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映画『Black Box Diaries』における法的・倫理的問題についての記者会見(2024年10月21日) 全文採録

2024年10月21日 司法記者クラブ(東京)

※ 本記事は、下記の記者会見(Youtube)を正確に全文書き起こしたものです。

(冒頭説明)

【佃弁護士】

こちらは、伊藤さんの性被害について損害賠償請求訴訟の代理人弁護士を務めたお二人(西廣・加城)です。本日は、このお二人が「ご本人」という形で会見の場を設けさせていただきました。私は、このお二人の代理人を務める弁護士の佃(つくだ)と申します。

お手元の資料として、伊藤監督の『Black Box Diaries(ブラック・ボックス・ダイアリーズ)』における法的・倫理的問題についての会見用資料、および時系列、コメントをお配りしていると思います。

まず、今回この会見を設けた趣旨をご説明いたします。伊藤さんと、この中央にいる西廣(にしひろ)さんは、損害賠償請求訴訟において、現場となったホテルから、「裁判以外の場では一切使用しない」という誓約書を差し入れて、ホテルの防犯カメラ映像の提供を受けました。その訴訟ではその映像を証拠として提出し、伊藤さんは、そしてこの弁護団は勝訴判決を得ました。

ところが、伊藤さんがご自身の監督なさっている映画『Black Box Diaries』で、この映像を使用していることが判明しました。またその他にも、この映画には取材源の秘匿が守られていないなど、人権上の問題があるというふうにこちらは受け止めました。

これまで、こちらのご本人達ですね、西廣さんたちは、伊藤さんに対して、誓約が守られていないという違反の点や内容的・人権上の問題点を指摘し、問題の解決を求めてきました。しかし、特段の対応がないまま本日に至っています。

現在、この映画は海外で放映されており、こちらが把握している範囲でも、今月でも釜山、チューリヒ、シアトル。そして今週末にはイギリス・ロンドンなどで上映がされるようです。

このような事態になってしまったものですから、伊藤さんとの直接のお話し合いだけでは事態が好転しないと判断しました。そこで、このような場を設けてメディアの皆さんを通じ、改めて伊藤さんに対する呼びかけをさせていただきたい、というのが会見の趣旨です。

そうすることによって、今からでも遅くはありませんので、どうかこちらの指摘した問題をクリアして、みんなが応援できる内容で映画を上映してほしい。そうした願いを込めて、今日の会見を設けさせていただきました。

冒頭説明は以上です。では、時系列等に関しまして、西廣さんお願いします。


(時系列)

【西廣(にしひろ)弁護士】

では、時系列についてお話しさせていただきます。

まず、2017年(平成29年)9月28日に、伊藤さんが自身の性被害についての民事訴訟を提起しました。

原告側である伊藤さんは、ホテルの防犯カメラ映像を裁判所に提出するよう、「文書送付嘱託」の申し立てを行いました。その後、ホテルの代理人宛てに、当事者それぞれ、原告・被告の双方から「裁判以外にその映像を使用しない」等の内容の誓約書を提出し、それを受けてホテル側から裁判所に映像が提出されています。なお、この誓約書には、伊藤さん本人と、訴訟代理人を代表して弁護士の西廣が署名しております。

裁判中に、伊藤さんが何度か弁護団会議に突然カメラマンを連れてきて撮影をしようとしたこと等があり、注意をしたことがありました。また、オンラインの会議でも映像を撮影していたことがあり、弁護団のほうから注意をしたことがありました。

2021年(令和3年)12月、それまで伊藤さんから何度か映画化の話を聞いてはいましたが、伊藤さんから直接、映画化の相談がありました。この際、「外に出してはいけない映像を映画で使うことがないように、映画として上映する前に、公開前に必ず内容を確認させてほしい」と私のほうは要望を伝え、伊藤さんもそれを了承していました。

2023年(令和5年)12月8日、伊藤さんによる映画がサンダンス映画祭で上映されるというネット上の記事を私が見つけ、驚いて弁護団がご本人に面会や説明を求めました。

同年12月19日に伊藤さんらと面会し、私たち弁護団は、防犯カメラ映像の使用を伊藤さんから告げられました。それに対し、私たちは「その使用は誓約違反であること」「使用するのであればホテルの承諾を得る必要があること」をご本人に伝えました。ご本人もその点は承知されていました。

今年の1月10日に、配給会社のスターサンズより以下のような連絡がありました。「防犯カメラ映像を使用しない方向で、すでに対策を検討中です」という内容でした。

今年の7月11日、東京大学本郷キャンパスにて、この映画『Black Box Diaries』の試写会、メディア向けの上映会がありました。私たち弁護士は、伊藤さんからは直接の連絡はなく、たまたま主催者からの連絡でそれを知り、鑑賞させていただきました。

【佃】

その7月11日の段階で、映画の問題点を初めて把握したということになります。

【西廣】

同月31日、私たちは伊藤さんとスターサンズと協議を行い、防犯カメラ映像を使用するのであればホテルの承諾が必要であるということを改めて伝えました。

8月27日に伊藤さんから私たち宛てにメールで文書が届き、「先日、ホテルの弁護士さんから、『ホテルにもう一度掛け合ったが、答えは変わらなかった(=承諾は得られなかった)』というご連絡をいただきました」という内容のメールが来ました。

その後何度か、佃先生を通してご本人たちに「どうなっているのか」という問いかけを出しましたが、具体的な対応策のご連絡は頂けませんでした。本日に至ります。以上です。

【佃】

ホテル側の弁護士さんには我々も直接確認をしまして、映像の使用については改めてその使用を許諾しないという回答をされたということは、我々も確認をしております。

今回、具体的にどのような問題があるのかについて、簡単にご説明いたします。

今の経過からもおわかりの通り、まず1点目、ホテルの防犯カメラの映像を映画で使用しているという点が、問題点として1つあります。ホテルには、先ほどお示ししましたが、裁判以外では使用しないという誓約書を差し入れて、ようやく提供してもらった映像なんですね。

ホテルは一般に、お客さんに関する情報を外部に出すということについては非常に慎重でして、当初はなかなか出してもらえないけれども、今回は、裁判の証拠ですから。それはもうこちらからすると、原告側の立証としてもうその証拠しかないと、そういう必要性、「高度の必要性」を訴えて、ようやくホテル側も「じゃあ裁判だけですよ」ということで特別の対応をしてもらって、誓約書を差し入れて提供してもらったと、そういう経緯があります。

しかし今回、残念ながらその誓約を守られず、映画で使用されているという事態になっております。この事態をこのまま進ませてしまうと、今後ホテル側が、今回のような事件が今後あった場合に、「もう誓約をされても約束を破られて出されてしまうのであれば、もう出せません」「前は特別な対応をしましたけれども、もうそんなことは怖くてできません」というふうに言われてしまったら、元も子もないわけです。

今後の被害救済の道が塞がれてしまう、とその点について強い懸念を持っております。その点が、まず1点目の問題点として、大きくあります。

なお、伊藤さん側からは、この間やり取りをしている中で、その防犯カメラ映像については「しかるべく修正を加えている」というご連絡をいただいております。従って「だから問題ないではないか」というご趣旨なのでしょうけれども、ここでの問題は、映像がそのまま出てしまうかどうかという問題ではないわけです。ホテルがお客さんに関する情報を外に出したということが、今まで裁判の中で止まっていたものが、日本中、世界中に広まってしまうと、「ああ、ホテルというのはそういうふうにお客さんの情報の管理について緩いのだな」というふうに思われてしまう。ホテルがそのように思ってしまったら、今後ホテルがそういう情報の提供を一切遮断してしまう。そうすると今後このような事件があった場合に、被害者救済ができなくなる。その弊害を懸念しているわけですね。従って、修正をしているという意見については、こちらとすると、その点を言われても、この問題点が払拭されているというふうには認識しておりません。

それから2点目として、その協議の過程で、そのホテル側は実際にはこちらに対して責任追及をしてこないから大丈夫だというような、お話もありました。それは、今年の7月31日に我々3人と、あとは伊藤さん側、伊藤さん側が伊藤さんとあと制作に直接関与した人2人、それから配給会社の人2人、合計5名。こちらが3人、あちらが5名で話し合いの場を持ったんですけれども、その時に「ホテル側は訴えてこないから大丈夫ですよ」というお話がありました。

しかしここでの問題は、ホテルが訴えてくるからやめてくれと言っているのではありません。先ほども申し上げたように、今後ホテルが──本件ホテルに限りませんよ、他のホテルもこの事例を見て、あのホテルのような対応をしたらこういうことになってしまうという意味で、一般性のある問題としてこちら捉えていますけれども──今後ホテルがこういう事態に協力してくれなくなってしまうということを懸念しているわけでして、ホテルから責任追及されないということによって問題がクリアされるということではない、というふうにこちらは認識をしております。

問題点の2点目なんですけれども、弁護団の映像とか、あとは弁護士との直接のやり取りが、映像で使われているんです。この件については、まず弁護士のやり取りについては、今回西廣さんの電話のやり取りも使われていて、その件は、西廣さんは全然録音されているっていうことは認識しておらず、映画を見て初めて知って驚いたそうですけれども、その他、弁護団会議の映像も使用されているんです。

その件については、弁護団会議の映像の撮影の許諾は求められたんですけれども、その使用については、ホテル映像の使用の問題もあったもので、弁護団とすると「ホテルの映像は使用することはやめてくれ」と。「ホテルの映像を使用するようなものであるならば、それは弁護団会議の映像も使うことは許諾しない」と、そういうふうにお伝えしました。それはそのようにお伝えすることによって、ホテルの映像を使わないという選択をしてもらえる、という期待を込めた、こちらの条件提示だったんですけれども、残念ながらホテルの映像も使われるし、弁護団会議の映像も使われているという状態で、現在海外で放映されている状態になっているということです。

3点目ですけれども、捜査官Aの音声を全く修正せず用いているという問題があります。捜査官Aというのは、伊藤さんの書籍『Black Box』(文藝春秋)にも出てくるんですけれども、加害者男性の逮捕状の執行が警視庁の上層部からストップされた、それによって止まったということを知らせてくれた人です。捜査官Aは、伊藤さんにとっては、いわば公益通報をしてくれたご本人なわけです。

この映画がこのまま上映され続けてしまうと、音声が全く加工されてないものですから、組織、警察組織内部では捜査官Aが誰であるかということは丸わかりになってしまう。つまりこの映画が上映されることによって、公益通報者が誰であるかということを警察組織に丸わかりにする、そういう映画になってしまっているわけです。それは公益通報をしてくれた捜査官Aの職場での地位を危うくするわけでして、「公益通報者を危険にさらして良いのか」、あるいは「公益通報者の人生を奪って良いのか」という問題がある、というふうに我々は認識しております。

ちょっと視点を変えて、伊藤さんを事件の渦中の人ではなくて、ジャーナリスト、この映画の制作に携わっているジャーナリストであるというふうに位置づけを考えていた場合、そうすると捜査官Aは取材対象者なんですね。その取材源を危険にさらして良いのかという、そういう問題提起の仕方もできます。

なお、私は先ほど「捜査官Aの声がそのまま出ている」というふうに申し上げましたが、これ、仮に捜査官Aの声が加工されれば使用して大丈夫かと言うと、おそらくそういうことにはならないと思います。つまり喋り方によって警察組織内部は、捜査官Aがどこの誰か、うちの組織の誰かということを容易に推察できると思います。そういう意味で、音声を加工すれば使用できるというような性質の問題ではない、というふうに思っております。

このように言うと、おそらくこういう反論が返ってくるのではないかということを想定しまして、あらかじめ申し上げるんですけども、「その捜査官Aがどこの誰であるかというのは、この書籍が公刊された時点で警察組織の方は大体の目星をつけているんじゃないか。だから、今回の映画によって、捜査官Aがどこの誰かが分かってしまうという事態にはならないんじゃないか」ということが言われるかなというふうに思います。

けれども、話はそんなに単純ではないと思っており、その捜査官Aが、映像録音体として映画で上映されているわけです。そうすると、捜査官Aがどのように言ったのかということも含めて、明確な映像証拠として組織の中に入っていくわけです。証拠を確保しようと思えばです。警察組織がです。そうすると、それはこの書籍の中で伊藤さんが捜査官Aとして書いているという、テキストとして書かれているという問題と、はっきりした映像音声で、捜査官Aの喋りも含めて客観化されているものが流布されるというもので、その捜査官Aに及ぶリスクの程度がかなり違うと思います。

それは要するに、映像音声という媒体自体の、その直接性の……直接、「侵襲」(しんしゅう)という言葉を法律的に良く使うんですけども、侵襲、インベージョンと申しますが、その侵襲の程度がテキストで表すよりも映像音声の方が深いわけです。そうすると、捜査官Aが特定されるリスクは格段に深まるというふうに考えておりまして、そういう点でも問題ではないかなというふうに思っております。

問題点の4点目ですが、タクシー運転手さんの映像を、全く加工もせずに顔も声もそのままに映画として使用されております。このタクシー運転手さんというのはどういう存在かと言うと、加害者男性と伊藤さんをホテルまで送った、そのタクシーの運転手の方なんですけども、その方がカメラの前で当日の経緯を話しているものがあって、それが映画で使用されています。

実はですね、この運転手さん、その時カメラの前では喋ったんですけども、その後、裁判が進行している途中で弁護団とは連絡が取れなくなりました。つまり、弁護側の主張立証活動に対して協力的でなくなったというか、途中で躊躇をなさったのか、ちょっとよく分からない、とにかく連絡が取れなくなったんです。そういう経緯からすると、映像を今、この時点で公開するということについて許諾をするとは、ちょっと考えられないです。そういう意味では、承諾が推定されないものについて映像で使用されているということで、ジャーナリストであるのであれば、取材源をきちんと守ってくださいというふうに申し上げたいということです。

このタクシー運転手さんに関しても、その7月31日の協議の場では、「運転手さん多分訴えてこないから大丈夫ですよ」ということを、伊藤さん側の人たちはおっしゃってました。しかし「被害者が訴えてこなければやって良い」という問題でないということは、皆さんもおわかりだと思います。今回その伊藤さん自身も、おそらく伊藤さんがおっしゃりたいことは「性被害を受けた人が声を上げられる社会を築いていきたい」と、そういうのが伊藤さんの気持ちだと思います。そういうお気持ちであるのであれば、「訴えてこなければ大丈夫」「訴えてこないことであればやって良い」という形で物事を進めるということは、やめていただきたいというふうに思っております。

問題点としては、今のようなものがありまして、ぜひこういう問題をクリアした上で、晴れて皆さんが納得できる形で、伊藤さんの問題意識を日本に、そして世界に広めていただくということが、性被害の防止、そして伊藤さんの受けた苦しみを世界に問うことについても必要なことではないかなと思って、今回の会見のこのような場を設けさせていただいたということになります。


(コメント)

【西廣】

西廣からコメントを読み上げさせていただきます。

2015年6月に、伊藤さんから初めて相談を受けてから、約8年半の間、検察審査会の申し立て、性被害の民事訴訟や名誉毀損の民事訴訟、誹謗中傷記事の削除要請、記者会見や取材時の帯同など、伊藤さんに関わる様々な事件、伊藤さんに起きた様々な問題についての解決を担当してきました。それは伊藤さんご本人だけではなく、彼女の背後にいる多数の性被害者がいて、その方々の性被害による嘆きを、諦めではなく望みに変えたいとの思いから尽力してきました。

訴訟にはルールがありますので、ルールを守らなければなりません。訴訟戦略的観点からそれを判断してきました。その1つが今回問題となっているホテルの防犯カメラ映像に関する誓約書の差し入れです。防犯カメラ映像はホテルのものです。彼女のものではありません。ルールに則って提出されたものです。そのルールを無視することはできません。さらに証言者本人の承諾を得ていない映像や音声も同様です。

今年7月に彼女らと協議した際に、承諾を得たとの話はありませんでした。もし本人の承諾がないにも関わらず上映されるとしたら、人権、その人の存在を意思を無視する、ないがしろに扱っているということになると考えています。一弁護士としてそのような人権侵害の恐れを横目にして、何もしないということはできませんでした。これまで幾度も彼女には伝えてきました。しかし残念ながら理解していただけませんでした。

本日このような公表をすることは、彼女の背後にいる支援者や応援してくれた方々をがっかりさせ、また裏切るのではないかと本当に悩みました。でも、訴訟のルールに則って提出されたものを目的外に使用してルールを破れば、今後起き得る訴訟への影響、特に証拠の少ない性被害における証言や防犯カメラ映像を提供する協力者がいなくなってしまうのではないかと、大変危惧しています。そして、そのような事態を放置することはやはりできませんでした。

このような形になったことは残念の極みですし、後に振り返って正解ではないかもしれません。確かに、ホテルも誰も声をあげないかもしれない。何もしないかもしれない。何もしなければ泣き寝入りと同じです。泣き寝入りしないために声を上げたはずなのに、声を上げた人が泣き寝入りを強いている。彼女なりの正義の表し方なのだと思いますが、一弁護士としてそれを見逃すことはできませんでした。

ペンも暴力になり得ますが、映像や音声も暴力になり得ます。この映画を見て本当に暴力を振るわれたようでした。弁護士なので感情的な振る舞いは慎むようにしてきましたが、正直ズタズタにされた気分です。

8年半の間、彼女がこれ以上傷つけられないために、彼女の名誉を守り、彼女のプライバシーを守るため、あちこちに出向き、頭を下げ協力を求めることもしてきましたが、彼女と私との電話の会話が無断録画されている映像を目にし、私の気持ちは通じていなかったんだなと、ただ大きな空しさだけが私の心に残りました。

詩織さんにはどうか人を大切にしてほしい、承諾を得て上映するようにしてほしい。ルールを守って誰もが応援できるものにしてほしい。これ以上失望する人を出さないでほしい、そんな思いです。

ただ付け加えさせていただくと、彼女は性被害にあったものであって、あの事件は真実です。そのことは何があっても紛れもなく変わらない事実です。この話と彼女の裁判は別問題であって、詩織さんの性被害についての誹謗中傷は止めてください。以上になります。


(質疑応答)

【進行】

はい、ご説明ありがとうございました。質疑の時間に入りたいと思いますので、質問のある方は手をあげてください。前から順番にいきます。はい、どうぞ。

【記者:東京新聞・望月】

東京新聞の望月です。 西廣さんの会話が、どういうやり取りを出されてしまったかという点と、タクシー運転手の方について。今朝方、多分この会見の話を聞きつけて詩織さんに連絡いただいたんですけど、「亡くなったのではないか」という指摘を聞いたんですけど、そういったことは今現時点で運転手さんの現状、確認できているか。

それから刑事さん(捜査官A)、彼自身が今、そういった形で音声を出されていることに対して弁護団に何か言っているのか。

あと日本で今上映できていない状況ですが、これはやはり今のような様々な問題点を挙げて上映が見送られたということなのか。海外のいま、出品、これから相次ぐということですが、そこに関してはどういうふうにしていこうと思っているか。お願いいたします。

【西廣】

私の無断録音の会話は、弁護団と彼女の方針が訴訟の終盤に食い違った場面がありました。そこでの、私の意見を彼女に伝えているところ、それがまあ、彼女目線からすると「何を言ってるんだ」と、「私の味方じゃなかったのか」というような感じに受け止められたのかも知れませんが、その場面だけが使われております。

【佃】

2点目から4点目は、私の方から簡単に。まずタクシー運転手については、7月31日の協議の時に、伊藤さんから「連絡が取れなくなっている」というお話を聞きました。連絡が取れなくなっているということから、「亡くなっているのではないか」と伊藤さんたちが推測をしているということです。我々はその時に、「携帯電話の番号が分かっているのであれば、弁護士会を通じれば、弁護士に依頼をして弁護士会を通じればご存命かはどうか確認できると思いますよ」「必要であればそういう方法もありますよ」ということはお伝えをしております。そういう状況です。

それから3点目、刑事さんの件については、こちらは特段、刑事さんに対してアプローチもしてませんし、あちらからこちらに対して何もありません。こちらに対して何もないというのは道理でして、我々は別に当該映画について何も関わっていないですから、何もないというのは道理です。

それから4点目、日本で上映できていない状況に関しては、こちらも我々はちょっとよく分からないです。それがどういう事情でそのようになっているのか、そもそも日本で上映できていないという状況にあるのか、という状況自体もこちらは把握をしておりません。

【記者:東京新聞・望月】

海外についてはどうされるのか。今、もう...?

【佃】

特段、こちらで何か考えているわけではありません。


【記者:不明】

先ほど話し合いの中で、ホテル側が「訴えてこないから大丈夫」であったり、タクシー運転手が「訴えてこないから大丈夫」というお話があったということだったと思いますが、それは何か根拠があって言っていることなのか、それとも推測なのか、というところが知りたい。西廣弁護士、今このように呼びかけている形ではあるとは思うんですけれども、今後状況が変わらない場合に、法的手段に打って出る可能性があるのか、その辺りをお伺いします。

【佃】

じゃあ、まず1点目は私の方から。訴えてこないというふうに彼女たちがおっしゃっている根拠については、特段示されておりませんので、私は推測で言っているのではないかなというふうに受け止めました。

【西廣】

今後についてですが、あくまでも今後の状況を見て判断することになると思っています。

ただ今回お伝えしたいのは、本当におっしゃっていただいたように、「やり方が間違っている部分については直してほしい」ということを訴えているだけであって、彼女が果たしたい正義だったり、伝えたい思いだったりというのは、全然私たちのほうではそれを否定するつもりも、異を唱えるつもりもありません。そのことだけは、しっかりお伝えしたいと思います。


【記者:弁護士JP】

弁護士JPです。今回のことで、かつての「外務省機密電文漏えい事件(西山事件)」の件を思い出したんですけれども。今回の映画のような媒体だと、一度放映された場合に関係者が被る不利益が取り返しがつかないんじゃないかということになって、果ては公権力による事前抑制だとか、あとは業界全体での自主規制というものを招く可能性があるかなというふうな感じがしたんですけど、その辺りについてはどうお考えでしょうか。

【佃】

はい、強く懸念しています。今おっしゃったようなものについて、具体的に我々も想定した上で強く懸念しているということではないんですけども。要するに捜査官Aが、今回のこの映画によって、もし職場の中でその地位を失う、あるいは不利益を受けるというようなことがあったら、「取材源が守られなかった」「公益通報者が守られなかった」ということなので、非常に由々しき問題であるというふうに思っております。

事前抑制というのは、...つまり映画が、行政権とは言わないまでも、映倫みたいなところがもっと規制が強くなるという、そういう懸念ですか。ちょっとそこまでは我々は具体的には想定はしていないです。


【記者:毎日新聞】

毎日新聞です。伊藤さん側とのやり取りというのは電話だけなのか、その場の対面でのやり取りだけで、今までの交渉の過程で文書として残しているものはないのでしょうか。

【佃】

やり取りは、7月31日に直接対面したやり取りが、具体的なやり取りはほぼ全てです。そこで、ホテルの映像について「ホテル側に改めて承諾を取ってください」という希望をお伝えして、あちらは「それに動きます」という形になりました。その後、「その状況について連絡をしてくださいね」という形になったんですね。

その後連絡を受けたのが、「ホテル側へ連絡したが、承諾は受けられませんでした」というご連絡をいただきました。こちらとすれば「それではもう、ちょっと無理です」という話だったんですけども、それに対してあちらは「映像をもう一切大きく変えるからよろしいか」という意向打診がありました。それについても、「ホテルが承諾してくれるんだったらそれで良いわけですから、ホテルの承諾を得てください」というふうにこちらが返答して、その後、内容に関する具体的なやり取りはないです。その後、こちらが状況打診をしたのに対して、「現在検討中です」というお返事が来て、今日に至っているということです。

【記者:毎日新聞】

対応を検討中です、という連絡は全部メールでいただいているということでよろしかったでしょうか。

【佃】

はい。メールです。

【記者:毎日新聞】

あと、今回の会見の趣旨なんですけれども、改めて「編集」と「公開延期」を求めるという趣旨でよろしいんでしょうか。

【佃】

公開の延期というかですね、まあ、編集を求めるということでしょうね。要するに「内容の変更」ということです。はい。

【記者:毎日新聞】

内容の変更がされるまでは上映はしないで欲しいということでしょうか。

【佃】

そうですね。はい。

【記者:毎日新聞】

最後にもう1点だけ。こう言った、「他の性暴力の被害者が民事裁判で戦うことへの影響」を懸念されているということなんですけれども。現状、ホテルや第三者の営利施設から防犯カメラ映像の提供を受けるということは、非常に難しい状況に今現在も置かれている、ということで間違いないんでしょうか。

【加城弁護士】

はい。ホテルに限らずですが、また性暴力に限らずですけれども、裁判の証拠として映像というものを、ある組織・ある機関から提出してもらうのは非常に厳しく、本件のような誓約書を提出して初めて出してもらうのが現状だと認識しています。

【記者:毎日新聞】

今回のその映画が公開されることによって、今後の提供が難しくなるところを、もう少し具体的にお話ししていただくことはできますか。性暴力だからこそ難しくなるところがあるんでしょうか。

【佃】

性暴力に限らず、ホテルがお客さんに関わる情報を外に出すというのは非常に消極的なんです。従って、そのようなものが一旦「裁判に協力するという限定」を付して出したにも関わらず、それが他所に使われてしまう、というようなことであると、もう「一切出さないでおこう」と。「約束をしても、守られないリスクがあるのであればもう一切出さないでおこう」という判断になる可能性があるというふうに考えている、ということです。

【加城】

あと、防犯カメラの所有者の方の意見としては、やはりそれが出ることによって「防犯上の問題が生じる」ということはよく言われます。


【記者:安田】

フリーの安田浩一と申します。元々伊藤さんは事件の依頼者であったわけですよね。その依頼者との軋轢・衝突、「トラブル」と言うと非常に軽い感じになると思いますので、あえて軋轢・衝突と申しますけれども、会見という形を用いて公開・公表する必要があったのかどうかという疑問がございます。

例えば、所属弁護士会などでの「紛議調停」とか、そういった方法は取れなかったのでしょうか。

それともう1つ。今後、裁判の相手方ですとか、あるいは性暴力サバイバーである伊藤さんというのは、非常に今でも多くの攻撃を受けている。ネットリンチに遭っている、現状でもそのような形になっています。こうした、いわゆる裁判の相手方、あるいはネット上でのそうした者たちが、逆に勢いづかないかなという懸念もあるんです。つまり、新たなネットリンチを引き起こすのではないか、そうした状態に陥るのではないかということは十分に予測できるかと思うんですが、その点に関してはどう思われたでしょうか。

それから依頼者に、今回の会見は間違いなく、過度な打撃を与えることにはなるかと思うわけですけれども、その批判のやり方に対して、例えば懲戒申し立てなどをされる可能性なども考えたりはされましたでしょうか。その辺をお伺いしたいと思います。

【佃】

1点目というか、全般的にまず申し上げると、このような方法を取るかどうかについては、もうずっと議論してきました。先ほど、7月31日にやり取りをしたということを申し上げたことからおわかりいただけます通り、また、上映会があったのが7月の上旬ですよね。もう7、8、9月と、3ヶ月間ずっと我々は随時検討し、また相手方とやり取りをしてきました。

それで結局、「その承諾を求めてくれ」ということに関しては、「承諾を得られなかった」という回答で、その後もう動きがないわけです。動きがなくて何が起こったかと言うと、今現在、今月だけでも、4箇所ぐらいで海外で放映されていると。要するに、ただ単に事態が進行しているというだけなんですね。そういう事態であると、もう伊藤さん側との話し合いをするというようなことによる解決というのは望めないというふうに思って、あと残る手段とすると、このような手段しかないのではないかという結論に至ったということです。

「紛議調停の方法を用いたらいいのではないか」というのは、我々としては全く想定していませんでした。それは、期日の入り方が非常に遅いのですね。おそらく申し立てをして第1回期日が入るまでに1ヶ月以上、2ヶ月ぐらいかかると思います。そのようなスピード感では、本件は到底追いつかないものであるというふうに認識をしております。

それから、このような会見をすると伊藤さんに対するネット上の誹謗中傷が勢いづくのではないかと、その点は我々も一番懸念をしておりましたし、現在もしております。

先ほど西廣さんのコメントの最後にもありました通り、コメントの最後のところが我々としては本当に一番申し上げたいことで、この問題と伊藤さんの性被害の問題は別ですし、伊藤さんの性被害についての誹謗中傷は止めていただきたい。そのことは本当に強く申し上げたいというふうに思っております。

それから3点目、懲戒などが来る可能性については、何と言うか、来ることを懸念しているかどうかということに関して言えば、その点について具体的に何も考えておりませんけれども、我々は法的・倫理的に「こうするべきである」というふうに考えて進んできておりますので、仮にそのようなものが来たのであれば、きちんとこちらの主張をして対応していく、ということになろうかと思います。


【記者・小川】

ちょっとここで聞くのが適当かわからないのですけど、YouTubeとかで、そのホテルの映像っていうのは、まあ裁判中から、彼女が出てくる場面がアップされてると思うんですよ。それはまあ、誰がやったかは分からないけど、そういうものがYouTubeにアップされていて、その点について、おそらくホテルは、何というか勝手に映像としてアップされていることだと思うんですけど。その点について弁護団の方が思うところ、今回の関連とかについても思うところを伺えれば。

【西廣】

ホテルの映像──彼女が朝方出てくる映像──がYouTubeにアップされていたということですか。

その映像は見ましたし、「どうしてこれが出ているんだろう」と憤りは当時覚えました。ただ、どこから出ているかをこちらが追跡することもできませんし、そういう立場にはないとも思っておりました。

だからといって、こちらがそれに対抗するように誓約違反をして「前夜の映像を出す」というふうには、それを出すべきだとは当時も思っていませんでしたし、今も、出すべきであったとも思っていません。やはり守るべきことは守って、正々堂々と訴訟でやっていかなければいけないと思っていましたし、その裁判で勝つことが唯一の開けてくる道だと。

被害者が救済される結論が出ることが、この事件にとってものすごく大きなものだというふうに思っていましたので、裁判上で裁判官に理解していただくということが一番大事なことであって、訴訟外で場外乱闘のようにやり合うということは、賢いやり方ではないというふうに思っていました。

【記者・小川】

YouTubeにアップされているのも、正規のものではないということですか。ホテルから許可があるわけではない?

【西廣】

おそらくはないと思いますが、確認はしていません。


【記者:時事通信】

時事通信です。お話からすると、その防犯カメラ映像というのは「文書送付嘱託」ということで裁判所を介して受けたのかなと思うんですけれども、そうすると、この件について裁判所から何かペナルティが課されたりとか、あるいは裁判所の対応が今後硬化するとか、そういったところについては何かお考えのところはありますか。

【加城】

可能性としてはなくはないです。そのことが知るところとなればですね。実際に出されるまではかなりやり取りをして、それが証拠として重要だということを裁判所に認識してもらって、やり取りするんですけれども。

「過去にこういうことがあったじゃないか」ということで、出される方の側が、裁判所が説得するのが……裁判所が説得するのではなく、提出が難しくなる可能性はあると思います。

【記者:時事通信】

特に法律上、これを流出させたから何か罰に問われるというわけではない? 明文規定はない。ないけれど、実務上の弊害は大きい、というそういう理解ですか?

【弁護団一同】

はい。

【記者:時事通信】

わかりました。ありがとうございます。


【記者:共同通信】

共同通信です。ちょっと基本的な確認で恐縮なんですけれども。そもそもホテルから提供を受けた映像っていうのは、大体どれくらいの長さがあって、その上で映画の中でどういうふうにその場面場面をカットして編集して使用したとか、どういう感じでそれを使われたのかを、わかりやすく可能な範囲で教えていただけますか。

【佃】

ホテルから提供を受けた映像は、いくつものカットがありまして、トータルでは10分、20分くらいでしょうか。夜の場面と朝の場面があります。今回映画で使われているのは夜の場面で、ホテルに入っていく場面が使われています。


【記者:外国人記者】

(英語の質問)

…今の質問を通訳しますと(隣の記者)、「今回このような会見を行うことによって、映画の動員数が減るということにつながるような気がするが、人のプライバシーを守るという点は分かっていても、公の人たちがこの事実を知るということは大切であり、公の人たちが知る権利もあると思うのですけれども、これだけのことをするまで、ホテルのことを守ったりする必要はあるのか。性被害、性暴力のケースに関して、ここまでのことをすることは必要なのでしょうか」ということです。

【佃】

こういう回答の仕方がいいと思います。我々は映画の上映自体には全く反対していなくて、「約束が守られていないところについて変えてくれ」と言っているだけなんですね。

反対に、伊藤さん側がその映像を使わなければ、彼女たちが伝えたいことを伝えられないのか、という問題として検討していただく必要があるのではないかな、というふうに思っているということです。

【記者:外国人記者】  

(※ 再質問)

「こういう誓約書に関して、どうしても破られることはないのか。例えばこの映像自体が実際のレイプの映像だったとしても、これは破ることはない、ということなのでしょうか」

【佃弁護士】

うん...と、ちょっと意味が……。破ること、
使用することが違法にならないという意味ですか。

【記者:外国人記者】

 (※ 再質問)

「プライバシーを守るという観点を常に重視していくということか。例えばこの映像が、実際にレイプの性被害を映し出している映像だったとしても、それでもやはりプライバシー重視的なものが上なのか」

【佃】

それは、どの時点の話ですか。誓約をしてホテルから出してもらう時点の話をなさっているのか、それとも取得した映像を映画で使用する場面の話をされているのか。

【記者:外国人記者】

 (※ 再質問)

「普通に弁護士さんからの視点をお伺いしたい。とにかくどんな映像の内容であっても、とにかく誰かのプライバシーを守るということが最優先なのか。私からしてみると、プライバシーの重視が、あまりにも重点的に思えます。公的な知る権利に対してちょっと妨害的な捉え方に感じます」

【佃】

「プライバシーが常に勝つ」ということにはならないです。日本の法理でも、おっしゃった通りパブリック・インタレスト(公共の利益)があるものについては、本人の承諾がなくても出せるという法理はあります。

ただ今回の場合には、何を問題としているかと言うと、ホテル映像に関して「プライバシー侵害」を問題にしているのではなくて、「約束(誓約)を破って公表すると、今後このような対応をホテルがしてくれなくなる」ということを言っているんです。ですので、プライバシー侵害を言っているのではなくて、「約束(誓約)違反」を言っています。


【記者:東京新聞・望月】

製作に協力しているのは、スターサンズですよね。7月31日の話し合いの場にはスターサンズの方たちはいたのか。それこそ詩織さんがそうやって突っ込んでやってしまえと思っても、スターサンズ側とのやり取りの中でそこを削除することも可能ではなかったかなという気がするんですけど、スターサンズはどういう対応をされているんですか。

【佃】

スターサンズの方は2人同席されていました。スターサンズの方がこの件について具体的にどのように関与されているのかについては、我々には情報はありません。

【記者:東京新聞・望月】

直接的な、スターサンズと先生たちのやり取りはないということですか。

【佃】

7月31日の直接のやり取りはそこで、あとはメールで、「どうなってますか」「今ちょっと検討してます、伊藤さんから返事が来ます…」というようなやり取りがあったくらいです。

【記者:東京新聞・望月】

加工のものが、「若干加工している」という伊藤さん側の主張ですが、先生たちはそれを見たけれど、それでは全くもってダメだということなんですかね。

【佃】

まず加工の程度については、私は証拠の現物は知らないので、加工の程度についてはお二人(西廣・加城弁護士)に聞くしかないんですけど。先に「それでもダメか」という点についてお答えすると、先ほど説明した通りで、それでもダメだということです。「出ている」ということが世の中に触れ回ることがダメだということです。

【西廣】

具体的にどれだけ加工されているのかというのは、私も一度しか上映を見ていない(※ 2024年10月21日時点)ので比較はしていません。背景を変えてあったり、洋服を変えてあったりされているというような話もありましたけれども……本人たちが映っているんですね。そこはなんて言うんですかね、私が見たらもう「本物そのもの」にしか見えなかった、ということです。


【記者:毎日新聞】

毎日新聞です。こういった「他の性暴力被害者の訴訟に影響する懸念」を伊藤さん側には伝えているんでしょうか。それに対して、彼女はどのように返事を当時していたのか教えていただけますか。

【佃】

...... 7月31日にその点のやり取りをしてます。伊藤さんから特段何らかの応答があったという記憶はないです。

【記者:毎日新聞】

「今後、提供を受けるのが難しくなるかもしれない」ということを伝えていたけれども、そこに対するリアクションは、特段なかったと。その当時だけではなく、今現在に至るまでそこに対するリアクションは特段頂いていない状況、ということでしょうか。

【西廣】

直接的な回答はないです。

【佃】

出すと、そこが「二度とホテルが出してくれなくなる」とか「出してくれる」とか、そういったことについて直接フォーカスした議論はしていないので、あまり今の様な形で詰めた議論は7月31日にはありませんでした。ただ、こちらはそういう問題があるということは伝えています。


【記者:安田】

フリーの安田です。 佃さんはずっと表現の自由のために戦われてこられたことは、私も十分に承知しておりますし、尊敬もしております。そうしたことから、公益通報の問題であったり、取材源の秘匿に関して非常に慎重になっておられる、深く考えておられることも十分に理解しました。

その上であえてお伺いしたいわけですけども。ごめんなさい、先ほどの冒頭の質問と似てしまうんですが、どう見ても「会見を利用した社会的制裁」にしか見えない部分っていうのが、やっぱり僕はあるんですよね。間違いなくこれは、ネットリンチであるとか、あるいはネットでのさらなる誹謗中傷を呼び起こすことは間違いないわけでして。

そうした懸念抜きに……懸念はあったんでしょうけども、どうしてもそうした社会的制裁にしか思えないということに関して、私の指摘に対してはどのようにお答えになるのでしょうか。

【佃】

── そのように言われると、「それを踏まえてもなお、やる必要があった」というふうに考えた、と言うしか、こちらとしてもお伝えの仕様がないんですね。

そこで問題となっているものは、やはりこういうことなんです。つまり伊藤さんは、ホテルの特別な対応によって、きちんと立証することができた。そのような、1つの成功例を、私たちはその道を塞ぎたくないわけです。その成功例自体を潰すことというのは、本当にもう被害……それこそ害悪の方がものすごく大きいというふうに考えたということです。

そこの害悪を考えた時に、もちろん伊藤さんが直面するであろう誹謗中傷の被害をこちらが軽んじているつもりはないんですけども、それはもう、こちらはそこの天秤を考えてもなお、もうやらなければ、結局何が起きるかと言うと、何も……何もなく、ただ単に映画が世界中で放映され、日本にも上陸するというだけの話になる。それしか起きないというふうに思い、それはあってはならないことだと思ったということです。

【記者:安田】

西廣さんはその点、どのようにお考えになりましたか。

【西廣】

やっぱり間違っていることは、ルール違反はルール違反だと思いますし。社会的制裁...、(間) 社会が成熟すれば、そういった個人攻撃はないはずであって、私はそこをすごく望んでいます。夢物語を話しているというふうに思われるかもしれませんけれども、社会的制裁以上に、やっぱり私が気持ちの面で……「声を上げない人に、その『声を上げないこと』を強いている」ということが、……詩織さんがされたことと同じことをしているんじゃないかというふうに感じまして、それはやはり、そこは正すべきではないかという気持ちでおりました。

本当に、そこはやり方の問題であって、彼女が遂げたいことを私たちは邪魔をしたいとも思っていませんし、むしろ応援したいと思っています。そこは、……なかなか「こんな会見を開いて何を言っているんだ」というふうに受け止められるのかもしれないんですけど、本当に心から、彼女が果たしたい正義というものは、私は支持していますので。そこはお伝えできたらな、というふうに思っています。

【記者:安田】

── 今のご発言の中に、「詩織さんがされたことと同じことだと思う」とありましたけども、性暴力被害と比較すること自体、非常に難しいというか、同様に考えるのはちょっとおかしいのではないかなと思ったんですが。

【西廣】

私が重視しているのは、その承諾なく放映などがされ、世界中に放映されているわけですね。そこには、そのご本人の意思というものが存在していない。むしろ否定されているんじゃないかと。

それって、やっぱり性暴力においても同じ構図で、加害者の性的欲求だけではなく、支配欲などによって、被害者はその意思を無視されているという構図と、私は似ているというふうに感じています。


【記者:朝日新聞・北野】

途中から来たので、もうすでに出ている話かもしれませんし、ここで聞いていい話かどうかわかんないですが。西廣先生は長らく伊藤さんの代理人として、窓口もいろいろなもので務めてこられたと思うんですけども。このような形で、まあ袂を分かつということになりますと、この問題、多分伊藤さん側のカウンターコメントが必要になるわけですが、その窓口はどちらになるのか。スターサンズなんでしょうか。そうでなければ、伊藤さんに直接当たるしかないんでしょうか。もし分かればと思いまして。

【佃】

伊藤さん側がどういう窓口体制を敷いているのかが、正確には把握していないので何ともこの場でお伝えはできないんですけど。最後の最後の段階では、我々との話し合いについては弁護士さんがつきました。

【記者:朝日新聞・北野】

弁護士がいらっしゃる。

【記者】

どなたですか?

【佃】

個別、ここでそれをパッと言っていい配置なのかがちょっと分からないので、個別に聞かれればお答えします。


【記者:東京新聞・望月】

1点だけいいですか。やっぱり私ずっと裁判を見てきて、西廣さんが本当に支えてきたのも見てきたので、今日、本当に憔悴している彼女を見るのは心苦しいです。

そこまで、皆さんが抵抗してここだけは変えなさいと何度も何度も言っていて、なぜそれをしたのかというところが、どうせ訴えないんじゃないかという思いがもし根底にあるとしたら、やはりそれはジャーナリストとして。取材源や、自分を支えてくれた西廣さんたちが懸念している部分についてはきちんと答えなきゃと。ここまで無理をしなくても、いいドキュメンタリーが出来たのではないかという思いがあるんですが。

西廣さんにお聞きしたいのですけど、相当傷つかれて、心がずたずたになったという表現がありました。

彼女とのやり取りで、少しでもその謝罪……。例えば、夜の電話のやり取りがやはり公開されるとなると、「自分は一体どういう存在だったか」と、すごく傷つかれたと思うんですけど。もう一度、彼女からの謝罪的なものは、これまでのやり取りで感じられる部分があったのかっていうことと。

今、何度も言ってくれているんですけど、もう一度ですね、やはりこういう会見をしてまで、社会的制裁になるんじゃないかという意見もある、そういうようなリスクもありながらも、やっぱりやらざるを得なかったっていう部分で、もう一言いただいてもいいですか。

【西廣】

謝罪……。7月31日にお会いした時に、私も(誓約書に)サインしていますので、彼女もそれは分かっています。サインをして、彼女がその誓約違反のことをすれば「私も責任を問われかねない」ということは会話の中で上がりました。「そうであっても私はこの映像を出すんだ」というお話がありましたので。何と言うか、謝罪という謝罪というふうには私には受け止められなかった、というのはあります。

もう一点、その社会的制裁。本当に止めていただきたい。もうこれは本当に私の切なる願いなんですけれども。

ただ、やっぱり私、この訴訟でずっと感じてきたのが、彼女の背後には本当に多くの性被害者の方がいて。その方々の希望になるようにと思って、いろんな訴訟に対応してきましたし、悪い結果にならないようにと思って、とにかくあっちこっちに行って情報も集めましたし、出た情報を先にチェックして、それが拡散しないようにと行動もしてきました。

彼女を守ることで、「今後出てくる……今も出ているかもしれない性被害者の方たちが、その声を上げてもいいんだというような社会にしたい」と思ってきています。今回のそういった動画が、ホテルの映像だったり、被害者の被害に関する協力が得られなくなるというのは、そういう方たちが「また声を上げられなくなる」社会になってしまうんじゃないか、ということを非常に懸念しています。

本当に苦渋の選択だったんですけれども、このような形にさせていただきました。


【進行】

それでは会見としては以上にしたいと思いますので、何かありましたら個別でお願いいたします。ありがとうございました。

【佃】

ありがとうございました。


※ 本記事は、下記の記者会見(2024年10月21日)の内容をYoutubeより正確に書き起こししたものです。

出典:(望月いそことオッカ君チャンネル)


※ 佃弁護士による追加説明(2025年5月7日)
映画『Black Box Dairies』に関する議論の整理のために


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