健康経営優良法人の落とし穴
健康経営は、なぜ現場の健康を守らないのか
健康経営優良法人という制度がある。
従業員の健康を経営課題と捉え、生産性向上や企業価値の向上につなげるという理念を掲げた制度である。アルプスアルパインは6年連続認定されている。
私は、同社員の健康経営を標榜する現状と明らかに整合しない長時間労働等について、四点の具体的な証拠を得ている。
しかし、同社に限らず現場では、「健康経営を掲げているはずの会社で、なぜこれほど人が疲弊しているのか」という声が後を絶たない。
この違和感は、個人の不満ではない。構造の問題なのだ。
健康経営は「働き方」ではなく「管理の有無」を見る制度である
健康経営優良法人の認定は、主に制度の有無と実施記録によって判断される。健康診断を実施しているか、ストレスチェックを行っているか、面談をしたか。
つまり問われているのは、「人をどう働かせているか」ではなく、「健康に関する施策を行ったか」である。
その結果、現場で長時間残業が続いていても、海外出張が過重であっても、
書類上の要件が整っていれば「健康経営」と評価されてしまう。
ここに、制度と実態の大きな乖離が生まれるのだ。
健康を壊す意思決定は、評価の対象外に置かれている
例えば、長期間の過重労働が続いている人員に対して、十分な回復期間を与えずに海外出張を命じる。
あるいは、帰国直後にも業務を詰め込み、心身の負荷を考慮しない。
これは明らかに健康への配慮を欠いた判断である。
しかし、こうした「業務設計」や「人事判断」は、健康経営の審査項目ではほとんど問われない。この記事で初めて知った方も多いのではないだろうか?
健康を壊す原因そのものが評価の外に置かれ、健康を測定・管理したという結果だけが評価される。この逆転現象が、現場の苦しさを不可視化しているのだ。
大規模異動がもたらす健康リスクは無視されている
数百人規模の転勤を、事前の十分な説明もなく突然通知する。
実施までの期間は短く、生活設計や家族の事情を考慮する余地はほとんどない。
通知後に手当や条件が後出しされ、個別の相談では「できない」と即答される。
このプロセスがもたらすものは、明確である。
それは強い心理的ストレスであり、家族を含めた生活基盤への打撃である。
健康とは、身体だけの問題ではない。予測不能な異動、不確実な情報、対話なき決定は、メンタルヘルスを大きく損なう。
本来、こうした人事の在り方こそが健康経営の中核であるはずなのだ。
にもかかわらず「健康経営」は成立してしまう
健康経営優良法人の審査では、異動の決め方、通知の仕方、家族への影響、意思決定の強硬さは、ほぼ評価されない。
面談をしたか。
健診を実施したか。
チェック項目を埋めたか。
それだけで、「健康に配慮している企業」として認定されてしまう。
その結果、現場では人が疲弊し、家族が危機感を抱き、それでも会社は「健康経営」を名乗り続けるという歪な状態が生まれる。
これは違法ではない。
しかし、サステナビリティの理念から見れば、限りなく偽装に近い。
サステナビリティマネジメントとの完全な剥離
サステナビリティとは、持続可能性である。
人を壊しながら成り立つ経営は、持続可能ではない。
にもかかわらず、
過重労働、無理な異動、回復を無視した配置が放置されたまま、
対外的には「人的資本を重視」「健康経営を推進」と語られる。
ここには、マネジメントの失敗がある。
健康を守る視点が、経営判断に組み込まれていないのだ。
困っている人は、決して少なくない
これは一部の特殊な企業の話ではない。多くの大企業で、同じ構造が繰り返されている。
現場で苦しむ人ほど、「制度上は問題がない」と切り捨てられ、声を上げれば個人の弱さとして処理される。
しかし本当は逆である。
問題なのは人ではなく、仕組みなのだ。
問われるべきなのは「整っているか」ではなく「壊していないか」
健康経営が本当に意味を持つためには、健診や面談の有無ではなく、
人を壊す意思決定がなされていないかを問う必要がある。
異動は健康にどんな影響を与えるのか。
業務設計は回復可能か。
家族の生活を破壊していないか。
それを問わない健康経営は、看板としては美しく、現場には残酷である。
これは誰か一人の怒りではない。
今、同じ違和感を抱え、言葉にできずにいる人たちの共通の現実なのだ。
今後、本研究会の有料記事において詳述していくが、
今回取り上げるアルプスアルパインの事例は、極めて深刻な悪循環に陥っていると考えられる。
仙台から古川への集約という発表のタイミングからそう遠くない時期に、古川からいわきへ約300人規模の異動が実施されるという流れは、経営判断の一貫性および人への配慮の観点から見て、大きな疑問を残す。
さらに、こうした動きがサステナビリティマネジメントとの間でどのように位置づけられているのかは不透明であり、健康経営優良法人という看板や、CMにおける「いい会社だよね」という表現と併せて考えると、企業の対外的メッセージと内部の実態との間に、看過できない乖離が存在している。
私はキャリア20年近くのライターである。だからこそ、ペンネームを変え、読者や社会の目を慎重に見極めながら、記事を書くことができる。
状況次第では、ワンクリックで大きなメディアに情報を届けることもできるし、自ら大きなスクープとして取り上げることも可能である。
正直に告白すれば、今回の記事に関しては、当初はスクープと呼べる内容ではないだろうと考えていた。
しかし、健康経営優良法人の看板、四点にわたる具体的証拠、そしてサステナビリティマネジメントとの明らかな剥離を目の当たりにしたとき、その判断は徐々に変わってきている。
そしてまた、企業研究という観点では非常に貴重な教材でもある。
就職判断リテラシー研究会からのお知らせ。
ようやく、研究会のHPが出来ました。
研究会のnoteも出来ました。
https://note.com/glossy_shark4811
誰が書いたのか、わかりませんが私、白石由紀の個人的な話も暴露されています(笑)
応援してくださると嬉しいです。
今年もよろしくお願いします。
▽こちらのページだと目次的に見えます。
https://note.com/glad_peony7803


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