【 貧乏な赤葦くんと金持ちな木兎さんのお話 】
タイトルのまんまですが、設定をあまり活かせてない気も;;赤葦くんの家庭状況とか木兎さんの家庭状況とか完璧捏造です、私得でしかない設定ですが、HQでは及岩及に並んで好きな兎赤なので…個人的に書いていて凄く楽しかったです!【追記】2014年08月09日付の小説デイリーランキング 15 位ありがとうございます;;タグもBKMもフォローも本当に勿体ない限りです;///;【追記】2014年08月10日付の小説デイリーランキング 1 位ありがとうございます…‼︎思い残すことはもうありません…っ;;続きが書けましたのでご報告しますよろしかったらご覧くださいませ;;
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俺が赤葦と付き合ってから気付いてしまったこと。
それは赤葦が金持ち嫌いだと言うことだ。
【 貧乏な赤葦くんと金持ちな木兎さんのお話 】
梟谷学園高校、2年6組 赤葦京治は俺より一つ年下だけど、うちの立派な副主将だ。まぁ、俺を上手く扱えることが理由で選ばれたとか本人は言ってたけど、俺からしたらあいつのバレーのセンスは間違いなく主将クラスだ。
俺はうまくいかねーとしょぼくれちまうし、割と自由にやってて赤葦に突っ込まれてばっかだけど、でもこいつがいるから俺は主将をやれているんだといつも思う。
赤葦じゃなきゃダメだ。俺のそばで俺の横で、俺を支えられるのはこいつだけなんだ。
後輩に対するその思いが恋に変わったのは、つい最近のことだ。
あいつが2年になり、俺が3年になった時のこと。
ある些細な喧嘩をきっかけに俺が癇癪をおこした勢いで告白してしまったのだ。
今、思えばあんな告白ないよな。と後悔の渦に襲われる。
それなのに、赤葦は「いいですよ」と軽く返事した。最初は冗談かと思ったくらいだ。でも、ちゃんと意味もわかって答えていたことがわかり、俺はめでたくあいつと付き合うことになった。
常に冷静で、何考えてるか いまいちわからんことが多かったけど、付き合うようになって、少しずつ表情が読めるようになってきた。
そんな赤葦と付き合っていて驚いたことは、こいつの家が裕福じゃないということだった。本人いわく、「うち、貧乏なんで」と言っていた。割と一般家庭よりも厳しい生活を送っている。
赤葦は奨学金でなんとか通っているらしい。赤葦の母親が働いていて家計を繋いでいるとか。父親の話は聞いたことがない。
祖母とも暮らしいるが、足腰が弱いらしくほとんど歩けないらしい。トイレに立つぐらいしか動けないんだそうだ。そんな祖母を看病しつつ、おばさんは毎日働いているらしい。
そんな母親の姿を見て育ったせいか、赤葦は決して弱音を吐かない。他人の愚痴も耳に入らない。生きることに精一杯なくせに、いつだってその焦りを外に出したりはしなかった。そんなところに俺は惹かれたのかもしれない。
きっかけは、ある日の夕方。
俺が二年であいつが一年だった時のこと。
後輩だった赤葦を部活帰りに見つけた瞬間、俺はあいつに興味を抱いた。
なにせ、草をむしっていたのだから。
「何してんの、赤葦?」
「……」
「え、俺だよ、部活の先輩の」
「いや、わかってます…木兎さんこそ、なんでここに」
「ここ俺の通学路だし。つーか、何それ、草?」
「……」
「よいしょっと、」
「ちょっと、なんで隣に座るんすか」
「よくわかんねーけど、この草ばっかりつんでるから、これつめばいーの?」
「え…」
「袋に入れてっし、必要なんだろ?」
そう聞けば、普段表情のなかなか出ない赤葦が驚いた顔をしていた。それに俺も驚く。
こいつこんな顔もできるんじゃねーか。そう思った。
「…これ、今日の晩飯なんす」
「これ食えるの?」
「…卵とじとか、山菜炒めみたいなのも美味いし」
「へー、俺も食ってみたい!俺も手伝うから食わせてよ」
「は?いや、いいっすから!」
「赤葦―っ食えるのこの草だけ?これはー?」
「人の話聞けよ、あんた」
こうして強引に赤葦の家に行き、飯をごちそうになることになったのだ。
「ちわっす、お邪魔します」
「あらあら」
「おばーちゃん、この人部活の先輩。今日飯…食べてく」
「そうなの?京ちゃん珍しいお客様ねぇ」
「客なんて大層なもんじゃねーよ、赤葦のばーちゃん?俺、木兎光太郎!光ちゃんな!」
「木兎さん…」
赤葦は呆れていたと思ってたけれど、今思うとあれは照れていたんだとわかる。
その時の赤葦のばーちゃんの顔を俺は忘れない。すごく嬉しそうだった。
「あの子がお友達をつれてくるなんてねぇ」
「知らねーの?赤葦、学校じゃ友達いっぱいいるよ、ばーちゃん」
「でもうちは見てのとーり貧乏やけんねぇ、お友達をつれてきてもなんのお構いもできんで」
「ばーちゃんがいるじゃん!それに俺、赤葦と今日の晩飯摘んできたんだぜ」
「そう、ありがとうね。光ちゃんはいい子やねぇ」
途中で仕事から帰ってきた、赤葦のかーちゃんもすげー驚いた顔してた。
なんのお構いもできないけど。なんてばーちゃんと同じこと言ってたけど、俺はすげー楽しかった。
赤葦の家で赤葦の家族と飯食って、誰かと飯食うのってやっぱりいいな。って、柄にもなく感動していたのは、赤葦には内緒だ。
「今日はいきなり悪かったな」
「木兎さんが謝ってる…そんな常識的な一面もあったんですね」
「まるでいつも人が非常識みたいに言うなよ!」
「非常識の塊が何を言ってるんですか」
「ひどいっ!」
そんな会話をしながらも、今日のおかげで赤葦との関係が一気に近くなったと思う。
元々面倒見のよさそうな後輩で目をつけてはいたけれど、これからはプライベートでも迷惑をかけていきそうだ。
そんな俺の心を読んだのか、隣で赤葦はじとっとした目で睨んでいる。
「またよからぬことでも考えてませんか」
「お前はほんとに敏いな!」
「否定してませんね、それ」
「さーて、どうだろうな!」
それからというもの、赤葦と帰ることが多くなった。
野草や食べれる花や実を取ったり、安いスーパーまで走ったりすることは純粋に楽しかった。
そしてそれを持って赤葦の家に行くと、いつもばーちゃんとおばさんが快く迎え入れてくれた。
赤葦の家族なんだな。と心から思う。
優しくてあったかくて、俺はこの人たちがだいすきだ。
赤葦と出会って、人の豊かさは金ではないと実感した。
***
「お前のことが好きだからだよ!!!!」
「え、」
「え、あ」
「マジっすか…」
2年に入り赤葦は副主将になった。俺は主将で相変わらずわがままばかり言っていた。だけど、隣には変わらず赤葦がいてくれて、その赤葦の存在が自分の中でどんどん大きくなっていくことに、俺は不安を感じていた。
綺麗な顔の赤葦を女子が放っておくわけがない。
身長もあるし、無表情なだけで、実は優しい。
頭の回転だって速いし、気が利くし…そんなの誰だって惹かれてしまうに決まってる。
赤葦はまったく興味ないって顔してるけど、先日帰り際に女子から告白されてるのを見て、俺の機嫌は絶不調なわけで…。
赤葦はただの部活の後輩…なのに、なんでこんなに嫌な気持ちになるのか自分でも意味がわからない。
だけどモヤモヤは消えなくて、俺は、ただしょぼくれて拗ねていた。
だけど、そんな俺を面倒見のいい赤葦が放っておくはずもない。
ついに、帰り際呼び出されることになった。
「木兎さん、ちょっといいですか、」
「……」
「いつまでそう子どもみたいに拗ねてるんすか、主将でしょう」
「子どもじゃねーし」
「子どもですよ。いい加減にしてください、あんたがそんな態度だとみんな練習に集中…」
「わかってるよ!!!!」
俺が大声をあげたことにびっくりしたのか、一瞬 赤葦が黙った。
俺は、やっちまった、と思ったけど、うまく次の言葉が出てこない。
赤葦に呆れられるのは嫌なのに、そんな態度しかできない自分はほんとにガキだと思う
「木兎さんは何がそんなに嫌なんですか、スパイクが決まらなかった時よりしょぼくれてますよね」
「……」
「俺には言えませんか」
「違う。赤葦が・・・・・・・」
「俺の…せいですか?」
「違う!!!赤葦が告白なんかされてるから!!俺と帰れないって言ってたのも女子の告白があったからだろ!!」
「…!知ってたんですか、というか、それでどうして、」
「なんで俺のこと先に帰らせんだよ!!待ってろって言えばいいじゃん!それともなんだ、付き合うつもりだったのかよ!そしたら俺ともう帰れねーじゃん!お前は俺と帰りたくないのかよ!あの日だって、タイムセールでニラが安いとか言ってたじゃねーかっ!俺だってニラ玉食べる気満々だったんだからな!結局食えなかったけど!俺のニラ玉返せ!赤葦のバカ野郎っ!!!!!」
息継ぎなしでそこまで叫んだ。なんて理由だ。口に出すと自分のアホさ加減に気づく。
これじゃあ赤葦に呆れられて当然だ。
つーかそれ以前に嫌われたりはしないだろうか、おそるおそる目をあけると、そこには口元を手で隠して震える赤葦の姿があった。
「赤葦…?」
「なん…っで、す…っ」
「お前、笑ってる…?」
「…ふはっ、だって、ニラ玉返せって、っくく、腹痛…っ」
こんな爆笑してる赤葦をはじめてみた。その笑顔を見たら、胸が痛いくらい締め付けられる。
俺、怒ってたのに。イライラしてたのに。
赤葦が笑うだけで、全部飛んでっちまった。
我ながら単純でバカだ。
赤葦のことがこんなに好きなことに今気づくなんて。
「はー…笑った、」
「笑い過ぎだろ…」
「ニラ玉、今日食べます?」
「…食べる」
「そんなんで不貞腐れてたなんて思いませんでしたよ」
その言葉にカチンときた。別にニラ玉に不貞腐れたわけじゃない。
赤葦の手を掴んで、顔をあげさせる。俺の方が少しだけ高いから、赤葦が見上げる形になった。
「ニラ玉じゃねーし。怒ってたの…」
「…そうなんですか?あ、一緒に帰れなかったから?」
「そうだよ!!」
「でもなんでそんな…」
「お前のことが好きだからだよ!!!!」
「え、」
「え、あ」
「マジっすか…」
と、冒頭に至るわけだ。
結局言ってしまった後は、後の祭りなわけで。自覚して5分で告白って、我ながらフォローのしようがない。
取り返しのつかない言葉に俺は自分でもどうしたらいいかわからないほどに動揺していた。
「どどどど、どうしよ、赤葦俺今なななななななんんて」
「落ち着いてください、はい水」
「あありが…って、なんでお前がそんな冷静なんだよ!!!」
「木兎さんの動揺は慣れてますんで」
「お世話になってます!!!!」
「ところでさっきのですけど……あれは本気ですか?」
うぐっと、息をのむ。本気も本気。言うつもりなんてなかったけど。
口から零れてしまった言葉はもう戻すことができない。こうなったら玉砕覚悟でいくしかない。
スパイクがうまく決まらなかった時のように、しょぼくれること間違いなしだけど。
「そうだよ…お前のこと、好きだ」
「そうですか」
「キモいかもしんねーけど…でも、赤葦が告られてんのも嫌だし、お前が取られるのも嫌だ」
「はは、結構な我が儘ですね」
「うっせー。知ってんだろ」
「はい、知ってますよ」
赤葦が妙に冷静でそわそわする。できることならズバッと言ってほしかった。
そうしたら俺だって、
「赤葦とバレーできなくなるのは嫌だ」
「そんなこと考えてませんよ」
「辞めない?」
「当たり前です。誰があんたの補佐するんですか」
「…ならいい」
「本当に?」
「え、」
「補佐だけの関係でいいんですか、木兎さん」
ニッと弧を描くようにして笑った赤葦が、俺の手を握りなおした。
そして、ゆっくり顔を近づける。
「いいですよ。」
「へ?!」
「あんたといたら退屈しないですからね」
「嘘、」
「嘘じゃないですけど。」
いいですよ、と言われるなんて思わなかった。10秒くらい停止していたが、その言葉を理解した途端、俺は赤葦を思い切り抱きしめた。
「赤葦っ赤葦っ!!」
「はいはい」
まるで子供をあやすように赤葦は俺の頭をポンポンと撫でた。それが嬉しくてグリグリと頭を押し付ける。
赤葦が俺と付き合うと言った。
嘘かと思ったけど、嘘でもないって言った!!
「もう俺のもんだよな!!俺の赤葦なんだよな!!」
「そうですね。明日ちゃんと部員に謝るんですよ?」
「赤葦―っ!!!!!」
こうして赤葦が俺のものになった。赤葦は仕方ないですね、って苦笑していたけど、俺の背中に手を回してくれた。
***
付き合ってからは、前より赤葦の家に行く回数が増えた。節約術や、生活の知恵なんかを教わりながら、俺はいつでも一人暮らしできそうなくらいにまで知識を増やしていた。
まぁ、俺が働くようになったら、赤葦と住むけどな。今ではもう赤葦なしの生活なんて考えられなかった。
当然のようにこれから先もずっと一緒にいて、いつかは結婚したい。なんて、単純な頭で考えていたところ、それを見据えたかのように爆弾が落とされた。
それは赤葦が「金持ち嫌い」だということ。
「あ、俺金持ち嫌いなんですよ」
「え、なんで」
それは帰る途中の何気ない会話だった。昨日の長者番付の話になって、金持ちの話になった時にサラリと言われた事実に俺はつい理由をたずねてしまった。
「なんで…というか、嫌いです。」
「だからなんで?」
「ああいう金持ちの人見てると、金のありがたみとかわかってないですし、何かあると金で解決しようとするところとか…ほんと無理です。」
「…金持ちのみんながみんなそうとは限らねーんじゃねーの?」
「あー…そうですね。忘れてください。俺のただの僻みです」
「いや、悲観的になれっつってんじゃなくてよぉ」
赤葦はさっさとこの話題を切った。
「嫌い」なんて言葉が赤葦の口から出ただけでもドキッとした。赤葦はそんなに感情を表に出さない。ましてや嫌いだなんて、聞いたことがなかった。
これほどまでに意思表示するのだから、きっと何かがあったのだとは思う。もしかしたら今の生活環境にも影響しているのかもしれない。だけど俺はそれ以上何も聞けなかった。
聞くのが怖かった。
だって俺は―…
「じゃ帰りましょうか、木兎さん」
そう言われて渋々とその手を握る。
本当は言うべきことなんだろうけれど、言葉が出てこない。
赤葦に、言うタイミングを逃してしまった。
もしバレたら、俺も嫌われてしまうんだろうか。
そんな思いが頭の中をぐるぐると駆け巡っていた。
そう、だって俺は、赤葦のいう「金持ち」だから。
***
「ただいま」
「ぼっちゃま お帰りなさいませ」
「ぼっちゃまとか呼ぶなっての!」
玄関というよりはホールに近い。大理石でできた床がキラキラと光っている。
入口で待っていた「じい」は幼いころからの教育係りだ。過保護なとこが多いけれど、俺のよき理解者であり、相談相手でもあった。ぶつぶつ文句を言いながら、靴をそろえてあがる。一応、躾は一通りされたからこういうところは自然と身体が動いてしまうが、赤葦の家でやった時は、目ん玉飛び出るくらいに驚かれた。
『木兎さんが…靴をそろえてる…』
『なんだよ、そんなに変なことか?』
『いつも部活の時はそこらに放り投げてるくせに…』
『人ん家とはわけが違うだろ』
『そういえば食べ方も綺麗ですよね』
『箸とかはな。手掴みできるハンバーガーとかのが好きだけど』
『意外でした』
『そーか?』
そんな会話をしたことをふと思い出す。赤葦には意外だと言われたけど、悪くないって顔してたから、まぁいっか。と思ってたんだっけ。
「まったく、ぼっちゃまは昔から変わり者でいらっしゃる。送り迎えも嫌がりますし、このじいや、いつもぼっちゃまには この木兎財閥の跡取りとしてふさわしい生活を…」
「ずぇっったい来るなよ!?黒塗りのベンツで送迎なんて死活問題だ!」
下校時に黒塗りのベンツでも来ようものなら赤葦のドン引きした顔が目に浮かぶ
ぶるぶると寒気が背中を襲った。
「なぜ送迎を嫌がるのか…」
「友達の目とかあんの!!」
「そうは言っても、ぼっちゃまはなかなかお家にご学友を連れてきてくださらない」
「…それは、」
「じぃは心配で、心配で」
「あー、いつかな!いつか!」
じいを適当にあしらって、部屋へと戻る。
俺の部屋は割とシンプルな方だ。この家の中では。
30畳くらいの部屋にキングサイズのベッド。
ソファー、テレビ、本棚、机。まぁそんなところだ。
ベッドに寝転がって天井を見上げる。
目を閉じると、今日の赤葦の言葉が思い起こされた。
謙遜とかでなく、客観的に見ても、俺の家は金持ちだと思う。
幼いころ金持ちなことが嫌だった。
ずっと笑っていなければいけないパーティーに駆り出され、外では遊べない。
習い事はたくさんやらされる。躾は厳しい。
ある日ぶちキレて家出したら、それからは親が考えて俺を自由にしてくれたんだっけ。
勉学と、たまにあるパーティーの出席、それさえなんとかしたらいいって。
割とあっさり言われて拍子抜けしたことをよく覚えてる。
両親が嫌いなわけじゃない。仲だって別に悪くないと思ってる。ただそんなにべたべたはしない家だ。
二人とも忙しいし、家族で飯食ったのなんていつのことだったか、もはや記憶にない。
親父はほとんどホテル暮らしだし、母親は海外飛び回っている。そんなんだから、俺は赤葦の家に行った時にすげー感動したんだ。みんなで食う飯って、ほんと美味いって思ったから。
俺は何不自由なく暮らしているから、俺が赤葦を羨ましいと言ったらあいつはどう思うかわからないけれど、俺は純粋に羨ましく思った。
あったかい家庭というものにあこがれていたから。
こんな高校生にもなって、恥ずかしいと思われても仕方ないが夢なんだからいいだろう。
赤葦とあったかい家庭をつくりたい。毎日飯食って、忙しくても会う時間作って。
休日はずっと一緒にいて、たまには一緒に飯作って。
そんな夢を見ている俺は、いまさら赤葦を手放す気なんて一ミクロもなかった。
だけど、
「金持ち嫌い…か、」
いつかはバレてしまう。
そう思ったら、きっと俺の口から伝えた方がいいのはわかってる。
わかっていても怖かった。
「赤葦…」
嫌われる可能性が1%でもあることに、俺の足はすくんで動けなくなってしまっていた。
***
「あ、赤葦、あれ咲いてんぞ、食える草!」
「あ、ほんとだ。というか、木兎さんよく覚えましたね。」
「卵と天かす買って丼めしにしようぜ!」
「またうちで食べてくつもりですか」
「手土産に卵買ってく!米はあるよな?」
「そうじゃなくて…家で食べた方が美味しいと思いますよ?うちみたいに味付けだって薄くないでしょう」
「赤葦の味付け好きだよ!それに飯ってさ、みんなで食った方が美味いじゃん!」
「もう、仕方ないですね、」
赤葦はなんだかんだ言って、俺が食べにいくことが嫌じゃないと思う。
仕方ないといいつつ、どこか嬉しそうに見えるのは自惚れなんだろうか。
近くに咲いていた真っ白い花を摘んで、赤葦の髪の毛にさした。
赤葦は、なんですか。と言って首を傾げている。
「うん!似合う!」
「木兎さんって、よくこういう乙女チックなことしますよね」
「そうか?」
「似合わないですね」
「なっ!!おまえ馬鹿にしてね?!」
「してませんよ」
そう言いながらも、赤葦はその花を外さなかった。
こういうところが好きなんだ。
「あらあら、光ちゃんいらっしゃい」
「お邪魔します、ばーちゃん今日たまご丼食おうぜ!」
「まぁまぁ、豪華ねぇ」
「俺が作るんじゃねーけど!赤葦っ飯――っ!」
「はいはい、ちゃっちゃと作るんで。ばーちゃん悪いけど木兎さんよろしく」
「嬉しいねぇ、光ちゃんばーちゃんに部活の話聞かせてくれるかい?」
「お!聞いてくれよ、この間俺のスパイクがバシッて決まった時にさ!!!」
ばーちゃんは俺たちの学校の話をすると結構喜ぶ。
それもそうだろう。自分の孫の話だ。
ほぼ俺の武勇伝の話しかしてない時もあるけど、ばーちゃんはそれでも楽しそうに俺の話を聞いている。
それが嬉しくて俺も身振り手振りつけて話をしていたら、「家が壊れます」と赤葦に突っ込みをいれられた。
そんな俺たちのやり取りを見て、くすくすと笑うばーちゃん。
「光ちゃんみたいなお友達がいるなんて、あの子も幸せね」
「そうかー?俺怒られてばっかだぞ、ばーちゃん」
「あの子が他人に怒るなんて珍しいことよ。いつもいつも無理して…ほんと優しい子なの」
うん、知ってる。
赤葦は本当にいい奴だ。どれだけ苦しくても泣き言一つ言わないし、涙も見せない。
いつも周りを気遣って、努力している。そんな赤葦が誇らしかった。
だけどこの時の俺は何もわかっちゃいなかった。
赤葦がどれだけ無理していたかってことに。
***
「赤葦…!」
赤葦が倒れたと報告があった時は全身の血が引いた。慌てて保健室にいくと、目を閉じた赤葦が横になっていた。その近くまでいき、呼吸してることに安堵してその場に座り込んだ。
よかった、生きてる。
そんな当たり前のことに涙しそうになった。
「あら、木兎くん。そっか、赤葦くんは部活の後輩だったのね、」
「先生、赤葦は…」
「過労でしょうね。学校側からは許可をもらってたみたいなんだけど、部活の朝練の前に新聞配達の仕事をしてたのよ、赤葦くん」
「部活の前に?!それって4時とかじゃ…」
「金銭面のことで仕方なくってことだったみたいで…週5日でやってたみたいなの。」
「こいついつもすっげー勉強もしてんのに…」
「あんまり大人に甘えない子だものね、赤葦くんは。たまに自習があるって時は、ここで寝かせてあげてたんだけど…それでも、最近は随分と無理してたみたい、」
「そんな…」
俺は拳をぎゅっと握りしめた。血が出そうなくらいに。
悔しかった。
ずっとそばにいたのに気づけなかったなんて。
もっと無理矢理休ませればよかった。
帰ってからは勉強して、成績落とさないようにして…、飯も作って…ばーちゃんの介護して、そんで朝から働いて…そんなん身体壊すに決まってんじゃねーか
赤葦が朝練を休んだことなんて一度もなかった。
こいつは、どこまで強いんだよ。
俺、赤葦の恋人なのに。
こいつに何もしてあげれてねーじゃん。
悔しくて、悔しくて唇を噛んだ。
先生が赤葦の教室に言って荷物をとってくると言って出ていった後も、ずっと身体を震わせていると、赤葦がゆっくりと瞼を開けた。
「赤葦…っ!」
「あれ、俺なんで…」
「バカ野郎!!!倒れたんだよ!!なんで、こんなになるまで…っ」
「木兎さん、」
赤葦を責める資格なんてない。馬鹿なんていう資格もない。
俺の方がもっと馬鹿だ。
こいつが、こういう奴だってわかってたはずなのに、何もわかっちゃいなかった。
「心配させてすみませんでした」
「……」
「なんで黙ってるんですか、何か話してくださいよ」
「無理すんなよ、」
「無理じゃないですよ」
「…ッぶっ倒れて無理してないとかふざけんなよっ!!」
「…―木兎さん、」
赤葦の身体に覆いかぶさってその身体をつぶさないようにして抱きしめた。
本当は骨が折れそうなくらいにぎゅうぎゅうに抱きしめたい。だけど今は優しくしなきゃいけないという心が勝った。
「心臓止まるかと思った…っくそ」
「ごめんなさい…」
「朝練前に働いてるとか知らなかったぞ、このバカ」
「すみません」
「何で言わなかったんだよ、」
そう訊ねると、赤葦は腕で自分の目を覆った。絞り出すかのようにして出されたその声が、いつもの冷静な赤葦の声じゃなくて、ドキッとする。今にも泣きそうな声に心臓が震えた。
「言ったら反対されそうでしたし…。俺が決めたことですから。コンビニのバイトにしようかとも思ったんですけど…部活やめたくなくて朝のバイトにしました…辛くてもきつくても…バレーやりたかったんです。木兎さんたちと。もっと。ずっと。」
黙ってて、ごめんなさい。
その言葉に涙腺が決壊してしまった。
悔しくて、嬉しくて、腹が立って…自分に。気づけなかった自分に。
世界中で一番好きなやつを守れなかったことが悔しくて、ぼろぼろと涙が零れ落ちた。
「木兎さん、」
「っぐす…俺もやる」
「へ」
「明日から俺も働く、だから赤葦は週に3日は休め」
「ちょ、そんなこと」
「決定だ!!今度こんなことあったらタダじゃおかないからな!少しは甘えろよ!お前は俺の恋人だろ!!全部一人で抱え込んでんじゃねーよ!俺はお前にまかせっきりで頼りっぱなしで、ほんと頼りないかもしんねーけど、好きな奴がこんなん頑張ってんのに何もしないでいられるほどガキじゃねーよ!!」
「……っ」
俺にも少しは頼れよ。馬鹿だけど、俺だってお前のために何かしたいんだ。
こんなになるまで、無理させたくない。
だから、独りで背負うなよ、赤葦。
涙でぐちゃぐちゃだったけど、そう伝えると赤葦は唇をキュッと結んだ。
「木兎さん…気持ちは嬉しいです。でも、お金をもらうわけには…」
「いい、食費としてもらって。毎日じゃねーけど、俺また赤葦の家で食うし…余ったのは足しにして。ばーちゃんの薬代とか。俺もばーちゃん好きだから。」
「……でも、」
「赤葦のかーちゃんもばーちゃんも、望んでるのはお前のしあわせだ。こんな風に身体壊してほしくいないに決まってる」
「…っ」
「だけど、お前が働かなくちゃいけないこともわかってる…だったら俺に甘えろ。俺だってめちゃくちゃに稼げるわけじゃないけど、お前と同じくらいに働くことならできる。つかもう決めたから。お前の都合なんて知らねーし。俺がやりたいようにやるから。」
「…強引ですよ」
「知ってるだろ、俺の性格」
「…はい」
「俺お前のこと一生離すつもりねーから。いつか家族になんだからいいだろ」
「…っ!こんなところでプロポーズしないでくださいよ、」
赤葦は照れていたけど茶化すつもりはなかった。俺は本気だ。
もう絶対にこいつから目を離したりしない。
二度とこんな風にさせないためにも、これから先俺がずっと、こいつを守る。
「いつかちゃんと言う。指輪もって、独り立ちして、ちゃんと結婚を申し込む。それまでお前は俺の婚約者だから。結婚の約束してんだから他人じゃないし、バンバン口出すからな。他のとこなんて行かせないし、別れるとか絶対ない。」
「…木兎さん、結構モテるのに」
「だからなんだよ」
「俺でいいんすか…、」
「赤葦じゃなきゃ意味ない。俺はもう赤葦なしじゃ生きてられないんだ」
まっすぐに目をみて、そう言えば、赤葦は、頬を赤く染めた。
珍しく弱弱しい顔になっている。眉を寄せて、いつもの鋭い瞳からは涙が零れ落ちそうだった。
「仕方ないですね、もう」
「おう」
「でも無理しないでくださいよ」
「そのセリフ百万回自分に言い聞かせろ」
「木兎さん、」
赤葦が手を俺の首に回したのを合図に、俺たちはゆっくり唇を重ねた。
学校の保健室で、大胆な行為だとは思ったけど、止まらなかった。
赤葦の息が切れないうちにそっと唇を離して額を寄せる。
「一個だけ甘えてもいいですか」
「なんだよ」
「もう一回、お願いします」
「…おう」
我が儘じゃねーよ。って突っ込んでやろうかと思ったけどやめた。
もう一度口づけながら、赤葦の頬と頭を撫でる。
どうか、この甘え下手な恋人がもっと甘えてくれますように。
そう願いをかけながら。
***
いつか言わなきゃいけない。
そう思っていた時期は突然ときた。
「うわ…この雨じゃ家に帰れませんね」
「すげーな、これ」
学校を出てすぐの公園で雨宿りする赤葦と俺は突然の雨に見舞われた。
残念ながら傘も意味がないほどに横やりの雨だ。
まるでバケツをひっくり返したかのような勢いに圧倒される。
「台風…夜中って言ってたんですけどね」
「ばーちゃんは?あの家に一人じゃまずくね?」
「隣の家の人がばーちゃん避難させてくれてるから大丈夫みたいです」
「おばさんは?」
「仕事場から動けないだろうし、仕事場に泊まるでしょうね」
「そっか、その方が安心だな」
問題は赤葦だけか。俺の家はここから走って5分だけど、赤葦の家はここから30分はかかる。
この台風じゃ、しばらく止みそうもないし。
なによりも寒くなってきた。
こんな雨の中、赤葦をこれ以上外にいさせるなんてできねー。
俺は赤葦の手をとって、走った。
「ちょ、木兎さん・・・?」
「俺ん家行くぞ」
「え、」
「このままだと風邪ひくだろ。雨やまねーし、今日は俺の家に泊まれ。」
「でも、迷惑」
「迷惑じゃねーよ。…でもな、頼むから嫌わないでほしい」
「…木兎さん?」
そっからは黙って走った。
赤葦の手をぎゅっと強く握って。
そして家に着いた時、俺は怖くて後ろが振り向けなかった。
そのまま扉をあけて中に入る。
赤葦の声は少し震えていた。
「ここ、」
「俺の家。ちょっとそこで待ってろ。」
「…木兎さん、」
「ただいまー!!じいー、タオルくれー!!」
「お帰りなさいませ、ずぶ濡れじゃありませんか。こういう日は呼んでくだされば即座に迎えに行きましたのに、ぼっちゃ・・・・・・・・・こちらの方は」
「…見てのとーり。」
タオルを持ってあらわれたじいが小言をピタリと止めて赤葦をじっと見つめる。
友達。ではないが、初対面で恋人というのも赤葦が困るだろうと思って、そう言ったのだが、案の定友達だと思ったじいは、歓喜の叫びをあげた。
「をぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおお!!!!!!!ぼっちゃまがお友達を連れて来られたぞ、皆の衆ーっっ!!!!!!!」
「バッ!!じぃ!叫ぶな!」
「「「「「「「「「「「「 ぼっちゃまーっっっ!!! 」」」」」」」」」」
ドドドドっと波のようにして現れた使用人たちに俺までもが引く。
休憩していたメイドたちまでもが一気に押し寄せてきた。
言わんこっちゃない。俺は頭を抱えた。
赤葦をチラっと横目で見ると、メイドに囲まれ いつもの無表情に輪をかけた無表情になっている。
完全に引かれたな…こりゃ。
「まぁ素敵な殿方!この方がぼっちゃまのお友達なのですね」
「…はぁ」
「大変!!ビショビショじゃありませんか!直ぐに湯の支度を、着替えと夕食の用意も!」
「あ、いえ、お気になさらず…」
「さ、こちらへ。鞄は私がお持ちいたします!」
「制服はすぐにクリーニング致しますわ!」
「タオルをお使いになって下さい!」
「あ、え、ありが…とうございます…」
俺の制止は虚しくも誰も聞いちゃくれなかった。みんな赤葦に夢中だ。
まぁ、さっさと着替えさせたかったからいいけれど…
(赤葦…目、見開いてだな)
驚くか。そうだよな…。
ずっと黙ってたこと、怒ってるかな。
騙すつもりはなかったけど…結果的にそうなるのか、これ。
「ぼっちゃまも、さ、湯浴みの方へ」
「あぁ…俺は使用人用のシャワーでいいや、あいつゆっくり浸からせてやりたいからさ」
「…左様で。かしこまりました。」
風呂から上がると、赤葦はもう俺の部屋へと案内されていた。
「食事の用意ができましたら、また呼びに参ります」と じいに言われ、軽く返事をして部屋の扉を閉める。二人きりの空気はやけに冷えていて、俺はごくりと息を飲み込んだ。
「木兎さん」
「…怒ってる?」
「なんでですか」
「黙ってたから。」
扉にもたれかかったまま、そう赤葦に聞く。
扉にいるのは、赤葦を逃がさないためだ。
こんなの、ただの悪あがきなのはわかってるけど。
俺が下を向いていると、赤葦がふーっと溜息を吐いた。
それにビクッと肩を揺らすと、赤葦の声が降りかかる。
「怒ってますよ。そんな遠くにいて…」
「え、」
「俺を湯冷めさせるつもりですか、木兎さん」
ん、と両手を拡げる赤葦。
こんなことをしてくれたのは初めてだ。心なしか耳が赤い気がする。
俺は迷いなくその胸に飛びついた。
反動で二人して後ろのベッドに倒れ込む。
キングサイズのベッドは男子高校生が二人倒れたところでびくともしなかった。
「嫌われるかと思った」
「嫌わないですよ」
その言葉に安心して、赤葦のことをぎゅっと抱きしめる。
「こんな金持ち見たことないです。俺が食べてたらすぐ俺にもくれってとってくし、寝相悪いし品もないし、いつも寝癖つけて遅刻ギリギリで、ブラックサンダーが好きで…情けないところばかりのくせに、コートの上じゃエーススパイカーで格好よくて…」
赤葦が俺の額にキスを落とした。それに驚いて目を見開く。
「俺が貧乏だって馬鹿にしたことないし、野草を採ってたら俺も!って一緒に採ったりして、初めは なんだこいつって思ったけど、そんな木兎さんに俺は惚れたんです。」
「今、惚れたって、」
「今更でしょう?」
赤葦がふっと笑った。その顔にくぎ付けになる。
「金持ちでも貧乏でも関係ない。あんただから、俺は隣にいるんです」
そんなことを言われたら、抑えようがない。
俺は我慢できずに、赤葦の口を塞いだ。
少し濡れた唇は、どこか厭らしくてそのすべてを奪いたくなる。
赤葦、赤葦、赤葦。
それしか考えられなくなる。
「んっ、ふ、…木、兎さ…」
「かわいい、赤葦…っ赤葦、んっ」
頭の後ろを掻き抱いて、角度を変えて何度もキスをする。赤葦の舌が赤く光り、熱を帯びていた。
「赤葦、すき」
「知ってます」
「赤葦のばぁちゃんも、おばさんもすき」
「俺もここの使用人の方達すきです」
「へ?」
「みんな、木兎さんのことすごく大事にしてるし…あったかい人達でした。」
「赤葦…!それ言っとく!多分、いや絶対!あいつらめちゃくちゃ喜ぶから!」
「やめてください。恥ずかしい」
「照れちゃって!可愛いな!赤葦は!」
「蹴り飛ばされたいんですか」
「やだよ。それよりもっとキスしたい」
「……どうぞ」
呆れた顔をしつつも、赤葦は受け入れてくれる。
仕方ないですね。が口癖の恋人はいつも俺を甘やかす。
「俺が金持ち嫌いだって言ったから、気にしてたんですね」
「…おう」
「まぁ予想外の金持ちでしたけど…布団ふかふか」
「赤葦に嫌われたくなかった」
キングサイズのベッドにふかふかとうまっている赤葦をギュッと抱きしめてそう呟くと、赤葦は一呼吸おいて、俺に話をしてくれた。ずっと聞けなかった、赤葦の父親の話を。
「俺の親父、ほんとは生きてるんですよ。」
「そうなのか?」
「それで死ぬほど金持ちなんです、ほんとこの家みたいな感じ」
「……」
「俺、親父のせいで金持ち嫌になったんです。すぐ金で解決しようとして…金のことしか頭になくて。今も母さんとは連絡とってるみたいなんですけど、せめて金の援助をさせてくれって…また金かよ。って思ってしまって」
「…親父のこと嫌いなのか」
「完璧に…嫌いに、なれたらよかったんですけど、多分そこまで嫌いになれてないことが余計に辛いです。ただあの人は金のことばかりだから、金がなくても俺はばーちゃんと、母さんがいて、木兎さんがいる今が一番しあわせだと思ってるんで…そういうのがあの人にも伝わればいいなとは思います」
「赤葦は優しいな」
「そんなことないですよ。捻くれてて面倒です」
「知ってる」
「否定してくださいよ」
「大好きだ」
「……」
「赤葦がほんと好きだ。頑張ってるところも、弱音はかないところも、気遣いなところも、えぐい突っ込みいれてくるところも、優しいとこも。ぜんぶ。」
赤葦の両頬に手をあてて、コツンと額をくっつける。
すると、下から手を持ち上げて、赤葦も俺の両頬を手で包み込んだ。
「俺も、好きです」
「初めて言ったな」
「そうでしたっけ」
「そうだよ!」
「でも知ってたでしょう。」
「……まぁな」
お互いにニッと笑って、唇を重ねた。やわらかなベッドの上に押し倒して、赤葦の首にキスをする。
赤葦は鼻にかかった甘い声をあげた。
「…っん、」
「シテもいいか…?」
「初めてがこんなにいいベッドだと緊張しますね」
「茶化すな」
「緊張してるんです、」
「…赤葦、俺とまんねーかもしれねーけど、優しくするから」
俺の緊張も察したかのように、赤葦がぎゅっと俺を抱きしめた。
赤葦の鼓動の音が聞こえる。
俺と同じくらい速く高鳴っていた。
「木兎さん、ありがとう」
「やめろよ、そういうの反則」
「今、言いたかったんで」
「くそ…っ、一生離してやんねーからな」
「あんたの鳥籠なら喜んで入りますよ」
そうして赤葦の服の中に手を差し込んだその時、
コンッコンッ―…
「ぼっちゃま、食事の支度が出来上がりましたが…どうされますか?」
ビクッと肩を揺らした俺たち。
数秒間止まって、ごくりと息をのんだ。
俺は赤葦とゆっくり目を合わせる。
あまりのタイミングの悪さにおかしくなって、二人して吹き出した。
「はははっ、わりーわりー!今行く!」
「まずは腹を満たしましょうか」
赤葦の手を取って、部屋を飛び出す。
メイドたちにはさっきの赤葦の言葉を言ってやろう。
赤葦は照れるだろうけど、後で構い倒して許してもらうからいいんだ。
また部屋に戻ったら今度は扉に鍵をかけよう。
じいに朝まで誰も通さないように言っておかないと。
外は台風。声をどれだけ出しても平気だ。
「赤葦、戻ったら覚悟しとけよ」
こっそり耳打ちすると、赤葦は面食らった顔してたけど すぐにいつもの表情に戻った。
「光太郎さんの方こそ」
「俺はいつだって…へ?今、名前…」
「一抜けします」
「あっ!おい待てって!!」
するりと手を離して先を走る赤葦の耳はほんのり赤く染まっていた。
随分と可愛いこと言ってくれるじゃねーの。
本格的に寝かせらんないな。と思いながらも赤葦の背中に手を伸ばす。
赤葦が俺の腕の中に入るまで、あと一歩。
END