新運命「愚弄」の行人「マネモブ」   作:異常猿愛者

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もしかして田代さん時空は歳月の権能みたいなもんなんじゃないんスか?


田代さん時空

「ハッキリ言って、貴方は私達の脚本の邪魔だから。死んで貰うわよ。」

「チィッ、何だって補給に寄った星で悪名高き星核ハンターなんかに出くわすんだよッ」ヒュンカッカッ

 

マネモブはベロブルグで回収した星核をゴア博士に届ける最中、星核ハンターのカフカと刃に襲われていた。その名の通り彼が所有する星核を狙っての事だろうか?

 

「マネモブ、ココハ一旦逃ゲヨウヤンケ。アイツ等指名手配犯ヤンケ。危険ヤンケ。」

「トダーは猿空間へ避難してろ。」トダーを安全な猿空間に送り、マネモブは全力疾走で逃げようとする。しかし、

 

「”聞いて”マネモブ…」

「なにっ」彼女の話など聞いている場合ではない。だと言うのに、マネモブは足を止めてしまった。彼女の声にはつい耳を傾けてしまう不思議な魔力がある。

 

「良い子ね、そのまま動かないで。」カフカには”魂魄蠱惑の支配者”という二つ名がある。魂魄は魂、蠱惑とは言葉巧みに誑かすというような意味なのだが…彼女は言葉で相手の魂を掌握し自由自在に動かす”言霊”という恐ろしい力を持っていた。それを危険視した宇宙一の大企業スターピースカンパニーはアホ程の懸賞金を彼女に懸けていたんや…その額、”108億9900万信用ポイント”

 

「刃ちゃんの手を煩わせるまでも無かったわね。」カフカは動けずにいるマネモブにトドメを刺そうと近付く。

「貴方は開拓者の門出を滅茶苦茶にした…」

「あー、何言ってるか分かんねーよ。さっさと殺していいですよ。」星核ハンターのリーダー”エリオ”が描く脚本の事など知る由もないマネモブは悪魔を超えた悪魔のような女を挑発する。

 

「焦らないで?ゆっくりと死刑にしてあげるから。」カフカは愛用している剣を取り出すと男を斬り付けた。しかし、ここに来て異変が起こる。

「ウッ…」何と不思議な事か、マネモブの胴体に付けたのと全く同じ傷がカフカにも現れた。白のスーツが真っ赤に染まる。

「貴様…」黙って見ていた刃も異変を感じ男に武器を向けて威圧するが…

 

「おいコラッ口のきき方には気を付けろよ。傷を治す事は出来なくともそこの女を道連れにすることは出来るんだぞ。」

 

”幽幻真影流” ”陰陽互根の術”

 

相手の魂の陰…殺気や敵意などの心の隙を掌握、自身と同調させる事で一種の催眠状態に陥らせダメージを共有する。”敗北”はない。あるのはお互いが傷付き潰し合う…残酷で悲惨な”痛み分け”陰陽互根の術とはそんな技だ。

カフカには獲物をいたぶって殺す悪癖があるのだが、今回はそれが功を奏した。急所を攻撃しようものなら今頃彼女も荼毘に付していただろう。しかもシンクロしているのは負傷だけではない、マネモブにかけた動くなという命令が自身にも影響を及ぼしている。怪我も相まってまともに体を動かせない。

 

「成程、奇しくも私の言霊と似たような術を持っていたのね…初めて見たわ、私以外で魂に触れられる人間がいるなんて。」カフカは血を流してるからか息も絶え絶えになっている。

 

「どないする?灘神影流には血流操作があるからワシは出血を抑えられる、体格差も鑑みれば間違いなくそっちが先に死ぬで。」この男に術を解いてもらうにはこちらも拘束を解除するしかないだろう。

 

「カフカ…」隣で見ていた刃は暗に言霊を解いた方が良いと彼女に伝える。ダメージを共有しているとなれば彼に出来る事はない、カフカを殺すのは駄目だ。

「そうね…」カフカは降参だとばかりに術を解いた。

 

「ふーっ、ありがとうございました。バイバイ。」マネモブは危険人物達とこれ以上一緒にいたくないとそそくさと帰ろうとするが…

「…待て。カフカに掛けた妙な術を解け。」刃は静かな怒気を向けながらマネモブに刃を向ける。

 

「はー?そんなん知らんよ。お前等は俺の力量見誤っていけると思ったから死合いしたんやろ。プロは自己責任やん。まっ勉強代だと思って頑張って下さいよ。」何で一方的に殺そうとしてきた相手の言う事を聞かなきゃならないんだとマネモブは拒否するが…

 

「…いいわよ刃ちゃん、もしこのまま膠着状態が続くなら私ごとアイツを殺して。」「カフカ…」刃は不本意そうだがカフカ本気で語っているとマネモブは感じ取った。この女、痛みはしっかり感じるようだが死への恐怖が全くない。

 

「しょうがねぇなあ…但し、いくつか条件がある。」このまま彼女の陰を掌握したまま逃げても良いが、その場合隣の男に一生追い掛けられるかもしれない。それは面倒だと考えたマネモブは交渉する事にした。

 

「…内容次第だな。」星核ハンターの計画上カフカをこんな所で失うのは不味い。マネモブが彼女の命を握っている以上、ある程度相手の要求を聞かざるを得ない。

 

「条件は二つや。まず第一に、今後俺達に一切合切の危害を加えない事。」「…それは難しい。」

「あーん?」刃の返答を不快に思ったマネモブは猿空間からバタフライナイフを取り出すと自身の腕を斬り付ける。

「ッ…」負傷を共有したカフカは小さい呻き声を上げた。

 

「コラハンター共、俺の指示を無視するのか。お前等誰の御慈悲で生かして貰ってると思ってんだあん?」この駆け引き、イニシアティブを握っているのはマネモブの方だ。

 

「最初にも言った通りよ、貴方は私達の脚本の障害になるの。」

「さっきから脚本って何だよ!?お前等の目論見を教えてくれよ、それがもう一つの条件や。痛み分けで終わるには悪くない条件だと考えられるが。」マネモブは星核ハンターが何故己を狙ったのか気になってしょうがない。

 

「ちなみに俺には嘘を見抜く力があるらしいよ。話す気がないからと出鱈目を述べようもんなら女の術を解かないで逃げさせて貰うで。手負いの状態でそっちの剣使いに追い付かれないかは賭けやけどな。」どうやって偽りを判別するのかは謎だが、マネモブにはまだまだ隠された力があるということか。

 

「カフカ、正直に話そう。」「刃ちゃん…」

「お前はここで死ぬべきではない。俺もお前には死んで欲しくない。」「………」見つめ合う二人。

「見せつけてんじゃねーよあーっ?」マネモブは仲睦まじい狩人達を目にしてメッチャ機嫌が悪くなるが、何だかんだ話し合う事になった。

 

………

 

「おいおい、星神殺しは不味くね?」マネモブは星核ハンター達の壮大な目標に唖然とする。この犯罪者集団はレギオンの親玉、”壊滅”の”ナヌーク”を殺す為の壮大な脚本の元動いているとの事。そしてつい先日、マネモブがヤリーロ‐Ⅵの星核を回収した事で脚本が大きく狂ってしまったのを危険視した脚本家兼リーダーの"エリオ"の指示で殺しに来たらしい。

 

「ふうん、そういうことか。」

「貴方がこれからも好き勝手に動くと、ナヌークを殺せる可能性が大きく下回るの。この星海の為に死んでくれないかしら?」壊滅は銀河中に被害を出している。マネモブ一人の命と引き換えに殺せるならいい条件だろう。

 

「ハンターに殺されるのは嫌だな…」だが、マネモブがそのような要求を受け入れる筈もない。

「お前等の脚本を妨害せずに俺の生存保障もする…一つだけ、それを可能にする方法がなくもない。」重苦しい雰囲気の中、マネモブが渋々と譲歩案を話し出す。

 

「その方法とは一体?」

「俺の故郷に、愛息を殺され自己崩壊した女がいるんだ。名は田代。」

何の話だよと二人は言いたげだが男は黙って聞けと言う。

「田代さんは精神病棟に入院し、息子を殺した犯人を今でも恨んでいるんだ。しかし…」次の瞬間、マネモブから衝撃のオチが語られる。

 

「十年くらい前の事だったか…彼女はあるプロレスラーに、息子が小児性愛者だった事を責められたんだ。彼を殺したのはその毒牙に掛かった被害者だった。彼女はそれを知っていながら見て見ぬ振りをしていた。結局彼女はその出来事がトドメになって自殺した。」マネモブは語り終えた。

 

「………は?」話を聞いていた二人は何を言ってるこの馬鹿はという気持ちが拭えない。

「あっ、今矛盾してるって思ったでしょ。現代で生きている人間が過去で自殺したなんて。けどこれは事実なんだ。悔しいだろうが仕方ないんだ。」別に悔しくはない、理解不能なだけだと二人は思う。

 

「…で、お前はその田代という女の話をして何が言いたいんだ?」

「星核ハンターってのは存外鈍いんだな。いいか、田代さんは今も生きている、だが十年前に死んでいる…相反する二つの事実が確かに現実に存在している。」

 

「…そういうことね。」カフカは何となく男の言いたい事を察した。

「女の方は気付いたようだな。そう、この現象は別名”田代さん時空”と言うんだが…"愚弄"の行人である俺はそれを能動的に起こせる。」

時空改変者、何とも突拍子のない力だ。レギオンの雑魚に失神KOされたこの男、その実"怪物を超えた怪物"かもしれない。

 

「そんな便利な権能があるなら、もっと早く言ってくれれば良かったのに。」

「そない良い事ばかりな訳ないやろ。この術には致命的な弱点がある。世界の事実を書き換えるんやで?それ相応のリソースが必要なんや。書き換える内容が重くなればなるほど代償は大きくなる。昔一度だけこの術を使おうとした時はな、エネルギー切れで三途の川を渡りかけたで。」だから言いたくなかったんだよとマネモブは訴える。

 

「成程、つまりエネルギー問題さえ何とかすれば、歴史を修正出来るのね?」

「まあ…そやな。」

「丁度あるじゃない、莫大な"虚数エネルギー"の塊が…」

「………ま、まさか…」彼女は星核の事を言っているのだろう。

 

「いや、ちょっと待てよ。星核って別名”万界の癌”とかいう危険物やろ?そないなものに頼ったら一体どんな惨事が起こるか…」

天才科学者ゴア博士ですら星核の研究にはまだ手を付けてない。未知なるものにマネモブは拒否感を覚える。

 

「私達を誰だと思ってるの?星核ハンターよ。今まで数え切れないほどの星核を集めてきた、当然星核の扱い方も良く知ってるわ。」どうやら話が纏まりそうである。

 

「貴方の提示した条件を呑むわ。不可侵協定を結び、貴方の自由を保障する。その代わり、脚本通りに事が進まなかった時は貴方の力で修正する。星核の制御方法は私達が手取り足取り教えてあげる。これで良いわね?」

 

「…なんでもいいですよ。」脅迫されてた割にはハンター達にかなり有利な条件で交渉が終わった。だが、"田代さん時空"を自由自在に使えるようになるかもしれないのはマネモブにとっても悪くない。この日、星核ハンターとマネモブ、骨肉相食む殺し合いを繰り広げた両陣営に奇妙な同盟関係が発足する。




星穹列車にて
「な、なんですかこれはあ…シラナイ力が溢れて来るですゥ!!」
「◇この突如として流れ込んできた存在しない記憶は一体ー?」
こうして開拓者はしっかり存護の力に目覚め、ベロブルグと列車は友好関係を結んだ。
「イエイッ、ハンター達が共有してくれた星核のデータは非常に興味深い。」
ゴア博士は研究が前進してウハウハだった。マネモブは力の代償で数日寝込んだ。
◇田代さん時空とは一体ー?田代さんは生きている、田代さんは死んでいる…矛盾した二つの事象を同時に成立させる"愚弄"の運命の御業である。
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