季節に関係なく氷をたくさん食べてしまうことはありませんか?
実は氷を無性に食べたくなる原因の一つとして、氷食症(ひょうしょくしょう)という症状があります。
氷食症は貧血と深い関係があり、放っておくと息切れやめまいなど貧血の症状が現れる可能性があります。
本記事では氷食症と貧血の関係についてや、チェックリストも交えて解説していきます。
氷食症とは
氷食症とは、氷を無性に食べたくなる異食症の一種です。
鉄不足になりやすい女性に多く見られ、鉄欠乏性貧血の患者さんに高い確率でみられる症状です。
氷食症の定義は曖昧ですが、毎日のように製氷皿1トレイ以上の氷を2ヶ月以上食べ続けている状況と言われています。
特に貧血になりやすい思春期の女性や妊婦、授乳婦によく見られる症状です。
氷食症の症状
氷食症は無性に氷を食べたくなることが主な症状です。
とにかく氷を食べずにいられず、止められなくなります。
その他にも、氷を食べることで安心感や不安軽減に繋がることもあります。
また、氷食症がある場合、患者さんの多くは貧血もある方が多いです。
貧血の症状として、倦怠感や疲労感、爪がスプーンのように反りかえる、めまい、立ちくらみ、息切れ、顔色不良、寝つきや寝起きの悪さなどが見られます。
強迫性障害という精神疾患が起因する場合には、何度も手洗いをしてしまったり、ドアノブを何回も拭いてしまったりなどの強迫症状も併発することがあります。
更に、氷を食べることによって、歯が削れてしまい、歯の痛みや知覚過敏を発症することもあります。
氷食症の原因
氷食症を引き起こす原因ははっきりとしていませんが、以下のようなさまざまな要因が考えられます。
鉄欠乏性貧血
鉄欠乏性貧血は氷食症の主な原因とされています。
氷を食べたくなる理由として、鉄不足になり自律神経が乱れることにより、体温調節機能が異常になるためです。
熱い口の中を冷やしたり、脳を覚醒させたりするために、氷を食べたくなるのではないかと言われています。
また、氷を食べる行為は、口腔内を刺激して一時的に気分が良くなると考えられています。
鉄不足になると、体内で酸素を運ぶためのヘモグロビンが減少し、倦怠感や疲労感、めまい、立ちくらみ、冷え性、顔色不良、爪が割れやすくなる、氷を食べたくなる、などの症状が現れます。
鉄欠乏性貧血の患者さんでは、異食症の一環として氷を好むケースが多く報告されています。
ストレスや心理的要因
ストレスや不安が氷食症の要因となることもあります。
特に、氷を食べる行為が心の安定感や満足感を与える場合、無意識にその行動が習慣化することがあります。
栄養不足
鉄分だけでなく、亜鉛やビタミンB群の不足も氷食症の要因になることがあります。
また、食欲不振や栄養不足から鉄不足になり、氷食症になる方もいます。
栄養バランスの偏りがある場合、異食行動が引き起こされる原因となります。
強迫性障害
強迫性障害は精神疾患の一つです。
不安から同じ行動を繰り返し起こしてしまう症状がありますが、その一つとして氷食症があります。
強迫性障害は、鍵を閉め忘れたか不安になり何度も確認をしてしまったり、何度も手を洗うなどの行動があります。
あなたは大丈夫?鉄欠乏性貧血のチェックリスト
氷食症の患者さんの多くは鉄欠乏性貧血の方が多いです。
以下のチェックリストを参考に、自身の体調の確認をしてみてください。
貧血セルフチェックリスト
- ☑ 疲れやすい、体がだるい
- ☑ 息切れや動悸を感じることが多い
- ☑ 顔色が青白い、血色が悪い
- ☑ めまいや立ちくらみを感じる
- ☑ 爪が薄く、割れやすい
- ☑ 髪の毛が抜けやすくなった
- ☑ 食欲が落ちている
- ☑ 慢性的に頭痛がする
もし多くの項目に当てはまる場合は、鉄欠乏性貧血の可能性が高いため、早めに医師に相談し血液検査を受けることをおすすめします。
鉄欠乏性貧血とは
では、ここまで解説した中で頻出した「鉄欠乏性貧血」とはどのような病気なのでしょうか。
鉄欠乏性貧血(てつけつぼうせいひんけつ)は、体内の鉄分が不足することによって起こる貧血の一種です。
鉄はヘモグロビン(赤血球に含まれる酸素を運ぶ物質)を構成する重要な成分であり、鉄分が不足すると赤血球の生成が正常に行われず、酸素を体全体に十分に供給できなくなります。
これにより、さまざまな症状が引き起こされ、生活に支障をきたすことがあります。
鉄欠乏性貧血の原因
鉄欠乏性貧血には様々な原因があります。
| 原因 | 説明 |
|---|---|
| 鉄分の摂取不足 | 食事からの鉄分摂取が不足している場合、体内で必要な鉄を供給できなくなります。 特に植物性の食材(鉄分を含むが吸収されにくい形で存在)を多く摂る食生活の場合、鉄分が不足しやすいです。 |
| 鉄分の吸収不良 | 消化器系の病気(例:セリアック病や炎症性腸疾患など)や胃酸の分泌が減少することによって、鉄分の吸収が阻害されることがあります。 |
| 出血 | 慢性的な出血(例:月経過多や胃腸からの出血など)によって鉄分が失われ、補充が追いつかなくなることがあります。 |
| 妊娠・授乳 | 妊娠中や授乳中の女性は、赤ちゃんに供給する鉄分が必要であり、特に鉄分を十分に摂取しないと鉄欠乏症に陥ることがあります。 |
| 成長期 | 子供や思春期の成長段階では、鉄分の必要量が増加するため、鉄分不足が起こりやすいです。 |
鉄欠乏性貧血の症状
鉄欠乏性貧血の症状は軽度から重度まで、症状は様々です。
以下のような症状が現れることがあります。
| 症状 | 説明 |
|---|---|
| 疲労感 | 鉄分が不足すると、体内に酸素が十分に供給されなくなり、常に疲れた感じがすることがよくあります。 |
| 息切れや動悸 | 酸素供給が不足しているため、体が酸素を必要とする状況で息切れや動悸を感じることがあります。 |
| 顔色不良 | 貧血により血液の赤血球の量が減少すると、顔色が青白くなったり、血色が悪く見えることがあります。 |
| めまいや立ちくらみ | 血圧が低くなりやすく、急に立ち上がるとめまいや立ちくらみを感じることがあります。 |
| 爪が薄く割れやすい | 鉄分が不足すると、爪が薄くなったり、割れやすくなることがあります。 また、スプーンのように爪が反りかえる「スプーンネイル」も代表的な症状です。 |
| 髪の毛が薄くなる | 鉄欠乏性貧血が続くと、髪の毛が抜けやすくなることもあります。 |
| 食欲不振 | 鉄分不足による体調不良が続くと、食欲が減退することもあります。 |
鉄欠乏性貧血の診断
鉄欠乏性貧血を診断するためには、以下のような方法があります。
・血液検査
血液中のヘモグロビン量やヘマトクリット値(血液中の赤血球の割合)を測定します。
鉄分が不足している場合、ヘモグロビン値が低くなります。
・フェリチン値
鉄分を貯蔵するフェリチンの値を測定し、低ければ鉄欠乏の可能性が高いとされます。
・血清鉄
血液中の鉄分の量を測定し、不足している場合は鉄欠乏と診断されることがあります。
・TIBC(総鉄結合能)
鉄分と結びつくことができるタンパク質の量を測定します。
鉄が不足しているとTIBCが高くなる傾向があります。
鉄欠乏性貧血の治療法
鉄欠乏性貧血の治療は、主に鉄分を補うことが中心です。
治療方法としては、以下の選択肢があります。
| 治療法 | 説明 |
|---|---|
| 食事療法 | 鉄分を豊富に含む食品(例:赤身肉、魚、レバー、豆類、緑黄色野菜、鉄分強化食品)を摂取することが基本です。 特に動物性の鉄(ヘム鉄)は吸収されやすいです。 |
| 鉄剤の摂取 | 食事から十分に鉄分を摂取できない場合、鉄剤を服用することが推奨されます。 鉄剤には経口薬や注射剤があり、重症の場合は注射を使用することもあります。 |
| ビタミンCの摂取 | ビタミンCは鉄分の吸収を助けるため、食事やサプリメントで摂取することが有効です。 |
| 根本的な原因の治療 | 鉄欠乏の原因が他の疾患(例:消化器系の病気や慢性出血など)にある場合、その治療を行う必要があります。 |
鉄欠乏性貧血の予防法
鉄欠乏性貧血を予防するためには、以下のような方法が有効です。
・バランスの取れた食事を心がける
鉄分を豊富に含む食事を摂ることが大切です。
特に、肉や魚、豆類を積極的に取り入れましょう。
・妊婦の鉄分補給
妊娠中は鉄分の必要量が増加するため、食事やサプリメントで鉄分を補うことが重要です。
・定期的な健康診断を受ける
貧血の早期発見のため、定期的に血液検査を受けることが推奨されます。
まとめ
氷食症は一見無害な行為に思えるかもしれませんが、鉄欠乏性貧血などの体調不良のサインである可能性があります。
氷を食べたい衝動や、めまいや息切れなどの鉄欠乏性貧血の症状がある場合には、早めに医師の診断を受け、必要な治療を行いましょう。
また、貧血の予防は氷食症の改善にも繋がることもあるため、バランスの取れた食生活と適切なケアを心掛けて生活をすることが大切です。
ご心配な方は、血液専門医が院長の当クリニックまでお気軽にご相談下さい。
よくあるご質問
Q:氷食症は放っておくとどうなりますか?
A:さまざまな症状が現れます。
例えば、歯が削れてしまい、虫歯や知覚過敏になることや、胃腸が冷えることで、腹痛や消化不良を引き起こす可能性があります。
また、鉄欠乏性貧血がある方は貧血が悪化し、めまいや息切れなどの症状が酷くなるため、貧血の症状がある場合には、早めに医師の診察を受けることをお勧めします。
Q:氷食症は太りますか?
A:氷を食べること自体では体重が増える原因にはなりません。
しかし、氷をたくさん食べることで胃腸に負担がかかり、消化器系の動きが悪くなることや、ストレスが原因で暴飲暴食をしてしまう場合には体重が増加する可能性もあります。
貧血が進行し食欲不振の症状があると、体重が減少してしまうこともあります。
Q:鉄欠乏性貧血は治りますか?
A:鉄欠乏性貧血は鉄剤を内服することで、ほとんどの場合が治ります。
かなり進行している場合には、注射で鉄を補うこともあります。
また、消化器系の病気や慢性出血などがある場合には、その治療を行うことが必要です。
鉄剤以外にも規則正しくバランスの良い食事を摂ることや、ビタミンC、カルシウムを摂ることも大切です。
但し、鉄剤を内服すると、1〜2ヶ月程で貧血の症状は改善されますが、体内の鉄が十分に補充されるには半年程時間を要しますので、気長に治療をしていきましょう。
鉄欠乏性貧血は再発することが多いため、定期的に検査を受けることをお勧めします。
参考文献
北医療大デンタルトピックス 47号(1-5) 平成28年 〔総 説〕 氷食症に関する文献的考察
https://npofukusiyougu.sakura.ne.jp/sblo_files/npo-fukusiyougunet/image/E6B0B7E9A39FE79787E381ABE996A2E38199E3828BE69687E78CAEE79A84E88083E5AF9FEFBC9AE58C97E58CBBE79982E5A4A7E38387E383B3E382BFE383ABE38388E38394E38383E382AFE382B92016.pdf
鉄代謝の臨床 鉄欠乏と鉄過剰:診断と治療の進歩 II.鉄欠乏 1.日本の現状と病態 内田 立身
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/99/6/99_1194/_pdf
MSDマニュアルプロフェッショナル版
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/11-%E8%A1%80%E6%B6%B2%E5%AD%A6%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E8%85%AB%E7%98%8D%E5%AD%A6/%E8%B5%A4%E8%A1%80%E7%90%83%E7%94%A3%E7%94%9F%E4%BD%8E%E4%B8%8B%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E8%B2%A7%E8%A1%80/%E9%89%84%E6%AC%A0%E4%B9%8F%E6%80%A7%E8%B2%A7%E8%A1%80

