Vol.560「満蒙は日本の生命線(日本の存立危機)」
(2025.12.23)
【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…首相が国会で勝手に「台湾有事は日本の存立危機事態」なんて言ってしまうことがどれだけ危険で異常なことなのかが、未だに一般に浸透していないし、それどころか、この発言が絶賛までされている始末だ。外交というものは相手のあることなのだから、トラブルが生じた時には相手が何を考えているのかを理解しなければ、関係がこじれるばかりである。だからここで、中国人が高市早苗の「台湾有事は日本の存立危機事態」発言をどういう意味に受け止めたのかということを、もう少し分析しておこう。「台湾有事は日本の存立危機事態」と聞いて、わしが思い起こすのは「満蒙は日本の生命線」だ。非常によく似た言葉だ。この言葉が生まれた経緯を見ていくと、中国人が高市早苗の「台湾有事」発言をどう受け止めたのかがよくわかるのである。
※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…中国との緊張が高まるなか、日本では、「人権外交」や「国際法」を掲げて、中国に“法的に”対抗しようとする言説が勢いを増している。世界各国には、「国際協調」を前提に、「国際秩序」を保つために互いに「国際法」を遵守し、人類としての進歩と、各国の国益を両立させていこうとする発想があった。それが機能するのなら、理想的な姿だっただろう。ところが、価値観は普遍的なものではないことが露呈し、そうはいかない時代に入ってしまった。時代はすでに「開戦前夜」の帝国主義モードと言える状態に突入してしまっているのだ。そんな時代に、「人権外交」や「国際法」を掲げて、中国に“法的に”対抗することなど、できるのだろうか?
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」…漫画を超えていくような出来事が現実で起きることをどう考える?この国は右傾化ではなく幼稚化しているのでは?週刊少年ジャンプで十数年前に終了した作品がアニメに…これは埋もれた良作が日の目を見ると考えるべきか、現在の業界がネタ切れを起こしているのかどっち?昔の反骨精神のあるミュージシャンが作っていたような曲が今は出てこない理由とは?ミス・フィンランドの女性が目を釣り上げるジェスチャーをSNSに上げたことに端を発するアジア人差別問題をどう見る?…等々、よしりんの回答や如何に!?
1. ゴーマニズム宣言・第589回「満蒙は日本の生命線(日本の存立危機)」
首相が国会で勝手に「台湾有事は日本の存立危機事態」なんて言ってしまうことがどれだけ危険で異常なことなのかが、未だに一般に浸透していないし、それどころか、この発言が絶賛までされている始末だ。
せめてわしだけでも、それが亡国への道であるという警鐘を、全力で鳴らし続けなければならない。
「台湾有事は日本の存立危機事態」と聞いて、わしが思い起こすのは「満蒙は日本の生命線」だ。
高市の台湾有事発言は、事前に内閣官房が作成した答弁書には記されておらず、完全に高市の「アドリブ」だった。
辻元清美衆院議員の求めに応じて開示された当日の答弁書には、「台湾を巡る問題が、対話により平和的に解決されることを期待する」「その上で、一般論として申し上げれば、いかなる事態が存立危機事態に該当するかは、事態の個別具体的な状況に即して、政府が全ての情報を総合して判断する」などと当たり障りのないことが記されており、どのような場合が存立危機事態に当たるかは、一切明言をしていなかった。
にもかかわらず高市は独断で、「(中国が台湾に対して)戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても(日本の)存立危機事態になりうるケースだ」と言ってしまったのである。
辻元によると、内閣官房が答弁資料を出すことは普通あまりないことだそうで、それをこんなに早くあっさり出したということは、内部にも高市のあまりのバカぶりに、相当の危機感を持った人がいるということの証明だろう。
ところがこの資料が公表されても、ネトウヨ・サナ活連合や、山尾志桜里までが「だったら、官僚の用意したペーパーをただ読むだけの首相の方がいいというのか!」だの、「高市さんは自分の言葉で発言しているからいい!」だのと、さらに高市を大絶賛する有様で、全く手が付けられない。
別に、官僚の書いた文章をただ読めばいいなんて誰も言っていない。従来の政府見解を完全に逸脱して、全く私人としてのプライベートな考えで、無責任なネトウヨ答弁をして混乱をもたらすくらいなら、官僚の文章をただ読んだ方がまだマシだったと言ってるだけだ。
そもそも中国側の立場からすれば、台湾は中国の一部であり、台湾問題は中国の内政問題なのだから、台湾に戦艦(今は世界中に存在しない)を出そうが何をやろうが問題はないということになる。
ところがそれを「台湾有事は日本の存立危機事態」なんて言ってしまったら、台湾は中国の一部ではないと(国際法上はその通りだが)堂々と挑戦的に言っているにも等しく、中国側の主張を、間違っているか否かは関係なく、全否定しているようなもので、中国が猛反発するのも当たり前なのだ。
日本は中国との間で1972年に「日中共同声明」を発表して国交を正常化。さらに1978年に「日中平和友好条約」を締結しているが、後者には台湾に関する言及は一切なく、外交・政治上重要となるのは「日中共同声明」の方である。
日中共同声明では、台湾についてこう記されている。
「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」
ポツダム宣言第8項は日本の主権の及ぶ範囲を定めたもので、これに基づいて日本は台湾を放棄している。
問題はその前の部分だ。よく読んでもらいたいが、ここで日本政府が認めていることは、台湾が中華人民共和国(中共)の領土だと「中共政府が表明している」という事実だけである。その上で、中共政府がそう言っている「立場」だということを「十分理解し、尊重」するとしか言っていないのである。
つまり、中共がそう主張しているという「立場」は理解し、尊重すると言っているだけで、その「主張」そのものを日本政府が支持・賛同しているかどうかについては、実は何も言っていないのだ。
あまりにも苦しい官僚答弁だとは思うが、中国政府の見解に完全に同意しているわけではないというところに踏みとどまるには、この方法しかないのだろうし、中国側もこれを「落としどころ」として共同声明を出したのだ。日本政府としては、台湾が中共の一部であるかどうかについては、実はずっと明言を避けているのである。
これについては2年前の令和5年(2023)、立憲民主党衆院議員・原口一博が質問主意書を提出している。
質問は4点。
第1に、日中共同声明によって日本政府は、台湾が中共の不可分の領土だと認めたのかどうか。
第2に、中共が台湾に武力行使を行った場合、政府は、それが内戦、国際紛争のいずれに該当すると認識しているか。
第3に、台湾と中共の間の武力紛争に米国が参戦する場合、その行動の国際法上の根拠は何か。集団的自衛権か、個別的自衛権か。
第4に、政府は台湾有事が日本有事となる可能性があると認識しているか。
この質問に対する岸田文雄首相(当時)の答弁は、第1については、日本政府の立場は「中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重するというものである」と言うにとどめていた。やっぱり、日本政府自身が台湾の帰属をどう考えているかについては、一切明らかにしないのである。
また、第2、第3については「仮定に基づくお尋ねについてお答えすることは差し控えたい」として答えなかった。
そして第4についても、「いかなる事態が武力攻撃事態、存立危機事態又は重要影響事態に該当するかについては、事態の個別具体的な状況に即して、政府がその持ち得る全ての情報を総合して客観的かつ合理的に判断する」として、具体的なことは一切言っていない。徹底的な「あいまい戦略」である。



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新年、あけましておめでとうございます。 すみません、年末年初、あれこれあって、感想どころではなかったです。 簡単に記しておくと、だから、国際法で、強国のエゴや国家同士の利害調整をするための、国際法や連盟や連合のような国際組織が必要となるわけですが…。それだって、パワーバランスによ…
今回のQ &A、どの質問も凄かったです!小林先生の回答も刺さりました。日本は古来から双系。「神功皇后論」の今後がますます楽しみです。そこからの愛子天皇は日本の歴史の必然という確信。ますます来年は高市内閣に引導を渡し、日本をカルトから引き剥がす年にしなくてはと思いました。