社会への影響力でも逆転
量の変化は質にも及ぶ。例えば総務省の調査データでは、「情報源としての重要度」でテレビは10年前と比べ11ポイント落ちた。また「いち早く世の中の出来事や動きを知る」ために「最も利用した」との回答でも、テレビは36.1%でインターネットの61.0%に大きく後れを取った。
こうした変化が影響力で顕著だったのが選挙報道だ。例えば5年前はテレビが優位で、ネットは補助的存在に過ぎなかった。候補者の間でもSNSを手掛けるのは少数派だった。ところが2024年にはXをやる候補者は9割を超え、SNS選挙が本格化した。
一方テレビ報道は中立性重視から政治報道が減少し、“その空白”をSNSが埋めるようになった。「候補者の本音」「政策説明」「切り抜き」動画が爆増し、政治情報の入手ルートがテレビからネットへ移った。結果として投開票日の出口調査でも、最も参考にしたのはマスコミよりSNSや動画という回答が上回った。明らかに社会への影響力で、決定的な変化が生じていたのである。
マス向けコンテンツもネットへ
ネットのマスメディアへの浸食は、選挙報道にとどまらない。多数が同時に視聴するスポーツでも、インターネットの存在感は高まっている。最初の逆転現象は2022年のサッカーW杯カタール大会だった。中継権料の高騰からABEMAが全64試合の中継権をおさえた。うち41試合を地上波テレビ局が放送権を再販してもらう形になった。しかも人気の日本代表戦でも、ABEMAは500万ほどの同時接続数をさばいた。従来言われていたインターネットの課題は、技術の進化で軽々と超えられていた。
2025年は決定的な逆転が起こった。2026年春のWBC放映権をNetflixが独占し、地上波テレビの中継は行われない。また今年の6月のサッカーW杯北中米大会では日本戦こそ地上波テレビが中継するが、全104試合はDAZNとなった。いよいよインターネットに死角がなくなり、地上波テレビ中継が一部残るとしても、ネットファーストの時代になっていく。
要は経済の論理で人気コンテンツを地上波テレビが権利を買えなくなり、ネット企業が押さえてしまう時代に移行したのである。ITは技術的進化を急速に果たし、テレビ放送ができることは何でもでき、さらにテレビのできない部分までカバーし、事業としても優位に立とうとしているのである。