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30万人のうんちはどこへ行く? 日本一過酷な富士山のトイレ事情

日本で一番高い山と言えば、富士山です。

日本人では知らいない人はいないぐらい有名な山ですよね。

2013年には世界文化遺産に登録され、国内外から毎年多くの人が登ります。

では、毎年何人が登っているか知っていますか?

ちなみに富士山は登山時期が7月~8月に限られているため、2か月間の登山者数になります。

環境省関東地方環境事務所のホームページによると、平成29年では28万4862人となっています。過去のデータも見てみると、おおよそ30万人くらいという感じです。

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ここで気になるのは、もちろんトイレです。

トイレと言えば、便器に流す水、うんちとおしっこを運ぶための下水道が必要になりますが、富士山には水がありません(山麓の伏流水などは別です)。

もちろん、下水道もありません。電気は発電機を使うしかありませんし、雷や強風、落石、雪崩、低温など気象条件の過酷さは日本でもトップレベル

しかも、1年のうちでトイレを使うのは2ヶ月間のみで、その期間に30万人の利用が集中するのです。

30万人が利用するということは、どんなに少なく見積もっても30万回分のうんちやおしっこを受け入れなきゃいけないのです!

仮に1回200ミリリットルだとしても、60トンです!


かつては垂れ流しだった富士山のトイレ

では、富士山のトイレはどうやって大量のうんちやおしっこを処理しているのでしょうか?

実は、2000年頃までの富士山のトイレは、ほとんどが垂れ流しだったのです。

どういう仕組みかと言うと、当時の富士山の山小屋トイレのほとんどは、水を使わないボットン式のトイレで、2か月(7月と8月)の間に登ってくる登山者のうんちやおしっこは、このボットン式トイレにどんどん溜められていました。

そして、閉山後、誰もいなくなった山肌に向かってボットン式トイレの便槽の蓋が開かれるのです。

すると、うんちやおしっこ、ティッシュペーパーなどがド~ッとながれていきます。

うんちやおしっこは、富士山の岩盤にしみ込んでいきますが、ティッシュペーパーやごみが山肌にこびりついて「白い川」と呼ばれるほどで、衛生的にも環境的にも、深刻な状況でした。

これではマズイということになり、1996年頃、富士山のトイレ問題を解決するため、山小屋、行政、研究者、企業が力を合わせてトイレ改善の取り組みが始まったのです。その後、山のトイレ整備に対する環境省の補助制度(1999年)ができたことが追い風となり、2006年には、富士山のすべてのトイレが環境に配慮したタイプに改善されたのです。

私たちが日ごろ使っているトイレは、下水道に流すか、もしくは浄化槽と呼ばれる設備で処理をした後、河川に放流します。

一方、ここで言う環境に配慮したトイレとは、微生物や物理化学的な技術によって、うんちやおしっこを処理するトイレで、汚水などを外に排出しないのが特徴です。これら処理装置が備わっているトイレのことを、私たちは自己処理トイレと呼んでいます。

もう、うんちやおしっこを山肌に流さなくてもよいのです。これは大きな改善です。

富士山に設置されている自己処理トイレには、うんちやおしっこと洗浄水を処理して循環再利用するタイプ、うんちやおしっこをバーナーで燃焼して灰にしてしまうタイプ、また、水は使わずに、うんちとおしっこを分離する便器(写真1)を用いて、うんちはそば殻と混合・撹拌することで分解し、おしっこは別のタンクに溜めて下界に搬送するタイプなどがあります。

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写真出典:山梨県富士吉田市 富士山 七合目 | 大央電設工業株式会社

これらの自己処理トイレは、山岳地や山麓、海岸、離島などの自然地域で上下水道、商用電源、道路等のインフラの整備が不十分な地域、または自然環境の保全に配慮が必要な地域において導入されています。

自己処理トイレは、下水道でも浄化槽でもない新しいタイプのため性能評価の方法が確立されていません。そこで、環境省は、自己処理トイレに対して、開発者でも利用者でもない第三者機関によって客観的なデータを調査・公表する取り組みを行っています。環境省のホームページには、28の技術データ(2018年5月時点)が公開されていますので、参考にしてください。

今後、自己処理トイレを新たなトイレ技術として普及させていくためには、専門的なメンテナンスを実施する体制をつくることが必要です。

また、短期間に設計能力を超えて利用が集中すると処理が追い付かなくなるため、そのあたりの対策も検討する必要があります。

さらには、自己処理トイレに限ったことではありませんが、快適なトイレ環境を維持するためには、費用がかかります

トイレ利用料としてもらうのか、入山料なのか、もしくは入山制限なのかについても考えていかなければなりません。

富士山は、日本を代表する世界文化遺産であること、また、過酷な自然環境および利用条件であることから、ここで成果を出すことができれば、国内の自然地域への適応はもちろんのこと、世界へのアピールが可能だと思います。

そういった意味でも、富士山のトイレには注目したいですし、快適と環境を両立する日本のテクノロジーとしてのさらなる発展にも期待したいところです。


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30万人のうんちはどこへ行く? 日本一過酷な富士山のトイレ事情|加藤篤(日本トイレ研究所)
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