地方郵便局が仕掛けた、年賀状ヤメ時代の意外な「販売戦略」…鎌倉で異例”増販”の秘策

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鎌倉郵便局では、年賀はがきの販売枚数が毎年「増加」しているという。その理由を、池辺恭平局長(写真)に聞いた。
鎌倉郵便局では、年賀はがきの販売枚数が毎年「増加」しているという。その理由を、池辺恭平局長(写真)に聞いた。
撮影:土屋咲花
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年賀状のシーズンがやってきた。小学生の頃は、年末年始の楽しみといえばお年玉よりも、友人から届く年賀状だった。だが、いつしかやり取りはLINEが中心になり、「年賀状じまい」という言葉も聞かれるようになって久しい。

日本郵便によると、2026年用の年賀はがきの当初発行枚数は約7.5億枚。2025年用の約10.7億枚から、約3億枚減った。ピークだった2004年用の約44億枚と比べると、発行枚数は約6分の1にまで縮小している。

だが、神奈川県鎌倉市にある鎌倉郵便局では2024年以降、年賀はがきの販売枚数が増加傾向にあるという。全国的には大幅な減少トレンドが続く中で、かなり異例といえる。一体なぜなのか。

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1万円分購入の海外客も

鎌倉駅から徒歩3分の立地を生かして、店頭での年賀はがき販売を実施している。
鎌倉駅から徒歩3分の立地を生かして、店頭での年賀はがき販売を実施している。
撮影:土屋咲花

鎌倉郵便局によると、年賀はがきの販売枚数は2024年用が約18万枚、2025年用が約20万枚と約1割増だった。2026年用も前年比で約7%増のペースで推移しており、20万枚を超える見通しだ。伸び幅は大きくないものの、全国的に年賀はがきの発行枚数が急減する中では、異例の動きといえる。

背景の一つに、「インバウンド需要」がある。

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鎌倉郵便局の池辺恭平局長はこう話す。

「正確な統計は取っていませんが、体感ではインバウンドの方の購入だと思います。トトロやスヌーピーなどのキャラクターデザイン、神奈川県限定の江ノ島と富士山が描かれた柄が特に人気です。年賀状として使うというより、日本らしいおみやげとして購入されている印象です」

選ばれているのは、白紙の年賀はがきではなく、裏面にイラストがあらかじめ印刷されたデザイン年賀はがきだ。観光客の中には、数十枚、金額にして1万円分ほどまとめて購入する人もいるという。

特に人気なのが、江ノ島と富士山が描かれた神奈川県限定の年賀はがき。同局によると、「他局から取り寄せても、すぐに売り切れてしまう」という。

店舗前販売に英語の案内…販促施策も奏功

鎌倉郵便局では、年賀はがきの販売ブースに干支や年賀状について伝える英語の説明書きを掲示している。
鎌倉郵便局では、年賀はがきの販売ブースに干支や年賀状について伝える英語の説明書きを掲示している。
撮影:土屋咲花

鎌倉郵便局は、鎌倉駅東口から徒歩3分。由比ヶ浜から鶴岡八幡宮へと続く若宮大路沿いに位置し、地元住民に加えて観光客の往来も多い。市の発表によると、鎌倉市の延べ観光客数は新型コロナウイルスの影響で2021年までは前年割れが続いたが、2022年以降は増加傾向にある。鎌倉市観光データ分析レポートによると、2024年度の外国人観光客の観光案内所利用者数も累計で10万人を突破し、新型コロナウイルス禍前の2018年度を上回り最多記録を更新した。

同局では、こうした立地を売り上げにつなげるための工夫を重ねてきた。

年賀はがきについては店内に限らず、日中は店外にも販売ブースを設置。通行人からの視認性を高めると同時に、混雑の緩和を図っている。インバウンド客による購入を想定し、干支や年賀状の文化について、英語による説明書きの掲示も今年から始めた。

年賀はがきに限らず、郵便局自体への来訪者を増やす取り組みも進める。歩道側から局内で販売しているはがきや切手などの商品が見えやすいよう、売り場の配置や見せ方を見直した。

また、夏場には「涼むためのスポット」として立ち寄ってもらうことを想定し、多言語での掲示を実施。観光の合間に立ち寄れる場所としての役割を意識した取り組みだ。

こうした施策は、インバウンド客だけではなく、地元住民への訴求にもつながった。結果的に、郵便局内で販売している切手やカタログ通販商品などの売り上げは、前年比約2倍のペースで推移しているという。年賀はがきの販売枚数が伸びている背景には観光客の増加に加え、郵便局を「売り場」として魅せるための取り組みもありそうだ。

市内減少率も「緩やか」

人気の神奈川県限定デザインの年賀はがき。インバウンドのみならず、地域住民の購入も多いという。
人気の神奈川県限定デザインの年賀はがき。インバウンドのみならず、地域住民の購入も多いという。
撮影:土屋咲花

鎌倉での年賀はがき販売増には、もう一つ背景がある。他地域と比べ、もともとの減少率が小さいのだ。

池辺局長は、地域特性をこう説明する。

「ご縁やつながりを大切にする人が多く、文化的な活動をしている方も多い。時間の使い方が比較的豊かな地域だと思います。平常時の個人から個人宛てのはがきの発送数を見ていても、多いという印象があります」

実際、全国の年賀はがき発行枚数は前年比で約3割減少しているのに対し、池辺局長によると鎌倉エリアでは約2割減にとどまっているという。筆者が鎌倉市内の複数の郵便局に年賀はがきの販売数の推移を尋ねたところ、「減少している」と回答した局もあった一方、長谷郵便局は「横ばい」と回答した。

池辺局長が減少幅が抑えられている理由の一つとしてみるのが、企業による年賀状の存在だ。

「大企業が年賀状を出さなくなると、一気に数が減ります。ただ、鎌倉には大きな事業所があまりないうえ、地域のつながりを大切にする土地柄もあって年賀状じまいをする事業所が少ない。その分、減少幅が抑えられている面はあると思います」

観光客による購入増に加え、もともとの減少率が低い地域特性、そして郵便局側の販促施策。こうした複数の要因が重なり、全国的には縮小が続く年賀はがき市場の中で、異例ともいえる「販売増」が生まれているようだ。

鎌倉シャツ、危機からの過去最高益。2代目社長が語る「変えるもの・守るもの」 | Business Insider Japan

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