by Gettyimages

ベネズエラの原油では儲からない

私がこのように説明しても、「いやいや、世界最大の埋蔵量を誇るベネズエラの石油を奪って儲けることこそがアメリカの真の目的なんだ」という人も、きっといるに違いない。

確かにルビオ国務長官は「我々はアメリカの巨大石油企業に入ってもらい、数十億ドルの投資を行い、傷んだ石油インフラを修理させ、ベネズエラのためにお金を儲けさせ始めるつもりだ」と言っている。トランプ大統領も同様の発言をしているのは、ご存知の方も多いだろう。ルビオ国務長官は、口先では「ベネズエラのために(正確には「その国のために」)」と言っているが、そんなことはキレイゴトで、実際に儲けるのはアメリカの巨大石油企業なんだろうという見方もできなくはない。

ベネズエラ・カビマス油田 by Gettyimages
イメージギャラリーで見る

だが、ベネズエラ国営石油会社PDVSA(ペトロレオス・デ・ベネズエラ)の見積もりによっても、インフラを更新してピーク生産レベルに戻すには580億ドル(9兆円)の費用がかかるとされている。1998年のチャベス政権誕生以降に、ずっと設備更新のための投資を怠ってきたからだ。チャベス政権はそうした費用を節約する一方で、浮いたお金でバラ色のばら撒き政策を実現して国民の支持を集め、さらには国外の社会主義勢力の支援にも、大盤振る舞いしてきた。

当時チャベスが率いるベネズエラは、世界の左翼政権の輝ける星だった。資本家による搾取をなくせば、こんなに豊かに生活できるんだということを、世界に証明したようにも見えたのだ。だが、チャベス政権末期頃から経済は壁にぶつかり始め、マドゥロ政権になってから、奈落の底に経済が落ち込んでいくことになった。

話を元に戻そう。必要なインフラ更新に総計580億ドルかかるとすると、年間で100億ドル(1兆5000億円)ずつ負担しても、6年間必要になってくる。この資金を米企業が回収するのは、現実にはたやすい話ではない。

-AD-

そもそもベネズエラの原油の大半は、質の悪い超重質油だ。ドロドロとした重い油なので、掘り出そうにも地表に簡単に浮いて出てくるわけではない。掘り出すためにはかなりの技術とコストが必要になる。たとえ掘り出せたとしてもドロドロすぎて、そのままでは普通の製油所で処理することもできない。粘度を下げるためには粘度の小さいナフサなどを加え、さらに不純物を取り除く別工程も必要になる。

こうした処理を「アップグレード処理」というが、これをやらないと、普通の製油所に入れることもできない。つまり、産出後の処理にも余計な作業が加わる。軽質油と比べた場合に、掘り出しに余計なコストがかかるのに、さらに値段を下げないと売れないのである。今の原油価格を前提とするなら、利益を上げることはかなり難しいのが実際ではないか。

おすすめ記事