E・H・カー『危機の二十年』の洞察

E・H・カー『危機の二十年』は、文庫版も出ている稀有なレベルの国際政治学の古典である。85年前の1939年の出版だが、全く色あせていない。第二次世界大戦勃発前夜の緊張感を伝えてくれるだけではない。なぜ第一次世界大戦後の国際秩序の刷新がうまくいかなかったのかを、大局的かつ鋭利な視点で教えてくれる。

第一次世界大戦後の国際秩序は、米・英・仏の戦勝国が主導して形成された。特にアメリカの覇権国としての権勢が作られたのが、この時だ。この「両大戦間期」の構図が、冷戦終焉後の様子とも似ている。そのため15年ほど前に、「新しい危機の二十年」といったタイトルの文章が、よく見られる現象が起こった。

冷戦終焉後の世界の「危機」は深まり続けている。今は、「新しい危機の35年」といったことを考えてみなければならない時代になっている。

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なぜアメリカ主導の新しい国際秩序は、行き詰ってしまったのか。これが我々の時代の問いである。85年前、カーは、同じ問いを発していた。

今日、多くの人々が、「それはロシアが邪悪だからだ、中国が邪悪だからだ、北朝鮮も、イランも、ハマスも、邪悪だからだ」といった解答を語り合っている。

カーの解答は、少し違っていた。そしてその違いのために、彼の著作は古典となった。

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