映像だけ見れば、キャリアの到達点。世間との温度差
一方、一線で活躍するアニメーターたちの受け止めは、世間の酷評とはかなり温度差がある。アニメ制作会社でアニメーターとして長年勤めているB氏は語る。
「映像の完成度だけで言えば、これまでの細田作品の中でもトップレベルだと思います。大胆なカメラワークと鮮やかなタッチを使った背景描写は彼にしか描き出せないものだし、戦闘シーンもアニメとは思えない迫力を感じました。また、CGと手描きの本格的な融合、映画的なカメラワーク、光や質感への徹底したこだわり。細田作品が次の段階に進んでいると強く思いました。
キャラクターの表情、特に主人公・スカーレットの表情の作りには、かなり神経を使っていたと思います。セリフがそこまで多くなかったキャラクターゆえ、動きと間で感情を伝えなければならない。
また、天国や地獄を超越した異世界を表現するために、壮大な空間や物々しい空気感を作り上げるために、相当な時間を費やしたと聞いています。アニメーターとしては、挑戦しがいのある仕事だったのではないでしょうか」
だからこそ、公開後の反応には複雑な思いがある。
「映像が評価されているのは救いですが、『中身がない』『分からない』と言われると、どうしても悔しさは残りますね。どれだけ画のクオリティーを詰めても、物語に乗ってもらえなければ届かない。その現実を、これほど痛感したことはありません。しかし、アニメーターは監督を信じて作り続けるしかない。今回のような批判はショックだったと思います」
アニメーターの目線から見た『果てしなきスカーレット』は、現場の達成感と、社会的評価の乖離が最も激しかった作品でもあったようだ。
後編『細田守『果てしなきスカーレット』が大コケした理由…業界人が語る作品の【致命的欠陥】』では、引き続き業界人による果てしなきスカーレット評をお届けします。