いじめ防止対策推進法に基づく「重大事態」の公表の仕方が、自治体によってばらつきが出ている。南日本新聞が鹿児島県と県内43市町村の教育委員会に、推進法が施行された2013年度以降の発生件数を聞いたところ35市町村が回答。発生があった8市町村のうち調査報告書を公表しているのは4市で、内容には差があった。県と8市町は回答がなく、県は1件だけ報告書を公開している。識者は国が基準を設けるべきだと指摘する。
文部科学省は重大事態のガイドラインで調査報告書について、「特段の支障がなければ公表することが望ましい」としているが、件数は各自治体の判断に委ねられている。
発生件数を答えない理由を、県は「関係者の意向を踏まえた判断」と説明。8市町は枕崎、出水、指宿、南さつま、南九州、伊佐、姶良、湧水で、「大きな自治体ではないため詮索や特定につながる恐れがある」といった声が上がった。
回答があった35市町村のうち、13~24年度に重大事態の発生があったのは8市町村。うち、調査報告書については鹿児島市、奄美市、いちき串木野市、日置市が公表していた。
鹿児島市は21年度以降、調査が終了した事案20件の概要を、市議会市民文教委員会ですべて報告。学校の対応や検証を踏まえた再発防止策などを詳細に示す。うち7件は市ホームページで報告書を掲載している。全国的にみても積極的な公表となっている。
奄美市は、全1件の報告書や再発防止検討委員会の会議録を市ホームページに掲載。公表理由について「対応の透明性を示し、社会への説明責任を果たして再発防止に役立てるため」とした。いちき串木野市は全1件の報告書要旨を市ホームページで公開。日置市は全1件の対応について、公開の「いじめ問題対策検討委員会」で報告していた。
鹿屋市は全1件について「被害者本人と家族から、学校生活等に大きく影響を及ぼす恐れがあるため『公表しないでほしい』と強い願いがあった」と非公表。曽於、十島、和泊の3市町村は現在調査中だった。
県は、2014年に県立高1年生=当時(15)=が自殺した事案のみ、調査報告書と再調査報告書を公表。その他の事案は「対象生徒・保護者の意向で公表していない」としている。
いじめ問題に詳しい千葉大の藤川大祐教授(教育方法学)は「公表の在り方を国が自治体任せにしすぎだ。調査報告書について『公表が望ましい』としながら、公表する方が例外的になっているのが実情」と指摘する。
多くの報告書の検証を重ねることが再発防止策につながるとし「一定時間の経過後とか、個人が特定されないといった基準を示し、それを満たせば必ず公表するとすれば自治体も対応しやすいはず」と提言した。
文科省の問題行動・不登校等調査によると、24年度に県内で発生した国公私立小・中・高・特別支援学校の重大事態は計20件だった。アンケートは11月、メールや電話による聞き取りで実施した。
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〈用語〉いじめの重大事態 いじめにより、児童生徒の生命や心身に重大な被害が生じた疑いや、学校を相当期間(年30日が目安)欠席することを余儀なくされている疑いが生じた場合のこと。大津市の中学2年男子自殺をきっかけに2013年に施行された「いじめ防止対策推進法」で定義された。発生した場合、教育委員会や学校は再発防止のため速やかに調査組織を設けて事実関係を明確にし、首長への報告が義務付けられている。