<社説>アイヌ遺骨研究 謝罪を復権につなげねば

 日本人類学会と日本考古学協会は、過去に行ったアイヌ民族の遺骨や副葬品の収集、研究について謝罪した。昨年の日本文化人類学会に続く表明となる。
 遺骨の盗掘が横行し、他民族との比較のために形状を調べるなど差別的な研究が行われた。
 アイヌ民族が声を上げて問題が表面化してから40年以上が経過した。謝罪は遅すぎたと言わざるを得ない。ただ不正義を働いた過去と向き合う姿勢を示したことは一定の意義がある。
 今年は東京大も謝罪し、学術界にこうした流れがようやく出てきた。一方、アイヌ民族からは「謝罪はスタートラインにすぎない」との声が上がる。研究者として責任を持って民族の権利回復を進めてもらいたい。
 日本人類学会は声明で「遺骨の入手経緯に関する問題意識が希薄だった。心を痛めたアイヌの方々におわびする」とした。
 学会は1884年(明治17年)に前身が設立され、生物としてのヒトの起源や形態、進化などを研究する自然人類学を主導した。人骨は基礎資料として使われ、所属する小金井良精・東京帝大教授らは北海道内でアイヌ民族の遺骨を収集した。
 日本考古学協会も声明で「アイヌ民族への構造的な差別を容認した」とした。過ちを認めた以上、今後の対応が問われる。
 まずは真相究明だ。収集経緯や研究の具体的目的など詳細が不明な点も多く、アイヌ民族への説明は不十分だ。データを交え全容を開示する責任がある。
 研究に使われた遺骨は、胆振管内白老町の民族共生象徴空間(ウポポイ)に集約されたが多くは故郷に返還されていない。地元での慰霊を望むアイヌ民族の声は切実だ。過去の行いが招いた事態を直視し、学術界としてすべきことを示す必要がある。
 日本文化人類学会を含む3団体は今回、アイヌ民族への不当な差別的言動の是正に取り組むとした声明も発表した。
 近年、遺骨のDNAを分析した研究が歪曲(わいきょく)され「アイヌは先住民族ではない」という主張の根拠に使われる例もある。正しい知識を教育現場で伝えるなど行動することが求められる。
 残念なのは、アイヌ民族の先住地、北海道にある北大の存在が見えないことだ。収集した遺骨数は国内の大学で突出し、権利回復のけん引役を果たさねばならない立場であるはずなのに、これまで謝罪していない。
 宝金清博学長は開学150周年の来年、アイヌ民族に関する声明を出すという。共生社会を担う姿勢が問われていることを忘れないでもらいたい。
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