フランスのあれこれ
「えっと・・・フランスって結構食べ物で有名なものが多いみたいだな、チョコとかチーズとか、あとキャビアなんかもお勧めに挙がってるぞ」
調べていくとでてくるその内容はかなりあり、その中でもお土産に適している商品なども紹介されている
中でもチーズなどははずれがないという話だ、長持ちするうえに独特のうまみがあるのだとか
「へぇ、確か高い奴だよなキャビアって、なんだっけ?何の魚のヒレ?卵?」
「チョウザメの卵ね、キャビアはそれを塩漬けにしたものよ」
恐らくフカヒレと間違えていたのだろうか、陽太の記憶は本当に頼りにならないがすぐに鏡花が正解を教えていく
フランスでキャビアが有名だとは知らなかったが、少なくとも候補の一つにはあげておくべきだろう
「あ、あとエスカルゴなんてのもあるぞ、俺食べたことないな・・・」
「え、エスカルゴってたしかカタツムリだよね・・・?食べる勇気ないなぁ・・・」
極論してしまえばエスカルゴは確かにカタツムリだが、しっかりと食用に養殖されたものである、普段自分たちが見ることが多い野生のカタツムリとは一線を画するものだ
「他には何があるんだ?パンにクッキー、ジャム・・・食い物ばっかだな」
「他にも服とかブランドものとかもあるみたいよ、ほらここ」
いつの間にかパソコンの周りに集まってフランスにいったい何があるのかというのを全員で調べ始めてしまい、どんどんとフランスの土産物などに詳しくなっていく中いくつかの建築物にも目が行くようになっていた
「あ、エッフェル塔ってフランスだったのか・・・知らなかった」
「あんたそれくらい知っておきなさいよ・・・凱旋門とかは有名よね、後はモナリザとか?」
時間的に見る余裕はないだろうが、いつか観に行ってみたいものである、日本などとは違う歴史深い建物がいくつもあるため見て回るのはいくら時間があっても足りないだろう
「そう言えばフランスって言ったらあれじゃね?ツールがあるじゃんか、今は時期違うけど」
「ツール?」
陽太の言葉に明利だけではなく全員が首をかしげる、ツールと言われてもそれだけではわからない、というか陽太が知っていながら自分たちが知らないことがあるというのが地味に驚きだった
「ツール・ド・フランスだよ、まぁ要するに自転車のレースだな」
「自転車・・・あぁ、ひょっとしてロード自転車の?」
ロード自転車とはスポーツ用に作られた自転車のことである、完全に市街地などの舗装された道を高速で走ることを目的にされ、軽い車体と普通の自転車とは違う形状をしているのが特徴である
荒れた道などには弱いが、しっかりと舗装された道では自動車に匹敵する速度を出すことができるほどの自転車だ
「そうそう、ツール・ド・フランスは世界最大の自転車レースだからな、ネットとかにハイライトがあがってるぞ」
「なるほど、要するにスポーツか、フランスって名前が入ってるだけあって現地はさぞ盛り上がるんだろうな」
そらもうすごいぜと陽太は若干興奮している様だった
体を動かすことが好きな陽太からすればスポーツなどには少なからず憧れがあるのだろう、自転車競技というと競輪などを思い浮かべるかもしれないが、ロードバイクで行われる競技は普通の自転車のそれとははるかに違う量を走る
一日百キロ走るのは当たり前、レースによっては数日、あるいは数十日にわたって延々と走り続ける競技もある
世界で一番有名な自転車の大会という事もあってその規模はとてつもないらしい
「いつか欲しいんだよロード自転車・・・あれめっちゃ高いからな・・・」
「お前、前に俺を捕まえる一件で依頼受けてたろ?その金じゃ足りないのか?」
以前静希が冤罪をかけられたときに陽太をはじめ、鏡花や明利は警察からの依頼を受けて実習とは違う形で、報酬を得ているはず
その金額がどの程度のものだったか静希は把握していないのだが、自転車程度であればそれだけで十分に買えるのではないかと思えてしまう
「無理無理、ロードって安い奴で十万くらいするからさ、まだ手が出ない」
「じゅ!?十万!?そんなにするの?」
横で聞いていた鏡花もさすがに驚いたのか、静希の横からパソコンを操ってロードバイクの値段を調べだす
すると確かに何十万するような車体もあったり、中にはフレームだけで百万ほどするようなものまで見つけられた
陽太が手が出ないというのも納得の値段である
「しかも周辺機材とか買うとさらに金がかかるからな、買えるのは就職した後だと思うぞ、ヘルメットにライトに空気入れにクリートに・・・数えればきりがねえよ」
「はぁー・・・まぁスポーツ用品って総じて高いものだけど・・・まさかそれほどとは思わなかったわ」
スポーツと言うものにあまり興味のない鏡花からすれば自転車に何十万もかけるという思考そのものが理解できないために唖然としてしまっていた
それは静希や明利も同じである、ママチャリであれば安いもので一万もあれば買えてしまうためにわざわざ高い物を買うという発想がまず生まれないのだ
高い分良いものであるという事だろうが、流石に買おうとは思えなかった
「ていうか、お前だったら自転車より能力使って走ったほうが速いだろ、なんでわざわざ?」
静希のいう通り、陽太は能力を使った状態で全力で走れば車より速い、それこそ自転車なんて目じゃないほどに速い
スピードを出す乗り物を好む人というのは多くいるが、自分自身の力で高速で走ることができるのになぜそれを求めるのかがわからないのだ
「違うんだよ静希、そう言うんじゃねえんだ、そりゃ能力使えば車くらい追い抜けるけどさ、能力使わずに追い抜いてみたいって思わないか?」
「思わない」
「思わないわね」
「思わないかな・・・」
まさか三人全員に否定されるとは思わなかったのか、陽太はショックを受けて項垂れてしまっている
無論陽太の言いたいことだってわからないわけではない
能力に頼るのではなく、自らの身体能力だけで結果を残したいという気持ちは十分理解できる
能力者は基本スポーツなどの公式戦には出場できない、競技によっては観戦すらできないようなものさえある
だが能力者だって人間だ、スポーツと言うもの自体に興味はあるし、やってみたいという気持ちだってある、競い合って結果を残したいという気持ちはある
そんな中で陽太が見つけたのがロードバイクだったのだろう
公式戦に出ることはできないが、普通に公道を走るくらいはできる、その中で自らの身体能力だけで車に打ち勝つことができるという『結果』を残すことができる
自己満足かもしれないが、能力者だからと言ってスポーツをやってはいけないという事はない、陽太なりに考えて、見出した自分なりの目標なのだろう
「まぁ、この形をそのままっていうなら作ってもいいけど・・・さすがに値段が値段だしなぁ・・・」
「鏡花なら作れるだろうけど・・・この値段のもの作ったらさすがに問題だろうな、やめておいた方がいいと思うぞ」
鏡花の変換の能力を使えば、店などで並んでいる自転車を複製するだけで済むのだが、価値のある素材は道具などを能力を使って作成するのは原則禁止されている
それこそ鏡花ならそのあたりの岩からでも金などを作ることができるだろうが、仮に変換能力者たち全員がそんなことをすれば経済が破綻する
そこまで価値の高くないものであれば誤魔化すのも容易だが、さすがに万を超える物品となると誤魔化せるかは怪しいものだ
しかも陽太が使おうとしているのは公共の場所で使うもの、もし発覚すればれっきとした犯罪になってしまうのだ
「わざわざ鏡花に作ってもらうつもりはねえよ、自分で金貯めて買うって、それに自分で買ったものの方が思い入れが深くなるだろうしさ」
そう言うものだろうかと静希と明利は顔を見合わせる
鏡花は陽太が言いたいことも、その考えも理解できたのかふぅんと呟いてパソコンの表示を自転車からフランスの詳細に戻していく
思わぬところで話がそれてしまったため本題に戻すことにしたのである
「とりあえず自転車のことは置いておいて、今回行く場所の地図とかも出しておいた方がいいでしょ?場所は?」
「あー・・・ここだ、今地図で出す」
資料に記載されていた住所を入力しその周辺の地図を表示する、パリの郊外というだけあってそれほど高層ビルが周囲にあるというわけではなく、広い敷地とそれなりに便利な立地にある様だった
資料には軍が検問を敷き、封鎖する予定の道の場所なども記されており、とりあえず地図を印刷した静希達はその場所に印をつけていくことにした
さすがに機密という事だけあって、研究所のどこで召喚をするかなどの情報は記されていなかったが、その周辺にあるものなどは把握できた
「・・・もし静希がこの研究所に侵入するなら、どういう手を使う?」
「ん・・・この辺りを封鎖するんだろ?だったら・・・直上から降りるか、あるいは地下から行くかだろうな」
以前にも使った地下での移動、郊外とはいえ下水などは完備されているだろうからそこからの侵入も考えられる
静希の場合なら邪薙とフィアの協力の下、上空からの落下という手も使える、相手が同じ手を使えるかはさておき、考慮しておいて損はない
「正面突破の可能性は?」
「ないとは言い切れないな、悪魔の力を前面に押し出せば軍隊くらい押し破れるかもだし・・・それに何も軍全員を敵に回さなくても高速で移動して突破することだってできるかもしれない」
いくらその場にたくさんの軍隊が待ち構えていようと、彼らが認識する前に突破し、そのまま高速で移動して研究所まで向かってしまえば軍などいないのと同じことだ
相手の能力がわからないために、一言突破と言っても様々な方法があるため静希達は頭を悩ませた
特にただの能力者ではなく、悪魔の契約者であるというのがネックだ、何をしてくるかわからないような人間がやってくるのだから注意はしておいて損はない
今回配備される軍がどれほどの練度で、戦闘に対してどれほど対応できるかというのも気になるところではある、悪魔同士の戦いになればあまり役に立たないことは予想できるが、足止めくらいはしておいてもらいたいものである
「・・・っと・・・これくらいかしら・・・」
静希と鏡花が念入りに話し合った結果、いくつかの相手の侵入経路とその方法の予測、そしてそれらに対する対処法を書き記しておいたのだが、話が盛り上がり随分と量が多くなってしまった
目の前に悪魔の契約者がいることで、実際どんなことをやるかという想像がある程度掴めるというのもあるが、侵入や潜入、到達という目的に対して静希は恐ろしいほどまでに様々な案を出してくる、これほどまでに大量の侵入方法を考えるあたり、いつかこの案が実行されそうで怖いものがある
「こんだけ予想しておけば、大体は反応できるだろうと思うけど・・・あとは相手の悪魔が格上じゃないことを祈るばかりだよ」
ちらりとメフィの方へ視線を向けると、侵入経路及び方法の考察に入った時点で考えることをやめた陽太と話についていけなくなった明利を巻き込んでゲームをやっているメフィの姿が目に入る
あの二人にも少しでも話し合いに参加してほしかったのだが、頭脳労働は静希と鏡花の仕事、これも仕方のないことだろうと諦めることにする
「ところで、配置はどうするの?私達が決められることじゃないかもしれないけど、あんたとエドモンドさんの場所くらいは・・・」
「無理だろうな、ていうか本来エドは今回のことに参加するってことすら向こうには教えてないんだ、だから伏兵として待機してもらおうと思ってる」
静希がエドのことを教えていないのは勿論わざとだ、もし、今回の相手である悪魔の契約者が召喚実験に関わる人間の中にスパイのようなものを送り込んでいた場合、こちらの動きはすべてばれてしまうことになる
だが、こちらのほとんどの人間さえ把握していないような戦力がいればそれにも対応できる
ヴァラファールを引き連れているエドの機動力はかなり高い、場所さえ言えばすぐに駆けつけてくれるだろう
内側にも敵がいるという状況はすでに経験済み、自分が信用した相手以外はすべて疑うくらいでちょうどいいのだ
「だから鏡花たちもエドが来るってことは極力伏せてほしい、無駄に情報を出す必要もないからな」
「了解よ、あんたたちも分かったわね?」
鏡花は了承したが、その言葉に反応するのに陽太達は数秒を要した
「あぁ!?なにが!?今忙しいんだ後にしてくれ!メフィ!弾幕薄いぞ!」
「アイアイサー、メーリ!そこら辺只さんあるから気を付けて!あとそっちで芋ってる奴片付けて!」
「ま、待って!今配置につくから!」
三人そろってゲームに興じている状況に鏡花は額に青筋を作るが、この程度で怒ることもないだろうと深呼吸して気分を落ち着かせる
長い時間静希と考えを進め過ぎたせいで二人はだいぶ退屈だったのだろう、集中していたせいで後ろの音はあまり聞こえていなかったが、すでに一時間以上ゲームで遊んでいる様だった
「ねぇ、メフィにゲームを覚えさせたのは失敗だったんじゃないの?」
「うん、俺も最近そんな気がしてる」
昔と違い、現代においての娯楽の数はかなり増えている
テレビではバラエティー、ニュース、ドラマ、アニメ、ドキュメンタリー等々あげればきりがなく、紙媒介のものでさえも漫画や小説、新聞に雑誌など多種多様だ
しかもそれぞれ一つずつの数が半端ではないほどに多い、それは勿論今メフィがやっているゲームも同様だ
RPG、シューティング、シミュレーションにストラテジー、パズルにパーティ、レースにクイズ、一つ一つジャンルを分けるだけでも一苦労である
メフィが最初やったのはパーティーゲームやシューティングゲームだった、最初こそコントローラーでキャラを動かすという動作に慣れなかったものの、そこは長年生きている悪魔というだけあって、一度慣れてしまえば随分と手慣れた手つきでコントローラーを動かすことができている
無論最初に比べてうまくなったというだけで静希や陽太などやりこんでいる人間に比べればまだ粗削りな部分はあるものの、当初に比べれば格段な進歩だ
そして上達してからようやくその面白さを掴んだのか、難易度の低い低年齢層用のゲームから少しずつ難易度を上げ始め、最近ではFPSに手を出している始末である
テレビにかじりついていた時期とはまた別の意味でニートとしてのレベルが上がっている気がしてならない
なんで人型の悪魔なんかと出会ってしまったのだろうかと静希は後悔している、これでヴァラファールのような獣型の悪魔だったらゲームなど勧めようとすら思わなかっただろう
「ちなみに一つ聞きたいんだけど、まさか夜もずっとやってるの?」
「・・・どうだろう・・・オルビアどうなんだ?」
実際眠ってしまっている静希は与り知らないところだが、寝るという事を必要としないオルビアなら何か知っているかもと話を振るが、彼女は心苦しそうな表情をする
「・・・実はヘッドホンにして夜な夜なゲームをしていることもあるのです、さすがに電気代がかさむので週に二、三回程度ですが・・・」
オルビアの証言に静希も鏡花もため息をついて項垂れてしまう
娯楽を覚えさせてしまった悪魔はとことんまで堕落するという事を学習した静希、もし次に新しい悪魔と契約することになっても絶対にゲームは勧めないようにしようと心に誓うのだった
誤字報告が十件たまったので三回分投稿
自分は趣味でロードをやるのですが、マジで金が飛びます、十二万くらいのを買ったのですが周辺機器をそろえると合計で十七万くらいに・・・本当に働いていないと手が出ない物品です
これからもお楽しみいただければ幸いです