新運命「愚弄」の行人「マネモブ」 作:異常猿愛者
猿空間送り
「いやあ、遂に来たのR国。」
「違ウヤンケ。寒イトコシカ共通点ナイヤンケ。」マネモブとトダーは極寒の雪国に居た。◇この男達の目的はー?
「本当ニココヤリーロ‐Ⅵニ星核ガアルヤンケ?」
「部族の神”ヨージョ”のお告げがあった。今日、”ゴア博士へのお土産”が手に入ると。それがこの星だ。」どうやらマネモブ達はあるマッドサイエンティストの為に星核をゲットしようとしているらしい。
「フウンアアソウ…」
「星核は”万界の癌”…巨大な虚数エネルギーの塊みたいなもんだ。」マネモブは懐から何らかの機械を取り出す。
「ばあっ、ゴア博士が作ってくれた虚数エネルギーを可視化する装置でーす。おっ反応があった。」それはソナーの役割を果たしているようだ。マネモブが星核の位置を補足する。
「サッサト回収シテ帰リタイヤンケ。」そして二人は星核の場所まで直行した。
………
「申し上げますッ」
「…何だ。」厳格な雰囲気と憂いを帯びた美しい金髪の女が全身鎧を身に纏った兵隊のような男と相対している。
「カカリア様…先程シルバーメインの技師から信じられぬものを観測したと報告がありまして…」
「前置きはいい、単刀直入に言え。」この女の名前はカカリア、極寒の星ヤリーロ‐Ⅵで一番偉い”大守護者”に位置する者である。大統領…?と考えて貰えばいい。
「も、申し訳ありません。俄かには信じられない事態だったもので…」
「………。」
「は、はいっ。単刀直入に報告させて貰いますと…技師が言うにはどうやら観測上700年振りに外界の気温が上がったとの事で…原因は不明ですが…」言い訳はもう聞きたくないとでも言いたげな大守護者におっかなびっくりになりながら説明する兵士である。
「…なんだと?」
「これは希望的な兆候ではないかとシルバーメインの間ではお祭りムードで…」兵士は意外に思った。寒波で滅びかけているこの星を背負う大守護者にとってこれは願ってもない朗報な筈…だというのに彼女は寧ろ深刻な事態でも聞いたかのようにより一層顔を険しくした。
「兵の中にはこの情報を民草にも伝えるべきだと申す者もいるのですが…いかがなさいますか?」
「…好きにしろ。私は急用が出来たので席を外す。」部下の返答も聞かずにカカリアはどこかへ行ってしまった。
(まさか…何者かが星核を回収したのか…?)この星で唯一星核の真実を知っている彼女は焦燥に駆られる。
………
「いやあ、祭りは楽しいね。」
「そうだねぇ。」
「………。」星穹列車の三馬鹿はマネモブ達より遅れてベロブルグに降り立った。極寒の星で一体どんな危険が降りかかるかと危惧していた三人だったが、その予想は意外な形で裏切られた。
「開拓の旅に来たら丁度祭典をやってるなんて、私達運が良いね!」「………。」開拓者と三月なのかはイベントを心の底から楽しんでいたが、丹恒だけは訝しむような表情をしていた。
「どうしたの丹恒?一緒にお祭り騒ぎしよーよ。」
「いや、姫子さんから聞いた事前情報と余りにもかけ離れていたからな…少し疑問に思っただけだ。」この星は星核によって寒波に飲み込まれ滅亡寸前という話だった。その元凶を封印し、寒さを解決する為に三人はヤリーロ‐Ⅵに来たのだ。それがどういうことか、三人が来る少し前に寒波が弱まり数百年振りに気温が上がったという。市民も兵士も高揚しバカ騒ぎしている始末だ。
「俺達が来る前に、別の誰かが星核を封印したのだろうか。」
「うーん?この星の人達が自力で何とかしたんじゃないの?」
「いや、それは考えにくい。数琥珀紀も星核に対処できなかった星が内部だけで解決するとは…」
「まあいいじゃん、今回は遊ぶだけで帰れそうだしさ!前の星とか大変だったし。」
「私が列車に乗る前の開拓?その話聞かせてくれよ。」
「………。」丹恒は情報収集も兼ねて二人と楽しむ事にした。
………
「暖かくなったうえに天外から客人まで来てくれるとはな…」
「外の気温が上がっていけばいずれは…下層部との交流も元に戻るかもしれんな。」
祭りの参加者達の話を聞いて回る三人、ベロブルグは完全に歓迎ムードであった。
「なんか重要そうな情報あった?」
「いやあ?皆ウチらに折角来てくれてありがとーって。」
「俺はこの星の情勢を聞いてきた。ここベロブルグには上層部と下層部があるが、今では偶にある資源のやり取り以外接触を絶っているらしい。ちなみに今俺達がいるのは上層部だ。」
「えー…それってちょっと残酷じゃない?」
「滅亡寸前の国を何とか保たせる為の苦肉の策らしい…ただ、このまま気温が上がっていけば行く行くは繋がりが戻るかもと。」
「大丈夫?ずっと隔離されてた下層部との軋轢は凄そうだけど。」
「それはこの星の住人達次第だな。俺達余所者にはどうしようもない。」
「なんか大丈夫そうだし。観光したら帰ろうか?」
「いや、星核に何があったのかを知らない内に戻るのは危険…と思う。一時的に機能が弱まっただけで依然健在という可能性も無くはない。」丹恒はこのまま情報を集めるべきだと言うが、正直手詰まりではある。
「一番偉い人と話したら何か分かるかも?」
「この星のトップは大守護者というらしいが…今は不在とのことだ。」丹恒はベロブルグの治安維持や軍隊としての役割を担っているシルバーメインからこの話を聞いたと言う。
「そっか。それじゃあその大守護者様が戻って来るまではお祭りを愉しむって事で…」三人が呑気に話していたその時
「いやー、ベロブルグの屋台飯も中々ウマイでっ」
「………ワシハ飯ヲ喰エナイカラ早ク帰リタイヤンケ。」見覚えのある二人組を目にした。
「あの人達…宇宙ステーションにいたよね?」
「誰だっけ。」「レギオンと一緒に闘ったじゃん!もう忘れたの?」
「何故あの二人がここに?気になるな…」天外からの客人は数百年振りだと聞いている。つまり、この二人がベロブルグに訪れたのは自分達と同時期の筈だ。急に弱まった寒波とこの男達は何か関係があるかもしれない。三人は声を掛けに行った。
「ちょっと良いか?」
「アーッ、ステーションデ終末獣倒シタ英雄達ヤンケ。コンナトコデ会ウナンテ奇遇ヤンケ。」
「久しぶりやん、元気しとん?」男達は三人を覚えていた。別に会うのは久しぶりではないだろうと丹恒は思う。
「アンタ達は何しにここへ来たの?」
「観光ですけど、なにか?」両手に溢れる屋台の景品や食料を見れば分かるだろ?とマネモブは言う。
「星核の事知ってる?」
「………ハァ…」直球に質問する開拓者に丹恒は諜報がヘタクソだと溜息をついた。
「知ッテルモ何モ、先日コノ星ノ星核ヲワシ等が回収シタトコヤンケ。」
「「「えっ」」」欲していた情報がこうもあっさり手に入った事に、三人は拍子抜けだ。
「………アンタ達に星核を封印するノウハウがあるようには見えないんだけど。」なのかは忌憚のない意見を述べる。
「マネモブハコウ見エテ空間系ノ便利ナ能力ヲ使エルヤンケ。今ハソコニ保管シテルヤンケ。」
「へぇ、レギオンにボッコボコにやられてたのにそんな力使えるんだ?」開拓者となのかは信用できない様子だ。
「機械に無様を晒したのは悔しいが…これが現代科学の力だ。」
「嘘カ誠カ愚弄ノ運命に深ク浸カッタ者ハ機械二勝テナクナルトゴア博士ハ言ッテルヤンケ。」
「…今はマネモブが機械に負けた話はどうでもいいだろう。」丹恒は星核へと話を戻す。
「俺達を支援してくれる科学者の一人にゴア博士ってのがおってな…博士がどうしても星核の研究をしてみたいと言うからお使いしに来たんや。」目論見を正直に話すマネモブ。
「目的は分かった…星核は危険物だが、お前達がどう扱おうがこの際関知しない。ただ…」丹恒はあと一つだけ聞きたい事がある。
「お前達が星核を保管している証拠を見せて貰えないか?かくいう俺達もこの星を救う為に星核を封印しに訪れた。だからこの星がもう安全だと判断出来たら、俺達もここを去る。」丹恒は懇切丁寧に頼み込んだ。
「俺達が星核を封印しただと。そのエビデンスは?ということか。しょうがねぇなあプライベートで祭りを楽しんでるって時に…」男は手から溢れんばかりの商品達をトダーに預ける。次の瞬間、
「「「!」」」男の手が輝きだす。その手中には美しくも禍々しい黄金色に輝く球体が握られていた。
「じゃーん、あなた達がボロボロになってまでも欲しがった星核はここにありますよ。」
「別にボロボロにはなってないし欲しがってもないんだけど?」二人が言っていたことは真実だった。この男は独自に星核への対処法を確立している。
「もう十分だ。これ以上は危険だから仕舞ってくれ。」丹恒の言葉を聞くと男はすぐに星核を消した。
「へぇ、物を出したり消したり…マジックみたいだね。」
「灘神影流マジックよ。人や物を猿空間に送る技がいくつかある…」開拓者は摩訶不思議な力に多少興味を抱いたようだ。
「よしっ、それじゃあ万事解決って事で…もう少し観光して行こう!」「…そうだな。」列車組三人で初めて行う開拓の旅はあまりにもあっけなく終わった。
常冬峰にて
「星核…私の希望が…一体どこへ…!?」星核を失ったカカリアは一時的に自己崩壊。だが失ったものはしょうがないと考え直し、その後は何だかんだ名君になり、上層部と下層部が再び行き来するようになった…と思う。