スポーツのあなぐら

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プロ野球の先発投手が「メジャーと同じ100球交代」なのはなぜか

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MLBの「100球交代」と「MLBと同じ100球交代」

プロ野球の先発投手に対しては
「中6日(かそれ以上)で投げているのに
中4日のメジャーリーグと同じ100球交代をしている。
甘やかしすぎだ」という批判が
今も頻繁に見られる。
ファンだけじゃなくプロ野球OB、
近年コーチや監督から離れていたOBだけじゃなく
つい最近まで投手コーチをしていた解説者などからも
しばしば耳にする批判だ。

 

「100球交代」の認識の違い

だが現在のプロ野球
現在のメジャーリーグの「100球交代」は
全くの別物である。

2025MLB.NPB球数

この通り、違いは一目瞭然。
日本は100球前後での交代が多いのに対し
MLBは100球未満での交代が非常に多い。
そして日本は
120球以上投げるケースがはるかに多い

過去10年NPB球数

これでもプロ野球の120球超は近年かなり減っており、
2016年から20年にかけて激減した結果だ。

しかしこうも今のMLBとは違う、
日本における「MLBのような100球交代」とは
いつごろのMLBを指しているのか。

1998-2011MLB球数

2012-25MLB球数

現在のNPBに比較的近いのは2000年代から10年代前半。
先発が100球以上投げる試合の比率は
最近の日本より若干高いものの、
120球以上投げる試合のほうは
2000年ごろから2005年にかけて急速に減ったMLBの中で
2001、02年が近くなる。
野茂英雄が移籍した1995年以降の影響もあるだろうが、
それ以上にイチロー新庄剛志の移籍で
日本人野手の中継が毎試合行われるようになり、
その時に作られたイメージが
現在でも解説者やファンに根強く残っているからと推察できる。

 

先発の球数はなぜ減っているのか

ところでここ数年のMLB
先発の球数がさらに激減している理由は何だろう。
ショートスターター、オープナーの多用は
80球未満が増えた要因にはつながるが
80球以上100球未満の理由には該当しない。
だが考えられる理由の一つは
オープナーと同じ「周回効果」だ。
もう一つ考えられる理由は後述する。

リンク先の説明によれば「周回効果」とは
「対戦回数が増えるほど
打者は投手の球に目が慣れていき、打ちやすくなる」こと。
特に先発投手は
2巡目よりも3巡目、3巡目よりも4巡目の対戦のほうが
打たれやすくなる現象をさす。
ただ打順が3巡目に入る前の18人目で交代した場合、
そこまでに80球以上を投げたとすると
打者1人あたり4.44球以上を投じている計算になり、
MLB平均の3.88球に比べてあまりにも多すぎる。
だが99球の場合は3.88球換算だと
対戦打者数の平均が25~26人目だ。

 

日本人先発投手の「中4日100球」

これを踏まえて
昨年の主な日本人先発投手の球数と対戦打者数を見てみよう。
起用が特殊だった佐々木朗希と大谷翔平は除く。

2025日本人球数、打者数

山本と菊池は100球を超える試合も三分の一程度あるが
他の4人は100球未満での交代がほとんど。
そしてこの6人の対戦打者数はほぼ全試合で27人以下、
打順3巡目までで交代していた。
山本はポストシーズンでも
完投した2試合以外の最多は28人。

2025日本人登板間隔

菊地や今永は中4日もそこそこあったが
山本と千賀はほぼ中5日以上。
中でも昨年のドジャースはかなり極端だ。
中4日先発が二桁に達するかどうか程度しかなく、
プレーオフで先発した
Snell、山本、Glasnow、大谷のうち
レギュラーシーズンの中4日はGlasnowが1回のみ。
また山本がMLB移籍後に中4日以内で登板したのは
ワールドシリーズ第7戦の連投だけで、
二刀流の大谷も
エンゼルス時代を含めた中4日登板は
同じ第7戦の中3日先発が初めてだった。

このように登板間隔は
チーム事情や選手によって違いがあるが、
全体的に中4日の頻度が減っているのは間違いない。
昔よりもシーズン開幕が数日早くなっているために
大きな連戦の数が減り、
連戦の頭と最後に先発する選手だけが中4日、
他の4人は中5日以上で投げられる
6連戦の頻度が上がったこと。
また
9連戦以上の大連戦において、
ブルペンデーや
先発およびショートスターターからの二番手ロングリリーフに
ローテ6人目を起用するなど
中4日を少しでも抑制する起用が増えていること。
これらが主な要因と考えられる。

 

日本で「MLBのような中4日100球交代」をやるには

2025年MLBでの「中4日100球」

現代のMLBにおける「中4日100球」。
その実態は

  • 基本的には先発5人体制による中5日
  • 100球前後かつ打者3巡(27人)以内での交代

となっている。
3巡目での交代が多いのは
3巡目では当てたくない打順中盤あたりの打者の前か、
この回も投げると打順が4巡目に回ってしまう可能性がある
3巡目中盤から後半にさしかかった回の頭からか、
いずれにせよ3巡目の対戦のどこかで代えているため。
その起用が
結果として球数にも反映されているものと考えられる。
また3巡目に回さず
打者18人までで代えたほうがいいと言っても、
長いレギュラーシーズンで
非常に早い継投をひたすら続けたら
リリーフ陣が疲弊しすぎてどうしようもなくなる。
これが3巡目までは投げさせる最大の理由だろう。

 

プロ野球で「MLBと同じ100球交代」にする方法

プロ野球で同じような起用を徹底するとすれば、
それはかなり大掛かりな改革になる。

過去10年NPB打者数

頻度はここ10年間でだいぶ減ったが、
日本の先発が投げる打者数は
28人を超えるケースがかなり多い。
それを27人以下に減らせば
同時に平均イニングも球数も大幅に減り、
リリーフのイニング数が増えることになる。
この起用で先発が6人以上だと
リリーフの数がどう見ても足りなくなるだろうから、
そのぶん先発は5人体制、中5日前提とする。
今年に入り
ホークスとファイターズが相次いで
先発主力の中5日起用を掲げ話題になっているが、
周回効果を意識した早めの継投へのシフトが
裏の理由である可能性もないとは言えない。

ただこれで投手陣がうまく回るかというと
新たな問題点が浮上する。
そもそもなぜ日本では
先発の周回効果をあまり考慮せず
登板間隔を空けるほうにより重点を置きだしたのか。

現在のMLB、特に2020年以降のMLBプロ野球
もう一つある大きな違いはタイブレークだ。
タイブレークがコロナ禍で導入された2020年以降、
先発の100球以上がさらに激減したのは偶然だろうか。
延長戦に入ってもタイブレーク
10回、11回ぐらいまでに決着がつきやすくなったため、
リリーフをそこまで温存せず
つぎ込めるようになったのも大きいのではないか。
一方日本の場合、
タイブレークでも試合が延々終わらない可能性がある以上
公共交通機関などの関係で引き分けを廃止するのが難しい。
延長無制限のMLBよりも引き分けのあるNPBのほうが
継投などで想定されるイニングが長くなっているのだ。
特に投手をつぎ込んで失点を防ぎたくなる
少ない得点での接戦ほど
12回まで試合が続くことを想定した起用を、
回跨ぎや連投を極度に嫌う風潮とも合わせながら
行わなければならない。
タイブレークはもちろんのこと
引き分けの存続自体も反対意見がいまだ根強いから
実現する確率はかなり低いだろうが、
日本で現代のMLB風の先発起用をするには
延長10回からのタイブレークを導入すること、
そして決着が早くつきやすいように
もう少しぐらい打高の環境になること。
この程度の目的のために
ルールのほうを変えるのはありえない話だが、
中5日や周回効果を意識した
メジャーリーグ流の先発起用をするには
必要な条件と言えるのではないだろうか。

 

その他参考 Baseball-Reference.com