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人手不足なのに「未経験者は新卒しか採用しない」企業
日本は明らかな人手不足に陥っている。国内の18歳人口が今後増加に転じる日なんて少なくとも20〜30年はやって来ないとわかっているはずなのに、採用現場ではとても不可思議なことが起こっている。若手人材がほしいはずの中小企業が「未経験者は新卒しか採用しない」という慣習をいまだに守っていることだ。
筆者はウズウズカレッジという会社で、IT分野の採用支援や育成研修を行っているが、自治体の公共事業として採用マッチング事業も担っている。
そうした中で、「未経験者=新卒」「中途採用=業務経験者」という旧来の概念にとらわれ、既卒や第二新卒(新卒での就職から3年以内に離職した人)などの「中途採用の未経験者」には、はなから見向きもしない中小企業の担当者を目にする。採用方法を時代に合わせてアップデートしていない状況に、「そんなやり方だと人手不足の状況はもっと悪化するのにな」と暗澹たる気持ちになる。
都市部では、新卒採用に加えて、既卒・第二新卒のような「未経験者の中途採用」を導入する中小企業がどんどん増えている。人手不足という現状の危機を直視し、対応しようとする企業であれば当然の選択だろう。そうした変化を肌身で感じている筆者には、冒頭のような「未経験者は新卒しか採らない中小企業」は思考停止状態としか思えない。
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【「未経験=新卒」という採用方針がいかに危険か】
今回は、UZUZグループが独自に行っているZ世代意識調査を踏まえて「未経験=新卒」という採用方針の地方企業がいかに危険かという解説と、手遅れになる前に取り掛かってほしい2つのポイントについて述べる。
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Z世代は「転職に対する心理的ハードル」がゼロ
まず、企業が求めている若手人材のキャリア観は、ミドル世代以上とまるで違うことを再確認しなくてはいけない。
UZUZグループが2025年8〜11月に実施した「Z世代の転職に関する意識調査」(有効回答数741人)では、転職について「いいイメージがある」との回答が約8割にものぼった。「仕事が辛くても最低3年は続けるべき」という考え方については「時代遅れだと思う」が14%、「自分は嫌だ」が60%という結果で、全体の7割強が否定的なこともわかった。
※外部配信先では図を閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください。
実際、厚生労働省のデータでも「新卒採用の社員は3年で3割辞める」という状況が約30年ほど続いているが、社会全体でも「転職したい」と考える人が増えていることは明らかだ。
総務省の労働力調査では2023年に転職希望者が過去最多の1035万人を記録。2013〜2023年の動向報告によると、転職希望者は正規雇用で急増しており、非正規では減少傾向のようだった。
終身雇用制度が崩壊した中で、転職に対する捉え方が社会全体で変化しているのであれば、これから家族を持ったり増やしていくZ世代にとって、「転職は、不確実な時代を生き抜く常套手段」と映るのも当然だろう。この流れが元に戻ることはない。新卒者やZ世代の転職への心理的なハードルは、もはや「限りなくゼロ」だと認識すべきだと筆者は考えている。
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【かつては短期離職者に冷酷だったが…】
2010年代の人材市場は、会社を短期離職した人や就職先を決めずに既卒になった人たちに冷酷だった。
筆者が創業メンバーでもあるUZUZグループは、2012年に「何度でもキャリアをやり直せる世の中になってほしい」という想いから、第2新卒や既卒に特化したキャリア支援を行う人材会社としてスタートした。
当初は「3年以内で会社を辞めた人」や「就職先を決めずに既卒になった人」を雇おうとする企業は極めて少なかったし、給与など条件もひどいものだった。新卒には優しい企業でも、第二新卒や既卒の求職者になると手のひらを返したような圧迫面接を行うケースは日常茶飯事で、そうした若者を「負け組」扱いする風潮も強かったと思う。
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人材と企業の立場は、この10年で完全に逆転した
近年の人材市場で最大の変化はまさにこの部分だ。新卒人材が採れなくなった企業側が、未経験での転職を「負け組」扱いしていられなくなったのだ。人材市場で買い手と売り手のパワーバランスが逆転した今、第2新卒や既卒を含む未経験の中途採用に踏み切る企業は都市部を中心に増えているし、圧迫面接されたという話もほぼ聞かなくなってきた。
ただ、地方ではそうした変化がにぶく、いまだに未経験者は新卒しか採用していない中小企業も多い印象がある。昭和の時代から続いた「新卒一括採用」が土台となった採用方針だからだろう。若手人材が集まる採用マッチングイベントでも「未経験者は新卒じゃないと採用しない」という対応をしばしば目にする。
しかし、人材不足は日本全体で起きている。なんなら地方のほうがより顕著に状況が悪化している。さらに、都市部の企業が地方人材に触手を伸ばす動きも顕著になってきている。
筆者の周りの人材エージェントにも、首都圏の集客コストの高騰から、地方人材を都市部に引っ張ってくる戦略を行っている会社もある。
このような状況が進めば、地方の中小企業はどうなるだろう。賃金や働き方など待遇面で攻めてくる都市部の企業に勝てる余地はあるのだろうか。
もう一度言うが、少子化はどうしたってひっくり返らない歴然とした事実だ。転職に対する人々の心理的ハードルもどんどん下がっている。だからこそ、生き残りが不安な企業ほど、より幅広く人材を集められるような採用・育成モデルに転換していくことが必須だ。
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【「新卒は3年で3割辞める」を踏まえた採用・育成を】
これからの時代、企業が若手人材の採用・育成においてやるべきことは、シンプルに2つしかない。
1つ目は「賃金体系」の見直しだ。もし、年齢とひもづいている賃金体系になっているなら、そこは変更する必要がある。23歳でも30歳でも、社歴が1年目であれば同じ給与を支払うなど、「年齢」ではなく「勤続年数」や「成果/スキル」で給与を決める方法に変更するのがおすすめだ。そうしなければ、採用したい未経験人材がいても、30代以上であれば不適切な給与設定となってしまい、採用できないだろう。
2つ目は、未経験者を受け入れるタイミングを増やすことだ。よく考えてみると不思議なのだが、アルバイトや派遣社員だといつでも受け入れるのに、未経験の正社員だと4月しか入社できない企業は少なくない。それこそ新卒一括採用に合わせた受け入れスケジュールなのだと思うが、いまや過去の遺物だ。
年1回の採用で現場の人的リソースが十分にまかなえるならいい。しかし、人員が足りてないのに年1回の採用スケジュールのままだと、現場がほしい時に人員を補充できない。入社のタイミングを年2回、年4回と、それぞれの現場に合う頻度にすることで人員補充がスムーズになる。さらに、入社タイミングが増えるので、人材獲得の機会損失も防ぐことができる。
「入社後の新人研修をまとめてやりたいから」という意見はもちろんあるだろう。ただ、これは「できる方法」を工夫すれば対処できる課題でもある。一方、新人を預かる現場ではむしろ、まとめて新人が来るよりもタイミングがズレたほうが教育負担は軽くなることもあるのではないか。入社時期を年に数回設けた場合、半年前に入社した新人が「先輩」となって教える側を担うこともできるわけだ。
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「社会人を経験した若手人材」を採用するメリット
3年以内に退職した人材向けの就業支援に10年以上取り組んできた筆者としては、社員育成については「社会人経験のない新卒」を採用して育成するよりも、「一度社会人を経験した若手人材」を育てるほうがポジティブな面もあると感じている。例えば、「社会人としての基礎スキルが身についている」「一度転職しているので、転職する可能性が新卒よりも低い」などのメリットがある。
首都圏ではここ10数年の間に、未経験の中途採用にも門戸を開き、人員不足を解消しようと取り組む企業がどんどん増えている。先進事例がたくさんある今、地方の中小企業も積極的に採用・育成モデルの見直しを進めてほしい。
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