新運命「愚弄」の行人「マネモブ」   作:異常猿愛者

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仙舟「ROUGH」から御釈放だあッ

ペラッ…ペラッ…

薄暗い独房の中、本を捲る時特有の紙が擦れる音が静寂に響く。マネモブが読書をしている音だ。表紙には”ユングの元型論”とあるが、野蛮人が難しい哲学書を読みふけるなんて些かおかしく思える。

 

「おい貴様、その書物はどこから持ち込んだ!差し入れは禁止されている筈だろう。」見回りの兵士が目ざとく発見しマネモブを怒鳴りつける。この男はまだ面会をしていないし、罪人の身体検査は厳重に行なっている。一体どこから持ち込んだのかと違和感を覚える。

 

「差し入れじゃない…元々持っていたんだ。」

「バカ言え、咎人の隠し物は全裸にしてケツの穴の中まで確認ししてるんだぞ。一体どこに隠す場所が…」とにかくこれは没収だと房に押し入られて哲学書は無理矢理奪われた。

 

「チイッ…」マネモブは徐に舌打ちするが、しゃーないと切り替えて今度は異常猿愛者の聖典を読むことにした。もう何度読んだかも分からないが…1600万人が信仰していると言われている”愚弄”を突き詰めた偉大なる星神”サルワターリ”が執筆した”タフシリーズ”である。100巻を超えて今尚連載されているという長寿漫画なので、何もない場所ではいい暇つぶしになる。早速猿空間から高校鉄拳伝第1巻を取り出し愚弄と猿成分を接種しようとした時、

 

「お、おい…!」

「ま、またサド看守か…」さっき本を持って行った兵士が息を荒げて戻って来た。いい加減しつけーなオメエもと思ったが、今度は別件だった。

「急遽面会の予定が入った。今すぐ用意しろ。」

「誰に…何のだ。」俺達が捕まったと聞いたゴア博士か立川博士が迎えに来たのか?

 

「お前達に会いたがってるのは…将軍様だ。」

「そうスか…」マネモブは相手が博士達じゃない事に落胆するが、

「天舶司の狐族に暴行を働いた小悪党としか聞いていなかったが、何故将軍様が直々に?」兵士はブツブツ一人で疑問を呈している。マネモブはそんなん知らんよと無視してトダーの電源を入れた。

 

「オッ、マネモブおはようヤンケ。何カ進展アリヤンケ?」

「ああ、ここで一番偉い奴が俺達に会いたいらしいぜ。」「………ヤンケ―!?」トダーのAIもビックリして明日は大雨警戒注意報だ。

「静かにしろオムニック、さっさと行くぞ。」一番驚いてるのは俺達の方だとでも言いたげだ。

 

………

 

「初めましてお二方、私の名は景元。」目の前にいる優男がここで一番偉い奴なのかとマネモブはジロジロ見つめる。しかし罪人相手だというのにやけに礼儀正しいなと少し変に思う。

 

「トダーヤンケ。オラッマネモブモサッサト自己紹介スルヤンケ。」

「ワシは愚弄の運命を歩むマネモブや。この顔よー覚えとき!」トダーに促され自己紹介するマネモブ。

 

「ハハッ、聞いた事ない運命だ。」景元は面白そうに嗤う。

「将軍…本当にこの人達が…?」さっきから将軍の横でチラチラ見ていた男なのか女なのか分からん金髪のガキが口を挟んで来た。こちらを訝しむような表情で見てくる。

 

「ああ、符玄殿の占いに間違いはない…彼等こそ今回の星核騒動を起こした黒幕、"絶滅大君"の一人"幻朧"を倒した英雄だ。」

絶滅大君か…ナヌークのお気に入りである使令と聞いているが、あの狐族に取り憑いてた霊はそんな大物だったのかと少し意外であった。何せ余りにあっけなく倒せたものだからだ。

 

「マネモブ殿が幻朧を早期に討伐してくれなければ、更に惨事が広がっていたと言う太卜師もいる。そんな羅浮を救った英雄に非礼を働いた、申し訳ない事をしたと恥じている。」

「言葉での謝罪なんてどうでもいいんだよ…問題は…誠意とは実利で示すものだということだ。」相手が下手なのを良い事に調子に乗ったマネモブは手でお金のマークを作る。

 

「ヤメロバカ。」

「気にしなくて良いトダーさん。私達もその話をする為に呼び出したんだ。」将軍は俺達に恩赦と褒賞を考えているとのこと。望む物は何でも与えようと。

 

「おっしゃあああっ」棚ぼただーッと雄叫びを上げるマネモブ。これで同盟での用も終わりだ。

「ああ、すまない。最初に、断っておかねばならない事が二つばかりある。」

「ナンヤンケ?」

「君達は豊穣を求めて遥々羅浮まで来てくれたようだが…残念ながらそれに応える事は出来ない。」

「えっ」将軍の言葉は少々冷淡にも聞こえた。

 

「う、嘘やろ…こ、こんな事が…こんな事が許されて良いのか!?」

「将軍、アンタマネモブガ心臓病ナ事ハ知ッテル筈ヤンケ。何デ駄目ヤンケ?」トダーはマネモブを不憫に感じ思わず抗議してしまう。

 

「君達は何か勘違いしてるようだが…豊穣は祝福ではなく寧ろ呪いのようなものだ。我々の先祖は8000年前に不老不死を得たとされているが…その実態は希望などではなく苦難の始まりだった。人口爆発、資源を求めて争い合う人々、そして魔陰の身…先人達は決めたのだ。この力を外に持ち出してはならないと。」かつて豊穣を信仰していた仙舟人は薬師から授けられた"建木"を折って巡守の嵐に鞍替えしたのだと言う。

 

「断言出来るぜ。心臓がいつバーストするかも分からない位なら、魔陰の身の方がよっぽどマシだ。」マネモブは勿論反発するが、

「駄目なものは駄目なんだ、すまない。代わりと言ってはなんだが、他の褒賞ならいくらでも渡そう。」将軍も立場上譲る訳にはいかない。それでも尚豊穣を欲するなら恩赦も無かったことになるやもしれない。

 

「別にィ…バースト・ハートを治す以外に欲しいものなんてないですよ。」マネモブは項垂れながら答える。

「そ、そうか…ならばこれはどうかな?」将軍は目の前の男を少し哀れに思いながらある物を取り出した。緑色の破片である。

 

「なんじゃあこのゴミは…」

「ヤンケ…」一見すると本当にゴミにしか見えないからしょうがない。

「これは結盟玉兆…発信機とビーコンが内臓されているんだ。同盟は盟友となった者にこの欠片を渡す習わしがあってね。たった一度だけなら、この星海のどこにいようとも雲騎軍が一丸となって助けに行くと約束しよう。」もし困った事があればこの機械で呼んでくれ、なんぼでも駆け付けたると。

 

「ふうん、ああそう…まっ貰えるもんは貰っときますよ。」あまりキョーミはなさそうだがマネモブは猿空間へ玉兆をしまった。

「これだけだと物足りないだろうからね、いくらか謝礼も渡そう。これで褒賞の話は終わり、もう一つの条件は…」もう一つの条件とは、マネモブが傷付けた狐族の女に活法を施して欲しいとのこと。彼女は今高熱に苛まれており、しかも医学的に原因を突き止める事は出来なかった。これを治せるのは、彼女に妙な術を掛けたマネモブしかいないのではないかと。

 

「別名…鬼の五年殺し"塊蒐拳" "気"は西洋医学ではわからない。気の流れを正常に戻すには活法のツボを突くしかない。」停雲に治療を施す。これで晴れて自由の身、同盟を救った英雄としてこの場を去れる。マネモブも了承した。将軍は彼女が入院してる場所を告げ、再びあいまみえようと別れた。

 

「………」将軍護衛の子供は立ち去っていく二人を興味深そうに見つめていた。

 

………

 

「あー、道が分かんねーよ…」狐族の女に活方を使ってさっさと帰りたかったが、道に迷ってしまった。羅浮はメッチャ広い上に航路も入り組んでいて複雑である。来訪者がガイドなしに迷わないのは至難の業だ。

「トダー、お前にも分からないのか?」

「ハイデース。」戦闘にしか役に立たんロボットだとマネモブは毒付くが…

 

「困ってそうだね、道を教えてあげようか?お兄さん。」後ろからつい先刻書いたばかりの声が聞こえる。

「将軍ノ横ニイタ子供ヤンケ。」

「態々案内しに来てくれたんスか?あざーっす。」ガシッと握手をしようとするモブだが…

 

「…いや、善意から助けに来た訳じゃない。」空気がピリつきだす。目の前の子供から凄まじい闘気が発せられている。

「お兄さんがどれ程の強者が…試してみたくなっただけだよ!」目の前のガキは戦いを望んでいる。

「無茶苦茶な野郎だな。今ここでやろうってぇのか?」ここは市街地である。戦闘しようものなら確実に一般人を巻き込む。

 

「安心して、戦うのに打ってつけな場所に案内するから。僕に勝ったら病院の場所を教えてあげる。」この年で将軍の横に立つのを許されるくらいだ。相当才能があるのだろう、ただ些か能力に溺れ傲慢になってるようにも見受けられる。自分の力を試したくて仕方ないのか。

 

「クソガキ、今から武術の恐ろしさをお前に教えてやるよ。」

「ヤンケー」

◇戦いの行方はー?




猿空間にて
「このタフという漫画…唐突に登場人物が消えたり…何なのだ。」
猿空間に封印されてやる事がない幻朧は猿成分を摂取していた。
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