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大統領が「拉致」される時代──ベネズエラ介入が暴く米国の真の姿

我々は国際法の範囲内で活動する国家ではない。我々は誰にも説明責任を負わない、ただアメリカ国民を除いては。そしてアメリカ国民はこの愚行を受け入れている。それこそが今日最大の課題だ。

— スコット・リッター(元国連大量破壊兵器査察官)

はじめに

2025年1月、世界は衝撃的な光景を目撃した。ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領が、米軍特殊部隊によって「拉致」され、米国に連行されたのだ。トランプ大統領は記者会見で勝ち誇ったように語った。「我々は南米における支配を再び確立した」と。

だが、この出来事を単なる「麻薬戦争の勝利」として受け取っていいのだろうか。実際、元CIA職員のラリー・ジョンソンは断言する。「麻薬問題など存在しない。これは石油のための作戦だ」。元国連査察官のスコット・リッターもこう警告する。「アメリカは完全に無法国家になった」。

この記事では、3人の米国安全保障専門家──ガーランド・ニクソン、ラリー・ジョンソン、スコット・リッター──の緊急対談を通じて、ベネズエラ政変の真相を探る。そこから見えてくるのは、制裁、買収、そして最終的な武力行使という「帝国の三段階戦略」だ。そしてこの戦略は、イラン、ロシア、さらには世界中の「従わない国家」に対して繰り返し使われてきたものなのである。

著者紹介

ガーランド・ニクソンは米国の独立系ジャーナリスト、政治評論家。主流メディアが報じない米国の対外政策を鋭く批判する立場から、独自のポッドキャストを運営している。

ラリー・ジョンソンは元CIA職員、元国務省対テロ調整官。1980年代から90年代にかけて中南米での米国の工作活動に直接関与した経験を持つ。現在は独立系分析サイト「Sonar21」を運営し、内部告発者的視点から米国情報機関の活動を分析している。

スコット・リッターは元米海兵隊情報将校、元国連大量破壊兵器査察官。イラク戦争前に「大量破壊兵器は存在しない」と主張し、ブッシュ政権の戦争プロパガンダを暴いた人物として知られる。軍事・情報分析の専門家として、米国の対外介入を一貫して批判してきた。

この3人の対談は、2025年1月のベネズエラ政変直後、緊急に行われたものだ。いずれも米国の安全保障機構の内側を知る人物であり、その視点は主流メディアとは全く異なる。

24時間で完了した「政権転覆」──何が起きたのか

革命家は小さな家に住み、質素な服を着て、質素な食事をする。金では買収できない。だがベネズエラは金が必要な人々によって統治されていた。

— スコット・リッター

ベネズエラ時間で1月のある日の早朝、米軍特殊部隊デルタフォースがカラカスに侵入し、マドゥロ大統領を拘束、米国に連行した。トランプ大統領は記者会見で、これを「麻薬戦争の大勝利」として祝った。ピート・ヘグセス国防長官は「南米における我々の優位性を再確認した」と述べた。

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https://www.bloomberg.com/jp/news/articles/2026-01-03/T89ZEAKJH6VG00

だが、この作戦は本当に24時間で完了したのか。ラリー・ジョンソンは違う見方を示す。「CIAは2018年からベネズエラで工作を続けてきた。トレン・デ・アラグアという犯罪組織を作り上げ、マドゥロを麻薬王として描く物語を構築してきたのだ」。

実際、この作戦には長い準備期間があった。そして最も重要なのは、軍事作戦そのものではなく、それ以前の「経済的買収」だったとリッターは指摘する。

「デルタフォースが2人の兵士だけでカラカスに入り、マドゥロを捕まえて出てきた。これは台本通りだ。彼らは警備された宮殿を攻撃したわけではない。すべてが事前に調整されていた」

つまり、ベネズエラの国防大臣、内務大臣、そして軍の主要人物たちは、すでに米国に買収されていたのだ。マドゥロは孤立し、守る者もいない状態で「引き渡された」と考えるべきだろう。

この見方を裏付けるのが、政変前の出来事だ。ベネズエラは米国の石油禁輸制裁を受けていたはずだが、政変の数週間前、4隻から8隻のタンカーがベネズエラからシェブロンの石油を積んで米国に向かっていたという。ジョンソンはこう分析する。「これが買収の証拠だ。莫大な金が動いていた。そしてベネズエラのエリートたちは、この金が流れ続けることに依存するようになったのだ」。

「麻薬戦争」という虚構──本当の目的は石油だった

麻薬問題だって?何という嘘だ。確かにベネズエラ経由でコカインやマリファナが流れている。だが、それはベネズエラで生産されているわけではない。そして米国民を殺しているのはコカインではなく、中国製のフェンタニルなのだ。

— ラリー・ジョンソン

トランプ政権はベネズエラ介入の理由を「麻薬との戦い」としている。マドゥロを「麻薬王」として描き、米国民を守るための正義の作戦だと主張する。

だが、この物語には大きな矛盾がある。

まず、ベネズエラは麻薬の主要生産国ではない。コカインの生産地はコロンビアとペルーだ。確かにベネズエラ経由で麻薬が流れているが、それは地理的な位置によるものであり、マドゥロ政権が積極的に関与していた証拠はない。

次に、米国で本当に問題になっているのはフェンタニルだ。この合成麻薬は中国で製造され、メキシコのカルテルを経由して米国に流入している。ベネズエラとは無関係だ。

さらに決定的なのは、2018年に米国国務省の「国際麻薬・法執行局」が発行した年次報告書だ。この報告書はベネズエラ経由の麻薬について言及しているが、マドゥロ政権の関与については明確な証拠を示していない。

では、なぜ「麻薬戦争」という物語が必要だったのか。

答えは石油だ。ベネズエラは世界最大の確認石油埋蔵量を持つ。その石油は特定の硫黄含有率を持ち、メキシコ湾岸の米国製油所が処理するのに最適な品質なのだ。

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Amuay Refinery, Venezuela

ジョンソンは説明する。「我々がベネズエラに制裁をかけた時、これらの製油所はロシアから同様の品質の石油を輸入せざるを得なくなった。だが、ロシアにも制裁をかけた。インド経由で買うような複雑な取引をしても、十分な量を確保できなかった。製油所を別の原油用に改造するには莫大なコストがかかる」。

つまり、米国はベネズエラの石油なしでは、自国の製油所を効率的に運営できない状況に陥っていたのだ。

リッターはさらに踏み込む。「これは中東政策とも関連している。イランへの攻撃を計画するなら、ホルムズ海峡が封鎖されるリスクがある。そうなればペルシャ湾からの石油が止まる。ベネズエラの石油を確保することで、少なくとも部分的な安全網を得られる」。

「麻薬戦争」は表向きの口実に過ぎない。本当の目的は、世界最大の石油埋蔵量を持つ国を支配し、米国のエネルギー安全保障と地政学的優位性を確保することだったのだ。

制裁という武器──経済的レバレッジの恐るべきメカニズム

我々が制裁をかける時、それは経済的レバレッジを作り出すためだ。そして標的国内で制裁解除から利益を得る勢力を育てる。彼らは制裁解除に既得権益を持つようになり、我々が望む行動と結びつける。

— スコット・リッター

ベネズエラ政変は、米国が過去数十年で洗練させてきた「制裁戦略」の典型例だ。この戦略は3つの段階から成る。

第一段階:経済的レバレッジの創出
標的国に包括的な経済制裁を課す。特に石油輸出のような主要な収入源を遮断する。これにより、その国の経済エリート、軍部、官僚たちは困窮する。彼らの富、権力、生活水準が脅かされる。

ベネズエラの場合、2018年から段階的に制裁が強化され、2019年には石油輸出が事実上禁止された。その結果、ベネズエラの1人当たりGDPは2013年の約14,000ドルから2020年には約2,000ドルまで暴落した。

第二段階:内部の買収
困窮したエリートたちに対し、CIAや米国企業を通じて「救済の手」を差し伸べる。「制裁は解除できる。莫大な富が再び流れる。ただし、我々の言うことを聞けば」というメッセージだ。

ジョンソンは指摘する。「シェブロンのタンカーがベネズエラから石油を運んでいた事実を見れば、何が起きていたかわかる。制裁下でも、特定のルートで金が流れていた。そしてその金は、誰がそれを受け取るかを選別する道具だった」。

第三段階:政権転覆の実行
十分な数のエリートが買収され、政権を支える柱が崩れた時点で、軍事作戦や政変を実行する。この段階では、もはや大規模な戦闘は不要だ。デルタフォース2人でマドゥロを「拉致」できたのは、周囲が全員裏切っていたからだ。

リッターはこの戦略の恐ろしさを強調する。「これは単なる軍事力の誇示ではない。はるかに洗練された支配の形だ。我々は彼らの経済を破壊し、救済者として現れ、彼らを我々に依存させる。最終的に、彼らは自ら進んで我々の言いなりになる」。

この戦略は、イラク、リビア、シリア、イランなど、米国が「敵」とみなす国々に繰り返し適用されてきた。そして今、ロシアに対しても同じ手法が試みられている。

リッターの警告は鋭い。「ロシアの改革派、特にキリル・ドミトリエフのような経済開放を主張する人々は、この罠に気づいていない。彼らは制裁解除による経済的利益を期待している。だが、それこそが米国の狙いなのだ。ロシア国内に、制裁解除を望む勢力を育て、それを政治的レバレッジとして使う。ベネズエラと同じように」。

主流メディアの沈黙──誰も疑問を呈しない異常事態

植民地支配とは、まさにこういうことだ。我々は南米を我々の裏庭だと考えている。そこに住む人々の主権など、我々にとってはどうでもいいことなのだ。

— ガーランド・ニクソン

ベネズエラ政変から24時間が経過した時点で、米国主流メディアの報道は驚くほど一様だった。

CNN、NBC、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト──いずれも「麻薬王マドゥロの逮捕」という公式見解を繰り返すだけだった。疑問の声はほとんどなかった。

  • 大統領を外国が拉致することは国際法違反ではないか

  • 議会承認なしの軍事作戦は憲法違反ではないか

  • 「麻薬戦争」という口実は本当に正当なのか

  • ベネズエラの石油との関連は

こうした基本的な問いさえ、主流メディアは投げかけなかった。

トランプは記者会見で「議会には連絡しなかった。情報が漏れるから」と公然と述べた。これは事実上、大統領が議会を無視して戦争を始めたことを意味する。憲法上、宣戦布告の権限は議会にある。だが、主流メディアはこの点をほとんど追及しなかった。

ニクソンは痛烈に批判する。「憲法上の分離権は死んだ。行政府が好き勝手に戦争を始め、議会は黙認し、メディアは質問すらしない。これはもはや憲法に基づく政府ではない」。

なぜメディアは沈黙するのか。

ジョンソンは「企業メディアと情報機関の癒着」を指摘する。「CIAは1950年代から『モッキンバード作戦』を通じて、主要メディアに工作員を配置してきた。今日、この構造はさらに洗練されている。記者たちは直接的な指示がなくても、何を報じるべきで何を報じるべきでないかを『空気を読んで』理解している」。

リッターは別の角度から説明する。「主流メディアは6つの巨大企業に支配されている。これらの企業は軍産複合体と深く結びついている。戦争は彼らにとって利益だ。ベネズエラの石油を支配することも、彼らにとって利益だ。だから批判的な報道はしない」。

さらに深刻なのは、視聴者・読者側の反応だ。トランプ支持者の多くは、ベネズエラ介入を「強いアメリカの復活」として歓迎している。「MAGA(Make America Great Again)」層は、外交政策の詳細には関心がない。「大統領が約束した麻薬との戦いを実行した」という単純な物語に満足している。

ニクソンは嘆く。「2020年、私はハワイまで飛んで、トゥルシー・ギャバードの『反政権転覆』キャンペーンを応援した。だが今、彼女は国家情報長官としてこの作戦を監督している。彼女は辞任すべきだ。コリン・パウエルがイラク戦争で辞任すべきだったように」。

メディアの沈黙と大衆の無関心──この組み合わせが、米国の無法な対外介入を可能にしている。

ロシアへの警告──プーチン暗殺未遂が示すもの

ロシア人よ、目を覚ませ。経済的利益への期待で、ドミトリエフのような人々が内部にレバレッジを作り出している。これこそがCIAの狙いだ。ベネズエラを見ろ。同じことがロシアで起きる。

— スコット・リッター

ベネズエラ政変の1週間前、もう一つの衝撃的な出来事があった。ウクライナ軍が91機のドローンを使ってモスクワ近郊のノヴゴロドにあるプーチン大統領の公邸を攻撃したのだ。

この攻撃のタイミングは偶然ではなかった。ウクライナのゼレンスキー大統領はその時、トランプとフロリダのマー・ア・ラゴで会談していた。つまり、米国大統領がウクライナ大統領と会談している最中に、ロシア大統領への暗殺未遂が行われたのだ。

さらに衝撃的だったのは、CIAの反応だ。ウォール・ストリート・ジャーナルとニューヨーク・タイムズは「CIAによれば、この攻撃はプーチンの公邸を狙ったものではなく、近くの軍事施設を狙ったものだった」と報じた。

ジョンソンはこの弁明の意味を解説する。「CIAがどうやって攻撃の標的を知ったのか。答えは簡単だ。米国の情報と技術を使ってウクライナが攻撃したからだ。この弁明は実質的な自白だ」。

リッターはさらに踏み込む。「攻撃に使われたドローンには高度な誘導システムが搭載されていた。ロシアはそれを回収し分析した。そこには商業衛星からは得られない精密な情報が含まれていた。米国の国家偵察活動でしか得られない情報だ。つまり、これは事実上の米国によるロシア大統領暗殺未遂なのだ」。

この出来事は、3つの重要なメッセージを含んでいる。

第一に、米国は交渉中であっても敵対行為を続ける
トランプ政権は「ウクライナ和平」を掲げ、ロシアとの交渉を進めていると主張していた。だが、その裏で大統領暗殺を試みていた。リッターは断言する。「米国は誠実に交渉する能力を失っている。我々は今、完全な不誠実国家だ」。

第二に、ロシア国内に「弱さ」を演出しようとしている
プーチンが自分の公邸で攻撃されたという事実は、ロシア国内で「プーチンは守れない」「プーチンは弱い」という印象を与える可能性がある。これは、ベネズエラで使われた戦略と同じだ。指導者を孤立させ、支持基盤を切り崩す。

第三に、経済開放派への警告
リッターが最も懸念しているのは、ロシアの経済開放派、特にキリル・ドミトリエフのような人物が、西側との関係正常化に期待を抱いていることだ。

ドミトリエフはロシア直接投資基金の責任者であり、制裁解除と西側投資の呼び込みを推進している。彼は最近、ジャレッド・クシュナー(トランプの娘婿)とスティーブ・ウィトコフ(トランプの特使)をクレムリンに招き、プーチンと会談させた。

リッターは激しく批判する。「ドミトリエフは善意かもしれないが、完全にナイーブだ。クシュナーとウィトコフは道徳的原則など持たない。彼らは金儲けしか考えていない。そして彼らの利益は、米国の政策と結びついている。その政策とは、ロシア政権の転覆だ」。

ベネズエラの教訓は明確だ。制裁は解除のために課されるのではない。政権転覆のために課されるのだ。そして制裁解除への期待こそが、内部に買収可能なレバレッジを作り出す。

ジョンソンは付け加える。「ロシアは今、その罠を避けるチャンスがある。なぜなら、ロシアはベネズエラと違って核兵器を持っているからだ。米国は簡単にはロシアで同じことはできない。だが、経済的・政治的圧力を通じて、内部から崩そうとしている。ドミトリエフのような人々は、その意図せざる協力者になりかねない」。

終末ラジオ局が突然『白鳥の湖』を流し始めた
そう、ソ連時代の政治危機――指導者の死や1991年のクーデターの際にも流れたあの曲だ
プーチン暗殺未遂への報復をクレムリンが宣言してから数時間後のことだった

RT

コロンビアとメキシコ──次の標的は誰か

コロンビアのペトロ大統領には『コカイン工場がある。背後を気をつけろ』と脅した。我々は今、この地域全体に対して『従わなければ政権転覆する』と宣言しているのだ。

— ガーランド・ニクソン

ベネズエラ政変の記者会見で、トランプはコロンビアについても言及した。「グスタボ・ペトロ大統領はコカイン工場を持っている。彼は背後を気をつけたほうがいい」。

この発言は脅迫以外の何物でもない。ペトロは2022年に選出された左派大統領で、米国の対麻薬戦争政策を批判し、より社会政策重視のアプローチを取っている。

ピート・ヘグセス国防長官は、さらに露骨だった。「我々は南米における支配を再確立した。この地域の国々は、誰が主人かを理解する必要がある」。

これは19世紀の「モンロー・ドクトリン」の現代版だ。当時、米国は「西半球は我々の勢力圏だ。欧州列強は干渉するな」と宣言した。今、トランプ政権は「西半球は我々のものだ。従わない国は潰す」と宣言している。

リッターは警告する。「これは単なるレトリックではない。実際の政策だ。コロンビアが次の標的になる可能性は高い。ペトロが米国の言いなりにならなければ、CIAは彼を取り除く準備をするだろう」。

メキシコも標的だ。トランプは繰り返しメキシコを「麻薬カルテルの温床」として批判している。クラウディア・シェインバウム大統領(2024年選出)は、前任のロペス・オブラドールの路線を継承し、米国との一定の距離を保とうとしている。

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クラウディア・シェインバウム大統領

ジョンソンは分析する。「メキシコは地理的に米国と接している。これは強みでもあり弱みでもある。経済的には完全に米国に依存している。だが、それゆえに買収も容易だ。米国は『協力しなければ経済を破壊する』と脅すことができる」。

実際、2025年初頭の時点で、メキシコ経済は米国との貿易に大きく依存している。USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)により、メキシコの輸出の約80%が米国向けだ。

リッターは指摘する。「これがレバレッジだ。メキシコ政府が『我々の主権を守る』と言っても、経済的圧力に耐えられるか。メキシコの財界、軍部は、米国との良好な関係を望んでいる。彼らを買収することは、ベネズエラ以上に容易かもしれない」。

さらに懸念されるのは、この「地域支配の再確立」という政策が、1960-80年代の中南米介入を彷彿とさせることだ。

当時、CIAは中南米全域で、左派政権の転覆、軍事クーデターの支援、反政府ゲリラへの資金提供を行った。その結果、何十万人もの人々が殺され、拷問され、「失踪」した。

ニクソンは憂慮する。「我々は歴史を繰り返そうとしている。ただし、今回はもっと効率的だ。SNS、AI監視、精密誘導兵器──技術は進歩した。だが、根本的な哲学は変わっていない。従わない者は潰す、というシンプルな帝国主義だ」。

そして最も皮肉なのは、これが「アメリカ・ファースト」の名の下に行われていることだ。トランプ支持者の多くは「他国への介入をやめる」ことを期待して彼に投票した。だが、実際には介入は拡大している。

帝国の終わりか、新たな段階か

すべてが死んだ。外交という概念自体が死んだ。なぜなら、アメリカは外交をする方法を忘れたからだ。アメリカはただのいじめっ子だ。そして我々は経済的レバレッジを使って、自分たちの利益のために他国を搾取しようとしている。

— スコット・リッター

ベネズエラ政変から数日が経過した時点で、3人の専門家の見解は分かれた。

ジョンソンの悲観的予測
「私はベネズエラが泥沼化すると考えている。ベネズエラはベトナムの3倍の面積を持つ。山岳地帯、ジャングル、コロンビアやブラジルとの長い国境──すべてが反政府活動に適している。マドゥロ支持者は35-40%いる。彼らは黙って従うだろうか。私はそうは思わない」。

ジョンソンは、コロンビアのFARC(コロンビア革命軍)を例に挙げる。「FARCは1964年に設立された。61年経った今も存在し、活動している。ベネズエラで同じことが起きる可能性がある。米国人が殺され、捕虜になれば、トランプは倍賭けするしかない。より多くの軍隊を送る。これがベトナム・スパイラルだ」。

リッターの「完全支配」説
対照的に、リッターはより暗い見方をする。「私は反乱は起きないと考えている。なぜなら、米国はすでにベネズエラを完全に買収したからだ。国防省も内務省もそのまま残っている。彼らが裏切ったのだ。だから米軍は地上に展開する必要がない。ベネズエラ軍が米国の命令で動く」。

リッターによれば、これは従来の占領とは異なる新しい形の支配だ。「物理的な占領は必要ない。ヘグセスとルビオがリモートでベネズエラ軍と政府を運営する。石油収入は流れ続け、それを受け取るエリートたちは従順になる。これがネオ植民地主義の完成形だ」。

ニクソンの問いかけ
ニクソンは別の角度から疑問を呈する。「これはトランプの『ミッション・アコンプリッシュド』の瞬間だ。ブッシュがイラクで航空母艦の上で勝利宣言をしたように。だが、25時間後には勝利に見えたものが、25ヶ月後にはどう見えるか」。

彼は、米国内の政治的影響も懸念する。「MAGA支持者の多くは、外交政策の詳細を理解していない。だが、彼らはイスラエル支援には反発し始めている。『これはアメリカ・ファーストではない』と。ベネズエラ介入が泥沼化すれば、同じ反発が起きるかもしれない」。

残された問い──我々は何を学ぶべきか

問題は、これを止められるのは米国民だけだということだ。だが、米国民はこの愚行を受け入れている。これこそが今日最大の課題なのだ。

— スコット・リッター

ベネズエラ政変が我々に突きつける問いは、単に一国の運命だけではない。それは、21世紀における権力、主権、そして抵抗の本質についての問いだ。

制裁は本当に「平和的手段」なのか
西側諸国は、制裁を「武力行使の代替手段」として正当化してきた。だが、ベネズエラの事例は、制裁が実際には戦争の一形態であることを示している。経済を破壊し、人々を困窮させ、内部から政権を崩す──これは「平和的」とは言えない。

リッターは断言する。「制裁は経済戦争だ。そして、それは最終的に軍事侵攻への道を開く。制裁は戦争を防ぐのではなく、戦争を準備するのだ」

「買収された革命」は持続可能か
ベネズエラのエリートたちは、経済的利益のために国を売った。だが、この種の政権は安定するのだろうか。歴史は、外部勢力に依存する政権が脆弱であることを示している。

ジョンソンは指摘する。「金で買われた忠誠心は、金が続く限りしか持たない。そして金は必ず減る。その時、何が起きるか」。

抵抗の形は変わったのか
従来の武装闘争は、技術的優位性を持つ大国に対しては困難だ。だが、ベネズエラの人々が抵抗する意志を持つなら、その形はどうなるのか。

リッターは注目すべき点を挙げる。「ベネズエラ人がSNSで真実を広め、国際的連帯を築くことができれば、それは新しい形の抵抗になる。物理的な戦闘ではなく、情報と道徳的正統性をめぐる戦いだ」。

他国への教訓
イラン、キューバ、ニカラグア、そしてロシア──米国が「敵」とみなす国々は、ベネズエラから何を学ぶべきか。

ジョンソンは明確だ。「米国と交渉しようとするな。我々は誠実に交渉する能力を失っている。唯一の方法は、完全な独立性を維持し、内部の買収可能な勢力を徹底的に排除することだ」。

リッターはさらに踏み込む。「そして、もし可能なら、核兵器を持つことだ。それが唯一の抑止力だ。リビアのカダフィは核開発を放棄した後に殺された。北朝鮮の金正恩は核兵器を持っているから生き残っている。これが残酷な現実だ」。

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日本という「忠実な属国」が標的になる日──三段階支配の現実的シナリオ

「日本人は、自分たちは安全だと思っているかもしれない。だが、米国は友好国すら信用していない。2013年、NSAは日本の首相を盗聴していた。もし日本が本当に独立した外交政策を取ろうとしたら、米国は許すだろうか。私はそうは思わない」。

— ガーランド・ニクソン

日本は米国の同盟国だから安全だと考えるのは幻想だ。2013年、NSAが安倍首相を含む日本政府高官の通信を組織的に盗聴していた事実が、スノーデンの内部告発で明らかになった。同盟国ドイツのメルケル首相の携帯電話も盗聴されていた。「友好国」という言葉の裏で、米国は日本を24時間監視下に置いている。

ベネズエラ政変が示したのは、武力侵攻よりはるかに効率的な支配の手法だ。制裁、買収、情報統制──この三段階プロセスは、すでに日本で進行中である。

第一段階──経済レバレッジの再武装化
米国は戦争を「金融で行う」時代に突入した。日本に対しては制裁を課すのではなく、「市場調整」と「通貨介入」を武器として使う。

もし日本が中国との関係正常化を進めたり、ロシアとのエネルギー取引を再開したりしようとした場合、何が起きるか。米国は「安全保障上のリスク」を理由に、日本企業──特に半導体、通信、防衛関連──に対して選択を迫る。「米国市場からの締め出し」か「対中・対露協力の停止」か、だ。2019年のファーウェイ制裁では、日本企業は米国の要求に完全に屈した。次は日本企業自身が標的になる。

円相場の意図的撹乱も武器だ。FRBと協調したヘッジファンドによる円売りが仕掛けられれば、為替が急落し、輸入インフレが加速する。2022年の円急落時、日銀は為替介入を行ったが、その資金は米国債を売却して調達した。つまり、日本の通貨防衛すら米国の金融システムに依存している。ニューヨーク連銀の金融ネットワークが操作可能な範囲内で、日本経済は動いているに過ぎない。

エネルギー依存は最も致命的な弱点だ。日本は石油の約90%、LNGの約30%を輸入に依存する。米国のLNG供給契約を政治カード化し、「エネルギー安保」を人質に取ることができる。イランやロシアとの取引を再開しようとすれば、「安全保障違反」として日本自体が制裁対象に組み込まれる。

第二段階──情報・政治支配の深化
経済圧力が動き始めると、次は認知戦と買収装置が本格化する。

外務省、防衛省、経産省、そして自民党の中枢には、米国系シンクタンクの人脈が深く根を張っている。CSIS(戦略国際問題研究所)、ヘリテージ財団、アメリカン・エンタープライズ研究所──これらが「第二の大使館」として、日本の政策形成を裏で制御する。官僚の出世コースには、必ずこれらのシンクタンクでの「研修」が組み込まれている。そこで形成される人脈とイデオロギーが、帰国後の政策を決定する。

経団連が米国戦略に逆らう構想を出そうとすれば、「民間経済界からの反発」が演出されて潰される。トヨタ、ソニー、パナソニック──これらの企業は米国市場に深く依存しており、政府が対米自立を試みれば、財界から「現実的でない」という圧力がかかる仕組みだ。

在日メディアの支配はさらに完璧だ。主要キー局や大新聞の上層部は、米国大使館の「パブリック・ディプロマシー基金」や「USA Japan Foundation」経由で、事実上の支配下にある。記者クラブ制度により、政府発表をそのまま垂れ流す体質が固定化されている。少数の編集長が「空気」を読むだけで、米国に不都合な企画は自然消滅する。米軍犯罪は報道されず、米中対立では自動的に米国側に立たされる。

最も効果的なのは、言論空間の「浄化」だ。政治家、学者、ネット論客が「自主外交」や「在日米軍再交渉」を口にした瞬間、「親中」「反同盟」「陰謀論者」とラベリングされ、社会的に排除される。これは米国内で「ロシアゲート」を仕掛けたのと同一の心理戦術だ。鳩山由紀夫の「対等な日米関係」が8ヶ月で葬られたプロセスを思い出せばいい。あれは偶然ではなく、計画的な政権転覆工作だった。

第三段階──政治体制の「再編」
これは最も見えにくいが、最も現実的な危険だ。

外務・防衛・経産の官僚OBと米資本が共同で「次世代指導者」育成を掲げている。米国シンクタンク留学組、ハーバード出身者が「グローバル人材」としてメディア露出を増やし、10年以内に自民党、維新、立憲を問わず中枢に登場する。「国益ではなくNATO的思考で動く政治家」が量産されるシステムが完成している。

さらに巧妙なのは、「保守」「愛国」の看板を利用した米国忠誠体制だ。ベネズエラでも、政権転覆後に「民族主義者の仮面を被った米国傀儡」が立てられた。日本も同じ構図だ。「憲法改正」「防衛費倍増」「自主防衛」──これらのスローガンが、実際には米国の代理戦略として利用される。日本が「自前の軍隊」を持つのは、米軍の補完部隊として機能するためであり、真の独立のためではない。

そして最終段階として、「島嶼危機」の演出がある。南西諸島(尖閣・与那国付近)での小規模衝突を意図的に作り出し、米軍の恒久駐留と基地拡張を「国民合意のもと」で合法化する。既に沖縄・奄美の自衛隊配置は「有事実験場」として機能している。次の段階は、実際の「衝突」を経て、日本全土の軍事基地化を完成させることだ。

結末──静かな属国、情報統制型ネオ植民地

ベネズエラでの「買収された革命」が、日本では「納得して服従する近代的属国化」として機能する。武力は不要だ。電波、金融、エネルギー、情報──これだけで国家は完全に制御できる。

民衆は自由を信じたまま、自由を失う。選挙は行われ、政権交代も起きる。だが、誰が政権を取っても、基本的な対米従属路線は変わらない。なぜなら、政策を決定する官僚機構、それを支える財界、世論を形成するメディア──すべてが同じ方向を向いているからだ。

万が一、本当に独立志向の政権が誕生すれば、鳩山政権の運命が待っている。内部からの官僚の抵抗、外部からの米国の圧力、そしてメディアの一斉攻撃──これらが組み合わさって、数ヶ月で政権は崩壊する。そして「やはり現実的でなかった」という物語が定着する。

ベネズエラは「他人事」ではなく「予告」

帝国の支配は、まず敵に牙をむくが、最後には忠実な属国にも同じ牙を向ける。日本とベネズエラの違いは、支配のスタイルだけだ。ベネズエラでは軍事作戦が必要だった。日本では必要ない。すでに経済、政治、情報のすべてが統制されているからだ。

日本が直面するリスクは戦車ではなく、投資・メディア・通貨の三位一体による静かな包囲だ。制裁は「政権転覆のため」に課される。日本はまだ制裁を受けていない。それは従順だからだ。もし従順でなくなれば、ベネズエラと同じ運命が待っている。

アメリカは友人を支配し、敵を制裁し、そのどちらも「民主主義の守護」と呼ぶ。独立国家とは、主権を持つことではなく、支配の形を理解し、それを拒む勇気を持つことだ。ベネズエラは他人事ではなく、予告なのである。


ハッシュタグ

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大統領が「拉致」される時代──ベネズエラ介入が暴く米国の真の姿|Alzhacker
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