今回は次の記事の続き。
マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン等についてみていく。
・マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン
(以下「ガイドライン」という。)
https://www.fsa.go.jp/common/law/amlcft/211122_amlcft_guidelines.pdf
・マネロン・テロ資金供与対策ガイドラインに関するよくあるご質問(FAQ)
(以下「FAQ」という。)
https://www.fsa.go.jp/common/law/amlcft/amlcftgl_faq.pdf
18 第2章第2節第3項第2号を読む_後編後半
前回は、「対応が求められる事項⑩」を確認した。
今回は、「対応が求められる事項⑪」以降を確認する。
まず、「顧客管理」における「対応が求められる事項⑪」は次のとおりである。
(ガイドラインの「顧客管理」における「対応が求められる事項⑪」の内容を引用、強調は私の手による)
必要とされる情報の提供を利用者から受けられないなど、自らが定める適切な顧客管理を実施できないと判断した顧客・取引等については、取引の謝絶を行うこと等を含め、リスク遮断を図ることを検討すること
その際、マネロン・テロ資金供与対策の名目で合理的な理由なく謝絶等を行わないこと
(引用終了)
そして、これに対するFAQにおける補足事項は次のとおりである。
① 「リスク遮断」の内容に含まれる具体例として次の事項が挙げられる。
・ 新規顧客に対する口座開設の謝絶
・ 既存顧客に対する口座解約
・ 既存顧客に対する取引制限
② 謝絶等の対象となる取引に含まれる具体例として次の事項が挙げられる。
・ 口座開設
・ 為替取引
・ 入出金取引
・ 両替
③ 「適切な顧客管理を実施できない」場合の具体的な内容については、各金融機関等が、自身の方針や顧客のリスク等に応じて個別具体的に判断する必要がある。
④ 「資金の実態が不明であるが、犯罪収益であると疎明できない場合」は、「適切な顧客管理を実施できない」場合に該当すると判断するための一要素となるにすぎない。
⑤ リスク遮断の判断に際しては、マネロン・テロ資金供与対策の名目のみを理由とし合理的な理由なく謝絶してはならず、預金規定等の内容等顧客との契約関係に照らして総合的に判断する必要がある。
⑥ 「合理的な理由」の有無を検討する際には、次の事項を考慮した上で、各金融機関等において個別具体的に丁寧に検討する必要がある。
・ 預金規定の内容等顧客との契約関係に照らして検討すること
・ 個々の顧客の事情・特性・取引関係やリスク管理に必要な情報が収集可能かという点等を踏まえて検討すること
⑦ リスク遮断を実施するためには、「個々の顧客の事情・特性・取引関係やリスク管理に必要な情報について可能な限り収集したが、これ以上手段を尽くすことが困難な状況になった」と言えることが必要である。
⑧ リスク遮断の内容は、リスクに応じて総合的に検討する必要がある。
⑨ 現実にリスク遮断を実施する際には、次の事項を実施する必要がある。
・ リスク遮断を実施するための適切な調査を行うこと
・ リスク遮断を実施するための適切な当該調査の過程及び結果を適切に保存すること
・ 金融機関等において、リスク遮断を実施するための適切な手続を経ること
⑩ リスク遮断の内容については、個々の顧客の事情・特性・取引関係やリスク管理に必要な情報のうち収集できないもの等に応じて整理をすることが必要がある。
⑪ リスク遮断に関する調査、記録の保存、手続、リスク遮断の内容については、適切に規程等に定める必要がある。
以上、「顧客管理」における「対応が求められる事項」についてみてきた。
あとは、「対応が期待される事項」と「先進的な取組み事例」について確認する。
まずは、「対応が期待される事項」についてみていく。
(ガイドラインの「顧客管理」における「対応が期待される事項」の内容を引用、強調は私の手による)
団体の顧客についてのリスク評価に当たっては、当該団体のみならず、当該団体が形成しているグループも含め、グループ全体としてのマネロン・テロ資金供与リスクを勘案すること
(引用終了)
やや分かりにくい部分があるが、「団体=顧客」、「グループ=顧客を含む集団」と考えるとうまくいくようだ。
以下、団体としての顧客は単に「顧客」と記し、団体としての要素が重要な場合に限り「団体」という文言を用いることにする。
「対応が期待される事項」に対するFAQにおける補足事項次のとおりである。
① ガイドラインでは、顧客リスク評価の実施の際には、顧客属性を考慮することが求められている。
② 顧客属性は、顧客が所属する集団(「顧客自身が形成している集団」を含む)の性質をも勘案して判断される必要があるところ、顧客が所属するグループの性質をも勘案する場合の具体例として次の事項が挙げられる。
・ 顧客が反社会的勢力というグループに所属していないか
・ 顧客が反社会的勢力のフロント企業に該当しないか 等
③ 顧客に対するリスク評価を実施する際には、次の要素を考慮する必要がある。
・ 顧客(団体)の性質
・ 顧客が所属するグループ(形成しているグループ)の性質
④ ガイドラインでいうところの「団体」及び「団体が形成しているグループ」の範囲については、次の事項を考慮しながら個別具体的に判断する必要があり、機械的に判断すべきものではない。
・ 団体(顧客)の性質
・ 顧客が所属・形成しているグループ自体の性質
・ 顧客が所属・形成しているグループ内で有する顧客の地位や影響力等
⑤ ここで述べている「団体」の具体例として次の事項が挙げられる。
・ 法人
・ 法人格なき社団
・ 統一的な意思決定機関が存在しない集団
⑥ 「顧客が所属するグループ」の範囲はリスクに応じて特定する必要があり、資本関係や契約や合意等一定の取決めの有無、または、(連結)子会社や持分法適用会社といった持分割合によって機械的に判断されるべきものではない。
⑦ 顧客に対するリスク評価の具体例として次の事項が挙げられる。
・ 顧客と資本関係のない第三者が合弁会社を設立しているところ、この資本関係のない第三者のリスクが高い場合に、顧客のリスク評価に資本関係のない第三者のリスクを反映させること
・ 顧客の実質的支配者とリスクの高い第三者(別の顧客)の実質的支配者が同一であった場合に、顧客とリスクの高い別の顧客は同一の集団に属すると評価すること
⑧ 本項目の趣旨は、顧客の実態把握を進めること、特に、「顧客の所属するグループ」という顧客に関連する事情を十分考慮して顧客リスク評価を行うことにある。
⑨ 顧客のリスク評価の際には、顧客が所属するグループの範囲を特定した上で、グループ全体としてのマネロン・テロ資金供与リスクについて勘案することを求めているところ、グループの範囲を特定する手法の具体例として次の事項が挙げられる。
・ 顧客と「顧客の実質的支配者が実質的支配者となっている第三者」、または、顧客と「顧客の実質的支配者の配偶者等が実質的支配者となっている第三者」とを紐づけること
・ 顧客と資本関係や一定の法的取決めに基づく関係等を有する第三者とを紐づけすること
⑩ グループ全体としてのマネロン・テロ資金供与リスクについて勘案する際の具体例として次の事項が挙げられる。
・ 顧客の所属するグループの内部に「制裁対象国周辺地域と取引を行っている第三者がいる」等顧客のリスク評価に重大な影響を及ぼし得る事情がある場合に、そのリスクも踏まえて顧客のリスク評価をすること
次に、「先進的な取組み事例」について確認する。
(ガイドラインの「顧客管理」における「対応が期待される事項」の内容を引用、強調は私の手による)
外国PEPsについて、外国PEPsに該当する旨、その地位・職務、離職している場合の離職後の経過期間、取引目的等について顧客に照会し、その結果や居住地域等を踏まえて、よりきめ細かい継続的顧客管理を実施している事例。
(引用終了)
以上、「顧客管理」に関するガイドラインとFAQの内容を確認した。
この点、顧客管理はリスク低減措置の重要な柱の一本であるのだから、説明のための分量は多く、また、様々な意味で役に立った。
次回は、第3号の「取引モニタリング・フィルタリング」について見ていく。