プリキュア「生みの親」鷲尾天さんが語る、なぜ今『パンダなりきりたいそう』の“アニメ化”をやるのか…? その「意外なワケ」と「知られざる舞台裏」

鷲尾天さんといえば「プリキュアの生みの親」として知られるアニメーション業界の名プロデューサー。凛々しい女の子たちのアニメは熱狂的に受け入れられ、20年たった今も不動の地位を築いている。そんな鷲尾さんが現在取り組んでいるのは、これまで手がけた中でもっとも低年齢の0・1・2歳をメインターゲットとした、絵本「パンダたいそう」シリーズ(いりやまさとし作)。2024年3月にYouTubeでシーズン1が公開され、2024年11月にはシーズン3がはじまった。なぜ今、アニメ『パンダなりきりたいそう』だったのだろうか。

「パンダたいそう」に注目したのは「パンダの目」!

絵本「パンダたいそう」シリーズ映像化の話が持ち上がったのは、遡ると2016年だという。今でこそシリーズ35万部を超える幼児絵本の大ヒット作となっているが、当時はまだ『パンダともだちたいそう』『パンダなりきりたいそう』(いりやまさとし作)の2冊が発売されたばかり。まだ知られていない絵本だった。

「パンダたいそう」を初めて見たときの印象を、鷲尾さんはこう語る。

「最初は、『わっ、かわいい。子どもたちがこれを見たら喜ぶだろうな』という直感です。とにかく、作者・いりやまさとしさんが描く「パンダの目」がいいんですよ。すごく自然でまっすぐで、まったくこちらに媚びを売ってない。体操してごらん、おどってごらんと目が誘ってるんですよね。で、動きはじめたら一所懸命でこっちなんか見てない(笑)」

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パンダの特徴である、目のまわりの黒い模様を、いりやまさんはあえて垂れ目ふうに描いていないのではないかと鷲尾さんはいう。縦長の黒い模様の中に、黒目。しかもハイライト(キラキラした効果を演出する白色)もほとんどない、ただの黒目だ。本来、目は、可愛らしくしようと思えば、描き方でいくらでも可愛らしくできるという。

「いりやまさんの描くパンダは、可愛いキャラクターになっている他のパンダとは、なんだか違うものなんですよね。正直、黒い縁取りの中の黒目の雰囲気を、アニメーションで再現するのはむずかしそうだなと思いました。でもこのまっすぐな目は作家さんの武器だと思いました」

大切なのは、日常のリアリティを追求すること

『ドラゴンボール』『ワンピース』『美少女戦士セーラームーン』『プリキュア』シリーズなどを手がけてきた東映アニメーションは冒険アクションものを得意としている。

「私自身、30代で中途採用試験を受けて東映アニメーションに入りましたが、そもそも小学生の頃『マジンガーZ』や『サイボーグ009』が大好きで、おもちゃも買ってもらったし歌もまだ歌える。そういう会社なら受けてみるかという気持ちでした」

1998年に入社した鷲尾さんは『キン肉マン2世』『釣りバカ日誌』などのプロデュースをしたのち、2004年にアニメ監督の西尾大介さんと組んでのちの大ヒット作となる『ふたりはプリキュア』を制作する。このとき、ストーリーの盛り上がりやアクションなどの見せ場だけでなく、キャラクターの日常のリアリティを丁寧に追求していく西尾さんの制作姿勢に影響を受けたという。

「たとえば『金田一少年の事件簿』では、西尾さんは、事件に遭遇した金田一と美雪の驚きをちゃんと表現してくれと毎回必ずスタッフや声優に伝えていました。彼らは普通の高校生だから、決して事件に慣れてはいけない。遭遇するたびに大声で驚いてくれと。テレビシリーズは3年間でしたから、おそらく3年間スタッフにいい続けたんでしょう(笑)。そうした姿勢を近くで見ていたことは自分の原点のひとつだと思います」