シャニマスの絵が如何にヤバいか 2
アイドルマスターシャイニーカラーズというソシャゲがあります。絵描き界隈では「絵がヤバい」ことで有名なゲームです。
シャニマスの絵のヤバさはその「ギチギチに固められたロジック」にあります。わかりやすく言えば、全力で印象操作しまくっている絵です。
前回の記事はこちら。
前回は「キャラ絵として順当にイカれている絵」の解説でしたので、今回は「キャラ絵として順当に凄い絵」の何が凄いのかの解説です。構図と構成と効果から来る視線誘導の鬼を体験してみましょう。
まず、キャライラストとしてのセオリーを網羅している素晴らしい絵です。ポップな黄色とピンクという強烈なベース色に、暗くない紫をアクセントとして加えることで地に足着いた安定感を与えています。もしメイド服がピンクだったらメリハリが消滅して、キャラのシルエットが曖昧になることは想像に難くないでしょう。
では準備運動に軽く構成からを見ていきます。
ただの左右ではなく対角線上で対比することで、画面全体を広く使って動きを表現しています。仮にこれを45度の傾きから0度に戻したらどうでしょう。途端にド安定な絵になって黄色っぽい「元気さ」が消滅するのがわかることでしょう。
キャラ絵の基本である三分割構図の左上に顔、左下に手と胸を配置して磐石の体制。また斜めにすると本来不安定にはなりますが、この絵は角度を45度に見えるようにしてあります。更に胸から顔にかけては垂直なので、画面が斜めでありながら均衡が取れているから不安定さがないというのもポイントです。
そしてよく見ると「ただの派手背景のキャラ絵」ではなく、後ろ姿のメイド服があるから「現実世界のメイド喫茶」というシチュエーションだということもわかります。「現実を切り取る」シャニマス絵の通底するテーマです。
軽く構成と構図について見てみましたが、これはまだ序の口です。準備運動。
この絵の真髄は、ここからの徹底された視線誘導にあります。
まずこのルートで絵を見ていたのではないでしょうか。奥のメイドにまで視線が行くことで絵としての前後感、奥行きがハッキリしています。
これが視線誘導です。では絵に矢印が書いてあるでもないのにどうしてこのルートで見てしまったのでしょう。
まずポイントはこの大きなハートのエフェクト。そう、シャニマスのお家芸、フレーム効果です。
このハートで囲うことで、その中身に目を行かせます。
が、本来この絵ならハートがなくても真っ先に顔を見るはずですし、その後手のハートを見て胸の谷間に行くはずです。
ということはこのハートには他の目的もあるということです。ハートを消してみましょう。
パフェが出てきました。色も彩度がキツいですから目立ちます。確かに顔、手には目が行くけど「次どこ見ればいいんだろう」となります。パフェに行くか胸に行くかの二択を迫られます。元の絵と比較してみましょう。
ハートの枠でぶった斬ることでパフェの「個」としての存在感を希釈し、認識を阻害しています。つまりハートのエフェクトは近景の高彩度なパフェをぼかすことなくクッキリさせたまま、視線誘導のラインから外すためという目的を持たされているのです。
仮にこのハートが存在したとしてもパフェに被っていなかったら、パフェの主張が強くなり視線誘導が上手くいかないことは想像に難くないでしょう。
そしてパフェを近景としてぼかさなかったことも理由があります。もしパフェをぼかしてしまったら、確かに近景として誰が見ても成立します。
その「誰が見ても近景」を避けたのです。あくまで一番前面に出したいのはキャラだ、ということです。近景として存在しているけど近景としての存在感は消したい、背景の色味として同化させたい、それをフレームでぶった切ることで成立させているのです。
なるほどここまではわかりました。
じゃあ視線が後ろのメイドまで抜けた理由はなんでしょうか。本来の絵が何で誘導されているのかを見てみましょう。
エフェクトで最後まで誘導しているのです。奥にいるメイドまで見ることで奥行を出し、比較してキャラが前に出ている感も出しています。
もしかしたら勘のいい人は最後のハート二つが露骨に見えるかもしれませんが、絵をよく見てください。顔の左側にもハートが二つあります。つまりこのハートは手で作ったハートから出ているエフェクトなのです。顔の横のハートは背景と同化しているものの、無意識化でハートとは認識されているので一見露骨なスカートのハートエフェクトにも存在理由が与えられているのです。
そうは言ってもなんか納得しない、という人にはダメな例を見てもらえば一発でご理解いただけると思います。ダメな例にするにはどうするか。この導線を断ち切ってやればいいのです。
どうでしょうか。確かに上手くて可愛らしいけど、奥行き、前後感が失われた気がしませんか? 近景のパフェがくっきりしていることでキャラが前に出ているのかどうかハッキリしません。整然さが消滅して同じレイヤー上でゴチャついているように見えるはずです。その上でなんだか窮屈です。
やったことは簡単。ハートのフレームを消した上でスカートから後ろにあるハートのエフェクト2つと、下のテーブルを消しただけです。これだけで視線誘導が台無しになります。
ハートフレームがないことでパフェが自己主張し、視線が手からパフェ、胸に戻ることで無暗な視線誘導になっています。そしてテーブルがないことで名札の星より大きなリボンに視線が行き、そのまま同色のフリルを辿って顔に返ってきてしまう。これが画面右まで視線がいかない、窮屈な印象になる視線誘導です。
こんなのばっかりですシャニマスの絵。徹底的にロジックで見る者を掌の上で踊らせるのがシャニマスの絵です。分析すればいくらでも参考になります。
しかし参考にするには原理を知らなくてはなりません。それでもピンポイントな原理を知らなくても、隣接概念を知っていれば「こういうことだろうか」と仮定を立てられます。だから勉強しましょう。勉強は見ている世界の解像度を上げる最も有効な手段です。



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