チームみらい安野氏✖️代表上野山が対談 AIシンフォニー ~政策・技術・社会が奏でる未来協奏曲 |「生成AIサミット(Generative AI Summit)2025」登壇レポート
※本記事は、2025年10月7日に開催された日本経済新聞社主催の「生成AIサミット(Generative AI Summit)2025」における、当社特別講演の内容をまとめたものです。
最先端のAI技術が政治、企業、そして社会のさまざまな場面でどのように活用されているのか。弊社代表上野山が、チームみらい党首の安野 貴博氏と対談を行いました。人と人との間にAIが介在することで、国の意思決定や事業はどのように変わっていくのかー透明性、組織の革新、合意形成、そして国際協調といったさまざまな切り口から対談を行いました。
(モデレーターは日経デジタルガバナンス編集長中西 豊紀氏)
チームみらいの取り組み「ブロードリスニング」とは
政治の透明性と市民の声を紡ぐためのAI活用
―― 以前安野さんは「政治家でデジタルを理解している人が少ない。自分がそこに入ることによって変えられるものがある」とおっしゃっていました。それが自治体レベルではなく、国政となりました。これから何をしていくのでしょうか?
安野:我々チームみらいは、他の政治家の方ががやってこなかったやり方で、色んな社会問題を解決できると思っています。例えば、最近出したのが『みらいまる見え政治資金』という政治資金を見える化するツールで、国政政党として初めてのオープンソースです。これはまず、自分たちの活動を透明化するためというのもありますし、他の政党にも使ってもらって政治全体の透明化を進めたいっていうことも考えています。
さらに、ソフトを実際に作ってみてわかったのが、政治資金のルールに改善の余地があるということ。例えば、今は単式簿記だから民間の会計ソフトが使えません。これを複式簿記にすれば、第三者のチェックもしやすくなるし、コストもだいぶ減るんですよ。だから、実際にプロダクトを作って学んだことを基に、他の政党と政策の議論を進めていく、という両輪でやっていくのが良いのではないかと思ってます。
―― 「見える化」という話になるかと思いますが、デジタルや政治を取材していくと、「見える化」と「みんなで参加していく」というキーワードがあると思います。選挙中に「ブロードリスニング」というキーワードを使ったりされていましたが、この辺りの詳しい説明はありますか。
安野:キーワードとして「ブロードリスニング」という造語を使っているんですが、我々も結構これを言ってまして、ブロードキャストの逆向きの情報の流れですね。ブロードキャストというのは、一人の人が考えたことを、複数人に何らかの技術(複製する技術)を使って伝播させる、というのがブロードキャストなわけです。今までの政治のやり方はブロードキャストが主体でした。それが新聞になり、ラジオになり、テレビになり、インターネットになってきた、という流れです。
しかし、今、SNSもありスマートフォンもあるという時代になってくると、誰でも自分の好きなことを言えるようになってきました。2020年代になり、AIやLLM(大規模言語モデル)が登場しました。これらは、人間の言葉を理解した上で、さまざまなタスクをこなすことができます。この技術を使うと、「多くの人が個別に発信している多様な意見や情報」を、AIが共通のテーマやカテゴリごとに一箇所に集約し直せるようになります。この、散らばった情報を集めて整理する逆向きの動きを可能にする技術を「ブロードリスニング」と呼んでいます。
こういった技術をしっかりと開発して伸ばしていって社会実装していくと、実は情報の流れ方が変わって、政治のやり方とか合意形成のやり方も変わるんじゃないかということをお訴えしています。民意をまんべんなくくみ取る仕組みですね。
組織とAI ― 空気を読む日本独自のユースケース
「橋渡しAI」が組織やSNS上のコミュニケーションの形をアップデートする
―― 上野山さんは、会社のトップという立場から、従業員の方だったり取引先の方の意見を全部くみ取るのはそもそも大変だと思いますが、組織として今話にあったブロードリスニングを御社のような企業でも応用させられるものなのでしょうか?
上野山:そういったAIの実装事例が日本で非常に増えてますが、パターンがいくつかあって、一つは経営層の認知能力を拡張するためのAIです。大企業の経営層って、執行役員等の特定のレポートラインからくる情報で意思決定をしていることが多いと思います。
それが今だと、会議の中にAIエージェントが潜んでいて、それを個人情報などをマスキングして集約し重要な情報だけを橋渡しするようなエージェントが動いていたりします。つまり、階層型組織構造の枠を超えて動き回り、かつ、外でいろんな人の会話やコミュニケーションの中で、重要なものだけを橋渡ししていくようなAIが広がっているんです。人と人との間で動くようなAIというのが、特に日本で広がっていて、アメリカ等他の西欧諸国とは少し違うんですよね。
ダイレクトなコミュニケーションを避ける傾向がある日本人ならではで、ミーティングが終わった時に「実はここの真意が伝わってない」ということを伝えるようなAIが日本だと作りやすいんです。このようなユースケースが起こってくるのはちょっと面白いなと思っています。
安野:日本人には「空気を読む」みたいな挙動があるからこそ、独自のAIが伸びていくというのはありそうな気がします。
ーー 安野さんにとってのAI実装は、今上野山さんがおっしゃっていた話と、本質的には同じことをしようとしていると思っています。会社経営の中だと、例えば1000人とか100人とかの単位での間にAIが入ることによって情報の流れ方がスムーズになる。これを1億2000万人でやろうとすると、チームみらいのAIになりますよね。
安野:政治も経営も、人と人とが喋ったりしながら情報を交換し合って、それによって合意を形成していくプロセスなので、実は同じことをしてるんです。1億2000万人のアーキテクチャと、1万人ぐらいのアーキテクチャと、300人ぐらいのアーキテクチャと、15人とかのアーキテクチャでそれぞれ微妙に違うんですけど、ただ今まで以上にこれが滑らかに繋がっていくみたいなことは全然あります。
上野山:結局、世の中で起きている色々な問題の原因って、ほとんどがコミュニケーションの不具合だと思うんです。だからこそ、PKSHAは「コミュニケーション」を軸にした会社をずっとやっていて、人と人の間にAIが入って動くような技術に力を入れています。
AIが間に入ることで、これまで難しかった合意形成や、相手への愛着(親近感)を持つといった部分もサポートできるようになってきている。これを考えると、「人間が集団として協力して動く(協調行動)」という根本的な部分が、今AIによって大きく変わろうとしていて、そのまさに入口に私たちは立っている、ということなんです。
安野:本当にそうだと思いますね。我々が選挙中にやった一つの実験で凄い面白かったのは、特に政治の領域って、皆さんの思いが強いので、考えが違うと対話自体が成立しなくなり、ネット上の議論とかだとお互い言葉がきつくなってしまうことが多いんです。
ですが、ここにAIを介在させたときに、「表現は厳しいけど、ロジックとしては確かに学びがあること」を言う人たちに対して、その表現とロジックを分離して、そのロジックを上手く修飾(フィルター)として違う考えの人が飲み込みやすい形にするということができる。実際にそうすると、感情労働を使わずに、新しい知見やアイデアを摂取できる。これは結構LLMのいいユースケースだと思います。
上野山:橋渡しAIみたいなものが、SNSなどの言論空間に上手く入っていくと、いろんな陣営をブリッジしながら、新しい情報の流れ方を作ることもできる。
ーー SNSが出てきたとき、「人を繋ぐツール」になるはずでしたよね。でも、実際に使ってみると、繋がる一方で「人同士を分断する材料」にもなってしまった。SNSというテクノロジーが「人を繋ぐための土台」を作ったと考えると、今度はAIがその土台の上で新しい役割を果たすようになるのでしょうか。
安野:SNSが分断を広げているって言いますけど、まだSNSと人類が付き合い始めてから15年ぐらいしか経ってないんですよ。だからまだまだ未成熟だと私も思ってて。特にそのアルゴリズムの仕掛け一つで、全然その言論空間の空気も変わるんです。なので、そこの模索をどんどんすべきだなと思うんです。
合意形成の未来ー「熟議」のコストダウンとSSOT
技術の介在で100人の意見を一度に集め、短時間での熟議を実現する
ーー デジタルと政治で伺いたいのは、今「見える化」の話はありましたが、もう一個「熟議」というキーワードもあるなと思ってます。これも多分コミュニケーションの一環かもしれませんが、社内会議等でも、AIで、あるレベルにたどり着くという発想だと思いますか。
安野:そうですね。多分重要な考え方として、最近そのオードリー・タンさんがプルラリティ(Plurality)という本を出されたんですけど、プルラリティ自体はですね、非常に難しそうに見える概念なんですが、実は結構簡単で、コラボレーションの深さと、そのコラボレーションに参加できる人の数にはトレードオフがある。当然二人の方が深くディスカッションできるし、参加できる人が高ければ深いほど多くの人は参加できないとなるわけですけど、このトレードオフのフロンティア曲線みたいなものを考えたときに、実は技術を使うことで、この関係曲線ってのはどんどんどんどん広がっていく。大人数がより参加できて、より深いコラボレーションというのが、技術によって実現できるはずである、というのが基本的にプルラリティが言ってることなんです。
「熟議」は、議論を通じて参加者の意見を変えるという点で非常に重要です。しかし、従来はこれを実行するのに膨大なコストがかかっていました。今なら、技術(AIなど)を使うことで、この熟議にかかるコストを大幅に下げられます。その結果、より多くの人が参加できるようになり、多様な情報に触れ、活発な対話が生まれやすくなる、ということです。
上野山:例えばタウンミーティング(地域の集会)で、いきなり参加者100人に発言してもらうのではなく、まず参加者全員にAIボットと10分間対話してもらいます。ボットが「課題は何か?」「なぜそう思うか?」「解決策は?」と、100人に対して深く質問を掘り下げてくれるため、わずか10分で、通常では得られない圧倒的な量の詳細な情報を一気に集めることができるんです。
安野:
知見の活用においては「SSOT(Single Source of Truth:信頼できる唯一の情報源)」という考え方が、あらゆる仕事の効率を大きく左右すると考えています。これは、「正しい情報が、必ず一つの場所にだけ存在する状態」のことです。
例えば、私たちの政党では、党の方針をまとめた一つの文書を作り、それを常に最新の状態に更新(メンテナンス)し続けています。こうしておけば、何か疑問が出た時に、AI(LLM)がその「唯一の正しい文書」を見て答えてくれるので、ほとんどの問題がすぐに解決します。逆に、情報源がバラバラで「どれが本当の情報かわからない」状態だと、AIが答えても「その情報、もう古いよ」となってしまい、結局効率が上がりません。だからこそ、SSOTを確立し、それを維持していく仕組み(ワークフロー)を設計することが非常に大事だと考えています。
AIとリテラシー:日本の文化特性と強み
技術のハードルが下がったからこそ活用する目的・意思が問われる時代に
ーー AIが広がっていますが日本ではまだ使っていない人の数も多い。デジタル分野で、台湾やエストニアが先進国と言われるのは、小さい国だし、デジタルリテラシーが高いからという見方もありますが、その辺りはいかがでしょうか。
安野:僕は、リテラシーという観点ではAIはこれまでの技術とは逆の性質を持っているんじゃないかと思っています。以前の技術、例えばパソコンなんかは、裏側の仕組みをよく知っている人ほど得をする部分がありましたよね。
でも、AIは違います。技術の知識がなくても、「これをやりたい」という目的を伝えることさえできれば、結果を出してくれます。自動運転が良い例です。ハンドルの操作方法を知らなくても、「ここに連れて行って」と伝えるだけで目的地に行ける。
つまり、AIはITの知識(リテラシー)がない人でも、コミュニケーション能力さえあれば使いこなせる技術なんです。この点で、他国と比べてITリテラシーは低いけれど、コミュニケーションや読み書きの能力が高いと言われる日本人は、実は有利なんじゃないかと考えています。
上野山:その流れは、これから「音声」での操作がもっと進化すれば、さらに加速すると思います。「喋る」ことは誰もができる最も簡単な操作方法ですから。この技術が今後数年で広まれば、誰もがAIを使って会議などでもっとクリエイティブになったり、色んな人とのコラボレーションがしやすくなったりします。
そうなると、活躍するのは専門的な技術を知っている人ではなく「プロジェクトへの強い想いがある人」や「他の人の気持ちを理解できる人」へと変わっていくと思うんです。つまり、技術が苦手な人にも大きなチャンスが生まれているということですね。
ーー 御社のこのAIとテクノロジーを5000社程がビジネスになんらかの形で入れていると思うのですが、現時点で見えてる課題と展望はいかがでしょうか。
上野山:まずやっていて気づいたことが、AIの使い方が国や文化で全然違う、ということです。欧米では、AIを人間が作る「自立した存在」として捉えることが多く、中国では、社会の秩序を守るための「管理システム」として受け入れられがちです。
一方で日本は、AIを対立するものではなく、「横にいる仲間」みたいな感じで捉えています。だから、実際に人と人の間に入って動くAIがすごく増えているんです。困った時に詳しい人に繋いでくれたり、会議で議事録をとって共有してくれたり、というように、人と人を橋渡しする役割ですね。
日本語の「人間」という言葉が「人と間」と書くように、阿吽の呼吸を大切にする日本の文化に、この「間を取り持つAI」が合っているんだと思います。今後、人に近い振る舞いをするAIが社内にスムーズに入っていくには、やっぱり日本語の理解が重要になってくるでしょう。それから、AI開発で一番大切なのは、「何のためにAIを作るのか?」というシンプルな問いです。「AIが面白いから」というだけで広げてはいけないと思っています。
だから僕らが今議論しているのは、「どの未解決問題に集中するか」です。非効率で誰も解決できなかった課題にAIの力を注ぐ。例えば、人手不足の解消に加えて、教育や自治体の課題を解決する等、社会に良い影響を与えるAIの実装に力を入れる領域が、今後非常に重要になってくると考えています。
ーー 多くの企業で「AIが大事だから使おう」という話が出ていますが、深く掘り下げている企業ほど、結局は「まず解決したい課題を見つける」ことが重要だと気づいています。これは上野山さんの言う未解決問題へのフォーカスと同じ考え方ですね。本日はありがとうございました。
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