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講師のVesper代表・朝賀拓視さん(写真右)

講師のVesper代表・朝賀拓視さん(写真右)

日本酒を注文する時、「辛口・甘口」では自分が飲みたい味は正確には伝わらないかもしれません。

「アフターファイブを学びの時間に」。2025年11月20日に開催された無料ウェビナー「リスキリングBar」のテーマは「ビジネス会食に効く 日本酒の知識を身につけよう」でした。日本酒ECなどを手掛けるVesper(東京・中央)代表の朝賀拓視さんに、会食で外さない日本酒の選び方を聞きました。

〈目次〉
■味わいの3つの軸「華やか」「すっきり」「しっかり」
■相手の好みを聞き出そう 近い味わいを狙い撃ち
■料理の流れに合わせる「時計回り」の法則

海外で高まっている日本酒人気。ビジネス会食の場でも、海外のビジネスパーソンなどに日本酒でもてなすシーンも増えているのではないでしょうか? 1000以上の蔵元がある日本酒の世界。一見複雑でとっつきがないように見えますが、実は3つの軸を押さえるだけで格段に自分の好みの味が選びやすくなるといいます。

朝賀さんは、「TOKYO SAKE BASE」ブランドで日本酒の新しい楽しみ方を提案しています。大企業やスタートアップ向けのイベント運営や日本酒ケータリングサービスを提供しており、自身がほれこんだ「感動する一本」を厳選し、まだあまり世に知られていない日本酒を発掘・紹介する活動を続けています。そんな朝賀さんに日本酒でおもてなしするためのコツを聞きました。

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味わいの3つの軸「華やか」「すっきり」「しっかり」

「とりあえず辛口で」。

日本酒を注文するとき、たいてい辛口・甘口で頼むことが多いと思います。ただ、実はこの「辛口」という表現は、非常に曖昧な表現だと朝賀さんは指摘します。

「一口に『辛口』といっても、人によって感じ方は様々。蔵元の生産者に聞いても、『辛口』の定義について明確な答えが返ってこないこともある」(朝賀さん)

辛口という言葉は、具体的に何を指すのか。切れの良さ、アルコール特有の風味の強さ……。同じ「辛口」という言葉でくくられている日本酒でも、まったく味わいが違うということも少なくありません。

自分が飲みたい味、接待相手の好みの味を正確に伝えるには「辛口・甘口」という言葉だけでは十分ではありません。

そこで朝賀さんが提案するのは、日本酒の「造り方」に注目し、3つの軸で分類する方法です。「日本酒はワインと違って、材料の影響は小さい。作り方による変化の方がはるかに大きい」と朝賀さんは言います。

この日のセミナーでは、朝賀さんが6本の日本酒を用意しました。MCやウェビナー観覧者が実際に試飲しながら味わいの違いを確かめました。

最初の1本は、山崎合資会社(愛知県西尾市)が造る「奥 Spring Cloudy 生」。華やかな香りがグラスから立ち上がりますが、甘さがあまり舌に残らない。試飲したMC陣からは「甘い香りがするのに、後味はドライで残らない」という声が上がります。

「香りは甘いが、舌で感じる甘さはない。だから甘い系、辛い系という曖昧な表現ではなく、もっと具体的に味わいを捉える必要がある」と朝賀さん。この曖昧さを避けるため、日本酒の味わいを3つの軸で理解する方法を紹介します。

1つ目は「華やか系」です。生酒やスパークリングの日本酒があてはまることが多く、フルーティーな香りが特徴で、最初に試飲した「奥 Spring Cloudy 生」はまさにこのタイプ。生酒は加熱処理をしていないため、フレッシュな香りが立ちやすく、スパークリングは炭酸によって華やかさが増します。高精白とは米を多く削ったもので、雑味が少なく香り高い仕上がりになります。華やか系は「最初の一杯」としてぴったり。

2つ目は「すっきり系」です。料理を邪魔しない食中酒。香りが控えめで、料理の味わいを引き立てます。食事が始まってからの中盤に出すことで、様々な料理の味に寄り添い、お互いに味を引き立てます。

3つ目は「しっかり系」です。生酛(きもと)造りや、低精白の日本酒がよくあてはまり、米の旨味をしっかり感じられるのが特徴です。グラスを口に運ぶと、米そのものの香りが広がります。生酛造りは江戸時代からの伝統的な製法で、独特のコクとうま味が生まれます。温めてもおいしく、こってりとした料理によく合います。

まずは銘柄ではなく、生酛や低精白といった製法の単語を理解すると、好みの味に近い日本酒を高い確率で選べるようになります。

Point
・「辛口・甘口」は曖昧な表現
・日本酒は材料より造り方で味が決まる
・「華やか」「すっきり」「しっかり」の3軸で分類する

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相手の好みを聞き出そう 近い味わいを狙い撃ち

3つの軸により再現性高く日本酒を選べるようになったら、次は相手に合わせた選び方です。自分の好みではなく、接待相手が喜ぶお酒を選ぶ——これがビジネス会食での鉄則だと朝賀さんは言います。

相手についてできる限り事前に調べた方がよいでしょう。ポイントは3つです。

1つ目は相手の出身地や出身校です。相手のゆかりのある産地の日本酒を出して、場が険悪になることはまずないでしょう。

2つ目はその人が普段飲んでいるお酒。日本酒に慣れているかどうか、どんなお酒を好むかで選び方は大きく変わります。「日本酒はすごく幅が広い。好きな銘柄や普段飲んでいるお酒が分かれば、それに近いものを選べる」(朝賀さん)。ビールなのか、ワインなのか、焼酎なのか。普段の飲酒傾向を知ることで、華やか系、すっきり系、しっかり系、どのあたりが合いそうかが見えてきます。

3つ目は年代です。朝賀さんは一般的な傾向として、若い世代や日本酒に慣れていない人には華やか系やすっきり系が好まれることが多いと説明します。フルーティーで飲みやすく、日本酒の入り口として最適です。

重要なのは、相手の様子をよく観察することです。「本当にどんな味が好きかを知ることは難しいので、飲みながら相手の反応を見ることも重要です」と朝賀さん。

普段の飲酒傾向からも、好みを推測できます。ワインをよく飲む人なら、すっきり系や華やか系が合いやすいでしょう。ウェビナー中に試飲した白こうじ仕込みの「ヒメノイ Soa」は、「白ワインに近い感覚で楽しめる」という一本。MC陣からは「リンゴの香りが」という声も。洋食との相性も良く、日本酒が苦手という人にも受け入れられやすいタイプです。

反対に普段からよく日本酒を飲むという人には、日本酒独特の米の香りが色濃く感じられるしっかり系が好まれることが多いそうです。

また、海外の方を接待する時は、有名ブランドを押さえておくと安心です。「十四代」「獺祭(だっさい)」「黒龍」といった銘柄は、日本酒に詳しくない人でも名前を知っていることが多く、喜ばれる確率が高いといいます。

ただし、これらはあくまで一般的な傾向です。やはり最も大切なのは、相手をよく知り、反応を見ながら考えることです。相手がどんな表情をしているか、グラスが進んでいるか。小さなサインを見逃さず、「このタイプが好みかもしれない」と次のお酒を提案する。味の幅が広い日本酒で大外しをしないコツは、相手の反応をしっかりと見ることです。

Point
・普段飲んでいるお酒から最初の一本はチョイスする
・相手の反応を見ながら次の一手を考える

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料理に合わせるのも手

料理との組み合わせで選ぶというのも外しにくい方法です。朝賀さんが提案するのは、華やか系から始めてすっきり系、しっかり系に順に進めていくという考え方です。

まず会食の始まり、前菜が出てくる頃には華やか系を合わせます。「前菜が出てくる前あたりに出すと、場が華やぐ」と朝賀さん。アルコール度数も13%と低めで、飲み口が軽やか。生酒特有のフレッシュな香りが、会食の幕開けを演出します。

料理が本格的に始まったら、すっきり系に移行します。「食事が始まってくると、料理を邪魔をしないお酒が一番いい」。米のうま味がほのかに残りながら、料理の味を引き立てます。「すっきり系が嫌いという人がほとんどいないので、好みがわからないときはすっきり系がいい」(朝賀さん)

そしてメインディッシュや肉料理には、しっかり系を合わせます。3本目に試飲した「にいだしぜんしゅ 純米原酒」は、精米歩合80%の低精白。米のうま味がぎゅっと詰まっていて、濃厚な料理に負けない存在感があります。「肉料理や中華にも全然いける。温めるとさらにおいしくなる」と朝賀さん。低精白のお酒は温度を上げることでコクが増し、すき焼きや鍋料理との相性も抜群です。

では、実際のお店でどう頼めばいいのでしょうか。朝賀さんが強調するのは、銘柄ではなく製法や味わいで伝えることです。

「この銘柄を、と言っても店になければ終わり。例えば『酸味が強いお酒はないですか』『米のうま味が感じられるものはありますか』と聞くのがオススメです」(朝賀さん)。具体的な特徴を伝えれば、店の人は適切なお酒を選んでくれます。

日本酒の味をいろいろと知るためには、まず日本酒のイベントに行って、生産者から話を聞きながら色々試し飲みするのが一番の近道だと朝賀さんは話します。

「日本酒の世界はすごく広い。全部覚えるのは大変なので、特徴をざっくり覚えて、自分がおいしいと感じたものを大事にするといい」(同)

Point
・料理の流れに合わせて「華やか」「すっきり」「しっかり」の順で
・お店では銘柄ではなく製法や味わいの特徴で伝える

セミナー本編では、6本の日本酒の試し飲みや、視聴者からのQ&Aコーナーも実施しました。詳しくご覧になりたい方は以下にある「見逃し配信のご案内」をお読みください。

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ウェビナー配信後、観覧者の方と朝賀さんとともに日本酒について「アフターパーティー」を実施しました

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