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【高校生からの質問】就職前に見抜く方法はあるのか?理念と行動のギャップを考える:短期異動と学生からの視線

▽事例詳細:優良企業のはずだった ――巨額投資の研究拠点で起きている「合理性なき300人異動」
https://note.com/glad_peony7803/n/n23ad9de0513a

私が所属している就職判断リテラシー研究会は、「内定職人」と呼ばれる代表のほか、大学の教授やライター他で組織されています。
会社の決断が学生にどう見えるのかなども、一緒に考えているグループです。

大学生には大学を通じて情報が広まりやすい一方で、近日は関係する高校生からの相談や質問も少しずつ増えてきました。

今回、高校生の方から、アルプスアルパイン事例を見て感じた疑問が届きました。

「サステナビリティを大切にしていると言っている会社が、どうして短い期間でたくさんの人を異動させることができるのか」「こういう会社を、就職する前に見分けることはできないのか」という、とてもまっすぐな質問です。

この文章では、誰かを責めることが目的ではなく、会社の行動を、これから進路を考える立場でどう受け止めればいいのかを、できるだけ分かりやすく説明していきます。

回答①:このケースでは何が問題なのか

まず前提として、「サステナビリティマネジメント」とは単に環境配慮や社会貢献を行うことではありません。
企業が中長期的に存続し、価値を生み続けるために、社員・社会・顧客・株主といったステークホルダーとの関係を持続可能なものにする経営姿勢を指します。

そのため、サステナビリティを経営の柱として掲げる企業において、短期間で大規模な異動を一方的に決定すること自体が、ただちに「悪」だとは言い切れません。
経営環境の変化によって、人員配置の見直しが必要になる場面は現実に存在するからです。

しかし今回のケースで問題となるのは、その決定に至るプロセスと社員への向き合い方です。

◇第一に、企業が公に掲げている理念と、実際の行動との間に大きな乖離が見られます。

サステナビリティを強調する企業であれば、社員を短期的な調整対象としてではなく、長期的な価値創出の担い手として扱うことが期待されます。

にもかかわらず、十分な説明や準備期間を設けずに大規模な異動を決定することは、「人を大切にする」というメッセージと整合しているとは言い難い対応です。

◇第二に、人材マネジメントの観点から見ても課題があります。
事前の告知や段階的な措置、代替案の提示がないまま異動を行えば、社員は将来の見通しを立てることができず、不安や不信感を強めます。

その結果、組織への帰属意識が低下し、長期的には優秀な人材ほど離れていく可能性が高まります。

◇第三に、上場企業として求められる説明責任やガバナンスの面でも疑問が残ります。

大きな経営判断ほど、その背景や目的、影響について丁寧に説明し、関係者と対話を行うことが不可欠です。

それを怠った場合、社員だけでなく投資家や社会からの信頼も損なわれることになります。

回答②:本来、どのような対応が望ましかったのか

ここで重要なのは、「異動をしないこと」が正解だったわけではない、という点です。
問題は異動そのものではなく、進め方にあります。

サステナビリティを重視する企業であれば、たとえ厳しい判断を下す必要があったとしても、次のような対応を取ることが考えられます。

まず、できるだけ早い段階で経営上の課題や将来の方向性について情報共有を行い、「なぜ人員配置の見直しが必要なのか」を社員と共有します。

次に、異動を一気に実施するのではなく、希望制や段階的な配置転換、自然減の活用など、時間をかけた方法を検討します。

高校生の皆さんも経験があると思いますが、例えばyahooなどのサービスでも1年程度前から「このサービスは2026年10月に終了します」という告知がある筈です。

今回の発表は2025年12月16日で、基本的な実施が2026年4月という短期間に設定されており、常識的には非常識と言わざるを得ません。

また、単なる異動命令ではなく、教育やリスキリング、職種転換といった代替案を提示することで、社員が自分の将来を主体的に考えられる余地を残すことも重要です。

そして最終的には、一方的な通達ではなく、説明や質疑の場を設け、社員の声に耳を傾ける姿勢が求められます。

こうしたプロセスを経て初めて、社員は「厳しい決断ではあるが、納得できる」と感じることができ、結果として組織の持続性も保たれます。

回答③:このような企業を就職前に見抜く方法

完全に見抜くことは難しいものの、いくつかの視点を持つことで、企業の実態に近づくことは可能です。

① サステナビリティ報告書と離職率を見る

企業のサステナビリティ報告書や統合報告書では、美しい理念や方針が語られがちですが、注目すべきなのは「人が実際にどれだけ定着しているか」という点です。
離職率が業界平均と比べて高くないか、特に若手社員の離職が多くないかを見ることで、現場の状況をある程度推測できます。

また、離職率を曖昧に扱っていたり、理由について具体的な説明がなかったりする場合は注意が必要です。
本気で人を大切にしている企業ほど、不都合な数字であっても正直に開示し、その背景を説明しようとします。

② 採用情報の表現に偏りがないか

採用サイトで「やりがい」や「成長」、「変化の激しさ」ばかりが強調されている場合も、一度立ち止まって考える必要があります。
それらが悪いわけではありませんが、同時に研修制度や異動のルール、困ったときの支援体制といった現実的な情報が示されているかどうかが重要です。
今回のアルプスアルパイン事例では、労働組合がないため、社員が正式に交渉できる手段がまったくない状態でした。

抽象的な言葉が多く、具体的な制度が見えない場合、会社側にとって都合よく人を動かせる仕組みになっている可能性も否定できません。

③ 給料やボーナスの水準にも注意する

サステナビリティを掲げる企業にとって、社員の生活の安定は重要な要素です。
給料やボーナスが業界水準と比べて明らかに低いにもかかわらず、「やりがい」や「成長」を理由にそれが正当化されている場合は注意が必要です。

特に、低い賃金水準、高い異動頻度、そして高い離職率が同時に見られる場合、その企業は人を長期的に育て、守る設計になっていない可能性があります。

④ OB・OG訪問で実態を聞く

数字や資料だけでは分からない部分は、実際に働いている人の話を聞くことで見えてきます。

株価が一時的に上がっていても、業績がそれに見合っていないケースがあります。こうした状況では、社内の人に意見を聞くことで、実際の事実が明らかになることがあります。

方針変更があったときの説明の仕方、辞める人が出たときの雰囲気、評価や待遇に対する納得感などを聞くことで、その企業の文化が浮かび上がります。

まとめ

サステナビリティを掲げる企業を見極める際に大切なのは、理念そのものではなく、困難な場面でどのような行動を取ってきたかです。

人が定着しているか、生活が成り立つ待遇が用意されているか、そして説明と対話が行われているか。
これらを丁寧に見ていくことで、言葉だけではない企業の姿が見えてきます。

「きれいな理想を語る会社」よりも、
「現実の中で人を支える会社」かどうか。

その視点を持つことが、将来の進路選択において大きな助けになるはずです。

終わりに。

今回の高校生の質問では、アルプスアルパインの事例を通じて、企業の意思決定がどのように外部の目に映るかが問われました。
社員や学生、社会は、単なる言葉や理念ではなく、実際の行動や手順の透明性を基準に評価しています。

企業における迅速な意思決定は重要ですが、説明責任や段階的措置、代替案の提示が欠如している場合、短期的な判断は信頼の低下につながる可能性があります。
特にサステナビリティや人的資本経営を掲げる企業においては、理念と行動の整合性が信頼の基盤となります。

最後に強調したいのは、見ている。学生も、社会も。

意思決定はすべて記録され、評価されます。今回の高校生の質問を契機に、企業が理念に基づき、かつ現実に即した説明と手順を整えることの重要性を再確認する機会となれば幸いです。

就職判断リテラシー研究会
(社会問題ライターの立場から)

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