🌸放送完結🌸前橋ウィッチーズ・PV メイキング
『前橋ウィッチーズ』、面白すぎる
みんな見たか!?『前橋ウィッチーズ』を………
もう放送されてるのでお分かりだと思いますが、本当に面白い。
アニメファンで有名なハライチ・岩井さんは先日の「ハライチのターン!」でまるっと半分以上『前橋ウィッチーズ』とコラボし、いじり倒すという衝撃の企画を放送。岩井さんといえばマジ歌選手権などで長年歌っていた通り「とにかくフェイクが嫌い」な方なので、本当に気に入ったのでしょう。わかる。だって面白いから………
私と『前橋ウィッチーズ』はというと、PV第2弾からプロモーション映像の制作を担当し、TVCMやらライブ中の映像やら、色々関わらせていただいています。
チャンネルが新規開設になったみたいなので、ぜひブン回してください。
今回は、前橋ウィッチーズを例に、「カット編集系のプロモーション映像のメイキング」という感じの記事です。
プロモーション映像をつくろう
カット編集とは
映画の予告のように、既にある映像を再編集して、プロモーション用に構築し直す作業です。
以前のメイキングは、私がコンテを書いて、素材も作って…という形でMVを作ったものでした。私はどちらも請けていますが、使う脳みそがちょっと違うというか、どっちかが得意でどっちかが苦手、という人もおそらく多いと思います。
私は音ハメ※で脳汁が出るので、それさえできればわりとどっちでも楽しいです。
(※映像と音楽がバッチリ合うこと)
以下、若干ですがネタバレを含みますので、何も情報を入れたくない人は見てから読んでください。ストーリーの要となる部分は伏せたり避けたりしているので読んでから観ても楽しめると思います。
全話見る
作品を知らないことには何をアピールするべきかもわからないので、とりあえず放送される本編を観ます。
当たり前っぽいですが、長期にわたって愛される大作とかだと難しかったりします。過去にゲームのプロモーション映像をよく作っていたのですが、「アプリゲームのイベントの思い出ムービー」とか、しょうがないのでよくわからないまま作っていました。期間限定イベントってよくないよ
発注するスタッフさんたちへのアドバイス?お願い?ですが、ここでディレクターがインプットをがんばるか、その時間をしっかりとれるか、作品との相性がいいか…等はかなり運なので、「作品のアピールポイント・魅力を理解してもらう」ことや、「広告でなにをユーザーに伝えたいか」のプレゼンは、相手を過信せずに自分で用意していったほうが、いいものになる率が上がると思います。
「とりあえず観ます」と言いましたが、「とりあえず観られる」こともけっこうレアです。そう、前橋ウィッチーズは放送前に全話完成していました。最近は業務改善、海外販売などの意図からそういうスケジュールで作られるアニメもけっこう多いらしいですが、ほんの少し前までありえないことでした。本当にありがたいです。
打ち合わせ
プロデューサーや監督から、作品の詳細やプロモーションしたい内容を聞き取ります。厳密にいうとプロモーション映像の打ち合わせの場に監督がいるのは初めて見ました。監督のこだわりかも。
山元監督はわりと論理があるタイプの人なので、初回の打ち合わせで作品についてしっかりプレゼンしてくれました。一方で、「それをどのようにプロモーション映像に落とし込むか」はわたしの宿題になったので、もう少し整理していきます。
課題を整理する
「前橋ウィッチーズ」が放送前にクリアしたほうが良さそうな課題は以下のように思いました。
この作品は結局なんなのか
この作品は「アイドルもの」ではありません。現実においてはキャストのユニット「前橋ウィッチーズ」がアイドル活動をされていますが、キャラクターである彼女たちが歌って踊る理由はあくまで「魔法を使うため」。歌っている間は、空間全体でウィッチーズたちやお客さんの心象が表現されます。
まずこの設定がやや入り組んでいるので、それを伝える必要があります。
また、この作品が目指すものはなんなのか。アイドルなら武道館に行くとか、スポーツなら全国優勝とか、そういった目標がわかりやすいですが、彼女たちは現実にない業務をしているので、パッと一言で伝えることはできません。
「魔法を使う」とはなんなのか、彼女たちが「魔女見習い活動」で成したいことはなんなのか。
プロモーションでそれを「答え」まで見せる必要はない…というか出したら行き過ぎですが、ヒント(布石)をある程度見せることで、視聴者の期待が適切に高まるはず。
1話……ちょっとわかりづらい
今、前橋ウィッチーズは「3話まで見て!」とファンから言われてるらしいです。私もそう思う。スタッフさんもそう思ってたと思う(先行上映会で3話まで上映していたので)
1話、いま見るとすべての説明と要素とテーマがギチギチに詰まっていてすごく完成度が高いのですが、初見でこの情報量を脳に詰め込まれても困るのが正直なところ。
1話で離脱されないための、ストーリー理解への補助線をPVで引けないだろうか。
社会派!前橋ウィッチーズ
放送が終わった現在、本作のイメージは「社会派」という感じです。何をかくそう、『虎に翼』でおなじみ吉田恵里香さんが、現代を舞台に吉田恵里香節全開で描いた本作。ルッキズム、SNS依存、ヤングケアラー、経済格差…と社会問題にガンガン切り込んでいます。
一方で、それを重苦しくなく軽やかに描いた作品でもあります。プロデューサー陣の要望も「そこをターゲットにして入口が狭まるPVにはしたくない」「気軽に見てもらって、放送中にわかるような感じで」とのことでした。
とはいえ、放送前から「もしや?」と思われるような塩梅では匂わせたい。本作最大の特長なのだから……
演出が変でオシャレなの、どう?
本編を見ているとわかると思いますが、このアニメめっちゃ変。
そもそも第一話がいきなり巻き戻し演出ではじまる。木更津キャッツアイでいうと1回裏からスタート。背景には全体的に謎のガラクタが随所に見られるし、とにかく比喩表現が多いし、パロディも多いし、魔法少女っぽいアイテム出てきたと思ったらまったく使わないし、OPは曲も映像も嘘みたいな中毒性だし…
この癖になる独特のテンポとアート性も魅力のひとつです。絶対事前にわかるようにして『輪るピングドラム』とか好きな層に見せたいですが、断片的な映像のみで伝えられるのか。
ありあまるキャラクターの魅力、伝えないともったいない
この作品は5人の個性的な魔女(見習い)たちが活躍します。本編を見てもらえればわかると思いますが、かなりの時間を彼女たちは「対話」に費やしています。この作品の真髄は「コミュニケーション」。実質ガンダム。サンライズだし
吉田恵里香さんのパンチラインまみれの脚本のおかげでどこを切り取ってもイイという贅沢な状態ですが、まるで実在の人物のように何面もの顔を持った彼女たちの魅力、何を伝えてなにを本編のお楽しみとすべきか。
作っていくぞ
第2弾PV
24年11月ごろ公開。この第2弾PVから制作してます。
「プロモーションはネタバレ直前まで踏み込んだほうがいい」と思っています。視聴者を信じてないわけではないですが、「プロモーション映像」の相手は「視聴者」になってくれるかわからない、それ未満の方々です。魅力を説明しすぎということはない。
キャラクターについて分厚く紹介した第2弾PVでは「各キャラクターのパーソナルな部分」を、しっかり踏み込んで見せています。
ただ、このPVで「だいたいこういうキャラで、こういう展開をするのかな?」と思って本編を見たら「思っていたよりさらに展開したな…」と思われるように、と意識しました。
キョウカの例でいうと、正しく、賢く、自分にも他人にも厳しく、なにか悩みがあって、俯瞰してるキャラ(ケロッペ)から見たら壊れてしまいそうで…みたいな生徒会長キャラとかによくある感じに見えるようにしていますが、まさかそこからあんなプロセスで発露と寛解と成長をするとは…
脚本がそもそも"そう"だからできたことですが。
というか、この作品ほんとうにPV作るのラクでした。1話の時が止まっている間の会議シーンに全てが詰まっているから…
この会話からそのキャラクターを象徴するセリフを拾い、お当番回から紐づいたシーンを拾い…としていけば、もうキャラクター紹介PVができていました。脚本の筆力がすごすぎる
ぜひ1話を見返してみてください。チョコちゃんのセリフとかもうこの時点で泣いちまう
ちなみにこの第2弾PVで、各キャラクターのお花のアイコンを制作しました。デザインするにあたってなにか飾りに使えるものが欲しかったので
前橋ウィッチーズのロゴに用いられている5色の◯は「前橋市の市章」がモチーフのひとつとのことで、県章や市章のイメージで、それぞれのイメージフラワーをちょっと角張ったデフォルメで表現しています。
スタッフさんに気に入っていただき、たくさんグッズにしていただきました。
かわいい。
第3弾PV
1月ごろ公開された第3弾は、キャラクター同士の関係性にフィーチャーしたPVです。
私は正直、上述の「会議シーン」をそのまま流すんでもいいんじゃないとすら思いましたが、「ユイナとアズのような、コンビの関係性をアピールしたい」ということで、そのように構成しています。
彼女たちが親しくなっていくことは本作の核となる展開のひとつで、まあ普通に想像つく展開ではあるので(友達にならなかったらびっくりするよ)
このPVでは親しさ以上に「個々のスタンス・考え方の差」「それによる関係性」がわかるように作っています。
ところで、「マイとアズが仲良くなる」っていうの、けっこう致命的ネタバレ寄りだったかも。という気がしてます。
アズもだけど、あのマイにスタンスの違う友達ができるなんてとんでもないことです。のちにそれは、彼女の軸となるものを変えていきました。PVで見せたシーンは、当人たちに全然自覚がなかったとしても、シーンとしてはなんてことのない場面だったとしても、彼女にとって「革命が起きはじめたシーン」でした。
わたし的には、これは本編で初見のほうがいいシーンだったな…と思っています。
とはいえめっちゃかわいいからなあ……訴求効果はあったかもなあ………
マイは誰とでも70点の関わり方をしていたので、正直いうと序盤のシーンだけでは「キャラクターの関係性を端的に示せる」シーンが少なかった、などの事情もあります。5人とも主人公ってタイプの作品だから出てこないキャラがいるわけにもいかないし…
第4弾PV
3月ごろ公開された最後のPV。
ここまで、「で、魔女って何」「魔女なのに花屋とは一体…」を説明していませんでした。そのため、けっこうポストやコメントで「で、このアニメは一体…」というのも見かけました。当然の疑問です。説明してないのだから
また、ここまで1話の巻戻し演出をはじめとした「突飛な演出」、ライブシーンをはじめとした「アートっぽい演出」があることは意図的に隠していました。あまりそこを訴求しても、とっつきづらくなる可能性があったので。
ということで、本PVでは「PVにも巻き戻し演出を入れる」ことで本編の演出の味を盛り込み、Q&A形式にすることで序盤で説明される「魔法」のしくみを整理して説明しました。
ここまで隠してきた変身シーンや、ライブシーンの比喩的なカットなどもガツガツ盛り込み、後半にはなるべく避けてきた「社会派っぽいシーン」も入れています。
「いまから歌います!」で、本当にしばらくなんの説明もなく歌う、というのも「前橋ウィッチーズっぽい遊び心」としてやってみました。
バチバチに音ハメで作れて、かなり気に入ってます。
「プロモーション映像」の正解とは
YouTube見てるとアニメのPVってすんごい再生されてて(CM出稿もしてるかもしれないですが)、けっこうレコメンドされます。「アニメのプロモーション映像も再生されればされるほど良い」はず。
YouTubeでメインストリームに乗せるには「熱心なファンに何回も見てもらう」ことが重要。つまり「何度も見たくなるスルメプロモーション映像」にするっきゃない。
多分いろんな手法があって、たまにすげーバズるやつとかもありますが。私が予算内で、得意分野でできることといったら「後から見ると違う発見がある映像」にすることくらいです。
どのPVも、何話を見ている途中で振り返ってPVを見返しても、セリフが違う意味に聞こえ、映像が違う意味に見えてくる。先がますます気になる。そんなつくりにしたつもりです。
本PVのラストカットは、最後のライブシーンから使っています。見終わったあと、思い出を振り返るにもちょうどいい映像になっていると思うので、ぜひ本編とともにPVも見返して、たくさん再生してくださいね。
前提なんですが、『前橋ウィッチーズ』が「放送前に全話完成していたから」、「そもそもそのくらい深く作り込まれているから」PVも良いものになりました。とてもすごいことです。
みんな見てくれ…!!前橋ウィッチーズを………
前橋ウィッチーズの誠実さ
こっからあとはただの感想なんですけども
もうさ~~~~~~私は7話で信じられないくらい泣いたんですよ………………………………………………
今、家族をケアしている子ども達(だけでなく全ての人がですが)に必要なのは
— 吉田恵里香@前橋ウィッチーズよろしくお願いします!虎に翼ありがとうございました。 (@yorikoko) May 25, 2025
個人の努力でも魔法でもなく、ケアと支援が行き届いた社会づくりです。それは現状、公的なものと民間・個々の両輪が無ければ進んでいけない道です。
どんな環境に生まれた子どもでも…
この後の解決編である8話で、きちんと行政への誘導をしていて本当にえらい。
ちなみに前橋市では昨年ヤングケアラー相談窓口を開設したそうです。
先に述べたマイの例のように、理不尽な怒りや悲しみを、劇的に解決するってより寛解していくような形の解決をとっているのも、現代的に感じます。とても好きな描写でした。
以下すっげえネタバレ
終盤、「前橋ウィッチーズとしての活動の記憶が消えてしまう」という展開になります。
そんな中でこの11話冒頭。「THE FIRST TAKE」のパロディっぽいですが、横並びのマイクなどがアフレコスタジオにも見えます。
本作の主演5名は、はじめてメインキャラを演じた方も多い、という座組です。ユニットでの活動も一生懸命されています。
いつかベテランになっても、この作品が人々から忘れられても、活動の意味が消えてなくなることはなくて、アニメは再生すればいつでも観られて、ずっと残り続ける。
そういうシーンなのかな、と理解しています。
若手・新人さんをキャストに起用した作品として、作品側が発するメッセージとして、非常に優しい、とても誠実なものだと思いました。活動や出演をずっと誇りに思えるタイプの作品だと思います。
監督が「10年後も愛される作品に」と答えていたインタビューがありましたが、きっとそうなると思います。10年後には、「なんか取り扱ってる問題がちょっと古いね」「でもお話は面白いね」なんて感じになってると、いいですね。
見て!!!!!!!!!!!
前橋ウィッチーズを………………
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