【大河べらぼう】演出・大嶋慧介インタビュー「佐野はなぜ刀を抜いたのか」 - リリース情報 - 大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」 - NHK

大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」

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【大河べらぼう】演出・大嶋慧介インタビュー「佐野はなぜ刀を抜いたのか」

佐野と意知の騒動が描かれた第27回の演出を担当した大嶋ディレクター。刀を抜くに至った佐野の心情や、かいま見えた新たな意知の一面、身請けをかなえた誰袖の素顔など、綿密に描いた人物像と収録裏話、そして今後の見どころを聞きました。

📺佐野と意知の騒動が描かれた第27回はこちらから見られます《7/20(日) 午後8:44 まで》※別タブで開きます

 

佐野の感情の変化を緻密に表現

第27回は、佐野(政言)が(田沼)意知に斬りかかるという衝撃的なシーンで終わります。なぜ佐野は刀を抜いたのか…そこに至るまでの彼の感情の変化をどう描くかがこの回の大きなテーマでした。

佐野は初め、意知を信頼していました。しかし、意知に対する世間の評判は悪く、周りから入ってくる情報も悪いものばかり。意知を信じたい気持ちと、自分は陥れられているのかもしれないという疑いの気持ちの狭間(はざま)で、彼はずっと揺れ動いていたわけです。そこに、社会的に報われないむなしさや生きづらさ、田沼家に対するコンプレックスや嫉妬、さらには、父・政豊との関係性や現代のヤングケアラーのような重圧など、いろいろなことが重なってしまった。しかし、そうした境遇の人だからといって人をあやめるのが当然というわけではありません。結局、この事件が起きた理由は分かるようで分からないし、解釈も本当に難しいです。でも、僕としては佐野を、突発的に狂人になった、ただの人殺しにはしたくなかったですし、理由はこれです!と、分かりやすくしたくもなかった。なぜこうなってしまったのだろうと、少し疑問を残すような描き方になるよう、彼が追いつめられてしまった要因となるものをきちんと表現し、積み重ねていきたいと思っていました。

佐野役の矢本(悠馬)さんには、事前に僕の考えを素直にお話しさせていただきました。矢本さんも、たぶん相当考えて、緊張の中、収録に臨まれたと思うのですが、佐野の感情を見事に表現してくださって、手ごたえを感じながら収録していくことができました。  

意知が初めて見せる人間らしさ

米の値を下げようとする件や誰袖の身請けなど、第27回の意知は実に生き生きとしていましたよね。“田沼意次の息子”ではなく“田沼意知”として初めて自ら動く重要な回なので、これまでの“冷静沈着で頭の回転が速く、プリンスのようなたたずまいの意知像”に、今まで見たことのなかった人間らしい一面や表情をどうプラスしていくのか。そのさじ加減や表現方法については、宮沢(氷魚)さんとシーンごとにたくさん話し合いました。きっと視聴者の皆さんには、意知って、こういう表情もするんだなとか、こういう一面もあったんだなと、誰袖と同じ目線で新たな意知を発見していただけたのではないでしょうか。

実は清廉潔白とも言いきれない意知が、嫌味なく爽やかに見えたのも、宮沢さんの表現力があったからこそだと思います。本当にすてきな役者さんだと思います。  

丁寧に描いた誰袖のかわいらしい素顔

意知とともに新たな一面を見せるもう一人の人物が誰袖です。誰袖は、腹黒でちょっとつかみどころがなくて小悪魔的。でも、この回で僕が描きたかったのは、これまで見せてきた色気ではなく、素のかわいらしさでした。

身請けが決まり、吉原を去ることになった誰袖が蔦重に見せた表情は、もう取り繕わなくていい、仮面をかぶらなくていいという解放感と、愛する人のもとに行くことができる喜びに満ちた、彼女が初めて見せた表情です。吉原の花魁(おいらん)・誰袖ではなく、一人の女性としての素顔がのぞくこのシーンは、福原(遥)さんもとても大切に思ってくださって、所作一つ一つにも気を配っていらっしゃいました。蔦重に別れの挨拶をしながら顔に触れるとき、最初は片手だったのですが、福原さんが両手のほうがいいのではとアイデアを出してくださり、そういったやりとりを重ねながら、丁寧に作っていきました。

もう1つ、誰袖の素のかわいらしさを全面に出したいと思っていたのが、意知の手紙を読むシーンでした。実はこのシーンは、長時間ある収録の最後に撮ることになっていたので、体力的にも大丈夫かなと心配だったのですが、福原さんはすばらしいお芝居をみせてくださいました。こちらからお願いしたことは何もなく、福原さんがご自身で解釈して表現された涙です。収録を見ていた助監督さんが、誰袖史上いちばん好きなシーンだと言ってくれたのですが、すごくうれしかったですね。福原さんの集中力とすばらしいお芝居に助けていただいた思い出深いシーンになりました。  

桜に反映される登場人物の心情

「べらぼう」には桜がたびたび登場します。これは全て森下(佳子)さんの脚本によるものですが、特に第27回では、人物の心情に連動していろいろな場面で桜が使われています。

少ししつこいほどに枯れた桜の木を映しました。執拗(しつよう)なまでに花を咲かせることにこだわっていた佐野親子の心情とリンクさせ、桜の木を悲劇の象徴としています。一方、誰袖の背景の桜は幸福の象徴として、彼女の最も幸せな瞬間を表しています。そのあと誰袖にはつらいことが待ち受けているので、ここが幸せのピークに見えるといいなと思って撮りました。

ほかにも桜は、雲助(田沼意知)が詠んだ狂歌にも入っています。『西行は 花の下にて死なんとか 雲助袖の 下にて死にたし』―。誰袖へ贈った愛の歌ではありますが、死を連想させるような不穏な空気を醸し出しつつ、花から桜、つまり佐野をも彷彿(ほうふつ)とさせるような歌で、初めて台本を読んだときは、複雑にからまるビジュアルイメージに衝撃を受けました。森下さんの書く本は緻密でいつも驚かされるのですが、われわれがあれこれ想像をふくらませられる余地も残してくださっているので、本当におもしろいんです。演出する立場としては難しさもありますが、毎回やりがいを感じています。  

後半もますます面白く

毎回多彩な方々にゲスト出演していただいてる「べらぼう」ですが、第27回では大名などが登城した際、部屋に案内する役目を担う表坊主役でナダルさんにご出演いただきました。表坊主は江戸城にやってきた大名を案内したりするお役目。顔がひろいため情報通で、知り得た情報を提供する見返りに大名たちから袖の下をもらって裕福になっていく場合もあったようです。ナダルさんに役の説明をすると「僕にぴったりですね、大得意です」とおっしゃっていました。収録には歩きや所作などを練習して挑まれていましたし、視線の置き場所などとても印象的なお芝居をしてくださいました。今後もまた登場してほしいですね。

物語は後半にさしかかり、楽しみにしていただきたいところはたくさんありますが、僕が思う今後の見どころは、蔦重がどう大人になっていくのか、人間的にどう変わっていくのかという点です。蔦重は、いわゆる普通のヒーローではありません。彼の人間臭い部分も出てきて、ますますおもしろくなると思います。

もう一人のキーパーソンは歌麿です。蔦重の変化に伴い、彼も変わっていきます。歌麿が喜多川歌麿になっていく様もかなり丁寧に描かれていきますし、染谷(将太)さんのお芝居もすばらしいので、ぜひ期待していただければと思います。

 

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