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シャニマスの絵が如何にヤバいか 1

アイドルマスターシャイニーカラーズというソシャゲがあります。絵描き界隈では「絵がヤバい」ことで有名なゲームです。「絵が上手い」ではありません。「絵が上手い」の一言で片付けると、絵の素養がないと「確かに上手いは上手いけどそんなにか?」という感想にしかなりません。
シャニマスの絵のヤバさはその「ギチギチに固められたロジック」にあります。わかりやすく言えば、全力で印象操作しまくっている絵です。

では実際に見ていきましょう。

SIDE:Y

キャラの顔ぶった斬り。2019年に登場した「シャニのやべー絵」として有名な絵です。シャニマスは横画面ソシャゲの運命として縦方向の余裕がありません。なのでこの絵の主役は赤い香水瓶を持った三峰だからと、キャラの集合絵で他キャラの顔でトリミングする時点でイカれています。

が、そんなのは序の口です。一目でわかる要素で済まないからヤバいのです。他にもたくさん要素が隠されています。
あとどうやらトリミングされていない全体絵も存在していない様子です。思い切りがヤバいですね。なお5人メンバーなので1人が完全に消えています。が、一応描かれていますどこにいるでしょう。

では軽く構図的な視点で見ていきましょう。

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キャラ絵として軽く見た場合はこうなります。一見すると良いところがまるでありません。そう、「軽く」「キャラ絵として」見た場合は全く魅力のない絵なのです。

では「入念に」「絵として」見た場合はどうでしょう。
まずはこの絵の主役は誰かは、構図として散漫だとしてもわかります。つまりこの程度の構図の分析を超えた部分で、主役を主役たらしめる要素があるということです。

まず一つがこれ。

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シャニマスの絵は視線誘導が完璧

視線誘導によって「目に留まる」よう顔が配置されています。左のキャラは視線誘導に沿った右向きなので、滑り落ちるように右のキャラに視線が行くのです。

二つ目がこれ。

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キャラの個性をよう練り上げとる

イエベ肌と青ドレスでサブリミナル的にハレーションを起こして目立たせています。青の中に黄色をぶっこめば確かに目立ちますが、しかしこれは本当に些細なものでしかありません。

そして三つ目がこれ。

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全てが斜めになっている中で、ひときわ異彩を放つ「垂直」の存在である香水瓶。これを「持っているから」右のキャラが主役になっています。

はて。であれば主役はキャラでしょうか?
何故こんなにも香水瓶が目立つのでしょうか。

もっと考えてみましょう。

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青と赤紫で統一された絵

雲行きが怪しくなってきました。
画面全体を色味で見ると、外周が明るいマゼンタ、その内側に赤紫、さらに内側が青という配色になっています。
そして、赤の香水瓶が青のど真ん中に鎮座して存在感を放っていますね。何より構図としてもほぼど真ん中、安定の日の丸構図になります。

話が少しズレますが、シャニマスの絵はこの「フレーム効果」を多用します。何かで囲うことでその内側を強調する手法です。多用どころか基本技、お家芸と言い換えてもいいでしょう。特にこのフレーム効果は横長の絵と相性がいいので、横長構図を強制されるソシャゲ絵だからこそだと思います。

話を戻しましょう。キャラの顔ぶった斬りよりヤバいのが、絵として一番目立つように仕立てられたのが「キャラ」じゃなくて「真ん中の赤い香水瓶」ということです。ソシャゲの絵なのにこの香水瓶のために画作りがされていることがヤバいのです。

つまり、キャラはこの香水瓶を「持っているから」絵としての主役になれているだけなんです。仮にこの香水瓶を青にしたら、途端に散漫な絵になってしまう。瞳の色と画面内の色が同色だから、どうやってもキャラが目立てない。視線誘導で受け止めるからという弱い理由だけになり、後述するこの絵のテーマもあいまいになります。

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何が重要なのかわからなくて右のキャラを素通りしてしまう

元の絵と比較したときどうでしょうか。右下に滑る視線が完全に滑り落ちて右下の照明にまで行ってしまったのではないでしょうか。赤い香水瓶がなくなるだけで、右のキャラの重要度がガタ落ちするということです。
ともすれば左のキャラの方がビジュアル的にゴージャスだからそっちに目が行きかねない。この赤い香水瓶がないだけで、この絵が魅力ある絵として成立しなくなる。
絵の主役キャラの「華」が手に持った「香水瓶だけ」の絵なんです。

キャラゲーとも言えるソシャゲでそんなことしますか? 普通。
キャラが脇役で香水瓶が主役。つまり、香水の広告という意味では間違いなく正しい絵です。

そう、正しいんです。
この絵に用意されたストーリーが、「ユニット全員で撮ったこの広告写真を見て感動する」というものです。つまり、広告としての絵作りの素晴らしさを「自分ではなく自分が持っている香水瓶に惹かれている目線」として演出した絵なのです。
香水瓶に目が行って、自分はおろか他のメンバーの顔なんてアウトオブ眼中なほど魅入っている表現がこの絵なのです。

シャニマスの絵に共通するのは「生きた絵」「現実に即した絵」というテーマです。シャニマスの絵は一見「派手背景のキャラ絵」ですが、よく見たら店員が描いてある。よく見たら天井の業務用エアコンが描いてある。よく見たら学校の廊下が描いてある。そういう「現実を切り取った描写」なんです。
もっといえば「誰かの視点」として描かれることが多いです。誰かが見ているかのような、カメラ的な技法は使ってもあくまで肉眼で見ているかのような描き方をするのがシャニマスです。現実準拠で、誰かの視点でエフェクトがかかっている場合が多いのです。この画面に写っている光の星の演出も「絵としてキラキラさせた」ではなく、見ている人間が「キラキラして見える」という心情を描いたエフェクトなのです。
この絵がヤバい理由も全部これに帰着します。これはただの「実在する広告ポスター」を「広告として見た視点」でしかない。

つまりキャラゲーだから、という視点が無意味だったのです。

が、そもそもはゲームイラストです。絵としてヤバいことに変わりはありません。
むしろキャラゲーでこれをやってのける肝の座り様がヤバい。普通はできません。SNSで伸ばそうという意気込みでは絶対にやってはいけません。これはストーリーありきの絵です。ストーリーがなくとも一応分析すればここまでわかりますが、普通は分析しないのです。

シャニマスにはこの手の「キャラより画作りとしての演出」を優先した絵がたくさんあります。
こういう「SNS受け」は間違いなくしない、しかし間違いなく「良い絵」の技法を詰め込んだ、まるで癖(ヘキ)のような絵がある。それがシャニマスのカードイラストです。

もちろんそれなりの頻度でこのような尖り散らかした絵があるだけで、「印象操作全振りの順当に凄い絵」がほとんどです。基本的にどの絵も構図と構成と視線誘導の鬼です。構図の基礎知識を習得してから見たら感動しますよ。

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