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自転車にとって重要なパーツ、ブレーキシューの交換や調整は、自転車乗りにとって日常的なもの。

しかしクリアランスの調整など、どうも手先のごまかしと言うか、経験でなんとなくやってしまっていると言うか、定量的でシステマチックな手順が踏みにくい、アナログで微妙な作業でもあります。



とりわけビミョーなのが、ブレーキの鳴き(キキキーッ!という音)を抑える目的で行われる「トーイン」をつける作業。

何も考えずネジ締め一発で決まってくれればいいんですが、構造的にそういう訳にもいきません・・。


トーインについて




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ブレーキシューは、回転するホイールリムに接触させてその摩擦でブレーキをかけるものですので、基本的にはリムに沿ってまっすぐ(つまり平行に)当たるべきです。

高い精度を持ち、剛性もいいレース用のブレーキでは、このままでも特に問題ないらしいです。


ところが、一般的なブレーキでこれをやると、キキキ〜!という音、いわゆるブレーキ鳴きが起きる事があるのです。

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ブレーキ鳴きの原因とされるのが、高速回転するホイールリムにシューを押し当てた際に発生する強大な摩擦によって、ゴム製のブレーキシューがリムの回転に引きずられ、後方から巻き込まれる方向に捻る力が加わり、圧力が均等にならなくなるなどして、全体が振動する・・というもの。


自転車ギョーカイで広く語られている「定説」ではありますが、実はこれ、高速度カメラで振動を分析したとか、圧力計などを使ってちゃんと測定した例があるのかどうか、作者は寡聞にして知りません。

「多分こうなんじゃないか?」という推測のような気がします・・。

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これを解決するため、ブレーキシューをハの字に傾けて取り付ける(調整機構のないブレーキでは、シュー自体を斜めに削っておく)、いわゆる「トーインをつける」手法が知られています。

これをやるとシュー後方の巻き込みが軽減され、リムに加わる圧力も均一化し、結果「キキキ〜!」という鳴きも収斂する、というもの。

ついでにブレーキのかけ始めの摩擦力の立ち上がりが穏やかになるので、レバーを引くと急激にブレーキがかかる、いわゆるカックンブレーキの防止にもなります。



まだVブレーキなんてものがなかった昭和時代にも、すでに経験則として知られていましたから、先のシュー巻き込みキーキー説も、まったく根拠がない訳ではない、って事でしょう。


トーインのつけ方




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具体的な方法はこうです。

まず、きちんとクリアランスをとり、ホイールリムとも平行に位置合わせを済ませたブレーキシューの後方に、折ったメモ用紙などを挟んでかさ上げします。

この状態でブレーキレバーを引きつつ、シューの固定ナットを一旦ゆるめたら、アーレンキーを少しグリグリと動かし、シューの位置を落ち着かせます。


そして再びギュッと締め込めば、挟んだ紙の分だけシューの後方の隙間が開き、上から見てハの字のトーインがつく、という寸法。

この「ギュッ」の時、シューがネジ締め方向にズルッと回ってしまう事もあるので、指で補助的に押さえるなどしてやります。

締め込み時のズレを嫌うあまり、ブレーキレバーを強く握りすぎると、リムやブレーキシュー自体が圧力によって微妙に変形するので、その状態でナットを締め付けても、リムとの位置決めがおかしくなるので注意。



ああ、なんて適当なんでしょう・・(笑)


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挟む紙(紙でなくてもいいですが)の厚さはおおむね1ミリ。メモ用紙だと3回折り程度でOK。厚すぎると、これまた具合がよろしくありません。



とまあ、手順はシンプルではありますが、いささかアナログな手法。「今やったのとまったく同じようにもう一台やってくれ」と言われても、ちょっと自信が持てません。


何か測定器具を使うなどして、もうちょっとスマートに出来ないものでしょうか?


ブレーキシューチューナーを買ってみた




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そこで、こんなものを用意してみました。

ブレーキシューチューナー、あるいはセッターなどと呼ばれているものです。

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ホイールリムの曲率に沿った円弧状のプラ板で、片方が厚さ約2ミリ、もう一方が1ミリほどと、微妙なスロープになっています。

これをブレーキシューの内側に挟み、ナットを締め直すだけで、誰でも左右均一なクリアランスとトーインが付けられる!というアイデアグッズ。





さあ、これでビミョーなアナログ作業ともおさらばです。


さっそく使ってみました。


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先日ブレーキをリニューアルしたばかりの、20インチのFDB206でやってみましょう。


まずはブレーキシューをノーマルな平行位置に合わせます。上下の位置もきっちりと。


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そしてブレーキシューチューナーを挿入。

ちょっときついてすが、なんとかはめ込みました。

そしてブレーキレバーを引きつつ、シューの固定ナットをゆるめ、アーレンキーを少しグリグリ動かしてシュー位置を微調整したのち、再び締め込み。



さあ、これでピッタリと決まったはずです。

ところが・・。


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あれ? 位置がずいぶん下になっちゃいましたね。

これではシューの下がはみ出て、きちんと当たりません。シュー表面も段付きに磨耗してしまいます。


ブレーキシューチューナーの問題点




実はこのチューナー、主にロードバイクのために設計されたもので、Vブレーキにはいまいちフィットしないようなのです。

ネット上での使用感レポートを見回してみても、みなさん同じような状態になっている由。

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原因はいろいろ考えられますが、まずはコレ。

Vブレーキのシューは、肩の部分から接触面までが斜めに大きくカットされているものが多く、この空間のせいでブレーキシューチューナーのリブの角にうまく収まらず、結果的に接触面が下方にズレがちになるのです。


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そして最大の原因はこれでしょう。

Vブレーキはその構造上、ブレーキアームの支点が下方外側に位置し、シューもそこを中心に扇状に動くので、実際の接触面ではどうしても平行性が失われ、位置もやや下になってしまうのです。


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あと、小径車には別の問題もあります。

比較的細身のタイヤを装着した700Cホイールでは、ぴたりと吸い付くようにセット出来ますが・・。


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20インチ車ではリムの曲率が微妙に合わず、さらにファットなタイヤが邪魔をして、爪が奥まで入りません。

こんなに浮き上がった状態でトーイン固定しても、なおさらシューが下向きになってしまうわけです。


とうわけで、このツールは失敗でした。


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上下ひっくり返してやれば使えない事もないですが、これじゃ紙を挟んで調整していた従来の方法と、さして変わりませんね(笑)。



どこかVブレーキや20インチホイールに特化したセッターを出してないもんでしょうか・・。

それとも自分で作るかな?