会演説は感動的で当時大きな話題になっていたのですが、失念されている方もいると思うので改めて背景説明と日本語訳を呟いておきます。
演説日時・場所:2023年6月28日、ローマのイタリア下院(Camera dei Deputati)本会議場
場面:首相メローニが、翌日からブリュッセルで開かれる欧州理事会(6/29–6/30)に向けた対イタリア議会「コミュニケーション」を行い、その後の討論を受けて再答弁(replica)している場面
全文(イタリア語):documenti.camera.it/leg19/resocont
動画:rainews.it/video/2023/06/
知っていると胸が熱い補足:「パオロ・ボルセリーノ」と「ジョバンニ・ファルコーネ」は、イタリアの反マフィア闘争を象徴する司法官。それまで政界・財界にまで深く入り込んでいたイタリアマフィアに対し、1980年代後半から(度重なる脅迫にひるまず)法執行を断行。1992年に相次いで警護もろとも爆殺された(カパーチ襲撃/ヴィア・ダメリオ事件)。イタリアでは「自由と法の支配のために命を賭した人々」の代表的存在。
【演説(当該クリップ部分)の日本語訳】
(ウクライナをめぐる議論について)
わたしはこれまでも、皆さんに何度も問いかけてきました。
あなた方(ウクライナに対しての支援を止め、降伏を受け入れろという政治勢力)が「受け入れろ」と言う条件は、具体的に何なのか。
占領地で行われた住民投票を認めるのか、領土を差し出すのか。
けれども、誰ひとりとして具体案を言わない。
具体的に言ってくれれば、わたしはそれが正しいのか、誤っているのか、ここで堂々と論じます。
わたしは、平和のためにいまわたしたちがやっていることこそが、いちばん真剣な道だと信じているからです。
でも結局のところ……、真実を言いたくないのでしょう。
先日、わたしはテレビ番組を目にしました。
(「五つ星運動」の参考人のように扱われる知識人としてドメニコ・デ・マーシの名を挙げ)
その番組で彼は、ウクライナをめぐるあなた方の立場を説明する文脈で、こう言った。
「死ぬくらいなら、独裁の下で生きるほうがましだ」と。
その瞬間、彼らの仮面がはがれました。
その一言は、わたしたちの文明が何世紀もかけて築いてきたもの、自由、民主主義、そしてわたしたちの価値が、どれほどの犠牲の上に成り立っているかを、まとめて踏みにじる言葉です。
そしてそれは何よりも……、パオロ・ボルセリーノ、ジョバンニ・ファルコーネ、そして、かつてマフィアと闘ったすべての人々が選び取った「道」を踏みにじる言葉です。
わたしは、「独裁の下で生きるほうがましだ」などとは、断じて思わない。
わたしたちがやるべきことは、人々が自由に生きられるように働くことです。
これが、いまわたしたちがやっていることと、あなた方が提案していることの決定的な違いです。
(演説動画のクリップここまで)
ここからは上記動画とは別件ですが、イタリア・メローニ首相の議会答弁でいうと、2023年3月22日の下院答弁も非常に有名です。
上記動画でも議論の端緒となっている「五つ星運動(M5S)」のエリザ・スクテッラ議員からの、「武器支援をめぐり一度止まって(fermatevi)、ロシアと交渉しましょう」という質問に対して、メローニ首相が「その“止まれ”(fermatevi)はわたしにではなくプーチンに言うべきだ。こちらが止まれば侵略を容認することになる」と強い口調で反論した答弁です。
youtube.com/watch?v=ZA_ZrN
(引用ここから)
わたしたちが「止まる」なら、わたしたちはウクライナへの侵略を容認することになる。
わたしは、侵略を「平和」という言葉にすり替えるような、そんな偽善はしません。
(引用ここまで)
ジョルジャ・メローニ首相、世界のトップの中でも有数の対ロシア強硬派(ウクライナ支援強化派)です。そのメローニ首相が、(G8復帰には反対しつつ、特使を派遣するかたちで)「EUはロシアと対話を始めるべきだ」と語ったのは、重要な政治的転換点だと考えます。もちろん何をどう対話するか、が重要なうえで。