「自然に見える」には理由がある。〜土地の個性を生かしてつくられた、ジャングリア沖縄の建築設計〜
この地形と、向き合うところから始まった設計
ジャングリア沖縄を歩いていると、
「自然の中を歩いている」という感覚が、ふっと体に残ります。
視界が一気に開ける場所もあれば、森に包まれるような道もある。
高低差はあるのに、なぜか歩きづらさは感じない。
どこまでが自然で、どこからが人工なのか。その境目が、ほとんど意識に上がってきません。
この場所は、もともとゴルフ場でした。
起伏があり、遠くまで見渡せる視界があり、
人が歩くためにつくられた動線が、地形の中にすでに刻まれていた場所です。
ジャングリア沖縄の計画が始まったとき、
この地形を一度フラットに整え直す、という選択肢もありました。
けれど、この土地がもともと持っていたダイナミックさを、
そのまま受け取り、活かすことができるのではないか。
そんな考え方が、出発点にありました。
ランドスケープと建築を担当する、一級建築士の呑海(どんかい)さんは、こう話します。
「基本的には前提として、元ある地形はそのままできるだけ残す、
という考え方でした。
最初から全部を変えるつもりはなくて、
“これは使える”“これは活かせる”というものを
一つひとつ見極めていく。
できるだけ壊さないで、造形していく、作っていく。
それが、ジャングリア沖縄の設計の基本姿勢だったと思います」
実際、パーク内には、最初からほとんど手を加えていないエリアも多くあります。
森としての魅力が十分にある場所、
地形としてすでに表情を持っている場所は、
無理に整えず、そのまま活かす。
「テーマパークだから平らにする」のではなく、
「この地形だからこそ、どう見せるか」を考える。
その積み重ねが、
いま感じていただいている“奥行き”や“広がり”につながっています。
自然を守る、という言葉だけでは語りきれない。
この場所で大切にしてきたのは、
この土地がもともと持っていたものと、
どう向き合い、どう読み替えていくか、ということでした。
呑海さんが伝える「チームがこだわった空間設計ポイント」3選
ジャングリア沖縄の空間設計には、
数えきれないほどの工夫があります。
ただ、そのすべてを知っていなくても、
パークを歩いていると「なんだか気持ちいい」と感じられる。
その理由を紐解くために、
ここでは、呑海さんが特に
チームが特に「ここはこだわった」、
3つ取り上げて紹介します。
① メイン動線・アプローチエリア
見せないことで、自然を大きく感じさせる
パークを歩いていると、
「先がどうなっているのか」が、すぐにはわからない道が続きます。
視界はまっすぐ抜けず、少しずつ曲がり、
植物に包まれながら、奥へ奥へと導かれていく。
それは偶然ではなく、意図的につくられた体験です。
特にこだわったのが、視線と動線のコントロールでした。
最初から全部の景色が見えないように工夫しました。
最初からわかってしまうと、どうしてもワクワクが続かない。
だから、あえて視線がくねくねするようにしています。
植物をかき分けて進んだ先で、
急に視界が開ける、という瞬間をつくりたかったんです
あえて先を見せない。
植物をかき分けるように歩いた先で、
ふっと視界が開ける瞬間をつくることを意識したそう。
スロープの勾配も、その延長線上にあります。
景観の中に人工物を目立たせないため、
距離を使って勾配を緩やかにし、
手すりを設けずに済む設計を選ぶ。
結果として生まれているのは、
「自然に歩いていたら、奥まで来ていた」という感覚です。
設計の存在を意識させないことが、
このエリアの大きな特徴になっています。
② 園内全域の植栽計画
花を咲かせ続けない、という選択
テーマパークと聞くと、
一年を通して花が咲き誇る景色を思い浮かべる方も多いかもしれません。
けれど、ジャングリア沖縄では、
季節ごとに植え替えが必要な一年草の花を、あえて植えておりません。
エネルギッシュな空間で食事を楽しめる「ワイルドバンケット」への入り口。
一年草は、見た目は華やかですが、
定期的な植え替えが必要で、
そのたびに風景が大きく変わってしまいます。
そこで選ばれたのが、
葉そのものに色や表情を持つカラーリーフや、
花がなくても印象をつくれる植物でした。
「花が咲いていなくても、
景色として成立することが大事だと思っています」
季節ごとに劇的に変わるのではなく、
時間とともに、少しずつ深まっていく風景。
手入れの負担を抑えながら、
一年を通して安定した景観を保つ。
この選択が、
落ち着きがあり、長く滞在したくなる空間を支えています。
③ スパエリア
森を“眺める”のではなく、“包まれる”場所をつくる
三つ目は、スパエリアです。
ここでは、
森は「背景」ではありません。
建物を囲み、体を包み込む存在として扱われています。
インフィニティ風呂は、
ただ眺めがいい場所ではなく、
視線の高さや抜け方、建物の配置まで細かく調整し、
やんばるの森に身を預けるような感覚が生まれるよう設計されています。
(ちなみに呑海さんのおすすめは、「淵付近の段差近くに座って、下半身浴しながら、森を眺めること」だそう。ゆったりと空の変化を楽しめます。)
「森に囲まれて、
物理的にも視覚的にも開放される。
そういう場所は、実はここしかないんです」
建築と植栽を切り分けず、
「ここで、どんな時間を過ごしてほしいか」から逆算する。
その考え方が、
スパを“風景の中の建物”ではなく、
“風景そのもの”として成立させています。
沖縄の植物のたちの中から垣間見れる外観も「風景そのもの」です。
3つのポイント以外にも、積み重ねられた工夫
ここまで紹介してきた3つのポイントは、
いわば、ジャングリア沖縄での空間設計の考え方がわかりやすく表れている場所です。
ただ、同じ思想は、
園内のあらゆる場所に広がっています。
たとえば、
地面の仕上げひとつを取っても、
すべてを均一に整えることはしていません。
体験によってはあえてラフさを残す場所、
歩きやすさを優先する場所。
用途や人の動きを想定しながら、
細かく使い分けられています
高低差をそのまま受け取り、緩やかなスロープでつないでいる。
植栽についても、
「ここは密度を出す」「ここは抜けをつくる」といった判断を重ね、
すべてを同じテンションで仕上げることは避けています。
均一に整えない。
つくり込みすぎない。
場所ごとに、必要なだけ手を入れる。
そうした無数の判断が重なり合うことで、
パーク全体に、
肩の力が抜けたような心地よさが生まれています。
こうした演出の積み重ねによって、
森の中に入り込み、
気づけば、その一部として受け入れられている。
ここまで紹介してきた判断や工夫は、
どれも派手なものではありません。
けれど、体験の質を大きく左右するものばかりです。
私たちが大切にしてきたのは、
「すごさを見せること」ではなく、
「気づかないうちに、深く入り込んでもらうこと」。
ジャングリア沖縄の風景は、こうして形づくられています。
ジャングリア沖縄を訪れたとき、
足元の起伏や、
視界の抜け方、
森と建物の距離感に、少しだけ目を向けてみてください。
そこにはきっと、
「自然に見せるために重ねてきた判断」の痕跡が、
静かに息づいているはずです。

