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最初から当てにいく企画ではなかった

まず、企画全体を俯瞰するプロデュース視点から見ると、本作の位置づけは明確だという。民放キー局でアニメ関連のプロデューサーを務めるA氏はこう語る。

「正直に言えば、これはヒットを狙うための映画ではなかったと思います。作家としての細田守が、今どういう表現をしたいのかを最優先した企画だったと思います。重層的なファンタジー世界、宗教的とも言えるテーマ、明確な説明を避けた構成。いずれも、現代の日本アニメ市場では相性が良いとは言えない要素ばかり。

『国宝』のヒットに見られるように、今の映画市場は、初週の数字とネットの空気でほぼ評価が決まってしまう。理解に時間がかかる映画は、その時点で不利だったとは思います」

それでもこの企画を通したのは、細田守にとって“作家のフェーズが変わった”という判断からだったのではないかとA氏は言う。

画像:映画『果てしなきスカーレット』公式サイト
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「命の再生と贖罪といった重厚なテーマに挑み、従来の細田守らしい老若男女が楽しめる作品から大きく離れた大人向けのファンタジーに移行した。それにより、作家性を強めることができた。また、海外の市場でも受け入れられるように、アニメの世界設定を日本に絞らずに、西洋的な要素や異世界を取り入れていた。このあたりは、細田守の進化は信じていたからだと思います」

しかし同時に、A氏は今回の反発を想定外とも語る。

「ここまで拒否反応が強く出るとは、正直思っていなかった。『難しい』ではなく『許せない』という感情が一部で噴き出した。これは単なる内容の問題というより、期待との落差が引き起こした現象だと思います」

つまりプロデューサーの目から見た『スカーレット』は、市場を読み切れなかった失敗作というよりは市場と正面衝突した企画だった。

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