胎児性水俣病患者の訪問入浴、市が再び却下 患者側、不服申し立てへ

今村建二
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 胎児性水俣病患者の金子雄二さん(70)が申し込んだ訪問入浴介護の利用申請を、熊本県水俣市が再び却下した。対象者に該当しないというのが理由だが、「例外として認められる」と主張してきた金子さん側は「機械的な決定だ」と反発。市に再び不服申し立てをする考えを示した。

 金子さんは2024年3月、市の障害者支援事業として入浴介護を申請したが、2日後に却下された。同年6月に市に行政不服審査請求をしたところ、却下理由が本人に提示されていないという手続き上の問題で、市自らが決定を取り消す裁決をしたため、金子さんが利用を再申請していた。

 今回の決定は25年12月25日付で、郵送で同29日に届いた。金子さんと、支援を続ける加藤タケ子さん(75)、金子さんの保佐人を務める中島潤史弁護士らが今月6日、記者会見を開いた。

 今回の市の却下決定は、障害者福祉サービスは65歳以上になると介護保険サービスが適用されるという「原則」に基づいて、金子さんは該当しないとしている。前回却下した際も、市福祉課は同様の理由を説明している。

 だが金子さん側は、24時間介護が必要な金子さんのケアに介護保険サービスを組み込むと適切なケアが受けられない不利益が起きうることや、「自身の障害は加齢ではなく水俣病によるもの」との考えから、介護保険の利用を拒んでいる金子さんの「個人の尊厳」の問題と主張。自治体独自の判断で障害福祉サービスを認める例外は多数あるとも訴えてきた。

 中島弁護士は「制度を機械的に当てはめただけで、主張してきた金子さん個別の事情がなぜ認められないのかの説明がない」と批判。「理由提示の要件を欠く」という違法性は今回も是正されていないとして、市に説明を求めた上で、改めて不服申し立ての審査請求をする考えを示した。

 加藤さんは「市には期待していたが残念な結果だった。くつがえす戦いをしていく」と話した。

 再申請後、担当者が金子さんらに聞き取りをした市側は、「『個人の尊厳』をどう判断するのか、同様の希望が別の人からあった場合に不公平にならないようにするにはどうすればよいか、といったことを考える必要がある」と慎重な姿勢を示していた。中村俊彦・市福祉課長は「制度にのっとっての判断。個人のことなので詳細は答えられない」と話した。

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この記事を書いた人
今村建二
水俣支局長|水俣病・環境担当
専門・関心分野
地方政治、環境