帰り道のタイムリミットは45分、明晰な頭脳で考えた結果、早歩きすることにした
帰路は伊藤がお送りします
十枝の森の大木ではしゃぎ、水源にとぼしい九十九里に農業用水をもたらした十枝氏の功績をしみじみ味わう。わたしたちは歩きながら今日の寒さと雨に不満をたれていたが、なんという思い上がりだ。かつて渇水に苦しんだこの地を救っていたのは雨だったというのに。
ずいぶんと歩いてきたが気が付けばタイムリミットまで1時間を切っていた。
この置き去り企画はただいろんなところに行けばいいというものではない。置き去られた場所に所定の時間までに戻らなくてはならないのだ。
しかし街歩きに熟練し、老かいな我々の戦略はぬかりない。行きにバス停を見つけてちゃんと経路をチェックしていたのだ。バスに乗って悠々と帰還だ。時刻表を確認しよう。
「バスが来るまで40分以上ありますね」
「微妙ですね」
目的地から遠く離れた場所でバスを待つのはリスキーだ。
しかし街歩きに熟練し、老かいな我々はそのあたりもきちんと考慮している。なめたらいかんぜよとタクシーアプリを取り出す。
「車が近くにいなくて30分以上かかりますね」
「やばいですね」
「歩きだとどのくらいかかるんでしたっけ」
グーグルマップで経路を探索すると徒歩で55分と出てきた。集合時間まで残り45分。無言で西村さんに画面を見せる。なぜか2人とも「間に合わない」とは言わなかった。間に合わないのに。
カモン困難。我々が熟練しているのは街歩きだけではない。砂漠のような現代社会をなんやかんやここまで生き抜いてきたのだ。歩きながらその経験値を総動員した言い訳会議が始まる。
「10分ぐらいの遅れだったら、『ぎりぎりまで粘って少し計算がずれた』ぐらいに言ったらかっこつくんじゃないですかね」
「LINEで『すいません3~4分遅れます』って言っておけば結果15分くらい遅れても体感時間はそこまで長くないと思いますよ(そんなわけあるか)」
街歩きに熟練し、老かいな我々がとった作戦が「早歩きでバス通りを歩き、もしバスが来たら乗る」というものだ。
バス通りに入ってすぐ、いそいそと歩く我々を1台のバスが追い抜いていった。時刻表上ではここにいないはずのバスだ。ネコバスだろうか。
「回送じゃないな。前の便が遅れてるんですねきっと」
「あれに乗れたらよゆうで間に合いますね」
バスはやはりバス停で待たないとだめだ。街歩きに熟練した老かいな我々にも学びがあった。
「あのバス亭の小屋がいい感じですね」
「ちょっと行ってみましょう」
バスに去られた後にバス停に寄る。このちぐはぐさが人間というものではないか。
街歩きに熟練し、老かいだが気の小さな私たちは気合いで早歩きをし、襲い来る艱難辛苦を乗り越えていった。
一時はただ言い訳だけを考えていたが、グーグルマップがわりと時間を盛っていたこともあって、迎えのバスとギリ同着でスタート地点に帰着することができた。
つまり、帰路は急いだだけでほぼ何も起こらなかったことにもなるが
2人で急ぐ散歩というのもまたおつなものだ。老かいなまとめではないだろうか。
最後にこの旅の道中における私的なトピックスを羅列して振り返りとしたい。
ひし形のスリット
横断歩道前に描かれたひし形のあれに違和感があった。なんか切れ込み多くない?
雨が降った時に排水して滑りにくくするためのものらしいが、こんなゴールデンハーベストのトレードマークみたいに4つも入ったものは見たことがなかった。
都道府県によってひし形の仕様には違いがあるらしく、この4スリットは関東圏では千葉県、群馬県に見られるものらしい。
※参照:俺の居場所 →フィールドワークを重ねに重ねたすごい情報量のブログでした。感動した。
ひし型のバリエーション、私も見ていこう。
壮年男性型の一時停止
道路の反対側から「あれ、なんですかねえ」となって見に行くほど我々にインパクトを与えた看板である。勢いよく駆け出す幼児の形のはよく見るが、バストアップの壮年男性(たぶん)という静的な佇まいでくるとは。一時停止コンシェルジュという感じだ。
世界を釣るパチンコ
なんでカジキマグロ。めちゃめちゃビクトリー=大物釣りといった願いが込められているのだろうか。海が見たくなった。
「献」を集める人
立ち寄った太政大神(神社)で西村さんが石灯篭の1点を見つめ、撮影していた。
他の人の目をもらうのはコラボ散歩の醍醐味でもある。献上された気分だ。
唐辛子!
「こわ!なんだこれ」西村さんが叫んだ 。
そこに横たわっていたのは息も絶え絶えのとうがらしだった。
なにげに一番大きな声を出したシーンかもしれない。ペペロンチーノスリラーだ。どんなジャンルだそれは。
悪い吸いがら
ポイ捨て禁止看板の吸いがらが見るからにバッドボーイでTシャツにしたいと思った。
森の擬木
雨で湿った落ち葉の匂いが漂う十枝の森で静かに佇んでいる擬木の水飲み場。森とけなげに同化しようとする擬木にグッとくる。
「青米」とは緑色の玄米で、稲の開花が遅かったもみに葉緑素が残っているもの。不出来な米というわけではなく味や香りも良いとされ、栄養価も高い。小鳥の餌などにも好まれるという。

ロードサイドの看板の青々しさが話題となり学んだことだ。
わからない言葉を調べまくる散歩なんていうのもいいかもしれない。
記事で使わなかった写真(伊藤)
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