月桃(げっとう)ってなんだ!?SNSでは覗けない“スパの中”でだけ出会える沖縄の香りの話
ジャングリア沖縄に併設する併設するSPA JUNGLIA(スパ ジャングリア)では、沖縄北部の地下1,600mから湧き出す天然温泉「今帰仁の湯」を楽しむことができます。
大絶景を望む世界最大のインフィニティスパ、南国リゾートの空間が広がるアウトドアバス、天然温泉を擁するインドアバスなど幅広いラインナップのお風呂とサウナ施設をご用意し、滞在するすべてのゲストをお招きしております。
もちろん一般の方は、「お風呂」なので内部は撮影禁止。SNSに投稿される写真は公式写真に限られます。さらにその公式写真にも、実は映っていないものがあります。
それがこのお話の主役でもある「香り」です。
シャワーブースに並ぶ、深いグリーンのボトル。このボトルをプッシュした瞬間ふわっと立ちのぼる、ハーブのような、花のような、それでいて少しスパイシーな香り。
その正体が、「月桃(げっとう)」という沖縄の植物だと知っている方は、きっとまだ多くありません。
今回のnoteでは、普段は見えないスパの中の体験とともに、
「月桃ってそもそも何?」「どうしてジャングリアを代表するの香りになったの?」という裏側を、少しマニアックめに追いかけてみたいと思います。
月桃って、どんな植物?
月桃は、沖縄や奄美の野山や道ばたでよく見かけるショウガ科の植物です。
長く伸びた葉のあいだから、白い貝殻のようなつぼみが連なり、やがて淡いピンク色の花を咲かせます。
沖縄では昔から、
健康長寿や厄除けを願う「ムーチー(鬼餅)」を包む葉として
乾かしてお茶にして飲むハーブとして
種子を香りづけや薬として
など、暮らしのすぐそばで使われてきました。
一方で、全国からいらっしゃるゲストにとっては、
「名前も聞いたことがない」
「“月の桃”…? ロマンチックだけど、何のこと?」
という存在でもあります。
地元にとっては当たり前すぎる植物が、
県外のゲストにとっては「初めて出会う沖縄の香り」になる。
この“温度差”こそが、ジャングリアのスパチームが月桃に惹かれたポイントでした。
「ジャングリアに来た」と一瞬でわかる香りがほしかった
SPA JUNGLIAは、「南国大自然の大絶景を眺めるスパ天然温泉で、極上の贅沢を味わえるプライベート空間」というコンセプトのもと、“ファミリーでも安心して使えるラグジュアリー”をどうつくるかを議論してきました。
その中でスパチームが「特に妥協したくない」と情熱を燃やすのが、このアメニティです。
「心も体も癒される場所」を象徴する、最大の“贅沢感”を伝えるアイテムとして、「最高のアメニティ」を探し求めました。
その開発をリードしたのが、スパ マネージャーのKさんです。
見せてもらった企画書の1ページ目には、こんな一文が太字で書かれていました。
「ジャングリアの体験と沖縄旅行の想い出がフラッシュバックする、瑞々しい沖縄素材をとことん追求した香りにする」
どこにでもある“いい香り”ではなく、
“あ、ジャングリアだ”と一瞬でわかって、何年後かにふと思い出す香りにしたかったんです
そう話しながら、Kさんは月桃の葉を一枚、指で軽く擦ってみせてくれました。
指先を近づけると、すっと立ち上がる青い香り。
ハーブの清涼感と、どこか甘さを含んだスパイスのようなニュアンスが混ざっています。
汗や日焼けをリフレッシュさせてくれるような爽快さ
森の中のスパで、ふっと肩の力が抜けるようなやわらかさ
「沖縄に来た」という実感を刻む、沖縄ならではの素材
月桃には、その全部が詰まっていました。
1トンの葉から、わずか1リットル。100%精油にこだわるという無茶
ここからは少しマニアックな話になります。
今回、スパ ジャングリアのオリジナルアメニティに使われている月桃の精油は、沖縄県産の月桃精油100%。
つまり、人工香料ゼロ、ブレンド精油ゼロの“それっぽく”補っていない、「月桃そのもの」の香りです。
しかし、月桃精油は、生葉およそ1トンから約1リットルしか採れない、とても希少な原料です。
スパやホテルで使うアメニティ全8品目の使用量から逆算すると、必要な精油は年間100リットル。
1リットル採るのに1トン。
100リットルなら、その百倍の100トンもの葉が要る計算です。
「最初に数字を出したとき、“これは無茶だ”と正直青ざめました(笑)」
とKさんは振り返ります。
まず、那覇から392km離れた北⼤東島にアプローチしました。
北⼤東島は化粧品・医療原料としての事業化で大きく報道されたこともある月桃で知られる島でした。担当課長さんに依頼したところ、年間生産量は約25リットル。そのうち20リットルを供給いただけることになりました。
それでも80リットルは足りません。
どうしても月桃を諦めたくなかったチームは、ジャングリア沖縄のある沖縄本島北部にもに生える月桃にも目をつけました。
実は、本土でも⾚⼟汚染対策や風よけ、目隠しの目的で月桃を植え付けられている場所があり、そのネットワークを販売元や製造メーカーの皆さんとともに一つひとつ探りながら、活用の可能性を広げていきました。
製造会社の社長にも動いていただきつつ、宜野座村、大宜味村、東村、国頭村の村長に話を進め、月桃の栽培・採取・蒸留に協力していただけることになりました。
こうして、北大東島と本島北部の村々をつなぐ「月桃100%精油の供給ネットワーク」が、少しずつ形になっていきました。
北部で刈り取られた葉は、農家さんから軽トラックで少しずつ集められ、国頭郡恩納村の蒸留所へ運ばれます。そこでチョッパーで細かく砕かれ、釜に入れられ、約3時間かけて蒸留。こうして、北⼤東島の20リットルと合わせて、ようやく年間100リットル分の精油を確保できました。
実は過去にも月桃の事業化計画はたくさんあったそうですが、商流がなくて続かなかった農家さんや事業者さんは少なくありませんでした。北⼤東島も一時期よりも月桃事業を縮小せざるをえない課題を抱えていました。
葉1トンから1リットルしか採れない月桃精油を、本気で使い切る覚悟があるのか──まずは自分たちにそう問い直しました。そんな話に北大東島や北部4村のみなさんが『一緒にやろう』と言ってくれた以上、生半可な規模や期間で終わらせてはいけない。このアメニティは、月桃の魅力をたくさんの人に発信し、協力してくれた生産者の方々に報いるものしなければならない。と使命のようなものを感じるようになりました。
試作品6ラウンド。アンケートの赤字コメントとの格闘
原料の目処が立ったからといって、すぐに理想のアメニティができるわけではありません。
今回の開発では、シャンプー・コンディショナー・ボディウォッシュ・洗顔フォーム、さらにクレンジング洗顔、化粧水、乳液、ボディゲルまで含めて合計8品目を、6回のテストとアンケートで磨き込みました。
配られたテスト用アメニティに対して、スタッフやテスターからは、かなり率直な声が返ってきます。
「香りが強すぎて子どもにはきびしいかも」
「泡立ちは好きだけれど、もう少ししっとり感がほしい」
「乳液は保湿力はあるが、べたつきが気になる」
「もし販売するなら買いたいレベル。でも家族全員が好きな香りかというと悩む」
「特にスキンケアは、“ピリピリした”“合わなかった”というコメントもいただきました。そこは最優先で改善しないといけないポイントなので、処方を変えながら慎重に調整を重ねています」
そう話すKさんの机には、アンケートの山が積み重なっています。
満足度の星マークの横には、開発チームの手書きのメモがびっしり。
「ここは月桃の濃度を下げても香りの印象は残せそう」
「泡立ちの改善は必要だが、洗い上がりのさっぱり感は残したい」
「日焼け後の肌には、もう少し保湿寄りのテクスチャーを」
数字とコメントを行ったり来たりしながら、
「月桃らしさ」「沖縄らしさ」「使いやすさ」のバランスを探していく──。
そんな試行錯誤の痕跡が、そこにはありました。
香りの向こう側にいる人たちのこと
ここまで読んでくださった方は、
月桃という植物と、スパのボトルの中身に、少しだけ“顔”が見えてきたかもしれません。
このアメニティの向こう側には、
北大東島で月桃を育てる農家さん
本島北部の村で、栽培と蒸留に取り組む生産者さんたち
開発に協力をいただいた沖縄素材にこだわる県内の化粧品メーカー
現場で実際に使い、率直なフィードバックを返してくれたスタッフやテスター
たくさんの“人”がいます。
スパのボトルに書かれた小さな『ゲットウ葉エキス』の文字から、
こうした人たちの顔まで想像してもらえたら、開発者としてはすごくうれしいです。
最後に、Kさんはそう話してくれました。
次に、スパに来るときに
このnoteを読んだあと、もしまたジャングリアのスパに足を運ぶ機会があれば、
ぜひ一度、バスルームのボトルのラベルと、その香りに意識を向けてみてください。
「この香りは、北大東島ややんばるの畑から来ているんだ」
そんなことをちょっとだけ思い出してもらえたら、私たちが目指す“Power Vacance!!パワーバカンス”にちょっと近づくスパ体験になるはずです。
「ジャングリア沖縄のnote」では、これからも、スパやアトラクション、フードやグッズなど──表からは見えにくい「中のこと」を、少しずつ言葉にしていきたいと考えています。
ジャングリアの向こう側にいる人たちのことを、
またここで、一緒にのぞいていただけたらうれしいです。

