地質観察旅行記:生田緑地公園
2023年から2024年にかけて生田緑地公園を何度か散歩して、園内の地層を観察したので、ここにその記録を残します。
当時は園内の「野鳥の森」がナラ枯れのため立ち入り禁止になっていたので、主に桝形山の地層を観察しています。
(追記)
産総研から素晴らしい生田緑地の解説が公開されたので是非ご参照ください。
「多摩丘陵の谷戸と尾根の成り立ちから読み解く 武蔵野台地(山の手)の未来の姿! —川崎市生田緑地でのジオ散歩のススメ—」
多摩エリアの地層
生田緑地公園は神奈川県東部の多摩エリアにある公園で、関東平野の一部です。
関東平野は300万年前は海にあり、280万年前から70万年前にかけて泥、砂、礫が堆積して上総層群の地層を作りました。
その後、上総層群は隆起して地上で岳陵となり、13万年前から12万年前、その上に火山灰のローム層が堆積しました。
このような上下の地層に時代差のある状態を不整合と呼びます。
なお、以前に紹介した三渓園の海食岸も多摩エリアの地層で、上総層群の上星川層と下末吉層の不整合を観察できます。
参考資料
以下の動画、サイト、文献などで事前に学習してから観察に行きました。
神奈川の自然をたずねて「6 川崎市生田緑地公園 ー関東ローム研究のふるさと」
地層サンプル
生田緑地公園内に建つ「かわさき宙(そら)と緑の科学館」には、この多摩エリアの地層のボーリングサンプルがあるので、参考になります。
柱には地層の模式図があり、多摩エリアの地層全体を俯瞰できます。
数百万年前から数十万年前の堆積岩の地層の上に、陸化した時期を境にして十数万年前から数万年前の火山灰の地層があることが分かります。
菖蒲池裏の飯室層最上部
上記で紹介した地層模式図の最下段には、上総層群の飯室層とオシ沼砂礫層があります。
この飯室層とオシ沼砂礫層の境目を、菖蒲池の裏で観察できます。
灰色の飯室層と明るい茶色のオシ沼砂礫層の境界を確認できます。
地層には所々に穴が開いており、貝などの化石があった跡だそうです。
桝形山登山道入口の飯室層
桝形山登山道の入口に青灰色の砂質シルト層があります。これは100万年前の飯室層です。
当時はこの場所は海の中にあり、泥や砂が堆積しました。
この地層から有孔虫の化石が見つかっており、飯室層のできた年代を特定することができました。
平行ラミナのあるオシ沼砂礫層
石段の途中には約1メートルの崖があり、黄褐色のオシ沼砂礫層を観察できます。
オシ沼砂礫層は、約30万年前の海進期(温暖で海面が高くなった時期)に海中で形成されました。
石段を登った先には、同様の3メートルの崖があります。これもオシ沼砂礫層です。
こちらの地層では平行なすじ模様、ラミナを観察できます。
このラミナは堆積した時の水の流れによってできた模様です。
オシ沼砂礫層、多摩Ⅱローム層、第一ゴマシオ軽石層
木の茂る崖をよく見るとオシ沼砂礫層、砂の混ざった白い軽石の粘土、ローム層が順番に重なった地層が見られます。
このローム層は箱根火山に由来する多摩ローム層です。
この粘土質の軽石層は第一ゴマシオ軽石層です。
この層に含まれるゴマシオ軽石は八ヶ岳由来の火山灰です。以下のゴマシオ軽石の実物は白と黒の粒が混じり、本当にゴマ塩のように見えます。
土橋ローム層
更に道を進むと、白っぽい霜降りローム層(土橋ローム層)が見られます。多摩ローム層よりも新しい時代のローム層です。
この土橋ローム層にはウワバミ軽石が含まれているそうです。
この先では三色アイス軽石層も観察できるそうですが、私の観察力ではどの地層がそれらに該当するのか分かりませんでした。
桝形山城公園
桝形山城公園にある城型の展望台を登ると、武蔵野台地を一望できます。
科学館近くの飯室層とオシ沼砂礫層
「かわさき宙(そら)と緑の科学館」の近くにある坂道を登ると崖があり、飯室層とオシ沼砂礫層を観察できます。
細かい砂の層と礫層の不整合を確認できます。
この崖の地層には、丸みのある小石(礫)が多く含まれています。川を流れている間に角が削れたと思われます。
ローム層、オシ沼砂礫層、上総層群飯室層が同時に観察できます。
この付近では赤みがかった丸みのある礫を見つけることができます。
日本民家園
生田緑地公園内にある日本民家園でもローム層の地層を幾つか観察できます。
日本民家園内には江戸時代の民家が移築されており、周囲に現代的な建物が全く見えないので、本当に昔の江戸時代にタイムスリップしたような錯覚を覚えることができるのでお勧めです。(特に人のいない時間帯になると、一人で異界をさまよっている気分になれて最高です)
また、有識者やボランティアスタッフによる民家の解説や当時の生活の再現が定期的に行われ、文化風俗や催事の解説展示は興味深く、民家を利用したそば屋もあり、1日では回り切れないほど充実しています。
「コンニチハ オイソギデスカ?」
そして、どの家にも誰もいない。この異界で生きている人間は私だけ……



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