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J/53  作者: 池金啓太
二十一話「生命の園に息吹く芽」

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ヘタレな鏡花姐さん

「というわけで、残念ながら雪姉から情報を得ることはできなかったよ」


「あんたら何やってんのよ」


後日雪奈が妙なことを口走っていたという事で軽く拷問して情報を吐かせようとした結果、何も成果をあげられなかったという事を鏡花に報告したところ、彼女は呆れ果てていた


なにせ明利が雪奈に馬乗りになり、その状態で静希が雪奈の体を弄り続けるという方法で雪奈から情報を吐かせようとしたのだが、結局雪奈の決意は固かったようで数時間にわたる攻防の中、結局口を割ることはなかった


涙を流し時に咳き込み、最後には失禁しながらも情報を守り抜いた雪奈に敬意を表すると同時に静希と明利は土下座して謝罪した


この歳でこんな無様を晒すことになるとはと雪奈はかなりへこんでいたが、その逆襲として静希と明利も長時間の雪奈の攻撃を受け続けることになり、静希は耐えたが明利は泣きながら笑い、途中からまともに呼吸ができない状況に陥ってしまったのだ


一緒に報告に来た明利は恥ずかしそうに照れていたが、静希は全く反省していないようだった


「まぁ、情報を手に入れようとしてくれたことはありがたいけどさ、親しき中にも礼儀ありよ?雪奈さんがよく怒らなかったものだわ」


「あー・・・怒る以前に前にも似たようなことがあ「なんでもないよ!雪奈さんの心が広いだけだから!」


静希の言葉を遮って明利が弁明するが、鏡花はその反応だけですべて理解してしまった


たぶん雪奈は以前にも静希に同じようなことをされたことがあるのだ


それが付き合い始めてからなのか、それとも付き合う前からなのかはわからないが


以前明利も確かどこかで失禁したことがあるという、そう言う意味では明利も同類と言えるだろう


「それにしても気になるわね・・・雪奈さんが今度の私たちの実習に何か関わってくるのか・・・それとも一年全体に仕掛けられてるのか、あるいはその両方か」


「また一緒にきてくれるっていうならそれもありがたいんだけどな」


雪奈の口ぶりからまず間違いなく、今度静希達が行う実習に何かが仕掛けれているのは間違いない、だがそれが静希達だけなのか一年全体なのかはまだわからない


もし雪奈が一緒にきてくれるのであればこれほど嬉しいことはない、純粋に戦力の増強になるし、何より連携の慣れた人物が来てくれるのだ


もし来てくれるのなら熊田も来てくれるとうれしい限りである、明利の広範囲索敵もかなり役立つが、熊田の局地的索敵もかなり有用だ


攻撃と索敵、そして攪乱のできる能力者というのは実はかなり稀なのだ


「でも雪奈さんの反応を見ると、何か悪条件が付加されるような感じじゃない?あんまりいい予感はしないわね」


「実際に実習の内容が明らかにならないとわからないかもしれないな、少し気構えしておくべきか」


今までの実習だけでも十分難易度は高いように思えたが、さらに何か加わるのだとすると正直静希達の手に負えるものではないように思える


静希達単独で行う内容や、軍の人間、あるいは警察とも連携しながら行ってきたがさらに難易度が上がるとしたらどんなものがあるだろうか


「例えばだけど、向かう場所が変わるとか、ないかな・・・海外とか、普段いかない地方とか」


「あぁなるほど、他の学園の担当地区に行くとかはあり得るかもな」


静希達が所属している喜吉学園は関東、中部、そして東北地方の南部が担当地域として割り当てられている


日本に存在する四つの専門学校がそれぞれの地方を担当し、そこで発生した問題をそれぞれ解決するのが校外実習の現状だ


明利の考えとしては今まで喜吉学園が担当していた地域以外での活動、例えば北海道や関西、九州などの他の専門学校の管轄にある地域への長距離移動を加味し普段向かわない場所や地域での実習


考えられなくはない、日本は小さな島国だが、地方が変われば常識が変わると言ってもいいほどに人間の文化とは変化と特色が大きい


普段静希達がしゃべる言語も、ほかの地方に言ったら通じないこともあり得るのだ


「鏡花なんかはもともと関西に住んでたんだし、その場合は少しは何とかなるかもな」


「まぁ、それでもごく一部だけどね、住んでない県とかになったらどうしようもないわよ」


過去鏡花が関西に住んでいたとはいえその全てを理解しているとは言えない、現在関東に住んでいる静希達だってその全域を網羅しているわけではないのと同様である


それに関西に行くと決まったわけでもないのだ、それこそ北海道や、南の沖縄に行くことだってあり得るかもしれない


一月という事で非常に寒く、場所によっては雪が積もっているところだってある、可能なら雪のない場所に行きたいなと静希達は僅かながら期待していた


「あと場所だけでないなら・・・そうね・・・今回先生がついてこないとか、あるいは二年生の実習について行かされるとか?」


「あー・・・俺らが補助になるパターンか・・・一部の二年生は一年の補助になるわけだしな、その練習って感じか」


鏡花の意見は至極もっともだ、二年生から優秀な班の人間は班を分割して二人ずつで一年生の実習の補助にあたる、その事前練習だと思えば何もおかしいことはない


その場合、二年の雪奈たちの班に自分たちがついていくことになるのだろうが、そうなると自分たちだけではなくもう一つの班が雪奈たちの方についていくことになるのだろうか、それとも時期をずらすのだろうか


「・・・そういえばさっきから陽太君は?」


先程から静希と明利そして鏡花は話に参加しているのだが、陽太がまったく反応しないことに明利は陽太の姿を探すが、一見近くには見当たらなかった


「話に参加するつもりもなく寝てるわよ」


鏡花がため息交じりに指さす先には、考えを巡らせるつもりなど最初からないというかのように机に突っ伏して寝息を立てている陽太がいる


班長である鏡花からすれば頭の痛い話だが、こうして考えることが多くなると陽太が完全に役立たずになるのがこれからの問題と言えるだろう


能力でハリセンを作って陽太を文字通り叩き起こして軽く事情を説明するのだが、陽太はあまり興味がないようだった


というより、そもそも考えることは自分の仕事ではないと割り切っているのだろう


お前それでいいのかと強く疑問を持ったが、前衛としての陽太の性質上、特に問題はないと思っている様だった


陽太のような図太い神経があれば基本何処でもやっていけるだろうなと感心しながらも、静希と鏡花は呆れていた


「で?鏡花姐さんの方はどうなわけ?」


「・・・何よ急に」


「陽太君とのデートの事、何か決めたの?」


急に小声になった静希と明利に、鏡花は眉間にしわを寄せながら僅かに顔を赤くしている


どんな理由があろうとデートはデート、あそこまで正面切ってデートと言われては鏡花だって嬉しくないはずがない、今回のことである決意を固めたようだったが、その結果を静希も明利も気にしていたのだ


「まぁ・・・その、いろいろ話し合ってるわよ、行きたいところとか、やりたいこととか、いろいろと」


「ほほう・・・ちなみに鏡花姐さんとしてはどこまで行くつもりですかい?」


どこまで


にやけながら聞いてくる静希のその言葉に鏡花は顔を赤くしながらその頭を掴んで握りつぶそうと握力をかけていく


「え・・・えっと、鏡花ちゃんは最終的に何か言うつもりなの?それとも何かするの?」


痛い痛いギブギブと静希が鏡花の手を軽くタップしながらアイアンクローをかけられている中、明利は咳払いしてフォローするべきだろうと話を逸らせた


明利の質問に鏡花は手に込めていた力を僅かに抜いて小さく息を吐く


「まぁ・・・やりたいことは決めたわ・・・そのために必要なことも可能な限りするつもりよ」


「へぇ・・・教えてもらってもいい?」


「・・・絶対内緒よ?雪奈さんにも」


わかったと明利がうなずくと、鏡花は明利の耳元に口を近づけ、やろうとしている内容を小声で告げる


明利は最初、何故そんなことをするのかわからなかったが、陽太を見た後でその意味を理解した


「そっか・・・うん、それがいいよ、そうしてあげて、きっと陽太君も喜ぶと思う」


「・・・そうかしら・・・そうだといいわね」


鏡花は薄く笑いながら再び静希の頭を握りつぶそうと全力で握力をかける


静希の頭がい骨がわずかに悲鳴をあげているのを確認して十分痛みは与えられたという事を理解するとその頭を解放する


「うぉぉぉ・・・!痛い・・・ちくしょう・・・俺が何したっていうんだ」


「あんたの質問はゲスすぎるのよ、もうちょっと気を遣いなさい」


悪ふざけは大概にしなさいと付け足して鏡花はふんと息を吐く


自分は真剣になっているというのに笑われては不機嫌にもなる、それに自分たちがいくらすでにそういう関係になっているからと言って他人にそれを強要するのもよくない


鏡花たちには鏡花たちのペースがあるのだ


そう言う関係になるのはやぶさかではないが、まだ告白すら終えていないのにそういうステップに進むのは明らかに早すぎる


「で、結局何するんだ?なんか考えあるんだろ?」


「もう明利には教えたけど・・・あんたには教えないでおくわ、口が滑りそうだし」


静希に話すという事はそれすなわち雪奈に伝達されるのと同義である、明利もどっこいだが絶対に内緒と言っておけば雪奈に話すようなことはしないだろう


「なんだよそれ、明利教えてくれ」


「えっと・・・ごめん静希君、内緒なの」


まさかの明利の裏切りにより静希は項垂れてしまう


明利が自分に隠し事をするのは珍しいことではないが、頼られていると思っていた鏡花の恋愛沙汰でまさかの戦力外通告にも等しい内容の秘匿、静希は内心ショックを隠せなかった


「ちくしょうこのヘタレめ・・・いつまで経っても進展しないからってこっちに八つ当たりしやがって」


「進展しないのは認めるけど前者はさすがに訂正しなさい、だれがヘタレだっての」


誰がヘタレか、それを示すかのように静希は鏡花を直視する、鏡花は先程作ったハリセンで静希の額をつついてその視線を逸らそうとするが、まったく視線をそらせるつもりはないようだった


「・・・明利、私ってヘタレじゃないわよね?」


「え・・・?」


唐突に話を振られた明利はどう反応しようか困っていたが、今までの鏡花の行動や反応を思い返す


思い返せば思い返すほど鏡花の行動が情けないものが多い気がしてきて明利は完全に否定しきれずに目を背けてしまった


鏡花にとってはそれが何よりも強烈な回答だった


「ほれみろ、鏡花、お前はヘタレだ」


「うぬぬ・・・いいわよ、今度のデートでその考え撤回させて見せるわ、目に物見せてやるんだから」


それは尾行してもいいという意志表示なのだろうかとも思ったが、今ここで確認することもないなと思い、静希はあえて黙っておくことにした


黙っておかなくては尾行の意味がない、隠れてあとをつけるにしろ何にしろ内緒の方がいいに決まっているのである


お気に入り登録件数が2600件を超えたのでお祝い含め二回分投稿


少しずつ少しずつ、たくさんの人に読んでいただけるように頑張っているつもりです


これからもお楽しみいただければ幸いです

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