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J/53  作者: 池金啓太
二十話「とある家族のアイの話」

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その体の変化

冬休みももうすぐ終わるというのに、静希をはじめとする一班の人間は大いにだらけていた


そしてそれは二年生も同じで静希の家に入り浸る雪奈はその傾向が特に強かった


短い期間の休みだから宿題なども基本なく、本当にただ休めるというのは貴重だったのだろう


「あ、メフィ粉塵使うよ」


「ありがと、突貫するわ」


炬燵に入った状態で雪奈とメフィはこの冬休みでかなり上達した狩りゲームで一緒に遊んでいた


両者近接型の装備でありながら、雪奈はヒット&アウェイ、メフィはガードを駆使して距離をゼロに保てるように工夫している様だった


メフィのニート度合いが上がったような気がしてならないが、ここは気にしないでおくことにする


「雪奈さん、お茶とお菓子です」


「おぉありがと明ちゃん、うまうま・・・あ!ヤバ!死ぬ!」


「はいはいフォローするわ」


雪奈が目をそらしていた時にピンチになったのか、即座にメフィが敵との間に割って入って攻撃をガードしフォローして見せる


こんなことまでできるようになったというのは、本当に上達したのだなと感心する、九日間のゲーム合宿もどきもどうやら血肉になっているようだ、それが必要な事かどうかは不明であるが


「そういや静、今日出かけるんだっけ?」


「あぁ、午後からちょっと鏡花に頼み事があってな、学校で待ち合わせしてる」


「明ちゃんも行くの?」


「うん、一応班の事らしいから」


班のことと言われて雪奈はふぅんと小さくつぶやいて眉をひそめる、自分だけ学年が違うためにそういう時に輪に入れないことが少しだけ悔しいのか寂しいのか、口を尖らせてちょっとだけ拗ねている様だった


仲間はずれするつもりは毛頭ないのだが、やはり雪奈としては思うところがあるのだろう


「・・・雪姉も一緒に来るか?」


「ん・・・私はいいや、いっといで」


珍しく気を遣っているのか、雪奈は笑いながらゲームに集中し始める


変な気を遣わなくともいいのにと思いながら静希は雪奈の頭や顎を撫でていく


気持ちよさそうにその手に顔を摺り寄せるさまは動物のそれに近い、つくづく雪奈は姉として年上としての威厳がないなと実感する


「でも班の事ってなにするの?鏡花ちゃんじゃなきゃできないこと?」


「そうだな・・・まぁ鏡花以外にもできそうな気はするけど、一番手っ取り早いし」


静希はそう言って自分の左腕を軽く叩く、その動作に雪奈はなるほどねと納得した


静希が鏡花に何を頼むのかを把握したのだ


「あんまり無茶言っちゃだめだよ?鏡花ちゃんだって女の子なんだから」


「わかってるよ、そんなわけだから昼までには切り上げてくれよ?」


「了解了解、任せんしゃい」


雪奈は小気味よく笑ってサクサクとゲームを操作していく、戦闘時もそうだが集中力が高まると途端に動きが良くなるのが雪奈の特徴でもある


逆に言えば他の物に気を逸らされていたり、集中できない状態だとその動きもだいぶ鈍る


これは前衛の人間によくある気質でもあるようだ、集中状態が高まればそれこそ相手に触れさせることもなく完封することも可能だろう


ゲームのシステム上難しいかもしれないが、今の雪奈であればフレーム単位で反応することもできるかもしれない


そんな時、ふと気づく


雪奈の体が少し大きくなっているような気がしたのだ


「・・・雪姉・・・太った?」


瞬間、雪奈の動きが停止する


先程まで軽快に動いていた指先も、笑みを浮かべていた表情も完全に凍り付いている


「静?女の子にそういう事言うのはデリカシーと言うものが」


「最近ずっと動かずに食べてばかりだったからな・・・ほれ肉が」


静希に体を弄られ雪奈は顔を真っ赤にしてしまう


放心状態の時にメフィが敵を倒していたがそんなことなどもうどうでもよくなっている様だった


「静希君、さすがにそれは・・・確かにお正月は太りやすいけど・・・」


そう言って明利は視線を逸らす、確かに正月には食の誘惑が多く、何よりゆっくりしている時間が長いために脂肪が増えやすい、日々運動することが多い静希達能力者はその傾向が顕著である


「ちょっと待ってて・・・体重計乗ってくる」


普段はその食事を運動によって消費している雪奈だが、その運動が無くなったことでカロリーの消費バランスが崩れている、たった数週間とはいえそれは侮れない


そしてそれは数字という結果となって雪奈に突き刺さり、悲鳴となって静希達に知らされることになった


体重計の置いてある洗面所に向かうと、ほぼ下着になった雪奈がその場で項垂れていた、どうやら少しでも軽くなるようにしたのだろうが、無駄だったようだ


その体を見るとなるほど、変化がよくわかった


変わったのは胸と腰回りだった、特に尻に脂肪が乗っているように見える


「これは・・・いかん・・・これはいかん!ランニングだ!」


どうやら自分の状態を把握し、危険だと判断したのか雪奈はすぐに服を着て自分の家へと戻っていった、恐らく今日一日中走るつもりだろう、雪奈の体力なら不可能ではないが、三日坊主にならないことを願うばかりである


そして昼過ぎ、静希と明利は事前の約束通り学校にやってきていた


休みという事もあって校門自体は閉まっているが、自習という事で訓練場を使用することはできる、静希と明利は守衛に学生証と使用場所と目的を記して中に入れてもらうことにした


何時も鏡花たちが訓練しているコンクリの演習場に向かうと、そこにはすでに訓練を行っている鏡花と陽太の姿があった


「あ、来たわね・・・なんだてっきり雪奈さんも来ると思ってたのに」


やってくる静希達に気づき、鏡花が軽く手を振りながら二人を眺める


確かにいつも一緒な三人のことを考えれば雪奈が来ても何の不思議もないが、今回は事情が事情である


「あー・・・雪姉はこの正月にお肉がついてしまってダイエットに向かったよ」


「・・・なるほどね、あの人らしいというかなんというか・・・それにしては明利は全然変わらないわね」


「体調管理くらいはできるよ、それが特技だもん」


明利は胸を張って得意げにしているが、肉がつかないというのは明利の特徴でもある、縦にも横にも全く伸びないのだから少し不憫になるが、鏡花はとりあえずその事には触れずに静希と向き合う


「それで?例の物見せてもらおうかしら?」


「はいよ、これだ」


静希は三種類の弾丸を鏡花に渡す、それは源蔵から渡された静希の左腕に内蔵された大砲に使用する弾だった


一つは散弾、一つはスラッグ弾、一つは貫通力を高めたライフル弾


一つ一つ手に取ってその構造を理解しているのか、鏡花はふむと息をついてその場に全員分の椅子を作って座る


「陽太、一回きりあげよ、休憩しなさい」


「おう、ようやく休める・・・お静希に明利、お疲れ」


集中状態を維持していたため静希達が来たことにも気づかなかったのか、陽太はあっけらかんとしながら静希達に挨拶して鏡花の作った椅子に座りカバンの中から菓子パンをいくつかとって頬張りだす


「おぉ、これが例の弾か、案外でかいな・・・結構強いんだろ?」


「まぁな、それぞれ特色がある、三十ミリ弾らしい」


静希が取り出した弾は当然というべきか、普通の銃に使用するよりも数段大きい弾である、それこそ固定された機関砲などに使用する大きさの弾だ、小銃に詰めるものではないため見る機会もほとんどない


「早速で悪いけど撃ってみてくれる?レプリカ作ったから」


「あぁ、的は頼むぞ」


コンクリートを構造変換と形状変換を使って静希が持ってきた弾と全く同じものをいくつか作った鏡花、そして鏡花たちが座っている場所から少し離れた場所にコンクリートの塊が大きくせりあがる


そう、今日鏡花に頼むのは、弾の量産と、試射の場所の確保である


まともな弾と、射撃状態ではないために、普通の射撃場ではそもそも射撃訓練ができない、その為鏡花に頼んで射撃訓練に付き合ってもらったのだ


「俺あれ撃つの初めて見るな、どんな威力だろうな」


「少なくともコンクリならめり込むくらいの強さはあるんじゃない?弾の強さってよく知らないからわからないけど」


「静希君も腕につけた状態で撃つのは初めてだって言ってたけど・・・大丈夫かな」


明利の言う通り、静希は腕に砲身を付けた状態で撃つのはこれが初めてである


今まで固定した状態で撃ったことはあったが、完全に自分の体だけで撃つとなるとどうなるのか全く予測できなかった


どれくらい反動が来るのか、どれほどまともに狙いをつけられるのか全く分からないのだ


「鏡花!撃ち漏らしが無いように周りを傘っていうか、ドームみたいなので覆ってくれるか?」


「はいはい、半分くらいでいいわよね!」


そう言って鏡花が地面を足で叩くと、静希の立っている場所から、的を覆うようにコンクリートのドームが出来上がる、これで万が一誤射しても弾丸がどこかへ飛んでいくという事は防げる


肘から先を取り外して鏡花から受け取った弾を詰めると、中でカチリと何かがはまる音がする、どうやら源蔵の言っていた固定がしっかりとされたようだ


初めての腕につけた状態での試射に静希は僅かに冷や汗を流していた


発射の反動が直接腕から伝わるのだ、しかも今まで自分が撃ったことのない大きさの弾、気圧されないほうがおかしいだろう


「んじゃ行くぞ!耳塞いでろよ!」


静希は耳栓を装備して目の前の的に狙いを絞る


自分の腕から出るというのがここまで狙いをつけにくいものだとは思っていなかっただけに少し苦戦してしまう


そして大きく息を吐いて、そして吸う


足場を確認してしっかりと反動に耐えられるように体を支える、腋から出る取っ手に手をかけ、全身に力を込め、身構えた


その様子を鏡花たちもじっと眺めている、もちろん両手で耳を塞ぎ、大きな音がしてもいいように構えていた


体の固定がしっかりできていると感じ、静希は勢いよく取っ手を引き、撃鉄を起こす


瞬間大きな炸裂音と共にその腕から弾が射出された


誤字報告が五件分溜まったので二回分投稿


最近ちょっといろいろあって誤字チェックが疎かになっていたため少し頑張りました


これからもお楽しみいただければ幸いです

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