高齢者ホームで「施設葬」増加 火葬待ちも自室 新しい弔い
高齢者施設で亡くなった人を、施設のスタッフや入所者みんなで見送る「施設葬」という新しい弔いのかたちが広がりつつある。 【写真】実際に行われた施設葬 東京海上日動ベターライフサービスが経営する高齢者ホーム「ヒルデモアたまプラーザビレッジI」は開設当初の2000年12月から入居者や家族の要望があれば、施設内で葬儀を行っている。 統計がある過去13年間で亡くなった入居者は293人、うち158人と半分以上が施設葬を選んだ。中田和裕支配人(47)は「最期まで自宅と同じように過ごせるというコンセプト。施設葬ができるということに安心され、入居を決めた方もいる」と話す。 施設の1階には遺体を安置できる30平方メートルほどの「静堂」という部屋がある。使用料なしで葬儀を行うこともでき、10人ほどの参列者を収容できる。 家族から相談があれば、ホームが提携先の葬儀社を紹介し、静堂、もしくは近隣の斎場で葬儀をすることが多い。料金や火葬までの段取りは遺族と葬儀社で決めるという。「火葬が混んでいる時は居室や安置室で1週間前後、お預かりすることもある」(中田支配人) 全国に200以上の高齢者住宅を運営する学研ココファンが「施設葬」を始めたのは24年10月。これまでに計約200人を施設葬で弔ったという。 きっかけは、施設のスタッフから寄せられた「入居者たちと最後のお別れがしたい」という要望だった。それまで施設内で入居者が亡くなると、すぐに葬儀社を手配し、遺体をひっそりと運び出していた。しかし、入居者たちに意見を聞くと、「私たちもお別れしたいし、逆に自分も見送られたい」という要望が多くあったという。 学研ココファンでこの事業を担当する岡田寛昭さんは「死がタブーではなくなり、みんなで最後を見送りたいというムードになった」と語る。 全国に79戸の介護付き有料老人ホームや認知症グループホームを運営する介護大手のツクイも25年5月から施設葬を開始した。料金は祭壇や棺(ひつぎ)などの価格によって違うという。担当する佐々木努さんは「みとりから葬儀までお願いしたい入居者の声は多い」と話す。(森下香枝)
朝日新聞社