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ADHD特性が無謀な投資と関連か ドイツ・現役投資家を対象とした横断研究

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※画像はイメージです

 世界において、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の成人有病率は2.6%と推定されている。ADHDは職業的/社会的機能に影響を及ぼし( J Atten Disord 2015;19:368-379 )、成人ADHD患者は衝動的な支出、債務の累積、貯金の困難などから経済的困窮に陥りやすいとされるが、オンライントレードなどのような高いリスクを伴う金融行動とADHD特性の関連についてはエビデンスが少ない。ドイツ・University Hospital BonnのMax Witry氏らは、現役のオンライントレーダー(以下、投資家)945人を対象とした横断研究を実施。解析の結果、「ADHD特性は経済的なリスク許容度(FRT)と正の相関を示し、ポートフォリオパフォーマンス(運用成果)と負の相関を示した」とSci Rep( 2025;15:32011 )に報告した。(関連記事:「 成人ADHD治療用アプリが性能評価開始、薬事申請へ前進 」)

945人を対象に質問票調査

 対象は、投資アプリやfinanzen.netなどの金融フォーラム、ADHD関連団体、General Anzeiger Bonnなどの地方紙で募集し、2024年9月5日~11月7日にオンライン質問票調査に回答したドイツ語話者の現役投資家945人(平均年齢35.5±11.95歳、男性74.5%)。なお、回答時間が極端に短い者、運用成果や取引頻度に関するデータが欠損する者などは除外した。

 主要評価項目はADHD特性とFRTの関連とした。ADHD特性の評価には、全22項目から成る成人ADHDに関する自己回答式質問票ADHS-Selbstbeurteilungsskalaスコア(ADHS-SBスコア、0~54点、高いほどADHDの疑いが強い、 Nervenarzt 2004;75:888-895 )を用いた。FRTについては、全20項目から成るGrable Risk Tolerance Scale(FRTスコア、0~47点、高値ほどリスクに対して寛容、 Financ Serv Rev.1999;8:163-181 )で評価した。

4分の3は取引頻度「月5回以下」

 参加者の社会経済的背景について、婚姻状態は既婚が37.3%、独身が34.8%、子を持たない者が62.6%だった。教育歴は高卒が66.1%、大卒が48.0%、博士課程修了者が12.4%、博士研究員が1.7%と高学歴者の割合が高かった。収入は月収3,000ユーロ超(約52万円)との回答が全体の約6割を占め、ドイツの平均月収よりも高い水準の者が多かった。

 金融行動について、毎日複数回ポートフォリオを確認すると回答した割合は30.1%と約3分の1に上った。投資先の好みは上場投資信託(ETF)が50.6%、個別株が26.5%、不動産が9.9%だった。過去1年間の運用成果がプラスだったと回答した割合は9割を占め、「0~10%増加」が約5割、「10~20%増加」が3割、「20%超増加」が約1割だった。取引頻度は約4分の3が「月5回以下」と回答していた( )。

図.金融行動:主な資産(A)、過去1年間の運用成果(B)、資産追跡(C)、取引頻度(D)

(Sci Rep 2025;15:32011)

取引頻度増がADHDスコア上昇と関連

 ADHS-SBスコアの平均値は17.53±13.9点だった。Witry氏らは『精神疾患の分類と診断の手引第5版(DSM-5)』に基づき検討し、5.7%(54人)をADHDスクリーニング陽性と判定した(注意欠如型30人、多動型17人、混合型7人)。

 平均FRTスコアは29.5±5.9点だった。ADHDスクリーニング陽性群は、ADHDスクリーニング陰性群に比べ、有意に平均FRTスコアが高かった(30.9点vs.29.4点、P=0.025)。FRTスコアはADHD特性と弱い正の相関を示しており(r=0.079、P=0.015)、特に注意欠如症状と関連していた(r=0.103、P=0.01)。さらに、ADHD特性は過去1年間の運用成果と弱い負の相関を示した(r=-0.075、P=0.02)。また多重線形回帰分析の結果、取引頻度の上昇がADHS-SBスコア上昇の有意な予測因子として抽出された(B=0.769、P=0.046)。

 研究の限界について同氏は〈1〉横断研究のため因果関係は推定できない、〈2〉ADHD特性の評価は自己報告データに基づく、〈3〉観測された効果量が比較的小さい、〈4〉参加者の社会経済的背景に偏りがあり一般集団への外挿は難しい-ことなどを挙げ、「ADHD特性と金融行動の関係をより厳密に評価するため、さらなる研究が求められる」と付言した。

 その上で同氏は「注意欠如症状などのADHD特性とFRTに有意な関連が認められた。ADHD特性は運用成果と負の相関も示していることから、意思決定の障害が最適でない金融行動と結果をもたらしていると考えられる」と結論。「実臨床では、両者のこのような関係性について患者と共有し、必要に応じて予防的介入を考慮するとよいだろう」との考えを示した。(編集部・小田周平)

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